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だれかのまなざし

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評価/★★★★★(90点)

成長した「あなた」に贈る新海誠の短編アニメ

本作品は野村不動産のマンションブランド「PROUD」とのコラボレーションで
制作されたショートムービー。 .

見だして感じるのは「平野文」さんの素晴らしい声だろう。
この作品は基本的に「語り」で物語が進むため、声は非常に重用だ。
そんな重用な役割である「語り」を平野文さんの素晴らしい声で語られることで
本当に「冒頭の10秒」でぐっとこの作品の世界観に飲み込まれる。

平野文さんの声が流れだすと同時に思わずぞくぞくっとした感覚になるはずだ
セリフとセリフの間に「ナレーション」を挟むことで
少ない尺でキャラクターに感情移入させやすくしており、
新海誠監督の「雰囲気作り」の素晴らしさをこの作品で物凄く感じることが出来る。
短編アニメだからこそ、わずか6分44秒の作品だからこそ
「雰囲気」作りによる世界観とキャラクターの描写が大事なんだということを
実感させられるほど飲み込まれる雰囲気作りだ。

そして世界観。
少し未来の日本を舞台にした作品の世界観はさりげない描写で「未来感」を演出している。
ヒロインが乗っている車、通話システム、玄関の鍵、ソーラーパネル、
さりげない部分での未来感の描写が前述した雰囲気の中で何気ない違和感を産んでいる
はっきりいってストーリー的には未来である必要がない。
だが、ストーリー的には必要なくとも作品の世界観、雰囲気作りには必要で
平凡な現代の日本ではなく、少し技術の進歩した日本だからこそ
この作品ならではの不思議な世界観を醸し出している。

更にストーリー。
はっきり言おう、この作品はずるい。
言葉で説明してしまえばあっさりとしたストーリーでしか無い。
だが、圧倒的な雰囲気作りのおかげで「ストレート」なストーリーが突き刺さる。
だれかのまなざしというタイトルの「だれか」の正体、
作品全編をナレーションしていた「だれか」の正体、これが物語の中盤で繋がり
たかが6分44秒の短い作品なのに「涙腺」をあっさりと緩ませて
見終わった後になんともいえない後味を残し、思わず「もう一回見よう」と思ってしまう作品だ

全体的に見て素晴らしい短編アニメだ。
起承転結のすっきりしたストーリーは確かによくある話だ。
だが、そんなよくある話を少し未来の日本を舞台に丁寧に丁寧に描き
思わず自分の子供の頃、飼っていた「ペット」のことを思い出させ
しっかりとした雰囲気作りでほろりと涙を流させる。
大人になった自分が見るからこそ、少し仕事につかれた社会人が見るからこそ
この「何気ない」「よくある」話がぐさりと突き刺さる。

流石、新海誠監督と言わざる得ない。
6分44秒という短い尺の中での雰囲気作りは「新海誠」だからこその描写であり、
余計な肉付けをしないストレートなストーリーを新海誠らしい味付けで見せてくれる。
1時間や2時間の尺を使って感動させる作品を作り上げることは他の監督でも出来るだろう
だが、わずか6分44秒の尺で感動できる作品を作れる監督は少ないはずだ
本当にこの人の作る短編アニメは「面白い」作品だと素直に言えてしまう。

更に平野文さんを選んだ新海誠さんのセンスだろう。
もちろん、他のベテラン声優でも感動できたかもしれない。
だが、この平野文さん独特のなんともいえない声は
色っぽさとは又違う「大人の女性の声」が語りをすることで
作品の世界観と冒頭の引きこまれ方が圧倒的だ。本当に素晴らしい。
個人的に1ファンとして最近お仕事が増えてきて嬉しい限りだ(笑)

現在もYOUTUBEで無料で配信されているのでぜひ見てほしい。
冒頭の10秒で途中で一時停止や見るのをやめようとは思わないはずだ
一気に最後までぜひご覧頂きたい。

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