ほのぼの日常に潜むディストピア「セントールの悩み」レビュー

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評価 ★★★☆☆(43点)全12話

あらすじ 姫こと君原姫乃は、恋に、部活に、勉強に…、ごく平凡な高校生活を送る女子高生。
ただ、違うのは彼女がケンタウロスの形態をしていること。引用 – Wikipedia

ほのぼの日常に潜むディストピア

原作は月刊COMICリュウで連載の漫画作品。
監督は追崎史敏、制作は絵梦。

見出して感じるのは唐突なキスシーンへの驚きだろう。
何の前触れもなく唇のドアップから始まり、
普通の人間ではない特徴のキャラクターの高校生同士のキスシーンが描かれる。
作品の世界観、設定、キャラクター名など一切わからないままの
キスシーンのインパクトはかなり大きい。

描かれている内容は所謂日常アニメだ。
しかし、出て来るキャラクターがかなり多種多様だ。
下半身が馬だったり、翼がはえていたり、天使の輪っかがついていたりと、
ファンタジーの中に出てくる「モンスター」のような特徴を持っているが、
作中で実際に「ケンタウルス」などとの名称は出てこない。

あくまでも「人類」であり、それぞれの人種としての特徴として
下半身が馬だったり蛇だったり角があったりする。
身体能力の差はあれども魔法などのような特殊な能力はない。
あくまでも人類が進化の過程でこうなったという設定だ

ファンタジー世界の日常者というわけではなく、
キャラクターが住む場所も普通に「日本」だ。
だからこそ始まりも普通にキャラクターの文化祭の練習であり、
そこに強い違和感はあり、もう少し説明してほしいと感じる部分はあるものの、
キャラクターたちにとっての「当たり前」の世界観を何の変哲もなく描いており、
徐々に見ている側がキャラクターと世界観に慣れていく過程を楽しめる。

更に「人類」だからこそ差別があった。
平和な日常が描かれる中でかなりの違和感のある描写が見られる。
例えば「国歌斉唱」を生徒が強いられていたり、
平等は人権や生命よりも尊いなどというセリフがあったりと、
いわゆる「管理社会」「ディストピア」的な要素も見え隠れする。

明るいモンスター娘達による日常萌えアニメのような見た目なのに、
そういった「ディストピア」的なドロッとした描写をときおり見せることで、
普通の日常アニメには絶対に感じさせない「何か」をひしひしと感じさせる。
他の日常アニメで「思想矯正所送りになる」なんてセリフは絶対に出てこないだろう。
キャラクターたちにとっては当たり前のような会話だが、
見ている側としてはそのキーワードの強烈さに思わず笑ってしまう。

ただ、そんな面白い世界観なのに妙にテンポが悪い時がある。
セリフとセリフの間に妙な「間」が開くときが多く、ワンテンポ遅い。
1話で2エピソード構成なのだが、それでも尺を持て余している感じが有り、
1話3エピソード構成でもっと詰め込んだほうが良かったのではと思う部分もある。

そのせいで序盤はいまいちピンとこない方も多いかもしれない。
まったりとしたテンポで描かれる異型なキャラクターの日常は
強烈に笑える要素や萌える要素などは少なく、
所々に漂うディストピア感で平和なよう見えて何かを感じさせてしまうため、
他の日常アニメのように頭を空っぽにして楽しめるような感じの作品ではない。

しかし1話、2話、3話、4話と話が進んでくると、
この作品の世界観の面白さが見ている側に伝わってくる。
3話切りしてしまう人が多いとは思うが、
せめて4話くらいまで見てからでも遅くはないだろう。

ただ意外とシモネタが多い。
お風呂などのセクシーシーンやおっぱい、裸などの要素も多く、
自分の性的な部分をコンプクレックスに思っているキャラクターなど、
この手の日常者としてはわりと切り込んでくるタイプの下ネタが多い。
人によってはこの割とダイレクトな下ネタは苦手な人もいるかもしれない。

その下ネタもギャグになってれば笑えるのだがギャグになっていない部分もあり、
あくまでも身体的な特徴の違いキャラクター同士だからこそ生まれる
ストーリーの中での下ネタであり、ギャグではない。
この部分に関しては人によっては微妙に感じてしまう部分だろう。

総評

全体的に見て非常に好みの分かれる作品だ。
見た目はモンスター娘の日常者のように見えるが、
実際に見てみるとモンスター娘ではなくあくまでも皆人間であり、
身体的な特徴が違うだけ、それを差別してしまうと「思想矯正所送り」になる
世界観の中で描かれる日常者は独特な空気感に包まれている。

日常モノの裏側でディストピア的な文化や差別があった歴史のある世界観だからこそ、
それが見え隠れしてしまいシモネタも素直に楽しめず、
日常描写もストレートにほっこりとできない。
日常者なのに公安が出てきたりとちょっとドロッとした何かを感じてしまう。

その反面でその差別要素やディストピアの要素をガッツリと掘り下げるわけでもない。
あくまでも見え隠れする程度あり、深読みすれば色々と深読みできるのだが、
その深み読みするほどの強い魅力があるわけではく、
がっつりとそこに突っ込んだエピソードが有るわけでもない。

キャラクター数も非常に多く、多い割には掘り下げが甘い。
かわいいキャラクターや魅力的なキャラクターはいるのだが、
キャラクター数が多いせいでブレてしまっている部分があり、
結局、何がしたいのかが掴みきれないまま最後まで見てしまう感じの作品だ。

いわゆる萌えアニメの皮をかぶった「質アニメ」のような感じもあり、
ツボにハマるとすごくハマってしまう作品だろうが、
ツボにはまらない人にとってはいつまでもしっくりと来ない感じが続く。
特に9話のようなシリアスな話は日常話が多い中ではかなり異質で、
唐突に挟み込まれるためどう飲み込んでいいか分からずじまいだ。

2クールくらいの尺があればその、しっくりと来ない感じが解消されたかもしれない。
1クールという尺の中で「日常モノ」の枠に収めてしまったのが
好みの分かれる部分としっくりと来ない部分を生んでしまったようにも感じる作品だ。

個人的な感想

個人的には5話くらいからこの作品のやりたい事が見えてきたのだが、
見えてくるだけでやはり最後まで明確な何かを感じず、
モヤモヤっとした何かが残ってしまう作品だった。
原作とアニメではだいぶ削っている部分も有るようで、
その削ってる要素の部分がキチンと描かれると逆にこの
しっくりと来ない感じが解消されたかもしれない。

わりと扱ってるネタがギリギリな作品なだけに、
アニメーションに落とし込む際にマイルドに
仕上げすぎてしまったのではないだろうか。
色々ともったいなさを感じてしまう作品だった。

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