ばらかもん

2016年6月29日

評価/★★★★★(90点)

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都会人が憧れる田舎暮らし。ご都合主義・・・だが、それがいい。

原作は漫画な本作品。
監督は橘正紀、アニメーション制作はキネマシトラス

見出して感じるのは郷愁感だろう。
セミのなく声、人通りが極端に少ない街並み、たてつきの悪い木造建築、広い海
家の中には「トランプ」と食い散らかしたお菓子。
子供の頃に訪れた田舎の家のような懐かしさと、
「夏の匂い」を感じるような描写は自分の中にある郷愁感を刺激されるようだ

そんな田舎に訪れるのは都会生まれ都会育ちの青年。
「書道家」の彼は感情的に暴力行為を働いてしまい
父の命令で頭を冷やすために「五島」に送られるというところからストーリーが始まる

そして現れる悪ガキ(笑)
小学1年生の少女は分かりやすく「田舎の元気いっぱいの無邪気な少女」であり、
都会から来た主人公に興味津々だ。
心の壁、人と人の距離感、そういったものを一切無視し主人公との交流を行っていく。

彼女を演じているのが子役さんであり、9歳の少女だ。
子供故の無垢さから生まれる演技なのかは判断しかねるが、
この作品に欠かせない「プライドの高い主人公」に対する「無邪気な少女」という役を
素晴らしい演技で演じ上げてくれている。

子供特有の少し「耳障り」な甲高い声と彼女演技、
彼女の演技なくしてこの作品の「雰囲気」は生まれなかっただろう
特に終盤の電話のシーンは注目して欲しい
寂しそうな子供の声を子供が演ずる、単純な無垢さではない、ただ喋っているのではない
きっちりとした9歳の子供の「演技力」を感じるはずだ

「なる」という少女の真っ直ぐな純粋さ、子供らしさ。
この作品はその「ストレート」な人との交流を主人公を通して感じることができる
変な建前など無い、変なプライドなど無い、
「人」と「人」の交流を、何もない「田舎」という場所で純粋な「子供」との触れ合いが
ストレートに「面白さ」に変わっている。
時折「9歳」の子供に言わせるには過激な言葉もあるのが
逆にそういう言葉も何の気なしに言う所に子供らしさを感じるのが不思議な所だ(笑)

この作品はジャンル分けするならば「日常系」と呼ばれる作品だ。
だが、昨今の日常系とは違う、美少女動物園な日常系とは全く違う
ほんとうの意味での「日常系」という「日常」の意味を見ている側に説いてくる
都会で仕事に追われストレスを感じた主人公は見ている側に不思議な共感すら感じさせる
立場状況は違えど彼の気持ちと彼が起こした衝動的な行動、
衝動的な行動は視聴者はしないだろうが、そんな行動をするのも分かる。
大人ならば主人公に共感できるはずだ

だからこそ「田舎」という都会とは全く違った環境、人間との触れ合いが
主人公と同じように共感でき、味わうことができる。
ハッキリ言ってしまえば「都会の人が想像する田舎暮らし」でしかない
本当の離島や田舎はこんなにご都合よく優しい雰囲気に包まれているとは限らないだろう
だが、そんなご都合主義な田舎という舞台がご都合主義と分かってはいても
現実とは違うリアルな田舎の描写が主人公と同じように不思議と
「癒される」雰囲気を感じることができ、和やかな気分になる

そして、それだけではない。この作品は唐突に、本当に唐突にギャグをぶちかましてくる
1話で「なる」という少女との交流による笑いもあるのだが、
2話冒頭で「誰?」というキャラクターの「母親」が唐突にボケてくる。
後ろから花瓶でいきなり殴られたようなギャグの入れ方、
そうかと思えばまるで電動チェーンソーのごとく連続でギャグを入れてくる。
ギャグの入れ方とタイミングが非常に絶妙で、何度も笑ってしまう。

ギャグらしいギャグ描写もある。ギャグシーン特有のギャグ的演出もある。
だが、そういったシーンよりも「日常の中の自然なギャグ」が強烈で
1つ1つのギャグの破壊力がすさまじい。

過剰なリアクションや過剰な描写による笑いではなく、
言葉と言葉によるキャラクター同士の会話から生まれる純粋なギャグが本当に面白い。
最初の一言ではわらなくとも、
しつこいくらいに繰り返すことで強引に笑いに変えていたりと
ワンパターンではない「ギャグ要素」が日常描写の中でいい刺激になっている

ギャグも日常もきっちりと1シーン1シーンを「丁寧」に描いている
はっきりいって丁寧であるがゆえにギャグシーンでは「くどさ」すら
生まれているシーンも有るのだが、丁寧にきちんと1シーン1シーンを
「面白くしよう」という制作側の意気込みを感じるほど1シーンごとの描写が丁寧だ
その丁寧さがきっちりと作品としての面白さにつながっている。

そしてシリアス。この作品は「書道家の青年」の再生の物語でもある。
真面目な字、型にはまった字しか書けず、書道会の偉人を衝動で殴ってしまう
そのくせプライドが高いのにメンタルは弱い。
「小野大輔」さんによる演技がいい意味でも悪い意味でもダメ人間らしさと
かっこよさを同居させたキャラクターに仕上げており、
その御蔭でダメ人間だが愛すべき主人公だ。

そんな彼は田舎で字を書き続け、賞に送り続ける。だが、「一位」は取れない。
落ち込み苛立ち、人に当たる。
都会という舞台なら「引きこもり」陰鬱な状況やシーンになってもおかしくはない展開だ
だが「鍵もかからない家」のある田舎という舞台だからこそ、陰鬱にはならない
引きこもっていても勝手に入ってくる住人がいる、
引きこもっていても強引につれ出す住人がいる。
だからこそシリアスな展開が重くならない。

その強引さは「ウザく」もあるのだが、その田舎特有のウザさを
この作品はいい塩梅でそこを「ギャグ」に変えており、
そのウザさを主人公もウザいとは思わずに受け止める。
そのウザさを通して主人公は少しずつ「成長」していく

過程、ストーリーの展開というのが手をつかむようにしっかりと実感できる。
日常系でありながら徐々に「ストーリー」が進んでいるという実感がわく作品だ
日常系は変わらない日常がは日常系の良さもであるが、
同時に少しずつ変わっていくのが日常というジャンルの面白さの1つなのだというのを
この作品で再確認することができるだろう

そして終盤のストーリー展開。
「謝罪」のシーンで思わず涙腺を刺激される作品がいくつあるだろうか
「電話」のシーンで思わず涙腺を刺激される作品がいくつあるだろうか
少し違う日常を描いた後にまたいつもの日常に戻る。
完結してるとはいえない、だが2期がなくてもあっても問題のないストーリーの締め方は
1つの作品として素晴らしい締め方といえるだろう。
最終話の最後の1シーンまで「にやついてしまう」そんな作品だ

全体的に素晴らしい日常系作品だ。
田舎という舞台を最大限に活かし都会人の主人公の成長を少しずつ描く
主人公の回りに「ウザイ」くらいに集ってくるキャラクターの田舎特有の
ウザさと暖かさが混同したキャラクターたちは魅力が溢れており、
そんな純粋なキャラクターたちだからこそ主人公の気持ちが痛いほど伝わり、
その結果、主人公が成長していく様子を暖かく味わうことができる。

書道家というのも素晴らしい設定だ。
主人公が書いた字の素晴らしさが見ている側に素直に伝わる
彼の「感情」が「字」という芸術に痛いほど現れており、
それが見ている側に分かりやすく伝わることで、
より主人公の成長を感じることができる。

欠点らしい欠点といえばご都合主義な田舎という舞台くらいだろう。
本来の田舎ならば決してここまで暖かく優しくはないだろう
主人公にとって都合がよく、都会ぐらいの大人が憧れる田舎の描写だ
「創作物の中の理想郷としての田舎」ではある、
だが、この作品は創作物だ、娯楽だ、アニメだ。

創作物だからこそ、娯楽索引だからこそ、
アニメだからこそ理想の田舎の描写でいいじゃないか
そう思えるほどこの作品は純粋な「面白さ」がある作品だ
主人公も、なるも、田舎に住むキャラクターたちも、
一人1人の描写がきっちりしており、そんな愛すべきキャラクターたちがいるからこそ
理想郷の田舎の雰囲気が心地よく、都合が良くとも許せてしまう。

売り上げ的にも6000枚前後と売れている。
2期の可能性は非常に高い作品ではある、
だが同時に2期をやるなら早くしなければならない
「なる」を演じているのは9歳の少女だ、
どんどん成長してしまい声も変わってしまう。
だからこそ早めに2期をお願いしたい。

個人的に終盤で出てくる「お母さん」が最大のヒロインだった・・・w
1話から最終話まで1シーン1シーンをしっかりと味わい楽しみ、和み、笑い、
そして最後に少しだけ涙腺を刺激され、ほっこりと終わる。
ほんとうに素敵な作品です。ぜひご覧あれ。