評価 ★☆☆☆☆(15点) 全12話
あらすじ 現世で死亡した主人公は、異世界転生する先を自由に選べる空間にたどり着いた。しかし人気の転生先は待ち時間が長いことを女神に告げられた主人公は、転生先として勇者の肋骨を選択する 引用- Wikipedia
アニメじゃない?クリエイター展覧会
原作は小説家になろうで連載していた小説作品。
監督はソエジマヤスフミ、制作はQzil.la × S.o.K。
転生
1話早々、主人公が血を吸うトラックにひかれて、
しかも隕石が落ちてきて死亡するところから始まる。
そんなお約束な始まりから、主人公は
多くの「転生待ち」の魂が集う場所を訪れる。
かなり作画が挑戦的であり、神などの存在がまったく違う絵柄で描かれたりと、
色々なデザインのキャラが混在しており、混沌とした絵面になっている。
主人公の独特のウザさ、シュールなギャグの数々が
かなり「厳しい」感じがある。
ギャグに関しては合う合わないがあるが、
この独特なノリと主人公のお調子者っぷりもあいまって、
1話の段階から好みが分かれそうな感じがある。
不憫な死を迎えた主人公は次の転生先を選ぶ権利がある。
どんな存在にも、どんな役割にもなることができる。
しかし、人気の転生先には待ち時間がある。
いかにもな勇者で5万年、魔王ですら2万年。
満足いかない人生を迎えると、また同じ場所に帰ってきてしまう。
そんな条件で主人公が選ぶのが
「勇者の肋骨」だ。肋骨ゆえに待ち時間は0だ。
勇者の肋骨なら美女になでられるかもしれない、
そんな色欲だけで彼は肋骨の人生を歩むことになる。
肋骨
主人公はあっさりと女神のもとに戻り、肋骨だった人生を語る。
ダイジェストで肋骨だった人生が語られ、
このアニメーションもかなり簡素で枚数も少ない。
肋骨から新しい勇者が生まれたり、肋骨なのにしゃべりだしたりと、
カオスな肋骨人生だ。
こういう「人生でした」と語られるエピソードは特に面白みもなく、
どうでもいい人の「夢の話」を聞いているような気分だ。
カオスでシュールな人生を語り、それを女神が淡々と突っ込む。
1話から「テンプレート」が完成しており、
それゆえに2話以降、完全にマンネリになる。
1話の時点で無表情で見てしまうのだが、
この無表情で見てしまうストーリーが1クールずっと続く。
ヤドカリ
2話でもやってることは同じだ。
異世界でヤドカリになった主人公は勇者になぜか拾われ、
ヤドカリは女神のオプションで最強の武器となり、
海の女神と出会って、リヴァイアサンと戦って、
べにじゃけ師匠と出会ってと、1話とやってることは変わらない。
淡々とダイジェスト的に、他人の夢のようなどうでもいい
人生を聞かされても特に面白くはない。
1話とやってることがほとんど同じであるがゆえに、
滑りまくりなうえにマンネリだ。
主人公がどうでもいい人生を語ってもセリフが頭に入ってこず、
右から左に流れていく印象だ。
1話は肋骨だけでエピソードが作られているが、
2話はヤドカリと魔王城の右扉など、ネタを「詰め込む」ことで
勢いを生み、飽きさせないようにしている。
だが、1話でこの作品の基本構造に飽きてしまっているため、
いくらネタを詰め込んでも無駄な足掻きだ。
別にこのエピソードを見なくてもいいのでは?と思うほど、
物語としての手応えがない。
ポプテピピック
このシュールさやカオスな映像表現は、
ポプテピピックなどを彷彿とさせる部分がある。
だが、似たようなシュールさを感じても、
それが面白さにはつながっていない。
ポプテピピックのシュールさ、カオスさは
きちんと考えられたうえで本気でふざけているからこそ面白い。
何が飛び出してくるのか分からない勢いがあり、
その訳の分からなさ自体が笑いになっている。
だが、本作品はなろう系的なファンタジーの中で
シュールなネタやメタネタを繰り出しているだけに見えてしまう。
表現はカオスなのに、根本にあるギャグそのものが弱い。
この転生先での回想シーンには様々なクリエイターがかかわっており、
isai inc.、かに座、くっきー!、久米田康治、島猛、しんらしんげ、タイプゼロ、大門嵩、滝れーき、土屋萌児、Tichila JUNKLIN、檜垣賢一、ビヨゴンピクチャーズ、益山貴司、Maria Tokareva、山崎紗也夏、ルノアール兄弟と、
有名どころから無名まで様々だ。
クリエイターによって当たりはずれが激しく、
結局この作品でやりたいのは、
ただのクリエイター展覧会なのでは?と感じてしまう。
シュールな映像を
「妙なものに異世界転生した主人公」という設定で、
色々なクリエイターに作ってもらう。
それ以上でもそれ以下でもない。
私はアニメを見たいのであって、展覧会を見たいのではない。
エピソードによっては「アニメ」ではなく仕掛け絵本だったり、
実写映像や実写を加工したものだったりと、もはやアニメじゃない。
本当にただの展覧会だ。
当たりはずれ
クリエイターの展覧会であるがゆえに、当たりはずれも大きい。
個人的には「久米田」ワールド全開な4話は唯一楽しめたが、それくらいだ。
この辺りは個人の好みもあるだろうが、
かなり当たり外れが大きい内容になっている。
一方で、回想シーン以前の主人公と女神の会話はそれなりに面白い。
常にクールな女神と色欲に塗れた主人公、
この二人の絡み自体は悪くない。
むしろ、この二人の会話をもっと見たいと感じるほどだ。
だが、あくまでメインは転生先での人生の回想シーンであるため、
その絡みがそこまでがっつりと描かれるわけでもない。
面白い部分よりも、退屈な転生回想のほうが圧倒的に長い。
原作はわずか1巻しかなく、それをアニメにするうえで
クリエイター展覧会のような構造にしたのかもしれない。
ある意味で挑戦的な作品ではあるものの、
これをアニメと言っていいのか?と疑問に感じてしまう。
毎エピソード、色々なクリエイターによる映像が繰り出され、
それぞれのクリエイターの癖が全開になる。
本来なら毎回違ったテイストを楽しめるはずなのだが、
6話をすぎるころには完全にマンネリで、飽きてしまう。
表現方法が違っても、
結局やっていることは主人公の転生人生をダイジェストで見せることだ。
外側だけを変えても、作品の構造そのものは変わらない。
女神
中盤になると女神の過去が描かれる。
根絶の女神から転生の女神になった経緯、
孤独で忌み嫌われる彼女が主人公との関わり合いで心を開き、変わっていく。
主人公の前世と女神の関係性も明らかになり、
このあたりのストーリーや女神のキャラクター自体は悪くない。
だからこそ惜しい。
女神と主人公の関係性だけをもっとストレートに描いていれば、
私はここまで厳しい評価にはならなかったかもしれない。
だが、あくまでメインは転生回想だ。
色々な映像が繰り出されても、
結局、根本的なギャグセンスが死んでおり、
どんな映像であろうと滑りっぱなしだ。
終盤になると、もう見ることすら拒否したくなる。
飛ばして見てもあまり問題ないエピソードばかりで、
虚無感が漂ってくる。
女神と主人公の幾星霜にもわたる何度もの転生の積み重ねが、
二人の関係性の変化と物語に活きてくるという構造自体は分かる。
笑わない女神を笑わせるため、
主人公が何度も何度も転生を繰り返す。
その積み重ねがあるからこそ、終盤の物語につながっていく。
構造としては分かる。
やりたいことも分かる。
だが、その積み重ねが退屈すぎるのが致命的だ。
1クールではなく全6話くらいのアニメか、
もしくは1話5分くらいの短編アニメのほうが活かしやすかっただろう。
退屈でくどい転生回想を何度も何度も繰り返すのは、
映像表現をいくら変えても強烈な飽きと虚無感が生まれる。
最後の転生
最終話、主人公にとって最後の転生が訪れる。
転生先の神々を怒らせた主人公に
「完璧なファンタジー」世界が用意される。
未練を残さずに死ねば女神のもとに戻ることはない。
最終話で主人公の過去も明らかになり、
この作品でやりたかった結末へとたどり着く。
女神が笑えるように転生を繰り返していた。
それは分かるのだが、
笑えるはずの転生が笑えないのが最大の問題点だ。
肋骨という出落ちネタでこの作品の笑いの要素は使い尽くし、
笑えるように転生していたはずなのに、
滑り散らかしているだけだ。
最終話まで見ることで、
なぜ主人公が転生を繰り返していたのか、
なぜ女神との会話が描かれていたのかは理解できる。
だが、そこにたどり着くまでの11話があまりにも長い。
作品としてのコンセプト、
物語としてやりたいことは分かるのだが、
それを貫き通すだけの「面白さ」がない作品だった。
総評:なんなんですか?なんなんですか?
全体的に見て、やりたいことは分かるが、
そのやりたいことにセンスがついていっていない作品だった。
転生で勇者の肋骨になるという出落ちでギャグセンスが使い尽くされ、
2話以降は尽きたギャグセンスでなんとか色々と繰り出しているものの、
所詮は絞りカスに過ぎず、笑えるネタではない。
そんな笑えないネタを様々なクリエイターが必死にあの手この手、
手を変え品を変え「面白い映像」にしようとしている。
だが、根本にあるネタが滑ってしまっているため、
どう料理しようと、腐った素材ではどうしようもない。
その料理の手法、映像表現も
クリエイターごとに色々と違いはある。
実写、仕掛け絵本、独特なアニメーション、
毎回違う映像が繰り出される。
だが、それを見れば見るほど
「果たしてこれはアニメといえるのか?」という疑問が強くなり、
中盤以降は完全にこの作品に飽きてしまった。
元々が素人の大喜利をもとに作られている作品であり、
素人ゆえの限界がある。
これが参加してるクリエイター自身の大喜利の答えなら
もう少し違ったかもしれない。
一方で、女神と主人公の関係性、
何度も転生を繰り返してきた理由、
最終話で明らかになる物語そのものは決して悪くない。
1話1話の尺を短くするか、
それとも全6話くらいなら作品のコンセプトを
もっとストレートに伝えられたかもしれない。
1話30分全12話という尺を
完全に持て余してしまっている作品だった。
個人的な感想:挑戦的
挑戦的な作品ではあるが、
その挑戦がうまくいっていた感じはない。
監督が毎回変わったり、制作会社が毎回変わったり、
演出やキャラデザが毎回変わったり。
こういう「過去に例」がない挑戦的なことを行う作品はたまにあるが、
それで成功することは稀だ。
多くの人が序盤で切ってしまったのも理解できる作りではあるが、
1話を見た後に3話くらいまで見て、
そのあと11話くらいまで飛ばしても特に問題はない作りになっている。
もし途中で切ってしまった人も11話くらいから見始めれば、
少なくとも制作のスタンス、
作品のコンセプト自体は理解できるはずだ。
だからといって面白くなるわけでもないが、
せめてもう少し1話1話にしっかりとした笑いが欲しかったところだ。
挑戦的な映像を見せたい作品なのか。
女神と主人公の物語を描きたい作品なのか。
シュールなギャグアニメをやりたい作品なのか。
最後まで見ても、
私にはどうにも一つの作品としてまとまっているようには感じられなかった。



