実写映画

謎改変の嵐「リロ&スティッチ」実写化映画レビュー

3.0
実写リロ&スティッチ 実写映画
画像引用元:(C)2024 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
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評価 ★★★☆☆(50点) 全108分

「リロ&スティッチ」特別映像|6月6日(金)劇場公開!

あらすじ 両親を亡くした少女リロと姉のナニ。ひとりでリロを育てようと奮闘するナニだったが、若すぎる彼女は失敗ばかり。離れ離れになってしまいそうな姉妹の前に、見た目はかわいらしいのに、ものすごく暴れん坊な不思議な生き物が現れる 引用- Wikipedia

謎改変の嵐

本作品はリロ&スティッチの実写映画作品。
監督はディーン・フライシャー・キャンプ、
制作はウォルト・ディズニー・ピクチャーズ、ライドバック

テンポ

乱して感じるのはテンポの良さだ。
アニメ版は85分、実写映画は108分と
20分ほど実写映画のほうが尺が長いのだが、
様々な改編により結果的に序盤のテンポの良さが生まれている。

スティッチという生物が悪の天才科学者によって生み出され、
銀河連邦によって追放されることが決まる。
だが、機転を利かせて逃げ出したスティッチは
地球のハワイへと漂着することになる。

この流れ自体は変わらないのだが、
今作には「ガンドゥ大尉」がいない。
アニメ版を見たかたならばサメのような姿のキャラを憶えてるはずだ。
そんなガンドゥがカットされているおかげもあって、
序盤の物語のテンポ感がかなり上がっている。

このように今作は様々な部分で改編、追加されており、
その解釈が好みが分かれる部分になってしまっている。

スティッチ

実写版のキャスト自体は非常に素晴らしく、
リロを演じた子役の少女は今作が映画初出演のようだが、
それを感じさせない子供らしさと、あのリロがそのまま
実写化したような姿は素晴らしい再限度だ。

ここ最近のディズニーの実写化は再限度という意味では厳しい部分があった。
リトルマーメイドは黒人になり、白雪姫は性格の悪さがにじみ出てしまい、
あのリトルマーメイドや、あの白雪姫ではなかった。
だからこそ、ありのままのリロが実写化されていることに
感動すら覚えてしまう。

スティッチもCGで描かれているものの、
CGで描かれているからこそ、より「毛並み」のもふもふ感を
感じさせる描写になっており、あのスティッチが
画面狭しと暴れまわる姿はアニメ版と変わりがない。
アニメとはまた違った雰囲気のCGだからこそのかわいさが感じられる。

ジャンバ博士とプリークリー

これも今作の改編の1つだが、スティッチを追ってやってくる
二人が今作ではほぼ作中で「人間の姿」になっている。
アニメ版ではあくまでもエイリアンとしての姿を保ちながら、
女装をしていたりしたのを憶えているはずだ。

しかし、今作ではそういったことをしていない。
実写化においてのリアルさを求めたが故の結果であるのは
わかるのだが、二人の姿がほぼ人間の姿で登場するシーンが
あまりにも多く、それだけならまだしも、
ジャン場博士の場合は「キャラクター」そのものも変わっている。

詳細は後述するものの、このあたりの違和感は強烈だ。

ナ二

今作においてストーリーの「大まかな部分」に変更はない。
リロがスティッチと出会い、成長し、いろいろとあったなかで
姉と離れ離れになりそうになるものの、
最終的にはスティッチとともに家族のままでいられるようになる。
この大まかな流れ自体は変わっていないが、細かい部分での変化はすさまじい。

得に今作におけるナニの掘り下げはすさまじい。
両親を失い、リロという年の離れた妹を懸命に養い育てている、
それ自体は変わっていないが、彼女は頭がよく、
海洋生物をまなぶために大学に行く夢があったという設定がたされている。

私の記憶する限りアニメ映画ではそんな設定はなかった。
この設定が足されたことで、
「両親を失ったことで幼い妹の面倒を見て自分を犠牲にする姉」という
いわゆる「ヤングケアラー」要素が足されている。

今作で描きたいところはそこだ。
リロ&スティッチは家族というものを描いている作品だった、
アニメではそこにリロや宇宙人が加わり、
一緒に楽しそうに生活して終わる。

しかし、実写映画ではその「家族」の概念そのものが変わっている。
家族はいつも一緒にいるべき、それはある意味、前時代的な考えだ。
離れていても家族は家族であり、心はつながっている。
そういったことを描きたいのは非常にわかる。

このナニ関連のストーリーは個人的には良改編に感じる部分だ。
自らの人生を犠牲にしてリロを必死に育てる彼女、
そんなナニに対する救いでもある。
その救いの象徴が「となりのおばさん」だ。

トゥトゥという隣のおばさんはアニメにはいなかったキャラであり、
彼女が実写で登場していることでナニの負担が減っている。
ナニが仕事の間にトゥトゥに預けていたり、
リロとスティッチが初めて会う場所にもナニではなく
トゥトゥが共に行っている。

アニメ版では負担が大きすぎたナニの設定を、
となりのおばさんを追加することで緩和し、
そして最終的にはナニは家族を保ちつつも、
自身の夢を追いかけることもできるようになっている。

これに関しては謎改編ではなく、納得のできる改編だ。
ただ、がっつりと掘り下げてしまったからこそ、
ナニのキャラクターが強くなってしまい、
リロ&スティッチというよりはナニ&リロ&スティッチになってしまっている。

コブラバブルス

問題はここからだ。コブラバブルスはアニメでは福祉局の職員として
ナニと出会い、リロと序盤から触れ合っている。
最終的に彼は元CIAであり、エイリアンとの交渉も経験済みだった。
彼の設定、彼自身がアニメにおけるオチにもなっていた。

しかし、実写映画では元CIAではなく、現CIAとして
未確認生命体を捜索している。
スティッチが危険な生物かを調査し、
そのために福祉局に潜入したという設定になっており、
映画のオチにもかかわってはこない。

彼がかつて銀が連邦と交渉し、地球を救ったという過去自体が
映画ではまるっとなくなってしまっており、
キャラクターとしてかなり弱くなってしまっている。
この改編に関してはあまりにも謎だ。

福祉局の正規職員として女性職員が
もともとはコブラバブルスがやっていたシーンをやっており、
福祉局の部分をリアルにするために女性にし、
ヤングケアラーに対するケアなども描きたかったのはわかる。

ジャンバとプリークリーもそうだが、
リアルにするための改編などはわかるものの、
その改編がいまいちの見込みにくい。
極めつけは終盤の展開だ。

ジャンバ博士

アニメでは悪い奴、ヴィランとして「ガンドゥ大尉」がいたのだが、
今作にはガンドゥ大尉はいない。
ならば誰がヴィランになるのか…ジャンバ博士だ。

これに関しては相当頭をひねってしまった。
アニメ版を見ている人ならばおわかりのとおり、
ジャンバ博士はマッドサイエンティストであり、
悪の科学者ではあるものの、アニメ版では最終的にスティッチに協力し、
彼らの家族となる。

そんなキャラクターが大幅に改変されてしまい、
ジャンバ が明確なヴィランとして最後まで
ガンドゥ大尉の代わりにスティッチとリロと敵対し、
そのままつかまって終わる。

このラストに関しては解釈がわかれるところだろう。
アニメ版におけるヴィランを削った結果、
本来はヴィランではなかったはずのキャラが
実写映画ではヴィランにされてしまうというのは
あまりの見込めないものがある。

実写化に伴ってよい改編もあるものの、
謎な改編や違和感のある改編も多く、
見終わった後にどうにもすっきりとしない感じが残る作品だった。

総評:アニメ版を見てないなら100点の映画、見てると…

全体的に見て、アニメ版を見てるかどうかでずいぶん印象が変わるはずだ。
アニメ版を見ずにこの実写映画を見れば、改編部分が一切気にならず、
起承転結すっきりとした物語が紡がれており、
リロ&スティッチという作品らしいオハナ(家族)というテーマを
現代的に描いている作品になっている。

スティッチもかわいらしく描かれており、キャストも魅力的だ。
両親を亡くした姉妹が互いに依存する家族ではなく、
互いを尊重し、支えあうスティッチとともに家族になる。
その物語がまっすぐに描かれており、スティッチの終盤の
「アロハ」も思わず涙腺が刺激されてしまいそうになる。

しかし、その反面、アニメ版を見てると改編の嵐が気になるはずだ。
20年前以上のアニメの実写化映画ということで
変えなければならない部分も多かったことはわかる、
ナニの改編や掘り下げなどは納得のいく部分だ。

ただ、それ以外の部分は呑み込みがたく、
ナニの掘り下げに夢中になるあまり、ほかのキャラが薄くなってしまったり、
もともとはヴィランではなかったキャラが、
ヴィランにさせられてしまっているのはとんでもない改編だ。

このあたりの改編部分をどう呑み込むのかによって
評価が大きく変わる作品だろう。

個人的な感想:醜いアヒルの子

個人的にはスティッチが醜いアヒルの子を読むシーンがないのが
残念なところだ。
見終わった後に改めて頭の中でかみ砕こうとすると、
どうしても細かいシーンが気になって仕方くなってしまう。

あのシーンがない、このシーンもない。
なんでこのキャラが削られて、このキャラはこんなことになってるんだ。
そういう解釈違いが起きてしまう作品でもある。
面倒くさいオタクが大量発生しそうな作品だ(笑)

1本の映画としての完成度は高いのだが、
1本の実写化映画としてみると首をかしげてしまうという
不思議な作品だった。

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