ファンタジー

バカの極み「勘違いの工房主~英雄パーティの元雑用係が、実は戦闘以外がSSSランクだったというよくある話~」レビュー

1.0
勘違いの工房主~英雄パーティの元雑用係が、実は戦闘以外がSSSランクだったというよくある話~ ファンタジー
画像引用元:©2025時野洋輔・アルファポリス/勘違いの工房主製作委員会
スポンサーリンク

評価 ★☆☆☆☆(19点) 全12話

TVアニメ『勘違いの工房主~英雄パーティの元雑用係が、実は戦闘以外がSSSランクだったというよくある話~』第2弾PV【2025年4月放送開始】

あらすじ 英雄パーティで雑用係として働く心優しい少年・クルトは、ある日突然「役立たずだから」とパーティを追い出されてしまった。さらに、戦闘に関するあらゆる適性が最低ランクだと判明引用- Wikipedia

バカの極み

原作はアルファポリスで連載中の作品。
監督は石井久志、制作EMTスクエアード

追放

1話冒頭、主人公はSSランクのパーティーから追放されてしまう。
英雄と呼ばれるほどのパーティーに主人公は所属していたが、
主人公は戦闘では全くに役に立たない。
殴られ、蹴られ、けなされ、彼は追放されることになる。

よくあるやつだ。
なろう系で言えば追放系といわれるジャンルに値し、
正当な評価を受けなかった主人公が追放されることで
正当な評価を受け、元のパーティーは主人公を追放したことで
崩壊し、ざまぁな展開になる。

もう1万回くらいは見てきた追放系ではあるが、
この作品も類に漏れずであり、テンプレ的だ。
特徴的なのは「適性検査」というものがこの作品には有り、
検査を受けた人にどんな適性があるのかが分かる。

主人公には「戦闘系」の適性は一切ない。
技術や職業系の適性を検査しようとするものの、
技師がおらず、1週間後になってしまう。
とりあえずの食い扶持を稼ぐために彼は城壁の修理の仕事をすることになる。

たった3時間で!?

主人公には戦闘系の適性はない、だがそれ以外はある。
主人公がいざ城壁の補修をしようものなら、
他の人が何人も何週間もかけてやるような作業を3日で終わらせてしまう。

「お前の技術レベルはSSかSSSランクだ!」

と言われるものの、主人公は自分が使えないから追い出さす
言い訳としてそんな事を言うんだと勘違いしてしまう。
この作品はいわゆる「無自覚」系だ。

主人公自身が自らの力を自覚しておらず、
色々ととんでもないことをするものの、それでも自覚せず、
周囲の評価だけが上がっていく。

その無自覚っぷりに周囲が突っ込むんだりするのが
この手の作品の面白さであり、似たような作品だと
「たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語」や、
「俺は全てを【パリイ】する〜逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい〜」などがある。

この手の作品の場合はどう主人公を無自覚のままで居させるのか、
アンジャッシュ的なすれ違いを生むのが重要でもある。、

主人公はいわゆるショタ系であり、子どものような見た目をしている。
そんな主人公は「年上のお姉さん」たちと知り合い、
年上のお姉さんたちは主人公の強さに驚愕する。

基本的にはこの流れの繰り返しだ。

常識

主人公には常識もない。誰もしらないような村生まれだからこそなのか、
本来はありえないことを、普通はできないことや時間がかかることを
あっというまにやってしまう。
自分が採掘した鉱石や、加工した鉱石が「高価」なもので売れるとは知らず、
自分がどれだけすごいことをやったのかということを自覚できない。

たった1個で金貨10枚で売れるような魔法石をあっという間に作り出し、
大量生産までしてしまう。
それを知り合ったお姉さんが知り合いの店で売るのだが、
もはや国が保護すべきレベルの人材なのが主人公だ。

そんな彼の凄さを「王都直属の冒険者」が口外を禁止してしまう。
彼を守るためなのは分かるものの、
余計に主人公は自らの凄さを自覚しない。

主人公自身も国の保護、貴族待遇で主人公を迎えるという提案を聞いても
「僕なんかにそんな役職は務まるとは思えない…」と
あっさり断ってしまう。

主人公の田舎では「ミスリル」がクズ石であり、
伝説の鉱石である「オルハリコン」も結構見つかる石だ。
そういった謙虚さと常識の無さ、周囲の配慮ゆえに
主人公が自らの強さを自覚しない。

主人公がすごいことをやり、年上女性キャラが驚き、
主人公はすっとぼけたように自らの凄さを自覚しない。
1話からずっとこのパターンで、そこに特に面白みはない。

ちなみに主人公が居たパーティーもあっさり崩壊している。

はいはい…

主人公すげぇ!をやりたいのは分かるのだが、
やってることがあまりにもバカバカしい。
鉱石掘りを手伝ったらミスリルやオルハリコンを大量ゲット、
掘りすぎた結果、隣町までの坑道を作ってしまって大儲けしたり、
知り合いに言われてバイトをしに着た工房で呪いを受けた少女と出会う。

少女が受けた呪いは誰も解けないような呪いだ。
そんな少女が主人公が作ったおかゆを食べると呪いが解ける(苦笑)
しかも、その少女は実は王女様だ。
主人公の凄さを表現するための盛り上げ方があまりにも馬鹿馬鹿しく、
見ていて面白みを感じない。

話が進めば進むほどハーレム要員も増えていくが、
特にヒロインたちにこれという魅力があるというわけでもない。
そんなヒロインの一人である王女様をたすけたことで国に関わる作戦に
主人公は何も白地に巻き込まれていってしまう。

主人公だけが何も知らない、知らされずにことが進行していく。
ちょっとここまで主人公に色々なことを隠そうとする周囲の動きのせいで
主人公がかわいそうになってくる。

工房主

主人公自身も自覚しない常識知らずという問題点はあれど、
序盤は働く口を見つけたと思えば、すぐに追い出されたり、
店が休業したりしてしまう。彼に残ったのはわずかな現金だ。
彼が稼いだ大金は、大金であるがゆえに彼の口座に振り込まれているのだが、
それを知らず、毎日ひもじい生活をしている。

またなにかやってしまったのかと後悔する主人公が
本当に可愛そうだ。彼に問題があるとすれば自身の力を自覚していないことだが、
そうしないように周りが動いてしまっているがゆえの部分もある。

主人公が自らの戦闘適性外の適性の検査を受けても、
本当の結果は主人公には伝えられず秘匿されてしまう。
ずっと彼自身が何も知らない。かわいそうだ。

王女の身を守り、国の陰謀を暴くために、
主人公は主人公自身も知らぬ間に「工房主」という
特別な役職に就かされてしまう。
自分自身はその工房主の下で働いていると思っており、
本当に何も知らされていない。

終盤、主人公の村が特別な村であることが明らかになるのだが、
設定的に同じ無自覚系の
「たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語」 を
彷彿としてしまい個性を感じない。

戦闘

主人公には戦闘適正と呼ばれるものがなく、スライムでさえ倒せない。
だが、アイアンゴーレムは倒せる(苦笑)
主人公にとってアイアンゴーレムは「アイアン」、鉱石であり、
採掘作業であり戦闘ではないという解釈だからだ。
なるほどなとは思うものの、それが面白さにはならない。

戦闘シーンもEMTスクエアードらしく止め絵の連続であり、
見応えというものはない。
1話こそ気合が入っていたが、中盤からの戦闘シーンは
止め絵自体のクォリティも低く、アニメーションとしての魅力はない。

作画崩壊こそしないものの、作画のクォリティは高くない。
逆に声優だけが無駄に豪華であり、
小松未可子、瀬戸麻沙美、田中美海、竹達彩奈、石川界人、江口拓也、金元寿子、田中理恵 、釘宮理恵etc…と最近のアニメといよりは
10年くらい前の深夜アニメのメインキャストが勢揃いしている印象だ。

子育て

中盤から唐突に子育てパートに入る。
主人公がもらった卵は実は魔族の子供であり、卵がかえると
3歳児くらいの女の子で主人公をパパと呼ぶ。
そんな子供を中心に、終盤には主人公が過去に出会っていた魔族を
助けるという流れになる。

同時にヒロインと主人公の関係も掘り下げている。
正当な評価を受けなかった主人公、祭りすら楽しむ余裕がなかった主人公が
自身の力を理解し、自分自身を好きになってくれるものに出会ったことで
変化していく、その変化と成長自体は納得できる。

だが、主人公とメインキャラの関係性が深まるほどに、
主人公にひたすら主人公自身の実力を偽り、
主人公の立場も本来は工房主なのに、わざわざ幻影魔法で代役をたててまで、
彼自身の役割、本当の仕事すら彼は知らぬままなことが
余計に可哀想に見えてくる。

馬鹿

終盤、主人公が子供の頃に会った幼馴染の魔族を助け出すことに成功する。
魔族は辺境伯に囚われており、そんな辺境伯には娘がいる。
だが、その娘はどんどん老化する病にかかっており、
世間的には死んだことにされている。

ちなみに主人公がたすけた魔族は主人公が子供の頃に作った
薬のせいで「不老」になっている。
もうここまできたら、誰でも魔族を捉えていた理由が分かるはずだ。
愛する娘を助けるために不老の魔族を捉え研究していた、それだけだ。

しかし主人公は人の話も聞かず、自らの推論を堂々と発表する。

「あなたは間違っています!娘の成長を悲しんで、
成長しない魔族を愛するなんて!間違っているんです!
成長していく娘の姿を見ることが耐えきれず、
成長ではなく老いと捉えてしまうなんて!
娘さんは嘆いて反抗期になり、おばあさんになる薬を飲んでしまった!
あなたがロリコンさんだからですよね!」

馬鹿の極みだ。
主人公に色々なことを自覚させないためのすれ違いはわかるが、
この終盤の主人公の理解度はただただ「馬鹿」なだけであり、
少しだけ不憫に感じていた主人公の立場ですら、どうでもよくなってしまった。

終盤の展開は特にギャグテイストがかなり強いのだが、
序盤の主人公を追放するシーンだったりの
暴力表現などのシリアスとのアンバランスさも気になり、
最後までこの作品の面白さを見出すことができずに
終わってしまう作品だった。

総評:またしても何も知らない主人公

全体的に見て非常に微妙な作品だ。
声優がまるで10年前の深夜アニメのメインキャストのような
人ばかりな豪華なキャストというのは評価したいものの、
そんな声優の力を使ってもキャラクターの魅力を感じきれない。

無自覚系で追放系という、
なろう系作品ではあるあるな要素を掛け合わせたにすぎず、
特にそこに新鮮味を見出すこともできず、
無自覚系だから過去その面白さも、追放系だからこその面白さも感じない。

主人公は1話から最終話まで無自覚のままだ。
彼が特殊な村の出身で常識知らずなのは仕方ないが、
そんな彼自身の力を秘匿しようとする存在も多く、
彼のためなのかもしれないが、彼だけがずっと何も知らない。

中盤になるとそれがかわいそうにも見えてくるのだが、
終盤にはそれとは関係ないところで
主人公のバカっぷりが発揮し、もういいやとなってしまう作品だった。

個人的な感想:シリアスとギャグ

序盤は追放系ということでシリアスな部分もあるのだが、
最終話は完全にギャグだ。
主人公が焼いた硬いパンで強い敵ふせぐという展開など、
もう少しこのあたりのギャグに最初から割り切ってくれれば
楽しめたかもしれないが、中途半端になってしまっている。

主人公すごい!という展開のするシーンにしても
ちょっと展開があまりにも浅すぎてついていけず、
最後まで面白さをつかみきれずに終わってしまった。

アニメ自体はコミカライズの7巻までやったようで、
かなりテンポよくやったようだが、
その分、細かい描写が抜け落ちてしまったのかもしれない。
作画も崩壊こそしないものの、よくもなく、内容も薄い。
アルファポリスらしい作品だった。

「勘違いの工房主~英雄パーティの元雑用係が、実は戦闘以外がSSSランクだったというよくある話~」に似てるアニメレビュー

「勘違いの工房主~英雄パーティの元雑用係が、実は戦闘以外がSSSランクだったというよくある話~」は面白い?つまらない?