純潔のマリア」

2016年6月29日

評価/★★★★★(81点)

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これは魔女が妊娠するまでの1クールである(笑)

原作はgoodアフタヌーンで連載していた漫画作品、
もやしもんなどで有名な石川雅之による作品だ
監督はコードギアスなどの谷口悟朗、制作はProduction I.G

見出して感じるのは独特の雰囲気だ。いや、独特という言葉は訂正しよう。
この作品は「懐かしさ」を感じる作品だ。
90年台に多く作られた「ファンタジーラノベ」、
最近のファンタジーラノベとは違う王道の剣と魔法の世界、
そんな少し懐かしいアニメの世界観を醸し出している。

大きく違うのは「異世界」や「ファンタジー」な世界ではなく、
舞台は「戦争絶えぬ中世・百年戦争中のフランス」だ
魔女狩りなどが行われていたフランスという舞台に
本当に「魔女」が存在し、魔女が使う「魔法」が存在する

きちんとした「舞台設定」を下地に「世界観」を作り上げており、
ファンタジーなのにリアルな中世のフランスの描写を徹底することで
懐かしのファンタジーラノベのような雰因気を醸し出しつつ、
独特なリアリティを感じさせる。
この作品ならではのオリジナリティのある「空気」ができている作品だ

そんな雰囲気の中でこの作品のストーリーはどっしりと重い
「戦争」だ。
主人公である「マリア」のキャラ描写を丁寧に描きつつも、
同時にマリアに関わっていた人間が「戦争」に赴く。

ファンタジーの世界でありながら「魔女」は戦争には直接参加しない。
人間同士の争いが人間同士で行われる
天界の掟において天使や魔女は直接、戦への介入はしてはならない。
そんな掟があるにもかからず、主人公であるマリアは
自らが関わった人間のために、戦が嫌いが故に直接介入する。

文章で書くと非常に固いストーリーに見えてしまうだろう。
だが、同時にこの作品は物凄くエロい(笑)
直接的な描写はない。
セクシーシーンといえるのはヒロインたちの裸の描写くらいだが、
登場人物たちの言葉で固いはずのストーリーが物凄く緩くなる。

「処女」「口で」「サキュバス」「夜な夜な」「股に指」などなど
登場人物たちの間で交わされるセリフから「想像」できる状況や
シーンなどが物凄く直接的なエロだ。
魔女も「サキュバス」を兵士の元へ送り戦意喪失させることで
戦を止めようとしている始末だ(苦笑)

直接的な描写はすくないのに、描写されていない部分では
物凄くセクシーなことが行われており、それがセリフから想像ができる
表の戦争という描写、裏の描かれないエロ描写のギャップが激しく
それが強い笑いになっており、固く重いストーリーが重くなり過ぎない

そして主人公のマリア。
魔女でありながら、裸で寝るような少女でありながら、
聖母と同じく処女だ(苦笑)それだけでなく、「性知識」もあまりない。
それなのに知り合いの魔女や自分のサキュバスなどは
セクシーなことをしていたり、セクシーな言葉を会話の中で使う。
だが、「経験」がないゆえに伝わらない、伝わらないから勘違いや疑問、
興味を覚える(笑)

ウブで純潔な「マリア」という主人公が物凄く可愛らしく、
愛くるしい主人公だからこそ面白い。
だが、そんな下ネタだらけのギャグと可愛らしい主人公なのに
世界は緊迫した戦争状態だ

天界の掟に歯向かいながらも戦争を止めるマリア、
人間はそんな天界に祈りを捧げつつも天界のものは人間には手を貸さない
それは「世の理」であり、マリアの介入は秩序を乱しているだけだと。
マリアは魔女でありながら天界ものものでありながら、
人間と同じような感情で人間同士の戦いを止めたいと願う。

しっかりと愛着を持ってしまった主人公だからこそ、
彼女の「行動や理念」に共感を抱く。
この作品で描いていることは物凄く深い
人が神に頼り祈りを捧げる、だが、なぜその祈りを神は聞かないのか
そういった「宗教」的な要素が非常に強いのだが、
その「宗教」や神、天使、魔女に対する設定がきちんと出来ているからこそ
その設定の上にある「ストーリー」が素直に面白い。

シリアスとギャグのバランスも絶妙で、
物凄くシリアスな雰囲気からあっさりとギャグになる
堅苦しい雰囲気と明るい雰囲気、セクシーな雰囲気、
この3つの空気感を作品の中でめまぐるしく変化させることで
ストーリーがダレず、メリハリが生まれている

ストーリーが進むと「マリア」に条件が付けられてしまう。
処女を失うと力を失い人間になってしまう、
人前で力を使うと天に帰されてしまう。
この2つの条件付けのおかげで中盤からのストーリーがより盛り上がる。

人間に好意を持ってしまったがゆえに人間としての幸福を手に入れようとすれば
魔女としての力は失ってしまう。
戦争を止めようと人前で堂々と力を使ってしまえば
天界に帰されてしまう。
そんな状況の中で彼女はどうやって人を救い、どうやって戦争を止めるのか

序盤の段階できちんと主人公を掘り下げ、
世界観を感じさせ、練りこまれた設定をストーリーの中で自然に見せる
そして中盤になり「作品の行き着く先」が見えることで
その終着地点までどうやって、どのように向かっていくのかという
「ストーリー」という大事な部分を思う存分に楽しめる

そして、この作品はその終着点に行き着く。
全12話という尺でこの作品はきっちりと「完結」している
主人公が行動し、悩み、解決し、それに回りのキャラクターが影響を受け行動する。
物語の基本とも言えるべき部分を丁寧に作りこみ、
物語が最終話できっちりと完結する。
久しぶりに「1つの作品」を見終わった充実感を味わえる作品だ

全体的に見て、この作品は作りこまれた設定と世界観による作品だ
勢いだけ、思いつきだけで進む作品が多い中で
この作品はきちんと「練りこまれた」ストーリーを描写し、
その練りこまれたストーリーの中だからこそ「キャラクター」が生きてくる
そんな重厚な内容に反して軽すぎる下ネタをいれることで
序盤の、この作品に対するとっつきにくさをなくしており、
シモネタがあるからこそキャラクターにも愛着がわきやすくなる。

ただ、その反面ですぐにシモネタに走ってしまうパターンが多い。
その下ネタがこの作品にいい刺激を与えてはいるものの、
逆にシモネタ率の高さは欠点にもなってしまっている。
終盤になると、そのシモネタはなくなるものの
シモネタが嫌いな人にとっては楽しみづらい部分もあるだろう

だが、その部分を除けばこの作品の完成度は高い。
若干「作画」が不安定な時があるのは残念ではあるものの
魅せるべきシーンでの作画はきっちりとしており、
特に「戦争」のシーンや「魔法」を使うシーンなど
他の時の作画が不安定な分、気合が入っており見応えがある。

ある種「宗教批判」にも感じるストーリーではあるものの、
普遍的な「神」の存在を否定しつつ、「神」に従う天界の人間と、
天界に縛られつつも自由に行動する「魔女」たち、そして神を信じる「人間」。
この3つの立場のキャラクターを生々しく如実に動かすことで、
中世のフランスという舞台で「主人公」に
彼氏ができるまでのストーリーを描いている(笑)

ここまでの長文を読んだ方は「え?」と思う人も多いだろう。
だが、全くもってその通りなのだから仕方ない(笑)
終盤、この作品は物凄くシリアスで重いシーンの連続だ
序盤から中盤にあるような下ネタもほとんどない。
だが、終盤も終盤で主人公に彼氏ができることでその雰囲気が消し飛ぶ

愛すべきヒロインであり、愛すべき主人公の「マリア」というキャラクターが
重厚でシリアスなストーリーを明るく弾むように駆けまわり、
悩み、歯向かい、考えぬいて生き生きと行動する。
そして最後には「妊娠」する(笑)

ある種、終盤の展開は「荒唐無稽」ともいえるのだが、
きっちりとした中世フランスの時代設定や宗教観、神話などを
踏まえて上でのストーリー展開だからこそ、その展開が「荒唐無稽」には感じない。
むしろ「あぁ!なるほど、そういう展開できたか!」と妙な納得感すら覚え、
主人公が行き着いた物語の終わりがしっくりとくる。

もはや見ていない人にとっては混乱しまくりな文章だろう。
だが、混乱した勢いでこの作品を是非見て欲しい。
下ネタが嫌いでなければ、熱心な信奉者でなければ、この作品を楽しめるはずだ。

個人的には「ベルナール」という修道院キャラクターが物凄い好きだったのに
最後はあんなことになってしまって物凄く残念だ(笑)