境界の彼方

評価/★☆☆☆☆(17点)

境界の彼方 評価

全12話
監督/石立太一
声優/KENN,種田梨沙,鈴木達央,茅原実里,進藤尚美ほか

あらすじ
ある日、神原秋人は今にも校舎の屋上から飛び降りそうな栗山未来を見つける。それぞれに事情を持つ半妖夢の少年と血に纏わる異界士の少女が出会い、やがて2人は大地主である名瀬家を巻き込んだ事件に関わっていく

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京アニの皮をかぶったラノベアニメ、不愉快です。

原作は鳥居なごむによるライトノベル。
制作は「けいおん!」でお馴染みの京都アニメーションだ

始まって早々、言われなくてもライトノベルであることが分かる。
主人公による自分語り、自分観察から物語が始まるのだが
この語りが小説を読むような説明ゼリフであまり面白いとはいえない。
更に主人公がヒロインに「刺される」という衝撃的なシーンなのに衝撃的に見えない。
演出の力不足を冒頭の3分で実感してしまう。

更にセリフがいちいち回りくどい。
ライトノベルの批判をするわけじゃないが
「ページ数を稼ぐための内容のないセリフのかさ増し」を1セリフ、1セリフから感じる
意味のない言葉の積み重ねはセンスがあれば面白いのだが、
はっきり言ってセンスがなく、ギャグも笑えない。
これはセリフのセンスだけではなく、演出の弱さもある。

演出が弱いためただでさえ笑えないギャグが笑えなく、
ただでさえ遠回しなセリフが余計に遠回しに聞こえる。
更にキャラクターの、いわゆる萌えシーンも演出が弱いため一切萌えない。
「ほら、こういうシーンが萌えるんだろ」と言われているのが分かりやすい萌えシーンを
淡々と描写してしまっているため、せっかくの京都アニメーションの作画も生きてこない。
最近の京アニで感じる「キャラの可愛さ」を序盤では感じない。

更にライトノベルらしさ全開の設定。
これがわかりやすい設定ならいいのだが、設定の内容がいまいちよくわからない状態で
主人公がなぜか毎日のようにヒロインに刺されて、主人公は不死身のため生きている。
ヒロインがなぜそこまで主人公を殺したいのか、
何度も殺されてるのに普通に一緒に食事をしている不自然さなど
「飲み込めない」設定をさらっと何気なく説明して勝手にストーリーを進める。

もう少し丁寧に説明するようなシーンがあれば飲み込めるような設定なのに
回りくどいセリフとテンポの悪いストーリーのせいでわかりづらくしている。
簡単にいえばセリフが頭に入ってないままストーリーが進んでいるような感覚だ。
1話が30分なのに1時間に感じるような冗長さまで感じる

戦闘シーンも確かに作画の良さはある。だが、それだけだ。
最近のありがちな「ただ早く動かすだけ」「ただカメラをぐるぐる回すだけ」の
早いだけの戦闘シーンで戦闘アクションの面白さを全然感じない。
もっと別のキャラデザなら同じ動きでもワクワクする戦闘シーンになったかもしれないが、
京アニお馴染みのキャラクターデザインと高速戦闘というのが合っておらず
一言で言えば「戦闘の圧」がない、速い動きで見せかけの迫力だけで薄っぺらい戦闘シーンだ。
作画の質の良さに頼りきってしまっている。

更に設定の練り込みの浅さ。
ヒロインは命が奪うのが怖いと妖夢を殺すのをためらったりするのだが、
その前に主人公のことを何度も殺そうとしているという意味不明さ、
そもそも「妖夢」がどんな存在なのかが「ふわっ」っとしかわからないのに、
「知っている」前提のようなストーリーの進め方をしていたりと
別に謎でもなんでもないはずの「妖夢」の設定が不足しているため序盤から物語にいまいち入り込めない。

主人公の設定も半妖で不死身という設定は分かるのだが、色々な事情を知っている状態なので
何も知らない見ている側に説明することがない。
そのため序盤から中盤まで主人公に感情移入できない。

ヒロインも殺すのが怖いと言っておきながら主人公を何度も殺そうとする矛盾や
「不愉快です」という狙ったセリフではあるものの外れている決まりゼリフ、
眼鏡っこでドジという萌え設定を演出不足のせいで生かしきれていないなど
物語のメインであるはずの主人公とヒロインに魅力を感じず、
ストーリーが気にならないという致命的な欠点が生まれている

主人公がヒロインに刺されても食事をおごったり、お金を与えたり、部活に誘ったりと
なぜそこまで固執するのかが納得しきれずに固執したストーリー展開をしたりするため、
見ている側が常に傍観者で置いてけぼりだ。

そしてギャグシーンの滑っている原因でもある声優。
女性声優に関しては好みの問題だが、
主人公である「神原 秋人」を演じているKENNの演技というより声質の問題だと思うがツッコミが弱い。
ハイテンションに突っ込んでいるのは分かるのだが、テンションだけ高くキレがないため
ツッコミが頭に入ってこず、その突っ込んだギャグやボケも演出のせいで笑えない。
笑えないギャグにキレのないツッコミという最悪の組み合わせのせいでギャグシーンが終始グダグダだ。
本当は化物語のような会話ギャグをしたいのは分かるが、寒いだけだ

しかし、この色々な「説明不足」や「理不尽さ」はわざとであることは分かる。
それが分かるのは10話だ、ちないみにこの作品は1クールで全12話だ
あと2話で終わるところで今まで疑問に思っていた点や理不尽さの説明を10話でようやくする。
正直遅すぎる。

物語の中盤や4話くらいで「説明不足」だった理由やヒロインの理不尽な行動の
理由の解説があれば「序盤のあの台詞や行動はこういうことだったのか」という
伏線回収の面白さを感じられるだろうが、
終盤の10話でようやく解説されても「へーそうだったんだ」というような今更感が強い。
物語の面白さとキャラの魅力による見ている側の「テンション」が下がってしまっており、
ネタバレされてもいまいち盛り上がりきらない。

これが逆に2時間半くらいの映画ならば効果的なストーリー構成だっただろう。
映画の1時間半くらいは理不尽さを感じるが終盤になると序盤の設定やセリフの意味がわかってきて
映画の終盤で盛り上がってくる、コレならば納得だ。
一切笑えないギャグシーンなど余計なシーンを削れば2時間半の映画にすることも可能だろう

だが、1話を1周間ずつ放映されているTVアニメという媒体ではそれが効果的に作用していない。
やりたいことは分かるが、そのやりたいことのために
そこに至るまでの経緯やそこに至るまでの話の面白さやキャラの魅力がなく
グダグダになってしまった感じだ。
謎を10話で解説するというストーリー構成自体は悪くないが、
そこまで一切謎の解説を小出しにしないためそこに至るまでが疲れてしまう

逆に言えば10話からのストーリー展開は面白い。
説明不足な設定をようやく説明してくれたからこそ、ようやく物語の世界観に入り込むことができ
ヒロインがどうなるのかというストーリーが気になる展開になる。
ただそれでも、そんなシリアスな雰囲気の中ででストーリーを展開しているのに余計なギャグを入れる。
最初から最後まで一切笑えないギャグをせっかく盛り上がってきた終盤でも入れてくるため
せっかく面白くなってきたのに余計な要素を入れるな!と正直いらだつ。

更に終盤になっても演出とストーリー構成が駄目過ぎる。
終盤、ヒロインと主人公が離れ離れになりもう2度と会えないという状況になるのだが
いともあっさりと再会してしまう(苦笑)
感動な場面なはずなのにそこに必要な「溜め」がないため盛り上がりきれない。
再開までの展開も本当にスピード解決で状況の変化に見ている側の感情がついていかない。

全体的に見て余計なギャグを全て排除し2時間半でまとめた映画だったら面白かった作品だろう。
しかし、1周間に1話のTVアニメでは序盤から中盤のストーリー展開が淡々としており
その淡々とした中で滑りっぱなしのギャグ、魅力にかけるヒロインと主人公、
10話のために解説や説明をしない設定のせいで入り込めない世界観と
序盤から中盤が見ている側にとっては「置いてけぼり」でストーリーを進めてしまう。

ようやく10話でヒロインの理不尽な言動や設定が説明されても
演出の弱さやストーリー構成のせいで盛り上がりきれない、感動しきれない内容になっており
ストーリーの内容やキャラの設定は把握しても、そこまでの積み重ねが微妙なせいで
終盤の場面の盛り上がりに対し、見ている側のテンションが低くなってしまう。

更にどっちつかずな内容。
シリアスがやりたいのか、ギャグがやりたいのか、萌えがやりたいのか。
この3つが上手く絡み合っているなら序盤から中盤の淡々としたストーリーも
もっと見れたものになり終盤で生きてきただろうが、
その全てがからみ合っておらず、シリアスをやっているときにギャグが邪魔したり、
萌えをやっているときにシリアスを入れて邪魔したりと、3つの要素が見事に絡み合っていない。
だからこそ、キャラクターの魅力を感じない。

ストーリーの内容自体は最後まで見れば「そこまで悪くなかった」といえる内容だ。
しかし、その肝心の内容をやるためのストーリー構成や演出が力不足で
本来なら魅力あるストーリーとキャラクターを殺してしまっている。
ついでにいえば、色々な部分を最終話で投げてしまっており
最後まで回収していない伏線も多すぎる。
原作が終わってないから仕方ないとも言えるのだが、あまりすっきりとしたストーリーとはいえない。
10話でようやく盛り上がったのに、その盛り上がりにふさわしい結末とはいえなかった。

売り上げ次第では2期や劇場版・・・
もしくは売上関係なく続編の可能性も京都アニメーションならあるが、あまり期待できない。
逆に言えば続編ではなく劇場版でリメイクされれば化ける可能性のある作品でもある。
総集編でうまいこと2時間位にまとめればこの作品の面白さはより伝わりやすいだろう。
そういう意味では劇場版があれば見たい作品ではある

余談ではあるが「種田梨沙」さんの演技が終盤になって光った作品だった。
彼女の泣きの演技は思わずウルッと来てしまうほど来るものがあり、
これでストーリー構成がもっとちゃんとしていればヒロインに感情移入でき、
泣くことが出来ただけに本当にもったいない。

本当に個人的な好みだが、最後にヒロインが「死んだまま」だったのなら
もう少し評価は上がったかもしれない(笑)
いや、物語はハッピーエンドのほうが私も好きなのだが、
あの展開で予定調和されても何の感慨も生まれなかった(苦笑)