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「たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語」レビュー

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評価 ★☆☆☆☆(18点) 全12話

あらすじ

とある辺境の村、コンロン村の少年ロイドは、物語で読んだ軍人にあこがれ、王都に行き軍人になることを決心。引用- Wikipedia

無自覚な道化

原作はライトノベルな本作品。
なろう系のようなタイトルだがなろう系ではない。
監督はmigmi、制作はライデンフィルム

田舎者


画像引用元:たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語 1話より
©サトウとシオ・SBクリエイティブ/ラスダン製作委員会

この作品の主人公はいわゆる田舎者だ。
村から出たことがなく、村の外の事は本の中で記されてる事しか知らない。
彼は「本」の中に描かれていた軍人に憧れ王都へと赴くという
ところからストーリーが始まる。

序盤から主人公以外のキャラのテンションが異常に高い。
主人公である「ロイド」自身は自分自身の強さも世間も知らない、
ピュアな青年だ。

そんな彼のピュアさを守るために「村長」がおせっかいを焼き、
そんなおせっかいに村の外にいる魔女はつきあわされる。
いかにその「村長」がすごいのかというのを魔女のテンションと態度で
見ている側に分からせたいものは分かるものの、
過剰なテンションで強引に場を盛り上げようとしている感じが強い。

特に笑えないのにキャラのテンションが異様に高くて空回りしてる感じだ。
例えば主人公が村から帝都まで「走って6日」で来たことを明かす。
本来はうまく汽車をのりついで6日で来れるかこれないかの距離だ。

主人公は「ラストダンジョン」の前にあるような高レベルの魔物ばかりが
周りにいる村の生まれであり、住民はみなそんな魔物を倒せるほどの
力量を持ち合わせている存在だ。主人公以外の大人はみんな彼より強い。
だが、村では最弱の彼も帝都までくれば最強だ。

「汽車ではなく走ってきたんです」
「ちょっとまったぁあ!走って!?」
「はい、でも、普通はもっと早く付きますよね?」
「いやいや!ロイドくんメッチャ体力あるから!」

主人公自身は自分が弱いと思っているが実はとんでもなく強い。
そんな無自覚さを周りのキャラに突っ込ませることで
この作品はギャグにしている。
だからこその主人公以外のハイテンションさだ、
ボケは一人しか居ないのにツッコミだらけだ。

1話のAパートの段階でこの作品のギャグのパターンは出来ており、
そのパターン以外のギャグをこの作品は作れていない。
終始ワンパターンだ。
ハイテンションに慣ればツッコミになると思っており、
見ていると段々と疲労感が溜まってくる。

無自覚


画像引用元:たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語 3話より
©サトウとシオ・SBクリエイティブ/ラスダン製作委員会

1話からかなりストーリーが詰め込まれている。
主人公が上京し魔女の家に居候し、お使いの途中で女の子を助け、
軍人の試験を受ける。どんどんとキャラクターが出てきて、
主人公の凄さにおののく。

話を詰め込みテンポを上げ、キャラにハイテンションに
主人公の無自覚さを突っ込ませることでギャグとしての要素を
強めているものの、特に笑えるということはない。
同じ「無自覚ギャグ」をこれでもかとこすり倒し、
同じパターンでハイテンションに突っ込み続ける。

本当に常にハイテンションにつっこむため、ギャグが非常にくどい。
そもそも1話から「無自覚ギャグ」という根本は変わらないため、
キャラクターのハイテンションさで強引にギャグにし、
笑え!と言われてるような感覚だ。

無自覚だからこそ、そんな彼を利用しようとするものも居る。
あるものは軍事力増強のため、あるものはお金のため、
あるものは自身の恋心のため。

そんな彼らが主人公が居ないところで、
無自覚な主人公に振り回される姿は面白いものの、
主人公が出てくるといつものパターンしか見せてくれない。

いざ主人公が現れれば口からものを吹き出し、
惚れてるキャラは鼻血を吹き出す。
リアクションのパターンすらもワンパターンだ。
まるで裸の王様が本当は服を着ていないことを自覚させないように
国民が祭り上げているような、そんな感覚だ。
主人公が可哀相になってくる。

序盤から主人公があっさり退治し続けてる巨大な虫も
1度目や2度目ならまだ笑いにつながるが、
3度目になるとしつこい上にまったくもって笑えないうえに
4度目まである。

とにかく、この作品はしつこく繰り返すことでしかギャグを作れていない。
笑いの引き出しがすくなければ見せ方もワンパターンだ。
何回そのギャグをやれば気が済むんだと思うほどの
引き出しの無さだ。

ストーリー


画像引用元:たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語 4話より
©サトウとシオ・SBクリエイティブ/ラスダン製作委員会

これで1話完結のギャグアニメなら気にならなかったかもしれないが、
一応はストーリーがある。戦争を企む国王とそれを裏で操る謎の存在、
往生は密かにそれを探っているものの、戦争が起こる間近だ。

ギャグをやりながらも、そんなシリアスな状況のストーリーが展開されるが
そういったシリアスな話をしているときでさえギャグを入れてくる。
話が進まずに笑えないギャグも入れるのは厄介でしか無い。
ギャグとシリアスの切り替えがうまくできていない。

4話で王都に潜んでいた「魔王」を倒したところで話は大体終わっており、
中盤からは主人公の周りにいるメインキャラの関連の話が展開される。
正直、どうでもいい話であり、メインキャラの過去や
お見合い話など話自体の面白さは特に無く、
話の振りの段階でどうなるかも予想できてしまう。

いつまでも無自覚


画像引用元:たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語 10話より
©サトウとシオ・SBクリエイティブ/ラスダン製作委員会

主人公がいつまで経っても無自覚だ。
周りのキャラが時折「それは虫じゃなくてモンスターだ」と
指摘しても、主人公は何言ってるんだこいつとばかり認識を改めない。

いわゆる「なろう系」の主人公も序盤は
「また俺何かやっちゃいましたか?」と言わんばかりに
自身が転生で手に入れた力の凄さが無自覚なことも多い。
だが、そんな彼らも話が進んでくると自身の力を自覚する。
自覚した上でイキるのがなろう系だ。

しかし、この作品はなろう系ではない。
主人公が異常とも言えるほどの強さを秘めており無自覚だ、
この設定自体はなろう系主人公と変わらないものの、
この作品の場合はいつまでも自覚しない。自覚した時点で作品が終わる。

「主人公が無自覚な力」を周りが突っ込むことが
この作品の根本であり、自覚した時点で作品が終わる。
それゆえに主人公はピュアと言う名の天然の鈍感をつらぬき、
3話になっても6話になっても9話になっても、
結局、最後まで彼は自分自身の力を自覚しない。

4話からは「士官学校」に通い出すが、それでも自覚しない。
比較対象が多くいるはずの場所で、
授業の中で同じことをしているのに自身と他者を比較しない。

最初こそ笑えはしないものの不快さは感じない。
だが、話が進んでくるといつまでたっても自覚しない主人公に
苛立ちすら覚えてしまうと同時に自覚させないようにしている
キャラクターの台詞や行動にも苛立つ。

作品の都合上、自覚させてはいけないのは分かるものの、
そんな作品の都合に物語の主人公が振り回される姿は悲しく、
自分自身がピエロであり、それが視聴者に笑われていることを
分かっていない、無自覚なピエロだ。
無自覚なピエロほど滑稽なものはない。

自分の力に無自覚であるがゆえに彼が物語を引っ張るわけでもない。
一応、精神的な成長や「仲間となら僕もやれる」と思う部分はあるものの、
結局は最後の最後まで自覚はしない。

総評:出落ちを引っ張るな


画像引用元:たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語 9話より
©サトウとシオ・SBクリエイティブ/ラスダン製作委員会

全体的に見て1話Aパートの時点で出落ちのネタである
「無自覚な主人公」というボケを1クールずっと続けている作品だ。
同じボケを角度をかえて見せ、過剰なテンションで突っ込んでいるが
結局は出落ちレベルのネタをずっと引っ張ってるだけだ。

1話の段階からパターン化しており、そのパターンをずっと続けている。
序盤こそのネタで笑える部分はあるものの、序盤をすぎれば
ワンパターンすぎる上に引き出しのないギャグの数々に飽きてしまう。

キャラクターは多いものの特に必要性のないキャラも多く、
いつまでたっても自覚しない主人公には魅力もなく、
自覚した時点で作品が終わるから仕方ないものの、
そんなあやふやな主人公の存在であるがゆえに
ストーリーの面白みも薄い。

シリアスな中でハイテンションな笑えないギャグを挟むのも
たちがわるく、どういう感情でこの作品を見ればいいかわからない。

主人公もやや精神的に成長する部分はあるものの、
結局、序盤からやってることは変わらない。
1話と同じように主人公は無自覚なまま、
強力なモンスターを虫と勘違いしたまま倒し、
黒幕たちには逃げられたまま終わる。

いわゆる俺たちの戦いはこれからだではあるものの、
これほど続きが気にならない作品も珍しい。

個人的な感想:4話で終わっておけば…


画像引用元:たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語 12話より
©サトウとシオ・SBクリエイティブ/ラスダン製作委員会

4話くらいまではこの作品をぎりぎり楽しんでみていたが、
それ以降はずっと惰性で続いているような作品だ。

週刊連載漫画で言えば1巻まではそこそこ面白いが、
2巻以降は面白さがなく、いつ打ち切られるかなと思いながら
読むような、そんな打ち切りの気配すら感じられる作品だ。

原作はライトノベルだが12巻くらい出てるらしく、
いまだに続いているようだ。
流石にそろそろ主人公が力を自覚しているかどうか気になり、
少し調べたがどうやらまだ「無自覚無双」をやっているようだ(苦笑)

もしかしたらアニメの2期があるかもしれないが、
流石に2期があっても見たいとは思えない作品だった。

「」は面白い?つまらない?

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