評価 ★★★☆☆(56点) 全11話
あらすじ 防衛隊長官・四ノ宮功の判断により兵器化を免れるも、身柄を拘束されたままの日比野カフカ。 引用- Wikipedia
これが俺達の見たかった怪獣8号?!
本作品は怪獣8号の2期。
1期から約1年の時を経ての2期となった。
監督は宮繁之 、製作はProduction I.G
怪獣
本作品の世界では怪獣が自然災害のように現れる。
そんな世界で主人公は防衛隊員の試験に合格できずにいた。
ある日、怪獣の力を偶然手にしたことで、
正体を隠したまま防衛隊員になったものの、正体がバレてしまったのが1期だ。
1期の序盤は良かったものの、終盤になると様々な作品を彷彿と
させる要素があまりにも多く、ジャンプ的な王道ストーリーではありつつも、
同時にエヴァや進撃の巨人の要素が目立ちすぎている作品だった。
そんな1期を経ての2期の1話。
物語は主人公の夢から始まる。
怪獣とバレたことで仲間に攻撃され襲われる夢、
1期よりも「迫力」のある巨大な怪獣の姿で暴れまわるシーンは、
本来「見たかった」ものだ。
本作における怪獣はどんどんと小さくなっており、
主人公も変身しても人間のサイズ感と大して変わらない。
だが、夢の中では超巨大な怪獣の姿になっており、
こっちの姿で戦うさまを見たかったと感じてしまう。
ちなみにこのシーン「アニオリ」である(笑)
アニオリ
2期は露骨に「盛られている」感じがすごい。
特に2期の1話は主人公が謹慎する中で、
他のメインキャラクターたちが巨大な怪獣と戦うという展開が描かれる。
主人公という反則的な存在、怪獣を持つ力がない防衛隊たちの
「本来の戦い方」がこれでもかと描かれている。
原作ではメインキャラの一人が一瞬で倒してしまう怪獣との戦い、
そんな一瞬をこれでもか!と盛りに盛りまくっており、
怪獣が現れてから防衛隊がどういうプロセスで行動し戦うのかを描き、
隊長の圧倒的な力を描写し、怪獣の血液が街中に降りしきる。
「怪獣8号」という怪獣が当たり前に現れる世界、
そんな原作の世界を盛り、掘り下げることで世界観にリアリティが生まれる。
ストーリーは原作通りでは有る、だが、2期では
ストーリーは原作に沿いつつも、盛りつつ掘り下げることに注力していることを
2期の1話でひしひしと感じてしまう。
音響周りも明らかに違う。
特にBGMは「怪獣」がでてくる作品を彷彿とさせるような
BGMが作品のシリアスな空気感、怪獣が襲ってくるという恐怖を
より「煽る」ものになっており、印象深くなっている。
盛りまくる
何気ないシーン、なんてことのないシーン、
ストーリーの進行には関係のないシーンも盛られまくっている。
2期の1話でもそうだったが、2話以降でも細かく
「怪獣が増加している」ことを新聞を読むモブ隊員で示唆していたり、
怪獣がでた際の一般市民が恐怖に怯える様をきちんと描いている。
ウルトラマンだったりがわかりやすいが、
怪獣が現れてすぐにウルトラマンがでてきてすぐに倒すわけではない。
その怪獣がどういった被害をもたらすのか、そういう前提を描くからこそ
ウルトラマンというヒーローが際立つ。
そんなヒーロー、主人公だけでなく防衛隊の行動やセリフ、
司令本部にいる防衛隊たちの模様も原作よりも盛られて描いている、
例えば2期の2話ではキコルと東雲小隊長が背中をあわせて戦うコマが描かれ、
そのあとに「鳴海」というキャラが棒立ちで
「おいおい、1年目でこれってマジですかい」
と喋るコマにつながる。
しかし、アニメでは違う。
キコルと東雲小隊長が背中をあわせて戦い、
その次に鳴海のセリフが戦いながら描かれる。
原作では2コマでしかないシーンをアニメでは相当もっており、
だからこそ原作にはない深みが生まれている。
もう笑ってしまうほどの盛り具合だ。
原作が街の中華料理屋のしょうゆラーメンなら、
アニメは二郎系ラーメンである。あまりにも違う、食いごたえもカロリーも。
序盤を過ぎてもアニオリによる細かい追加シーンは多く、
キコルの過去回想や、主人公の内面描写にいたるまで、
盛りまくりだ。
原作ときちんと比較したのは序盤だけだが、
2期の1話の時点でアニオリとわかるほどの面白さがあり、
面白さ増すための工夫がかなりされている。
怪獣9号
だが、そんなアニオリによる「盛り」も原作のストーリーが足を引っ張る。
1期からでてきていた「怪獣9号」との戦闘が2期の4話から始まる。
主人公は色々あって怪獣の姿に変身できない状況で、
更に怪獣9号は分裂までするため、各地でメインキャラと
怪獣9号がバトルするという展開になる。
変身できるできないという状況に特に面白みがなく、
せっかく盛りに盛りまくってるのにメインのストーリー展開が足を引っ張る。
怪獣8号に変身できてからの戦闘シーンのクオリティは高く、
BGMを流しながら立体感と迫力を増しながらの戦闘シーンは素晴らしい。
だが、それをストーリー展開が足を引っ張る。
自らの力を使うことを恐れた怪獣8号が、仲間を信じ仲間と戦う決意をし、
怪獣9号を倒す。これで1つ区切りが生まれるはずなのだが、
怪獣9号は結局倒せず、長官が戦うものの倒せない。
あまりにも、この怪獣9号がしつこい。
この怪獣9号というのが本作におけるボスキャラなのはわかるが、
そんなボスキャラに「魅力」がないからこそ、しつこさだけが目立つ。
それは主人公も同じだ、主人公以外のキャラクターが目立っており、
主人公の魅力がない。だから、主人公が活躍しないほうが面白く、
主人公以外の修行シーンやバトルシーンのほうが盛り上がる。
作品の核たる主人公とラスボス、この2つの魅力が欠けるがゆえに、
いくら盛ってもかばいきれていない部分が目立ってしまう。
終盤
終盤は怪獣9号の再来にそなえて各キャラが修行するシーンが描かれる。
この修行シーン自体は悪くないのだが、
修行して敵がたくさんやってきて、怪獣11号から14号と
メインキャラとの戦いが始まる。
そんな強敵とメインキャラが戦い始めたあたりで2期が終わってしまううえに
修行した主人公が戦闘せずに終わる(苦笑)
ものすごい中途半端だ、これで3期がすでに決定しており、
来年あたりに3期をやります!というならまだ飲み込めるが、
別にそうではない、3期は決まっていない。
このレビューを書いている段階で、アニメの放送が終了して一ヶ月以上たっているが、
3期の情報はいまだになく、それを踏まえると、この半端さは厳しいものが有る。
原作は16巻で完結しており、
アニメの2期の段階で10巻あたりまでアニメ化されている。
あと1クールあれば計算上は完結まで描けるはずだ、
そういった意味でも3期までアニメでやる流れがあっても
おかしくはないのだが、3期の発表がないまま終わってしまった。
総評:今、最も原作改変が望まれるアニメ
全体的に見て1期よりも厚みを感じる部分が多くなった作品だ。
1期で感じていた不満、微妙なところ、そういった部分を補完するように
アニオリのシーンを盛り込みまくることで、物語やキャラクター、
作品自体に厚みが生まれており、そこにハイクオリティな戦闘シーンがより
作品を盛り上げてくれている。
だが、それでも改善しきれない部分が多い。
怪獣9号というラスボスのしつこさは顕著であり、
そんなラスボスと主人公の魅力が1番なく、
他のメインキャラクターによる戦闘のほうが自然と盛り上がってしまう。
本末転倒だ。
ただ、アニメ制作側は可能な限り「面白くしよう」としているのだろう。
今のところ原作改変という令和の時代においては禁断の領域には
ギリギリ足を踏み込まずに、アニオリシーンを挟むだけで終わっているが、
原作の終盤の不評さを考えれば、この作品に限って言えば
「原作改変」を望んでいる人が多い。
もし3期があるならば、そんな禁断の領域に足を踏み込むのか。
3期の発表がなかったのは、そのあたりを原作者と話し合っているからかもしれない。
話し合いがうまくいくことを願いたい。
個人的な感想:原作
私は原作の最終巻まで実は読んでいる。
だからこそ、この先のやばさをしっている。
それゆえに3期の原作改変を望んでしまっており、
2期ではその兆候が見えるがゆえに期待してしまう部分がある。
昨今は原作改変は望まれていない。
セクシー田中さんの一件もあり、禁忌になりつつある。
そんな時代にあえて原作改変をすることは難しいことはわかっているものの、
そこに期待してしまう自分がいる。
そもそも3期をやるかどうかも曖昧なところだ。
1期はNetflixでの先行配信もあってランキングなどに入っていたが、
2期では海外人気もあまり上がっておらず、
それゆえに3期の製作が決まらなかったのかもしれない。
そういった深い事情は1視聴者に知る由もないが、
色々なハードルを乗り越えた3期をぜひ見てみたいところだ。



