評価 ★★★★☆(61点) 全12話
あらすじ 長野県一刻館高校のボウリング部。楽しさを優先する部長の麻衣に対し、勝利を渇望する利奈は退部を切り出し、麻衣に勝負を挑む。 引用- Wikipedia
血と狂気の玉転がし
本作品はTVアニメオリジナル作品。
監督は工藤進、制作はBAKKEN RECORD
部活動
1話冒頭、主人公を中心としたボウリング部の活動が描かれる。
アニメの歴史においてボウリングアニメというのは初めてだ、
様々なスポーツがアニメで描かれ、その多くがそのスポーツを
描くことを主体として描いている。
この作品の1話の序盤はそんな雰囲気だ。
才能は有るものの3連続ターキーを出すと
スネークアイという両端にピンが残る状態になりやすいという
問題を抱える主人公や、部員たちも明るく振る舞っているものの、
「ボウリング部」としての実績はあまり良くない。
そんなボウリング部のぬるさに1年である「利奈 」は不満をいだいており、
ギスギスした雰囲気が1話序盤から漂っている。
主人公はみんなが楽しければいい、誰かを選べない子だ。
そういった人間関係を描いている中で、ボウリング場に雷が落ち、
ボウリングの玉が光ったかと思えば、
彼女たちは「戦国時代」へとタイムスリップする(笑)
とんでもない展開だ、1話放送前の公式サイトなどでの
あらすじやPVでは一切この情報は明かされておらず、
いわゆるキービジュアル詐欺、1話詐欺をやっている。
最近ではブレイバーンなども似たようなことをしていたが、
ブレイバーンの場合はロボットアニメというジャンルは変わらなかった。
しかし、この作品の場合は部活動青春アニメかと思ったら、
SFアニメになるというジャンルそのものの転換であり、
「がっこうぐらし」並の衝撃だ。
ノリ
彼女たちは戦国時代にタイムスリップしたということは
実感しつつも、スマホで動画を撮影したり、電波がないことに驚いたり。
目の前に生首が転がり、目の前で戦が行われてても、
どこか「夢」物語のようにハイテンションだ。
ギャルなキャラなど制汗スプレーをひたすら振りまくっている(苦笑)
だが、ここは戦国時代だ。
戦場に女がいれば襲われそうになり、目の前で多くの人が死んでいく。
そんな彼女たちを守ってくれる武士も存在する。
だが、そんな武士もあっさり捕まってしまう。
こんな状況にもかかわらず1話からのゴタゴタは続いている、
明らかにそんな人間関係のゴタゴタを描いている場合じゃないのに、
主人公たちの内輪揉めは地味に続く。
主人公も事あるごとに「ボウリングには二投目がある!」というのだが、
決めセリフが決めセリフになっていない感覚だ。
武器
この作品は一応、ボウリングアニメである。
日本ボウリング場協会なども本作品に協力的で
コラボキャンペーンなども行っている。
普通の現代日本を舞台にしたボウリングアニメなら至極当然の流れだが。
今作は普通のボウリングアニメではない。
戦国時代に女子高生がタイムスリップする、
それが物語の中心にあるのだが、この作品の主軸は常にボウリングにある(笑)
戦国時代にタイムスリップする過程でなぜか彼女たちの
「マイボール」もタイムスリップしている。
戦国時代の技術では完全な球体の鉄の塊は規格外だ。
彼女たちを襲った「野武士」をピンに見立て、
彼女たちはマイボールを投げ、ストライクを決める。
とんでもないアニメだ(笑)
日本ボウリング場協会も人にボウリングを投げるアニメとは
聞いていなかったかもしれない、明らかにやってはいけない行為だ。
そんなやってはいけない行為を平然と行うのが本作品である。
あまりにもぶっ飛んだ展開とシーンの数々、
独特なキャラクターのノリが不思議と癖になってくる。
彼女たちがボウリングの玉をぶん投げて助けた武士は
戸倉家の現当主であり、そんな当主の家にやってくると、
戸倉家の姫がボウリングに似た遊びをやっている。
何が何でもボウリングの要素を強引に話に盛り込んでくるのが
強烈な面白さになってくる。
ボウリング場
4話になると戦国時代にボウリング場が作られる、
本編を見ていない方にとっては「一体何が起こってそうなったか」と
問いただしたくなるかもしれないが、なんやかんやあって
いつの間にか速攻で出来ている。
豊臣秀吉もびっくりな一夜城ならぬ、一夜ボウリング場である。
そんなボウリング場でタイムスリップと同じ状況で
ボウリングをしてタイムスリップが起こるか検証をし、
実際にタイムスリップ現象が起こる。
だが、一人だけ1話から面倒くさい「利奈」だけが戦国時代に残ろうとする。
置いていかれることにトラウマのある彼女だからこその面倒くささではあるのだが、
ボウリングをするJKたちの青春模様に、タイムスリップ要素に、
戦国時代にとゴチャゴチャしてる中でその状況を描かれると、
その状況を集中して楽しめず、カオスさが増していく。
そこにいたのかマイボール!
各話で丁寧にメインキャラを掘り下げつつ、
そこにボウリングを無理やり絡める。
この無理やり絡める過程があまりにも面白く、
どういう形でこのストーリー展開からボウリングを絡めるんだ?と思うほど、
強引にねじ込んでくる様子を楽しむアニメだ。
例えば5話、ずっと態度の悪いギャルが居るのだが、
戦国時代で幼い女の子と仲良くなる、そんな女の子と
仲違いをし追いかけた先の崖下で野犬に囲まれるという展開が有る。
ちなみに5話冒頭ではギャルのマイボールが崖の下に落ちている。
もうおわかりいただけたであろう(笑)
マイボールが崖の下に落ちたのはこのための伏線だ、
ボウリングの玉があったからこそ窮地を脱することが出来る。
そんな奇天烈な要素はありつつもキャラ描写は悪くなく、
見ているとよくわからない感じになる作品だ。
戦国時代
中盤になると主人公たちを匿ってくれている
領主の姫の婚約話がでてくる。
主人公たちは現代の人たちだ、だからこそ政略結婚というものが理解できず、
恋愛結婚どころか「会ったこともない」人と結婚をするという
概念すら理解できない。
これが幼稚園か小学生くらいならまだわかるのだが、
高校生にもなって「会ったこともない人と結婚するなんてだめ!」と
言い出すのはやや厳しい部分がある。
しかも「生理」など妙に現実的というかリアリティのある
状況にメインキャラがなったりもする。
領主や民衆が野武士を殺すと、それに関しても過剰に反応する。
ボウリングしてたら戦国時代にタイムスリップして、
ボウリングのたまで野武士をやっつけるようなアニメで、
リアルな部分を描かれるのはチグハグな感じもある。
戦国時代で「命は平等なんですよ!?」と叫ばれるのは違和感が凄まじい。
そんな「命」に関する問答を繰り返す中で、
領主と生き残った野武士が戦っている。
平等な命であるはずの野武士の命を奪うのか奪わないのか
という緊迫感の有る中でも「ボウリング」要素をぶち込んでくるのがこの作品だ(笑)
狂気
真面目なんだかふざけてるのかよくわからないのだか、
おそらく制作陣はふざけていない、真面目にこのぶっ飛んだ作品を描いている。
作品よりも制作陣のほうが狂気じみている。
汗と血と涙とボウリングで作り上げられているのが
このTurkeyだ。
ちなみに中盤を超えると温泉を掘るという展開になる。
ボウリングではなく、ボーリングで温泉を掘る、
ギャグなのかなんなのか、中盤を過ぎてもよくわからなくなる。
ボウリングやろうぜ!ボウリング!
領主の家には様々な問題が有る、隣国との問題を中心に
戦国時代だからこその生き方をしている。
そんな戦国時代の価値観に主人公たちが介入し、
ボウリングをねじこむ(笑)
双子の二人、どちらかが死ななければならない。
そんな状況で双子に「ボウリング」をさせる主人公、
狂気でしかない(苦笑)
戦国時代の人物が命をかけた勝負を未来のスポーツで決めるなど、
どういう思考回路で生み出された脚本なのだろうか。
ちなみにOPではボウリング部な彼女たちがなぜか楽器片手に
ライブをしている、もうめちゃくちゃだ。
そんなカオスな状況で終盤、あっさり現代へと戻る。
改変
主人公たちが関わったことで戦国時代の5姉妹の
歴史が変わるはずだった、だが、未来ではそんな5姉妹が
「惨殺」された過去のままだ。
そんな過去を変えるために再び過去に戻る。
隣国の領主に殺された5姉妹、そんな5姉妹を守るために
隣国の領主との殺さずにしてどう、自体を解決するのか。
もうここまでレビューを読んだ方ならわかるだろう。
「ボウリング」である(笑)
領主とのボウリング対決に主人公達が勝てばOKだが、
勝たなければ主人公たちは殺される。
もちろん普通に勝負すれば余裕の勝利だが、
勝負ではなく賭けだ、全員が「ストライク」を出すj必要がある。
最後の最後でメインキャラクターたちが命をかけた
一球を投げる、ボウリングアニメらしくなってくる。
いや、なったのか?(苦笑)
ラストなどメインキャラが磔にされ、
主人公も切りつけられた状態で投球しなければならない。
戦国時代とボウリングという要素をかけ合わせた
代償のようなシーンが終盤生まれる。
主人公が思わず「なに…これ?」とつぶやくが、
1クール、ずっとそう思っていたのは視聴者の方である。
そこからのラストの伏線回収や物語の結末、締め方、
1クールでのキャラの成長と変化など
かなり綺麗にまとまっている感はあるものの、
1クール、ボウリングの球でぶん殴られたような
衝撃を受ける作品だった。
総評:制作陣の思考回路どうなってんだよ…
全体的に見て、これは「狂気」としかいいようがない。
ボウリングを題材とするアニメを考えれば
普通はJKを主軸にした部活動物になる。
だが、そこにタイムスリップ要素をあわせてしまう。
そこまではまだ飲み込めなくもないが、タイムスリップをしても
主人公たちによるボウリング要素は忘れず、
何かあるごとにボウリング要素を必ず毎話のようにねじ込み、
戦国時代にあっというまにボウリング場を作り上げる展開には
笑うしかなく、何かトラブルが起こっても解決手段はボウリングだ。
終盤も全キャラの命をかけた状態でボウリングをするという
狂気じみた展開はこの作品らしさが煮詰まったものを感じさせてくれる、
カオスでは有る、狂気では有る、荒唐無稽では有る、
だが、なぜか抑えるべき部分はきちんと抑えているおかげもあって
1クールでのキャラの成長と変化からのラストが綺麗にまとまっている。
面白い作品だったかと聞かれると難しい、
だが楽しい作品だったことは間違いない。
まだ見ていない人は、ぜひ中盤くらいまで様子を見てほしい。
このトンチキすぎる作品の世界観にハマってしまう…かもしれない。
個人的な感想:ぶっ飛んでる
噂は色々と聞いていたが、想像の斜め上な作品だった。
ここまでボウリングをねじ込んでくる作品だと誰が
想像しただろうか。
制作側がそういうのを狙ってといよりは、
素でやっている感じがあり、だからこそ変な寒さがない。
これで狙ってカオスな感じにしてしまうと狙った感が
寒いノリにつながることも有るのだが、そういう薄ら寒さを感じないのが
逆に怖くなってくる。
このAI時代、アニメの脚本もAIでかくことはできるだろう。
なろう系なんかはAIで集められたデータでなんとかやれそうだ。
だが、AIではこの作品は絶対に生まれない。
間違ってこの作品を学習してしまえば、AI自体がぶっ壊れてしまいそうな
非常に興味深い作品だった。

 
  
  
  
  

 
					 
					