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令和の熱血スポ根「メダリスト」レビュー

5.0
メダリスト 未分類
画像引用元]©つるまいかだ・講談社/メダリスト製作委員会
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評価 ★★★★★(81点) 全13話

あらすじ アイスダンスの全日本選手権に出場経験を持つ明浦路 司は、アイスショーの就職先が決まらないでいた。引用- Wikipedia

令和の熱血スポ根

原作は漫画な本作品。
監督は山本靖貴 、制作はENGI

子供

本作品は「フィギュアスケート」を題材にしている。
フィギュアスケートといえばユーリ!! on ICEなど、
過去にもアニメとして制作されている題材だ。
そんなユーリ!! on ICEは最初から大人で「プロ」の物語だった。

だが、この作品は違う。主人公は小学5年生の女の子だ。
まるで猫のように軽やかな足運びと体さばきで街を駆けずり回る少女だが、
気弱で泣き虫な少女だ。
そんな少女は「ミミズ」と引き換えにこっそりスケート場で練習している。

どうしてもやりたいフィギュアスケート、憧れのフィギュアスケート。
だが、母は許してくれない。
選手を目指すなら、本気でフィギュアスケートをやるならば
「11歳」はギリギリの年齢だ。

始めるのが遅ければフィギュアスケートの世界には入れない。
そんな「現実」を「いのり」という少女は知り、
彼女と出会った「明浦路 司」という男は身にしみてわかっている。

「5歳」から始める子もいる世界だ。
早ければ早いほど良い、司という男は遅すぎた。
だが「いのり」にはまだ可能性がある。
そして彼女には「才能」がある、なにより「強い意思」がある。

時間も費用もほかのスポーツ以上にかかるフィギュアスケートの世界への
「執念」を持つ少女の思いに「司」は奮い立たされる。
完璧なまでの1話、物語の始まりと二人の主人公の掘り下げが
気持ちいいまでの爽快感を生み出している。

ライバル

この作品は気持ちがいいまでの「王道」だ。
フィギュアスケートを始め徐々にうまくなっていく。
そんな彼女の前に現れるのが「ライバル」だ。

全日本でも優勝したことのある少女、そんな少女と出逢い、
憧れるのではなく「追いつこう」とする。
始めたばかりの少女が全日本を優勝した少女に食らいつく、
そこにあるのは「悔しさ」だ。

彼女にあるのはフィギュアスケートに対する執念だ。
11歳で始めたからこそ、生半可な努力では同世代の少女に
勝つことはできない。その差を彼女は実感してしまう。
だが、そんな全国優勝の少女である「光」ですら
練習の時間が足りないと嘆いている。

もっとうまくなりたい、勝ちたい。「オリンピック」に出たい。
1話で物語の始まりを描き、2話でライバルが現れ、明確な「目標」が決まる。
11歳の少女が「金メダル」を取る人に、
「メダリスト」を目指すことをコーチへ宣言する。

気持ちがいいまでのタイトル回収、見れば見るほどニヤけてしまう。

大会

主人公である「いのり」を指導するコーチの指導も素晴らしい。
彼女に全て与えるのではなく、自分の言う通りにさせるだけでなく、
彼女の「意思」を大切にする。
今まで決断してこなかった少女、自分の本心を言えなかった少女が
スケートを通して成長していく。

「成功体験」を積み重ねた先にしか選手としての未来はない。
初出場の大会で優勝する、そんな序盤の目標に向かって突き進む序盤は
まっすぐなストーリー展開であり、奇をてらった要素がない。
これぞ王道だ、王道を王道に、王道がなぜ王道といわれるのかを
王道たらしめん主人公とコーチの関係性と主人公の努力で見せてくる。

だが、そんな努力が必ずしも本番で活かされるとは限らない。
練習ではできていたことが本番ではできなくなることもある。
積み重ねた「成功体験」は自信へとつながる、だが、
その自信はちょっとしたミスで崩れさる。

フィギュアスケートを本格的に始める前の彼女なら諦めてしまったかもしれない、
だが、もう彼女は「覚悟」を決めている。メダリストを目指す、そんな覚悟を。
コーチの前で、そして「母」の前で彼女は高らかに宣言する。
自分を好きでいられるように、自分が特別でいられるように。

この主人公の成長と変化がたまらない。

本番

本番でのアニメーションの描写は凄まじいものがある。
「ENGI」という制作会社はかつては作画崩壊でおなじみな制作会社だった。
だが、この作品は違う。

スケートのシーンでは「フルCG」で滑らかな動きをダイナミックに表現している、
軽やかに、スピーディーに、だが決めるところは決める。
CGの利点を活かしながらも構図と決め、外連味を意識した
アニメーションの見せ方は本当に素晴らしく、
思わずまばたきをわすれるような演技を見せてくれる。

CGというのはどうしても「軽さ」がでやすい技術だ。
それを補うために演出でカバーするのだが、
フィギュアスケートの場合はその「軽さ」こそが重要だ。
滑らかで軽い動きとカメラワークによるアップや止め絵で
スケートの演技をこれでもかと見せてくれる。

演技後の彼女の涙、誰かの特別に、憧れになれた実感と
母に「認められた」という成功体験が
より主人公を高みへと至らせる。

作品の中で使われてるワードが的確に物語に作用しており、
それをストーリーとキャラ描写できちんと魅せてくれる。
「努力」や「結果」という言葉を使うのは簡単だ、
だが、あえてこの作品はそういう安易な言葉を使わずに、
成功体験や悔しさという言葉を使うことで作品の世界観を作り上げている。

コーチ

この作品は選手の物語であると同時にコーチの物語でもある。
フィギュアスケートにはコーチがつきものだ。
技術の指導だけでなく、どういう演技にするのか、
それ次第では結果も変わってくる。

フィギュアスケートはリンクの上では一人だが常にコーチが選手を見ている。
一人のようで二人三脚の競技だ。
コーチは指導だけでなく選手の人生をも背負っている。

主人公のコーチはフィギュアスケートを始めるのが遅く、
多くの人の援助もあってアイスダンスのプロになったものの、
そこでも結果が残せなかった。そんな後悔がある。
多くの人の期待に答えられなかった、だが、コーチとして彼は
結果を残そうとしている。

幼い時からフィギュアスケートを始めて
オリンピック金メダリストなコーチを持つ、
幼い時からフィギュアスケートを始めたライバルに、
20歳からアイスダンスの世界に入ったコーチと、
11歳からフィギュアスケートを始めた主人公が挑む。

この対比も素晴らしい。
中盤以降になると多くのライバルが出てくる、
どのキャラも選手たちはかわいらしく、コーチはかっこいい。
このキャラデザと選手とコーチのバランスもよく、
あまり出番がないキャラでもキャッチーな魅力ゆえに印象がしっかりとつく。

出来る

終盤、1年ほど時間が飛ぶ。
怪我からの復帰、そこからの練習をし、大会にも出て優勝し、
成功体験を重ねている。

そんな成功体験を重ねているからこそ、
ライバルが多く彼女の前に現れるからこそ、
「光」というライバルに勝ちたいという思いが強くなる。
今の自分ならもっと上へ、もっと先へ。
努力を重ねた彼女はとんでもない速度で成長していく。

彼女からは「できない」という言葉は出てこない。
「できない」自分が嫌だったから、そんな過去を乗り越えた今だからこそ
彼女は常に「できる」ことを考える。
常に前にまっすぐだ、後ろなど向いている暇などない。

久しぶりにここまで「熱血」な主人公を味わう感覚だ。
そんな主人公と同時にコーチの物語も描かれる、
主人公ではなく、違う少年の指導もすることになった彼は
まっすぐに彼を導こうとする。

だが、少年はそんな彼を拒否する。
それでも彼はあきらめない、自らの「演技」を見せる。
ただそれだけだ、だが「尊敬」できるコーチであることを
指し示すことで、少年の指標になりうる。

主人公も、彼女のコーチも「あきらめる」ことがない。
できないではなく「できる」ことを常に考え努力する。
まっすぐで熱いスポ根だ。

出遅れていた少女は必死に練習をし、努力を積み重ね、
ようやく同世代の子に追いつく。
彼女の、いや、彼女たちの戦いはこれからだ。

総評:馬鹿正直なほどの王道

全体的に見て清々しいまでにまっすぐな作品だ。
自分に自信がない少女がフィギュアスケートを本格的に始め、
自己主張を、自信を、夢を、未来を手に入れていく。
その過程をまっすぐに丁寧に描き、
馬鹿正直なほどに王道のストーリーを描いている。

最近の作品はいろいろと手を変え品を変えしていることが多い。
主人公などのメインキャラに癖があったり、
ストーリーもややこしいものも多かったりする。
だが、この作品はそういった奇をてらっていない。

本当にまっすぐすぎる。
そのまっすぐなストーリーを全開全力で描いているからこそ、
そこに見ていて「気恥ずかしさ」が生まれない。
熱くまぶしく純粋な子供たちのフィギュアスケート道を真正面から描いている。

主人公だけでなくライバルたちも同じだ。
「できない」ことを嘆かず「できる」まで努力し、
「できた」という成功体験を重ねていき自らの道を開く。
その果ての「結果」に涙を流す子供たちに思わず涙腺を刺激されてしまう。

アニメーションのクオリティも素晴らしく、
CGだからこその表現の数々は素晴らしく、
日常シーンでの作画のクオリティもしっかりしている。
あの「ENGI」とは思えないほどの出来栄えだ。

1期は主人公が同世代の子に追いつくまでの物語だ。
2期から本当に勝負が始まる。
そんな2期に期待しない人はいないだろう。

個人的な感想:まぶしい

まるで昭和の熱血スポ根アニメでも見てるかのようなまっすぐさだ。
あの頃の熱血スポ根アニメのように暑苦しさのようなものはなく、
むしろさわやかだ、それは物語をつづっているのが
「子供」だからということもあるかもしれない。

2期は来年の1月からであり、
今から見るのが楽しみだ。

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