「ダンス・ダンス・ダンスール」レビュー

青春
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評価 ★★★★★(82点) 全11話

あらすじ 中学二年生の主人公村尾潤平は、幼いころに見たクラシックバレエに興味を抱いていたが、父親が亡くなったことから男らしくあろうと思い、バレエに憧れを抱きつつもジークンドーを習っていた。引用- Wikipedia

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全てを捧げろ

原作は週刊ビッグコミックスピリッツで連載中の漫画作品。
監督は境宗久、制作はMAPPA

魅了

この作品はクラシックバレエを扱った作品だ。
バレエは女性がやるもの、女の子がやるもの、
そういったイメージが日本では根強いものの、
本作品ではあえてバレエという題材を用いて「男性」を主人公にしている。

なぜ主人公がバレエに魅了されたのか。
この手のジャンルのアニメでいえば大切な導入であり、
そこに説得力がなければ作品の世界観に入り込むことができない。
物語における起承転結の「起」は作品においてもっとも大事な部分だ。

そんな「起」をこの作品は魅せてくれる。
子供の主人公が興味のないバレエを眠りこきながらみていたところ、
一人の男性がステージに上る。
眠り眼も大きく見開いてしまうほどの圧倒的な存在感、
髪はざっくばらんで整っておらず、無精髭まみれ。

だが、その肉体は極限にまで絞り込まれている。
ピアノの音にあわせて踊るその姿、なぜか魅了されてしまう姿を
「MAPPA」によるアニメーションで魅せつけてくれる。
肌に滴る汗、呼吸、筋肉の動き、細部までこだわって描きこまれた
男性バレエダンサーの舞に主人公も見てる側も魅了されてしまう

「ビリビリ!ビカビカ!ドッカーン!星が爆ぜた!」

子供の目線で見える抽象的な表現ととともにこの作品は始まる。
そんなAパートからOPだ。OPはあの「YUKI」だ。
この作品はTBS系で放送され、ディズニープラス独占配信の作品だが、
どこか「ノイタミナ」アニメのような雰囲気を感じさせてくれる。

のだめカンタービレ、ハチミツとクローバー、坂道のアポロン、
あのノイタミナの数々の名作を彷彿とさせる予感を
AパートとYUKIによるOPで感じさせ、見る側の期待感を煽ってくれる

だが、そんな幼い頃の主人公とは違い、
中学生になった主人公は「男らしさ」を追求している。
バレエをどこか避け、ジークンドーを習っている始末だ。
子供の頃、あんなにバレエに憧れ、踊っていた日々だったはずなのに、
バレエを習うはずだったのに。

そんな少年の純粋な想いを「ジェンダーバイアス」が邪魔をする。
男なのにバレエをやるのか、男なのにバレエを習うのか。
「その着せ替え人形は恋をする」という作品でも主人公は
いわゆるジェンダーバイアスによる抑圧を受けていた主人公だった。
この作品の主人公も同じだ。

「男らしく」いないといけない。
父を失い、母と姉の2人しか居ない家庭になってしまったからこそ、
「男らしく」あることを周囲から求められ、男らしくいようとした。
それが彼なりの生き方であり、処世術だ。

世間という社会の中で男が自分だけしか居ない家族の中で
「自分」はどう生きればいいのか。
子供なりに考えて結果、彼は男らしさを求め、
そして「バレエの想い」を心の中にしまい込んでいる。

だが、しまい込んでいるだけだ。
世間という小さい「箱」の中にそれをしまい込んでいた彼は、
転校生である「五代都」と出会うことで、その箱から飛び出し始める。

五代都

彼女は主人公の「飛んでる姿」をみて彼に声をかける。
彼の中にあるバレエの思いを、才能を、彼女は感じてしまう。
半ば強引に彼を誘い、自らのバレエ教室に引きずり込もうとするものの、
そんなちょっとした「強引さ」と男性だからこその「下心」があるからこそ、
彼の中にある殻を破ることができる。

もしかしたら、この子は自分のことが好きなのかもしれない。
そんなちょっとした下心が彼をつき動かす。
彼はいい意味で中学生らしい中学生だ。
自分の才能を信じ、自信に満ち溢れ、驕り高ぶりがある。
独学でバレエをやっていたからこそ、間違いもある。

だが、その才能だけは間違いがない。
きっかけは些細な出来事だ、だが、
憧れは止められない、夢は諦められない、
「正しい立ち方」を習っただけで彼の心の高揚感は抑えきることができない。

14歳というのはバレエを始めるには遅い。
思春期だからこそ彼は悩んでしまう。
男らしく居なければならないというジェンダーバイアス、
父の背中を負うべきではないのか?という重圧。
学校や社会の中での今まで気づいてきた自分のイメージがあるからこそだ。

そんな迷いの中にある彼の中の「思い」を、バレエの先生は見抜いてしまう。

「あんたバレエダンサーになる人間でしょ」

たった一言で、彼の中にある箱は突き破られる。
一度敗れた箱から、漏れ出すものを止めることはできない。

森 流鶯

彼もある種の天才だ、ヒロインである「五代都」のいとこであり、
彼女の思い人でもある。
主人公の行動のきっかけはちょっとした恋心だ。
それゆえに思わぬライバル登場に彼の決意も揺らぐ。
男らしくとはなんなのか、バレエのために全てを捨てることができるのか。

そんな迷いとゆらぎの中で、バレエのために全てを捨てた人間を
主人公はみてしまう。それが「森 流鶯」だ。
他者とのコミュニケーションが苦手な彼は学校生活には馴染めない。
そんな彼を見て主人公は「かっこ悪い」と感じてしまう。

だが、彼はそんなかっこ悪い姿にもかかわらず
バレエのためにすべてを捨てている。
彼のバレエに主人公の魅了され、全てを擲つ覚悟へとつながる。
部活をやめ、バンドをやることを諦め、ジークンドーを辞める。
すべてを捨て、男らしさをすて、バレエの道へと突き進む。

世間で言う男らしさではない。
自分が思う「男らしさ」を突き進むために、
彼は今までの交友関係を捨てる。

「ヒロイン」がきっかけとなり、「ライバル」が奮起させる。
王道なストーリーの流れは心地よく、主人公の夢も決まる。
14歳の少年が、バレエを始めるにはおそすぎる少年が「王子」を目指す。

成長

主人公は天才だ、体格もバレエにむいている。
だが、圧倒的に経験が足りない、圧倒的に基礎が足りない。
ヒロインやライバルが10年以上、子供の頃からバレエをやっていたが、
彼は初めて一ヶ月たらずだ。
基礎ができなければバレエを踊ることすらできない。

彼自身もそれを自覚している。
毎日毎日、夜中まで彼はひたすら練習をしている。「努力」だ。
天才ではあるものの、その才に決して溺れずに、
自らに自信はあるものの、そこに驕り高ぶりを感じさせない。

まるで取り上げられていたおもちゃに固執するように
彼はバレエに取り憑かれていく。
彼の練習風景をきちんと見せるからこそ、彼の成長にも納得できる。
その成長と才能にライバルも影響していく。

若い二人が互いに影響され、互いに切磋琢磨していく様子が微笑ましく、
話が進めば進むほど、まっすぐに描かれる青春スポ根模様に
思わずニヤニヤしてしまうほどだ。

俺の居場所

5話では彼の初舞台が描かれる。
大会といえるようなものではない、お遊戯会に毛が生えたようなものだ。
だが、主人公はそんな初舞台で輝く。彼は基礎はできていない。
一朝一夕でそれが身につくほどバレエは甘くない。
しかし、そこに彼の「執念」が加わる。

役にのめり込み、演技に、舞台に溺れる。
天性の才能がある彼だからこその舞台は観客も、見る側も圧倒されてしまう。
初舞台でまさかの「アドリブ」だ(笑)
役にのめり込むあまり、舞台に熱中するあまり、
ライバルとの競い合いが、演技におぼれてしまう。

それでも「ライバル」にはかなわない。
圧倒的才能と、経験の違い、それが自らの敗北にもつながる。
ライバルもまた、主人公と同じく役に没頭させられてしまう。
彼が「主人公」だからこそ、彼もまた自らの「ライバル」としての
役に没頭してしまう。

圧倒的な舞台の演出は凄まじく、
ぬるぬるとなめらかに動きつつも、演出で凄みを出す、
バレエの舞台のアニメーションとしての表現は圧巻だ。
主人公が本気で演じ、本気で「バレエ」が楽しいと感じてしまう
彼の表情に、見てる側も自然と笑みがこぼれてしまう。

芸術と自己満足

クラシックバレエは格式高いものだ。
長い歴史の中で築き上げたものがあり、
その積み重ねが芸術と呼ばれるものまでに至っている。
主人公が行った即興の舞台はそこからは離れてしまう。

確かに彼の初舞台は素晴らしいものだ。
だが、彼が行ったのは「自己満足」の世界だ。
自分が楽しいと思うから、自分がやりたいと思うから、
彼はそうしただけだ。

同じ舞台に出ている子どもたちの役目も奪い、
観客がどう思うかすら彼は意識しなかった。
「他人」を意識せずに、彼は自己満足の世界に浸ってしまっていた。
それならば別にバレエでなくてもいい、創作ダンスでもしていればいいだけだ。
彼にはまだ「型」がない、そんな彼が「型破り」をしても意味がない。
「自分が気持ちよくなれる」のと「評価される」ものは違う。

彼はいわば「熱血」タイプの主人公だ。
そんな熱血と「バレエ」の世界は合わない、品位が足りない。
それでも彼はくじけない、自分のバレエを認めてくれないならば、
認めてくれるまで、認められるバレエができるように。
熱血タイプの主人公だからこそ、まっすぐに突き進んでくれる心地よさがある。

自らの過ちを、足りないものを、自分自身で自覚し、それを突き破ろうとする。

恋愛模様

この作品には儚い恋愛模様も描かれている。
ヒロインである「五代都」は可愛い女の子だ、ときおり見せる、
少女ではなく「女」を感じさせる表情や少女らしい照れや恥じらいが
混じった顔は蠱惑的な魅力を感じさせてくれる。
そんな彼女に主人公は恋心を抱いている。

だが、そんな恋心を邪魔をするのが「森 流鶯」だ。
彼女のいとこであり、幼い頃から2人は互いを思いあっている。
そこに「森 流鶯」自身は絶対的な自信があり、
ややナルシズムめいた発言がギャグ的にも見える。

そんな序盤の恋愛模様が終盤には一気に進む(笑)
見ているコチラ側が驚くくらいの急展開は
思わず笑ってしまうほどの急展開ではあるものの、
変に焦らさずに展開するストーリーはこの作品らしい恋愛模様だ。

一人ひとりにキャラクターの魅力があるからこそ、
そんな魅力のあるキャラの3人の恋心を思わず応援してしまう。
だが、そんな恋心がライバルの心を惑わせる。

虐待

「森 流鶯」という少年は歪んだ愛情を受けていた少年だ。
4歳の頃から祖母にバレエのことだけを叩き込まれ、
ろくに学校もいかせてもらえないほどだ。
それゆえに「祖母」の教えが絶対であり、海外に固執している。
しかし、それは古い考えであり、歪んだ愛を受けてしまったからこそだ。

10年という月日の中でバレエの世界も教え方も変わっている。
それを「森 流鶯」自身が受け入れられない。
自分の母が再婚したことも、祖母が認知症になってしまったことも、
彼は受け入れることができない。
虐待を受けてしまった少年は長年の虐待故に彼は簡単に変わることはできない。

周りは変わっていく。
自分の想い人は別の人を好きになり、彼はどんどん孤独になっていく。
孤高になったライバル、孤高になった天才はどう変わり、
どう成長していくのか。
虐待という「呪い」は簡単にとけるものではない。

引きこもり、殻に閉じこもろうとするライバルの殻を、
呪いを、主人公が、ヒロインが解き放とうとする。
「森 流鶯」を演ずる内山昂輝さんの演技も素晴らしく、
彼だからこそ「森 流鶯」というキャラの魅力をより引き出している。

僕を見ろ!

終盤の物語は「森 流鶯」が完全に主人公だ。
好きな人も奪われ、誰にも見られなくなった孤高の少年、
認知症になった祖母は彼を彼とすら認識できない。
自分が誰なのか、自分とは何なのか。
虐待という呪いが祖母からの呪縛を解き放たれも彼には残り続ける。

そんな彼を救えるのは「お姫様」だけだ。
彼女だけが唯一、彼を見ていた。
バレエに挑むためには、プロになるためには全てを捨てなければならない。
最終話で主人公自身がそれを自覚してしまう。
自らが好きだと思った女性も、彼はライバルに捧げてしまう。

ライバルのバレエが好きだからこそ、彼の凄さを知ってるからこそ、
そして自分がもっと高みを目指すために。
彼もまた「バレエ」にとらわれてしまった人間だ。

「あ、俺クラシックバレエ好きかも」

バレエが好きになった少年が、バレエに悩み、バレエとは何かを考え、
恋を知り、愛を知り、自分を見つめ、それでもなお、バレエに挑み、
彼自身が気づく。バレエが好きなんだと。
一人の少年が少女に恋をし、失恋を経験する。

自分の中にある繋がりを、何かを全て断ち切り、
「クラシックバレエ」に挑む覚悟をする。
1クールで一人の少年の「青春模様」がまっすぐに描かれている作品だった。

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総評:なんで独占配信なんだよっ!

全体的にみて素晴らしい作品だ。
クラシックバレエという馴染みのない世界、世間では女性がやるものという
イメージの強い「バレエ」の世界をあえて男性主人公で描く、
その姿はまっすぐな少年漫画の熱血主人公そのものだ。

型破りで、生意気で、だが、まっすぐな主人公。
そんな主人公を中心にメインキャラ達が中学生だからこそ、
まだ精神的にも未熟だからこその
葛藤と恋愛模様が素晴らしい「青春」を描いている。

主人公は天才だ。努力では掴み取れないものを持っている。
だが、努力と経験が圧倒的に足りていない。
それを彼自身に自覚させ、型破りなバレエをする彼が
「型」を知っていく過程を丁寧に描きつつ、
同時に主人公の才能も魅せてくれる。

その才能、バレエの描き方も流石はMAPPAだ。
髪の毛一本一本まで感じさせるような細かい作画をはさみつつ、
同じ制作である「ユーリon ICE!! 」で培ったロトスコープの技術を
余すことなくつぎ込み、なめらかで、大胆で、繊細で、迫力のある
バレエのシーンには心を奪われてしまう。

大胆な心象表現の演出をアニメの中の観客と、
視聴者に見せることで彼らの才能と凄さを見て実感させてくれる。
アニメーションとしてのクォリティが高いからこそ、
物語に説得力も生まれている。

声優さんたちの演技も本当に素晴らしく、
熱血な主人公を演ずる「山下大輝」さんのまっすぐな演技、
ヒロインを演ずる「本渡楓」さんの蠱惑的で可憐な演技、
ライバルを演ずる「内山昂輝」さんの孤高の天才の演技、
どれもこれもキャラクターの魅力を最大限以上に引き出している。

惜しむべきは全11話であり、話としてはまだまだこれからだ。
そして残念なことにこの作品はディズニープラス独占配信だ。
独占配信でなければ、もっとこの作品を多くの方が知り、
楽しんだに違いないと思ってしまうだけに本当に残念でならない。

そういった問題点やキャラクターデザインのやや癖の強い部分はあるものの、
間違いなく面白い作品だった。

個人的な感想:予想以上

何気なく見始めた作品だったが予想以上に面白い作品だった。
最近は世間的には女性の趣味、女性のスポーツというイメージが強いもののを
男性主人公にして物語を作る作品がちらほら増えているが、
もしかしたら、そういうブームがおこる直前なのかもしれない。

これがディズニープラス独占でなけれればもっと
盛り上がりが生まれた作品だったかもしれないだけに、
独占配信の闇の深さを感じてしまう作品だった。

「ダンス・ダンス・ダンスール」は面白い?つまらない?

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