青春

「灼熱カバディ」レビュー

4.0
青春
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評価 ★★★★☆(61点) 全12話

あらすじ 能京高校に通う1年生・宵越竜哉は、元サッカー選手として優れた実績を持ちながら、サッカーをはじめとするスポーツ全般とは無縁の生活をしていた引用- Wikipedia

完全努力型スポ根アニメ

原作はマンガワン、裏サンデーで連載中の漫画作品。
監督は市川量也、制作はトムス・エンタテインメント

カバディってなんだよ


画像引用元:TVアニメ「灼熱カバディ」アニメ本PVより
©2020武蔵野創・小学館/灼熱カバディ製作委員会

1話冒頭、カバディの説明が入る。
ナレーションいわく「走る格闘技」らしいのだが、
どんなスポーツなのか一切想像できない。

名前は聞いたことがあるもののルールが謎、
そういったスポーツはいくつかある。
どういうきっかけで、その競技者になろうと思うのかすら謎のスポーツ。
この作品で扱われている「カバディ」もそんなスポーツの1つだ。

主人公もかなり特徴的だ。なにせスポーツが嫌いである(笑)
銀髪で赤目、スポーツにふさわしい体格と運動能力があるのにも関わらず、
そんな自分の才能に嫉妬し、嫉妬や陰口まみれのチームメイトや、
上から目線の監督に嫌気が差し、ニコ生主になっている。

かなり独特な設定だ。
スポーツアニメの場合、元々の経験者がある理由でやめていたり、
子供の頃からずっと続けていたり、何かのきっかけでそのスポーツに
憧れて始めるという主人公は多い。

しかし、この作品はそもそも「スポーツ」そのものを否定している。
彼がカバディをプレイする姿の前にニコ生主として放送する姿が
描かれるほどだ。本当にこの後、彼はカバディをやるのか?と
ちょっと不安になるほどニコ生主として板についている。

そんな彼がなぜカバディを始めるのか。
「身バレ」である(笑)
ニコ生主としての正体をバラされたくなければ
体験入部をしろといわれ、カバディをやるはめになってしまう。

ルール


画像引用元:TVアニメ「灼熱カバディ」アニメ本PVより
©2020武蔵野創・小学館/灼熱カバディ製作委員会

主人公もカバディのルールを知らない。そんな素人だからこそ、
彼に教えるという体で視聴者も「カバディ」というスポーツのルールを
知ることができるようになっている。
マイナーなスポーツだからこそ「どういうスポーツなのか」を
序盤で描くことで主人公にも視聴者にもカバディというものに
興味をもたせようとしている導入は丁寧だ。

簡単に言えばカバディは「鬼ごっこ」だ。
敵の陣地と味方の陣地があり、敵の陣地で敵にタッチした後、
味方の陣地に逃げ切ればポイントが入る。
狭い陣地で逃げ回る中で攻撃側の時間は「カバディ」と
言い続けている間だ。

ボールのないラグビー、レスリング、ドッジボールと
色々なスポーツが混ざり合っている。
だが、基本的には鬼ごっこだ。複雑そうだがシンプルなルール、
そして「カバディ」と言い続ける謎のルールが絡むことで、
シンプルなスポーツの面白さが際立つ。

「一瞬のタッチ」を避ける面白さ、
陣地に「逃げきる」ことの面白さ。攻守の一瞬に面白さがあり、
そこにキャラクターごとの「判断力」と「能力差」が合わさることで
スポーツアニメとしての面白さが醸し出される。

カバディと言い続けられる約30秒
(現在はコロナによる影響で秒指定)
そんな30秒で点が入るかどうかが決まる。

阿呆がやるアホなスポーツと主人公は言い切るものの彼もアホである。
知らなかったとは言え相手を「殴り」、挑発に乗り、
「カバディ」というスポーツの面白さにハマっていく。
そんな主人公と同じく、視聴者も「カバディ」というスポーツに、
この作品にハマれる。

1話の丁寧な導入と、癖の強すぎるキャラクターのインパクトが
カバディと同じようにシンプルだが奥深い魅力を
1話から感じさせてくれる。

練習


画像引用元:TVアニメ「灼熱カバディ」公式サイトより
©2020武蔵野創・小学館/灼熱カバディ製作委員会

序盤は丁寧に「フォーメーション」などのカバディの細かいルールや
戦略を描きつつ、主人公の練習風景を丁寧に描いている。
彼は確かにサッカーでは才能があった、
だが、カバディでは別に天才ではない。

シンプルではあるが奥が深いカバディというスポーツを
1から主人公が覚えていくように視聴者も自然と覚えられる。
主人公の練習を通してチームメイトの特徴も描いている、
最初は主人公を含めメインキャラが4人しか描かれていない。

スポーツアニメは基本的に団体競技であることが多く、
敵チーム含めて多くのキャラが登場する作品が多い。
だが、この作品の場合は非常に少ない。
団体競技ではあるが試合に参加できるのは「7人」までだ。
チーム自体は12人まで認められるもののコートに入るキャラは7人。

メジャーなスポーツであるサッカーや野球やバスケより少ない。
だが、個人競技ではない。しかし攻撃するのは一人という
団体競技と個人競技の間にいるような絶妙な立ち位置であり、
それがスポーツアニメ特有のキャラ数の多さという欠点が
出にくくなっている

最初は脅され、馬鹿にしていたスポーツだ。
しかし、主人公はどんどん「カバディ」というスポーツの魅力に
取り憑かれていく。
練習すればするほど底の見えなくなる「カバディ」というスポーツの
面白さにハマり、スポーツの面白さを思い出す。

才能だけでは駄目だ、経験と努力がカバディというスポーツには必要だ。
だからこそ主人公の成長が面白い。
それがわかりやすく描かれてるからこそ面白さも伝わりやすい。
勝てなかった先輩に、練習し、努力し、追いつく。

追いついたからこそ「主人公の才能」が目立ってくる。
回避の達人、サッカーでは誰にも倒されなかった主人公の才能が
経験と練習を積むことで「カバディ」というスポーツに活かされる。

じっくり


画像引用元:TVアニメ「灼熱カバディ」アニメ本PVより
©2020武蔵野創・小学館/灼熱カバディ製作委員会

この作品はアニメーションとしてはやや弱い部分が多い。
スピード感を優先しぬるぬるに動かすことで試合の凄さを
演出する作品も多いが、この作品の場合は「1枚絵」の迫力で見せている。

その1枚絵と1枚絵を「スロー」でじっくり見せる。
触れる手の動き、一瞬の体の動きを文字演出とスロートともじっくり見せ、
次のワンカットへとつなげることで試合を見せているものの、
やはり「予算のなさ」は感じさせる。

本来ならばスローの部分を素早く動かし、他のスポーツアニメのように
見せたほうが、カバディという作品の迫力は伝わりやすい。
ただ予算がなく、作画枚数を稼げないからこそ演出で
それを言い方は悪いがごまかしつつもしっかりと見せている。

やや物足りなさは感じる部分であり、もっと俯瞰でカバディという
スポーツの流れを1度位は見たかったという部分はあるものの、
1枚1枚の絵が力強く描かれているからこそ見ごたえが生まれている。
アニメーションとしての動きの面白さを追求できないからこそ、
演出と「音」と声優の演技でうまく見せている。

ルール


画像引用元:TVアニメ「灼熱カバディ」アニメ本PVより
©2020武蔵野創・小学館/灼熱カバディ製作委員会

序盤はルール説明も多いが一気に説明はしない。
正式な試合がまだ始まらないからこそ、
1つ1つのルールを丁寧に描いている。
正式な人数、体重制限と新しいルールがでてくるたびに思わず
「へぇー」と唸ってしまう。

特に体重制限は面白い。
「カバディ」は鬼ごっこのようにタッチすることが重要だ、
そのためにはリーチ、身長や手足の長さは重要だ。
だが同時にタッチした敵を逃さない、もしくはときには強引に逃げるために
力も必要だ、筋肉だ。

しかしカバディは「80kg」という体重制限がある。
身長が高ければリーチとスピードを伸ばし、低ければパワーを伸ばす。
チームとして自分はどの立ち位置につき、
自らをどう伸ばしていけばいいのか。

ゲームにおけるキャラクターの育成方針のように、
この作品においてもキャラごとの育成方針がある。
それがキャラクターの特徴にもなっている。

キャラクターごとの「カバディ」の言い方1つでキャラの特徴になる。
声優さんの演技と声の魅力とキャラの魅力が
「カバディ」という一声に現れる

カバディというスポーツそのものが
ここまで「創作物」に向いているとは私は思わなかった。
主人公が馬鹿にしていたように、どこか私自身馬鹿にしていたカバディに
見返されるような気分になる。

導入を描き、主人公を描き、仲間を描き、ルールを描き、練習を描き、
準備は整った。「試合」の時間だ。

練習試合


画像引用元:TVアニメ「灼熱カバディ」アニメ本PVより
©2020武蔵野創・小学館/灼熱カバディ製作委員会

練習試合の相手も癖の塊だ。
スポーツアニメの対戦相手は主人公チームより必然的に
キャラ描写の尺が短くなりやすい。この作品もそんな短い尺の中で
主人公チームよりも癖の強い対戦相手を描くことで、
敵の強さと、どんな勝負をするのかという期待感を感じさせてくれる。

互いに礼節などはない。ライバルだからこそ煽り倒す(笑)。
試合前のお膳立てを5話のAパートまでたっぷりと描き、試合が始まる。
試合が始まっても止め絵とスローの多さは相変わらずだが、
部員同士の練習試合よりもスピーディーに試合が描かれることで
部員同士の練習試合よりも止め絵の多さはそこまで気にならない。

一進一退。呼吸するまもなく攻守が入れ替わる。
部員同士の練習試合よりも試合の流れがわかりやすく、その中で
主人公の成長と実力、そしてライバルの実力が際立つ。
元サッカー選手だからこその「ハットトリック」と
元水泳選手だからこその「1分半のカバディ」。

だが現実を知る。彼らは決して強豪校ではない。
相手は世界レベルの選手がいる強豪校だ。
しかし、主人公側にも世界レベルの選手がいる。

団体戦であり個人戦

ときにカバディは1VS1という状況が作られる。
団体戦であり個人戦、因縁のある二人の個人戦が
団体戦の中で描かれる面白さはカバディだからこそだ。
とても練習試合をは思えない。

一瞬の瞬間に行われる心理戦という駆け引き、
あえて止めることもある、あえて引き返すこともある、
あえて犠牲になることもある。
選手一人一人の活躍が選手一人一人の魅力につながり、
それがチームを勝利へ導く。

主人公は世界レベルを知る。
圧倒的な敵の部長と自らのチームの部長のとてつもない実力、
そんな実力を見せつけられたからこそ悔しさを感じてしまう。
だが、カバディは個人競技ではない、団体競技だ。

故に主人公は託される。「サッカー」では味わえなかった経験だ。
自分が活躍する、自分が勝つためにではない、
「チームが勝つ」ために彼は本気になる。

「スポーツなんて元々バカらしいものなんだ。
どいつもバカみてぇに考えてバカみてぇに練習して、
最後は勝ってバカみてぇに喜ぶためにやってんだ」

最後の一歩、最後の一手まで彼は諦めない。
己の中のすべてを燃やし尽くし、彼は「カバディ」とつぶやく。
カバディと叫び続ければ攻撃は終わらない。

主人公だけではない。
才能も実力も天才には追いつけない「彼」もまたチームメイトだ。
「4人」でたった「1人」を止める。
たったそれだけのシーンだ、だが、そんなシーンがこの作品は
あまりにも熱い。

まさに「灼熱カバディ」。
こんなに燃えたぎる試合を見せてくれるのかと震えてしまう。
あと一歩で届かない、だが、負けて学ぶこともある。
その悔しさが次に繋がる。

中盤で描かれる初めての試合、練習試合と思えないほど熱い試合、
主人公が大会での試合を望むように視聴者も早くまた
こんな試合が見たいと思わせてくれる。

新入部員


画像引用元:TVアニメ「灼熱カバディ」アニメ本PVより
©2020武蔵野創・小学館/灼熱カバディ製作委員会

終盤になると新入部員が3人入ってくる。
これまた癖の強い3人だ。終盤から参加するキャラではあるものの、
外見的特徴の癖が今まで出てきたキャラよりも強く、
8話でしっかりと掘り下げ、部員同士の練習試合の中での活躍を描くことで
3人の新キャラの掘り下げの不足感が薄まる。

この作品のキャラ描写のうまさが終盤になってもしっかりと効いてくる。
カバディ経験のない3人を主人公が見ることによって、
チームメイトを活かすプレイを見定めていく。
新キャラの掘り下げのエピソードにうまく主人公の成長と
考え方の変化も盛り込んでいる。

部員同士の練習試合、そんな練習試合でさえ熱い。
試合がそのままキャラクター描写に繋がり、成長の描写にもなる。
試合が描かれれば描かれるほど、この作品は面白くなる。

2度目の練習試合


画像引用元:TVアニメ「灼熱カバディ」アニメ本PVより
ラストに描かれるのは2度目の他校との練習試合だ。
1度目の練習試合の相手と違って敵は爽やかなイケメンだ。
癖という意味では最初の練習試合の相手の方が上だ。
だが、その分、技術で見せつけてくる。

主人公たちの実力も確実に上がっている。
2度めの練習試合だからこそメンタルでも負けていない。
そんな成長を描きつつ、相手の意表をつく「技術」が
ライバルキャラである彼らのキャラクターを形作っている。

たった一人のエースだ。1度はカバディをやめていたエース、
主人公たちの学校の部長に憧れ、彼の力になろうとしていたエース。
そんな彼の実力。たった一人で「6人」タッチする圧倒的な強さ。
1VS6で負けないエースの描写にふるえてしまう。

そこにチート感や卑怯な感じ、ご都合主義な描写がない。
ライバルキャラのエースとしての「純粋な強さ」に納得できる
試合の描写があり、主人公たちと同様にエースの強さに
あっけにとられてしまう。

そんなエースの強さに圧倒されるのは視聴者だけではない彼らもだ。
「自分が目指した方向は間違ってたんじゃないか」
「自分なんて居ないほうがいいんじゃないか」
圧倒的なエースを前にしたからこそ悩む。
ただ汗流すなら誰でもできる。努力の質が結果につながる。

彼らはそんな悩みを乗り越える。
ときには部長のアドバイスで、ときには結果で。
それはもはや意地だ。負けたくないという意地が彼らの努力を実に結ぶ。

燃えたぎれ


画像引用元:TVアニメ「灼熱カバディ」アニメ本PVより
©2020武蔵野創・小学館/灼熱カバディ製作委員会

彼らは荒削りだ。決して強豪校ではないうえに全員が全員、天才ではない。
才能があるものも経験が足りていない。
相手はたった一人のエース、そんなエースにたった一人がしがみつく。
執念と意地がエースに打ち勝つ。才能という壁を努力と意地でぶち壊す瞬間。

練習試合とはとても思えない。誰もが本気だ。
本気すぎて練習試合であることを忘れてしまう。
どんな状況でも、逆転のチャンスが有っても、攻撃するときは一人だ。
チームメイトは見ていることしかできない。

チームメイトの思い全てが主人公の背中に乗る。
燃え尽き、しがみつき、振りほどき、帰り着く。
全力の勝負は比喩ではなく「手に汗握る」勝負だ。

1クールで描かれた試合はたった2試合だ。
しかも2試合とも練習試合でしかない。
だが、だからこそ「大会」でのリベンジを見たいと思ってしまう。

総評:これぞカバディ!


画像引用元:TVアニメ「灼熱カバディ」アニメ本PVより
©2020武蔵野創・小学館/灼熱カバディ製作委員会

全体的に見て素晴らしいスポーツアニメだ。
決して才能だけでは勝てない、努力が積み重なることで
天才がより強く、才能がないものも天才に勝つことが出来る。
それがカバディというスポーツだといわんばかりのご都合主義のない、
スポ根とはまさにこのアニメのことを言うと言いたくなる作品だ。

ただ惜しむべきは予算の少なさを感じる部分だろう。
カバディのシーンでの「止め絵」の多さは気になる部分であり、
スローの演出やアップも多く、
アニメーションの部分では物足りなさを感じてしまう部分が多い。
演出でそれを旨いことごまかして入るものの、時折それがふとを顔を出す。

ストーリー、キャラククター、声優は完璧だ。
「カバディ」の一言、そんな一言でどんなキャラかを印象付けられる
声優の演技と声も素晴らしく、癖の強いライバルキャラも
強烈に印象がつく。
カバディというスポーツはアニメ向きだ。アニメ映えするスポーツだ。

しかし、アニメーション部分での物足りなさがある。
本当にもったいない。この作品の欠点はアニメーションとしての物足りなさと尺くらいだろう。まさか1クールで
大会すら始まらないとは思わなかった(笑)

2期があるかどうかはわからないものの、原作ストックは十分ある。
できれば2期は2クールで、予讃たっぷりで、この作品の、
彼らの本気のカバディを見たい。
そう思わせてくれる作品だった。

個人的な感想:カバディカバディカバディカバディカバディ


画像引用元:TVアニメ「灼熱カバディ」アニメ本PVより
©2020武蔵野創・小学館/灼熱カバディ製作委員会

カバディというスポーツ自体はだいぶ昔のバラエティになるが
「内村プロデュース」という番組で芸人がプロ相手に
ルールもわからないままやるという企画で見たことがあるくらいだった。
名前だけ走っているものの細かいルールもよくわからない。
まさに主人公と同じ状態だった。

客観的に「カバディ」というスポーツの知名度の無さを
この作品は理解しており、時にそれを自嘲しながら、
主人公と同じように「カバディ」というスポーツの面白さに
ハマラせてくれる作品だった。

「」は面白い?つまらない?

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