「ツルネ -風舞高校弓道部-」レビュー

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青春
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評価 ★★★★☆(60点) 全13話

あらすじ 鳴宮湊は、中学最後の弓道部の試合で負けてから弓道を辞め、風舞高校に進学する引用- Wikipedia

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雅な奥ゆかしさすら感じる弓道アニメ

本作品は京都アニメーションによるTVアニメ作品。
監督は山村卓也。

キャラクターデザイン


引用元:ツルネ -風舞高校弓道部- 公式サイトより
©綾野ことこ・京都アニメーション/ツルネ製作委員会

この作品はタイトルからも分かる通り弓道をテーマにした作品だ。
弓道部をメインとした作品であり、メインキャラクターは男子高校生だ。
ただ、メインキャラのデザインがあまりパッとしない。

黒髪、眼鏡、茶髪、赤髪と同じ制作会社の「Free」とカブっており、
ある意味でテンプレート的な女性向けアニメにおける男性キャラではあるが、
「目」のデザインのせいかどうにものっぺりとしている。
特に主人公は他のアニメだったら「モブキャラ」に見えてしまうくらい
個性を感じにくいデザインだ。

いい意味で言うならばアニメアニメしてないデザインとも言える。
NHKで放送される作品なだけに「一般受け」を狙っている部分もあるのだろう、
Freeのようにビビッと来るキャラデザではないが、
テンプレートに乗りつつも少し刺激を少なめにしたキャラデザだ。
「あからさま」かつ「狙った」デザインが嫌いな方には
このくらいの塩梅のキャラデザのほうが受け入れやすい部分もあるだろう。

ただ「弓道」という競技を描く上である程度の身長が必要だったのが分かるが、
全員八頭身どころか9頭身くらいに見えてしまうのは気になる所だ。
公式設定的に170cmや180cmの身長なのだが、200cmくらいに見える(笑)

ベタ


引用元:ツルネ -風舞高校弓道部- 公式サイトより
©綾野ことこ・京都アニメーション/ツルネ製作委員会

はっきりいってストーリーはベタ中のベタだ。
かつて弓道をやってた主人公だが、とある理由で辞めてしまっている。
しかし高校に入ったのをきっかけに、幼馴染や同級生との流れ、
自分と同じ悩みを抱える年上の男性と知り合ったことで
再び弓を射るようになるという展開だ。

びっくりするくらい王道であり、特徴がない。
このような展開のスポーツアニメはスポーツを描く上では使い古された展開だ。
1話の段階での引きは甘い。

弓道というものを中心に描くこと自体はアニメでは初ではあるものの、
それ以外の特徴がほとんどなく、キャラデザの薄さもあいまって「刺激」がない。
このベタな展開を「王道」と捉えるには今一歩盛り上がりが薄く、
もう1刺激なにかほしい所だ。

同じ制作会社の「Free」の1話は露骨かつあざとい部分も多かった。
だが、そういった刺激があることで作中のキャラに対しての好感が強まり、
自然とストーリーに入っていけたのだが、この作品は刺激が薄い。
いい意味でも悪い意味でもストレートな作品という印象が強く、
序盤でつまらないと感じてしまう人も多いだろう。

早気


引用元:ツルネ -風舞高校弓道部- 公式サイトより
©綾野ことこ・京都アニメーション/ツルネ製作委員会

ストーリー展開もやや遅い。
主人公が部活に正式に入るまで「3話」もかかっており、
1クールのアニメとしてはこの展開の遅さはやや気になる所だ。

そして主人公のトラウマである「早気」。
これは弓道においては有名なスランプの1つらしく、
色々な原因から生まれてしまう「癖」のようなものらしい。
簡単に言えば普通より早く弓を離してしまう。

これが何らかの原因で起こってしまった出来事なら、
その原因を取り除くこと自体が作品の目的の1つになったかもしれないが、
この作品の場合は明確な原因はない。主人公は大会のときの
緊張や焦りから「早気」になってしまい未だに抜け出せていない。

明確な原因がないからこそ厄介だ。
この作品における「早気」はある意味、思春期の少年少女の悩みというか
言い表せないモヤモヤ感の比喩のようにもなっており、
弓道部の中で自分の弓道を見つめ直しながら、自分自身をも見つめ直す。
そういった要素が分かってくると
王道な青春ストーリーの面白さが徐々に顔を出してくる。

盛り上がり所の薄さ


引用元:ツルネ -風舞高校弓道部- 公式サイトより
©綾野ことこ・京都アニメーション/ツルネ製作委員会

この作品は序盤、あまり盛り上がらない。
主人公のトラウマ、部員との交流、合宿などと王道な流れではあるのだが、
その間に盛り上がるような試合のシーンというのは無い。
序盤で女子との練習試合が一回あるくらいで試合が殆ど描かれないというのは
ちょっと盛り上がりに欠けてしまう。

丁寧にキャラクター描写をしつつ王道な展開で描いてはいるのだが、
「先が気になる」というような感じではなく、
じわじわとした積み重ねを丁寧に行っている。
よく言えば丁寧なのだが、悪く言えば盛り上がりに欠けて薄味だ。

その中で男性キャラクター同士の「BL」的な雰囲気を匂わせるシーンもあるのだが、
この点に関してもあくまで匂わせるくらいで露骨ではない。
キャラクターデザインやストーリー展開もそうだが、
この作品はあと一歩で刺激的になる部分を二歩手前で抑えてるような、
どこか弓道という競技に見合う「奥ゆかしさ」のようなものを感じる。
言い方を考えれば歯がゆいとも言えるのだが。

弓道の美しさ


引用元:ツルネ -風舞高校弓道部- 公式サイトより
©綾野ことこ・京都アニメーション/ツルネ製作委員会

この作品は非常に丁寧に「弓道」というものの描写している。
弓を引く姿、弓を引いた後の立ち振舞、矢が放たれたときの音、
放たれた矢の反動で震える弓の振動音。

「音」に関しては題名にもなっているだけあって美しく、
作中のキャラクターが「弓」を引くキャラクターに魅了されるのが
同じように伝わるように繊細な描写になっており、
高校生の弓道部員の弓の放ち方と顧問の先生の弓の放ち方での
美しさの違いが明確に分かるようになっている。

キャラクターごとの弓の使い方、矢の音が微妙に違い、
細かいニュアンスではあるものの弓道というものを扱うからこそ繊細に描いている。
大げさな演出がなく手堅い演出の中で「魅せる」のは
流石、京都アニメーションだ。

試合


引用元:ツルネ -風舞高校弓道部- 公式サイトより
©綾野ことこ・京都アニメーション/ツルネ製作委員会

中盤をすぎるとようやく試合が描かれる。ただ、
もうここまでレビューを読んだ方なら分かると思うが「地味」だ(笑)
これは作中のキャラクター自身が言及してることもでもあり、
弓を引き矢を放ち、的に当たれば「よぉし」と静かに歓声を送る。

テニスや水泳のように戦うという感じではない。
タイムや点数を競うのではなく「何発あたったか」という勝負の付け方など、
このあたりが今までアニメと言う媒体で弓道というものが
描かれなかった原因だろう。
弓道でアニメーションとしての面白みを引き出すのはなかなかに難しい。

試合においても「何発当たるか」というのが重用な部分であり、
団体戦も個人戦でも「自分との勝負」という感じが強い。
勝負してる相手を意識してしまっての精神的なブレ、技術を意識したあまりのミス、
技術的な部分ももちろんそうだが、精神的な部分での駆け引きが強いスポーツだ。

それゆえに「キャラクターの心理描写」が重要になってくる。
中盤まで殆ど試合を描かず、
主人公やメインキャラクターの描写をしっかりしてきたからこそ
そのキャラクター描写が中盤からの試合描写で生きてくる。

少年たちの迷い、葛藤、緊張、発展途上の彼らの心と
技術だからこそ試合でブレが生まれ負ける。
「試合で何故負けたのか」というのが見てる側にも分かりやすく、
丁寧にキャラ描写と弓道というものを描写してきたからこそ、
それが強く納得できる。

そして当然ながら主人公の「早気」も終盤に差し掛かっても治っていない。

成長とBL


引用元:ツルネ -風舞高校弓道部- 公式サイトより
©綾野ことこ・京都アニメーション/ツルネ製作委員会

この作品は王道の流れのある作品だ。だからこそ主人公の成長も「王道」だ。
自分自身を見つめ直し、何がダメなのか。
それがはっきりとわかったからこそ「早気」を克服する。
それがきちんと矢にも現れる。

しかし、主人公の成長をきっかけに別のキャラクターの悩みもわかってくる。
キャラクター同士の関係性の微妙な変化や、ライバルの存在、
このあたりは少し「BL」的な雰囲気もあり、好みの分かれる描写ではあるものの、
主人公が乗り越えて成長したからこそのキャラ描写だ。

ただ、終盤でこれくらいのBL的な雰囲気を匂わせるなら、
もう少しこのくらいの要素を序盤から匂わせておけば、
1話切りないし3話切りした人は減ったのでは?と感じる部分だ。

女性やBL要素が好きな方からすれば、終盤のBL要素は今まで刺激が薄かった分、
反動でストレートに突き刺さってしまうかもしれない。
このあたりはやや好みが分かれる所だ。

終盤


引用元:ツルネ -風舞高校弓道部- 公式サイトより
©綾野ことこ・京都アニメーション/ツルネ製作委員会

終盤の緊張感は凄い。この作品は試合でも盛り上がりが薄かったのだが、
終盤の試合だけは緊張感がある。
師に教わったことを自分の中で反復しつつ冷静に当てようとする。
だが、それでも当たらない。それどころか主人公は焦りすら感じ始める。

1射でもミスれば試合に負ける。
そんな緊張感の中で主人公はある種の「境地」にたどり着く。
それはこの作品の「1クール」で主人公が少しじつ自覚し、
少しずつ成長したからこその境地であり、
「自分を信じる」という至極当たり前だが、難しい境地へと至る。

言い方を変えれば「吹っ切れた」だけだ。
しかし、その吹っ切れたという状況や過程を
この作品は1クールかけてしっかりと弓矢のごとくまっすぐ描き切った作品だ。
1クール見続けた視聴者だからこそ、
この作品の面白さが終盤になって「明確」に自覚することができる。

そして最終話の試合。
それまで試合の盛り上がりというのは薄かった。
しかし、最終話の試合は「1射1射」きちんと描写し、ライバルとの戦いを描く。
吹っ切れた彼らの弓道は美しさすら感じさせるほどの描写であり、
最後の最後にして地味だった演出がきらびやかなものになる。

1クールの積み重ねを意識し、集大成を最終話で見せつける。
地味だった試合が綺羅びやかものへと変化する様は
彼らの成長をも見てる側に実感させる素晴らしい演出だった。

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総評:王道に貫く難しさ


引用元:ツルネ -風舞高校弓道部- 公式サイトより
©綾野ことこ・京都アニメーション/ツルネ製作委員会

全体的に見て1クールでしっかりとした作品になっている作品だ。
序盤から中盤にかけての盛り上がりの薄さ、キャラデザや薄いBL要素など、
刺激的な部分が少なく、それゆえに地味かつ面白さがわかりにくい。
だが、そこを乗り越えて話を見続けるとこの作品の面白さが、
「王道」のまっすぐな魅力が垣間見えて、最終話でそれが確実なものになる。

この作品は面白い。だが、その面白さが分かるのが遅い。
終盤で強まるBL的要素や、
「地味で盛り上がりに欠ける」という部分は好みが分かれてしまう部分であり、
終盤まで見続けないとこの作品の面白さがしっかりとは伝わらない。

最近のアニメは刺激的で濃ゆい要素で1クールの序盤を惹きつける作品が多い。
しかし、この作品の場合はまるですまし汁のごとく、
透き通った見た目と派手さはないが飲んでいくうちに深い味わいを感じさせるような
そんな雅な奥ゆかしさのある作品だった。

個人的な感想:一気に見るのが良かった


引用元:ツルネ -風舞高校弓道部- 公式サイトより
©綾野ことこ・京都アニメーション/ツルネ製作委員会

おそらくこの作品は私のように1話から
最終話まで一気に見るスタイルが合っている。
特に序盤は面白さを感じにくく地味かつ盛り上がりが薄い。

しかし、その序盤を乗り越え中盤になると面白さを感じだし、
最終話ではきちんとした面白さと1クールという尺をうまくいかした
ストーリー構成の良さを感じさせてくれる。
この作品は最終話まで見て初めて面白かったと言える作品だ。

ただ「ホモ弓道」なんて言われる通り、そういった要素はある。
単純な女性向け作品というよりはBL要素も少し感じさせる部分があり、
序盤の盛り上がりの薄さやそういった好き嫌いの分かれる要素など
気になる部分も多い。

しかし、そういった部分を抜けば王道な青春ストーリーと
弓道をうまく絡めており、続きを描こうと思えば描けるが
1クールの時点できっちりとまとまっている。
そういった部分も高い評価につながった作品だ。

惜しむべくは売上があまり芳しくない所だ。
この作品は2時間位の総集編でまとめると見やすくなりそうな作品なのだが、
京都アニメーションはよく総集編映画をやるだけに、
期待したい所だ。

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