セクシー

「戦×恋」レビュー

セクシー

評価 ★☆☆☆☆(19点) 全12話

あらすじ 亜久津拓真は幼いころから自身の怖い顔付きと威圧感のせいで周囲から怖がられ、謂れのない誹謗中傷に晒されていたため、人間恐怖症を患っていた。母引用- Wikipedia

引っ叩きたくなる主人公

原作は月刊少年ガンガンで連載中の漫画作品。
監督は直谷たかし、製作はフッズエンタテインメント

何番煎じだ


引用元:©朝倉亮介/SQUARE ENIX・「戦×恋」製作委員会

主人公は16歳の高校生だ。
彼は180cmという高身長と体格、怖すぎる顔つきとギザギザな歯と顔の傷のせいで
学校では浮いた存在になっており、周囲からは怖がられて
「アクマ」とまで呼ばれている。

もはやこの時点で何番煎じだと思うほどの主人公設定でしか無い。
多くの作品を見た人ならば「どうせ実は怖くない主人公なんだろう」と
見透かしてしまうほどの設定だ。

そんな主人公の家には「8人」のヒロインが同居している。
彼は人間恐怖症であり、来年受験を控える身だ。
それなのに8人のヒロインと何故か同居している。
そうかと思えばいきなり「悪魔」が現れて、
ヒロインが何故か服を脱ぎ、主人公とキスをしたら変身する。

よくわからない状況、8人という多すぎるヒロインと、いきなりバトルと
物語の導入としてはかなり強引だ。
敵とは何度か戦ったことがあるようで1話では「上級悪魔」が
召喚されヒロインたちが困惑しているが、そもそも普通の悪魔との
戦いを1度も見てないのでその困惑が伝わらない。

どうやら8人のヒロインはヴァルキリーらしく、
彼女たちは「恋」をすればするほど強くなり、その恋の相手が主人公だ。
これまたどこかで見たことのあるような設定でしか無い。

強引


引用元:©朝倉亮介/SQUARE ENIX・「戦×恋」製作委員会

主人公はかなり強引な立場に置かれている。
いきなり「オーディン」に選ばれて「ヴァルキリー」達の恋人にさせられ、
世界の危機である「悪魔」と戦うハメになっている。

彼自身は人間恐怖症であり、それなのに8人のヒロインといきなり同居させられ、
デートさせられたり、いきなりキスされたり、胸を触らせたりと、
そこに主人公の「意思」は存在しない。
本来こういった作品は最低限、ヒロインに対して好意があるものだが、
ヒロインに対する主人公の「好意」がまるで感じられない。

そもそも人間恐怖症であるがゆえに恋などはそれ以前の問題だ。
主人公に対する好意があるヒロインはいるものの、
彼女たちの目的は人間との「恋」のパワーでレベルを上げて悪魔を倒すことだ。

その「恋」もよくわからない。
何やら、それぞれのヒロインには「クエスト」のように色々な項目が存在する。
例えば手作りのお弁当を作り、縛り上げた主人公の口にそれを放り込む。
思わずそれを主人公は吐き出して、クエスト自体は失敗するものの、
もし飲み込んでさえいれば成功になっていた。

そこに「感情」は存在しない。
1話では主人公の意思などなくキスされ、胸を揉まされたが、
それでクリアし経験値を得ている。
互いの意思の疎通や相互理解がないのにそれを「恋」という違和感は半端ない。

主人公が嫌がっていても、ヒロインが別に主人公を好きでなくても
「行為」させしてしまえば経験値をもらえる。とんでもない設定だ。
これならばあーだこーだ駆け引きせずに、主人公を縛り付けて
バイアグラでも飲ませて夜這いしたほうが経験値効率は良いのでは?
と下衆い考えすら浮かんでしまう。

主人公


引用元:©朝倉亮介/SQUARE ENIX・「戦×恋」製作委員会

ハーレムラブコメの主人公の場合、
主人公が多くのヒロインにもてる理由=魅力がなければ厳しい。
ただ1話から無条件に近い好意を抱いているヒロインもいて、
その理由も「顔が好み」くらいの浅い理由でしかない。

しかも主人公がずっと卑屈だ。
「どうせ俺なんか」とネガティブな思考でうじうじしていることが多く、
ヒロインたちに色仕掛けされても、強く拒否するわけでも、
照れるわけでも、その状況を楽しむわけでもない。ただ焦っているだけだ。
ヒロインに首筋にキスされても、彼は怯えるだけだ。

ずーっとウジウジウジウジ、勉強勉強と繰り返している。
主人公に感情移入するわけでも、好感を持てるわけでもない。
これで主人公の「対人恐怖症」がヒロインたちとの交流で治っていったり、
治そうとするエピソードがあるならいいが、序盤から中盤にそういう話は一切ない。

主人公の問題点を解決せずに、ヒロインはそんな主人公に色仕掛けする。
ヒロインたちは主人公のことはどうでもよく、
彼とエロいことや、イチャつければいいのかもしれない。
そう思ってしまうほど主人公の問題が解決しない。

なかなか精神的に成長しない主人公に徐々に苛立たちすら感じてしまい、
そんな主人公をヒロインたちは「かっこいい」と言ったり、ドキドキしたりする。
この違和感がちぐはぐな感じを生んでおり、いまいち作品の世界観にハマりきれず
キャラクターにも愛着をモテない。

しかもナチュラルにヒロインを傷つける。
例えば学園祭でダンスを踊ることになり誰が相手を務めるかという
話し合いが行われる。明らかに主人公に対して好意がある「七樹」は
ツンデレ全開にしつつも彼と踊ることを希望していた。

そんなヒロインに対して「七樹さんとだけは行きたくない」と言い放つ。
彼女が人気者で周囲の目線が怖いという理由ではあるものの、
明らからに彼女を傷つけるセリフだ。もともと印象の悪い主人公ではあったが、
この5話のセリフで主人公に対して嫌悪感すら抱く。

9人のヒロイン


引用元:©朝倉亮介/SQUARE ENIX・「戦×恋」製作委員会

ヒロインはたしかに可愛らしいが、そのヒロインの魅力にふさわしい主人公ではなく
主人公に対するヒロインの気持ちも、いわゆる「担当回」が来ないと分からない。
担当回が来て初めて、そのヒロインがどんなキャラで
主人公に対してどう思ってるかが分かる事が多い。

それが単純に9人分盛り込まれてる。1クールのうち7割近く使って
ようやくメインキャラの紹介が終わる感じだ。
9人のヒロインという明らかに多いヒロインをさばくのに必死だ。
しかも1クールではあまり掘り下げられず影の薄いキャラも居る。

例え9人のヒロインの中に視聴者が好きになったヒロインが出来ても、
ヒロインの出番は9分の1のため極端に出番の少ないヒロインも居る。
主人公だけは皆勤賞だが、魅力のない主人公が皆勤賞でも面白さは生まれない。

そもそもヒロインはヒロインで主人公の意思など無視で
強制的に自分の経験値をあげようとしており、自分勝手でしか無い。
世界の平和がかかってるのかもしれないが、
それならもう少し主人公に対して歩み寄ってほしいと思ってしまう。

勝手に現れて勝手に居候してきて勝手にデートやらイチャつきやらを要求する。
あまりにも自分勝手な行動だらけなヒロインたちにいまいち好感が持てない。
「かわいい」と言われたり「頭を撫でられた」だけでデレるような
チョロすぎるヒロインなのも好感が持ちづらい原因かもしれない。

セクシーシーン


引用元:©朝倉亮介/SQUARE ENIX・「戦×恋」製作委員会

主人公とヒロインたちは戦闘力を上げるために様々な行為をする。
キスだったり、腕を組んだり、デートをしたり。
肉体的接触の具合が多いほど経験値は多いようで、
必然的に「セクシーシーン」は多い。
だが、セクシーシーンは多いのにそのセクシーシーンがエロくない。

毎話毎話ラッキースケベやそういうシチュエーションが多く描かれるが、
結局はどこかで見たことのあるシーンでしか無く、オリジナリティがない。
同じような設定でも「魔装学園H×H」という作品では
「移動式ラブホ」などネタになる要素も多かった。

しかし、この作品はネタにもならず、セクシーでもない。
魔装学園H×Hも色々と突っ込みどころのある作品だが、
その突っ込みどころがバカっぽさを生んでおり、笑いになっていた。
しかし、この作品は魔装学園H×Hの劣化コピーにしかなっていない。
馬鹿になりきれていない。

オリジナリティのない設定、オリジナリティのないキャラ、
オリジナリティのないセクシーシーンと、
この作品を構成する要素が何かしらの作品のパッチワークでしか無い。

そのオリジナリティのないセクシーシーンを9人のヒロインとやる。
ヒロインごとに反応の違いやシチュエーションの違いはあるものの、
9人もいれば飽きてしまう。結局、ヒロインが多すぎる。

戦闘シーン


引用元:©朝倉亮介/SQUARE ENIX・「戦×恋」製作委員会

この作品は設定的に戦闘シーンが多い作品だ。
しかし、その肝心の戦闘シーンが本当につまらない。
演出でごまかし、止め絵だらけの戦闘シーンであり、
ヒロインと長々とイチャイチャしてようやく変身して戦いだしても、
5分もかからずに終わることのほうが多い。

シリアスなはずの戦闘シーンの最中でもギャグを入れてくることがあるのも厄介だ。
戦闘中であろうとも「5分間裸で濃厚ディープキスをする」など
無駄に時間のかかるクエストをこなしたりすることも多く、間延びしてしまう。
これですぐにキスし始めるならいいが、戦闘中で体が汚れているからと
体を拭かせるため、余計に間延びする。

戦闘中にやるというリスク、5分間という長い時間、
更にいきなり裸でディープキスとかなり難易度の高そうなクエストなのに
レベルが2しか上がらない。
かなり過激かつ難易度が高いことをやってるはずなのに経験値計算が意味不明だ。

せっかく盛り上がりそうな戦闘なのに、ダラダラとイチャイチャシーンを入れ
盛り上がりの腰を折る。わざとやってるんじゃないかと思うほどテンポが悪い。
難易度の高いクエストをこなし、レベルも上がって強くなったのに
3分位でその戦闘シーンは終わってしまう。

結局、制作側も見せ場はヒロインとの「イチャイチャ」であり、
戦闘シーンはどうでもいいのだろう。
演出でごまかした派手なエフェクトだけの戦闘シーンは見ていて
何も盛り上がらない。

話の盛り上げ方もわるければ、戦闘シーンのやる気も感じられない。

イメクラ


引用元:©朝倉亮介/SQUARE ENIX・「戦×恋」製作委員会

中盤になってくるともはや「イメクラ」みたいなセクシーシーンが増えてくる。
ヴァルキリーたちは恋の力で強くなり、主人公と色々な事をすることで
経験値を得ることが出来てレベルを上げられるはずなのに、
「恋」の部分はどこ言ったのか?と思うほどの安易なシーンだ。

例えば「お医者さんごっこ」をしたり、ドSプレイやドMプレイなどをシたり、
アイドルに際どい格好をさせて撮影会をしたりと、電車で痴漢だったり、
「恋」という感情は一切関係ないようなシチュエーションプレイが多すぎる。

いっそ一線を越えてヤりまくるなら突き抜けたバカバカしさと
面白さが生まれたかもしれないが、原作が少年誌であるがゆえに一線は越えない。
なら、その一線を越えないからこその「Toloveる」のようなギリギリのラインや
セクシーシーンなのに笑えるようなシーンになってればいいが、
この作品はそういうシーンは作れていない、ただのイメクラだ。

シチュエーションプレイまがいのことをしてるだけにすぎず、
中盤以降はそんなシーンが多い。
キャラクターの魅力がしっかり描かれて、そういうシーンになるならいいが、
キャラクターの魅力もろくに描かれない状況でそういうシーンになっても
雑に感じるだけだ。

別のヒロインでやったシチュエーションと同じシチュエーションでやったりと
制作サイドの「シチュエーション」の引き出しが尽きていくのを感じる。


引用元:©朝倉亮介/SQUARE ENIX・「戦×恋」製作委員会

ヴァルキリーたちの敵は「邪神派」と言われており、
序盤からヴァルキリーたちの前に現れて悪魔をけしかけたり、
襲いかかってきたりする。
彼らの目的は「世界を滅ぼす」という何のひねりもない悪役そのものだが、
正直言ってヴァルキリーたちなんかよりもよっぽど魅力がある。

敵である邪神派もヴァルキリーたちと同じようにレベルアップすることができる、
ヴァルキリーたちに追い込まれる中で彼女たちは仲間を守るために、
キスをしてパワーアップする。正統派の「恋」の力でパワーアップし、
主人公とヴァルキリーたちのようなイメクラ展開はない。

きちんと仲間のことを大事に思いがあるからこその行動であり、
主人公とヴァルキリーたちの関係性なんかよりも
よっぽど健全に見えてしまうから厄介であり、
ヴァルキリーたちよりもキャラ立ちしてて魅力がある。

そんな敵に対して「敵の恋人を殺して無力化する」作戦を
ヴァルキリーたちが建てるため、どっちが悪者なんだか
わからない感じになってしまう。

覚醒


引用元:©朝倉亮介/SQUARE ENIX・「戦×恋」製作委員会

終盤になってようやく主人公が覚醒し、力を得るものの正直今更感が強い。
いきなりヒロインたちを恋人と認め覚醒したかと思いきや、
人間恐怖症すら治ってしまっている。
1クール引っ張った人間恐怖症があっさり治ってしまっており、
これならもっと引っ張らずに中盤くらいで治せばよかったのにとすら思ってしまう。

終盤の展開が6話くらいに来れば作品全体の印象も違ったかもしれない。
それほど主人公に対する不快感がこの作品の足を引っ張ってしまっており、
急に最終話で主人公が「皆さんのことが好きです」とハーレム宣言をするのも謎だ。

キャラデザ的に1番かわいい四女が終盤にしか素顔を晒さないのももったいなく、
序盤から中盤までのどうでもいいとすら感じてしまうセクシーシーンや
キャラとの日常を削りまくって、もっと早く色々とストーリーを
進めてしまったほうが良かったのでは?と感じてしまう作品だった。

総評:この作品には馬鹿馬鹿しさが足りない


引用元:©朝倉亮介/SQUARE ENIX・「戦×恋」製作委員会

全体的に見て「恋の力」で戦うというもはや
何番煎じだと言わんばかりの設定で、その設定を
真面目にやってヒロインたちとの関係性を築いていくならまだしも、
安易な肉体的接触によるレベル上げという何年前のエロゲーだといわんばかりの
セクシーシーンばかりを描いてしまっている。

その「セクシーシーン」が面白ければ馬鹿馬鹿しさが生まれ
楽しめる部分もあるかもしれないが、
この作品は変に真面目な部分があるため馬鹿になりきれていない。
結局セクシーシーンとしても中途半端で、似たような作品の劣化コピーでしかない。

9人のヒロインというのがそもそも多すぎる。
1話の中に全員出そうとしたら一人あたり3分も出れない。
これでヒロインが半分だったり、1話から徐々に増えていくというような
展開なら一人ひとりの印象もきっちりとついたかもしれないが、
結局は居ても居なく居てもいいようなキャラが居たりと、さばききれていない。

ヒロインごとに明らかに描写に偏りが在り、
この「9人」のヒロインという多さを活かすには、
同時に何人ものヒロインとのセクシーシーンをしなければ活かしきれないが、
そういった同時プレイは殆どない。

最大の原因は主人公だろう。
終盤までウジウジしっぱなしで不快感を感じさせる主人公は、
「主人公」としての魅力がなく、終盤で覚醒されても今更感が強い。
もっと早い段階で覚醒していれば印象は違ったかもしれない。

ヒロインの多さ、主人公が抱える問題、世界観の設定など
「ゴチャゴチャ」している部分が非常に多く、
本来はそのゴチャゴチャ感を勢い任せに消化していったほうが
この作品の「面白さ」が伝わりやすいと感じる部分が多い。

ただアニメは原作の6巻まで描いているらしく、
原作あたりのアニメ化としては1巻あたり2話と順当とも言えるストーリー構成だ。
原作からの問題点をうまくアニメで解決しきれなかった作品と言えるかもしれない。

個人的な感想:超絶スロースタート


引用元:©朝倉亮介/SQUARE ENIX・「戦×恋」製作委員会

1クール終わった時点でようやく序章が終わったという感じもあり、
ここから物語が面白くなってヒロインたちとの仲も深まっていく
感じなのかもしれないが、正直、序章が終わるのが遅いと感じてしまった。

可愛いヒロインは多いものの使いこなせておらず、
1番可愛い子がほとんど出番がないのはもったいなさすら感じてしまった。
もっとテンポを上げるか、もっと馬鹿馬鹿しさに振り切れる内容だったら
楽しめる部分もあったかもしれないだけに、
もう少し制作側に「貫いた馬鹿馬鹿しさ」が欲しかったところだ。

原作ストックがあまりないため大胆な改変や
ストーリーのテンポを上げることは出来なかったのかもしれないが、
もう少しやりようがあったのでは?と感じてしまう作品だった

「」は面白い?つまらない?

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