アニメコラム

「2020年アニメ総決算!数字で見る2020年アニメ市場」アニメコラム

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夏の訪れを肌で感じる今日このごろ、
まだセミの鳴き声は聞こえてきませんが、
私の家では窓を開けているとセミの代わりに若者が
叫ぶ声が聞こえてきたりもします。

さて、こんなまどろっこしい挨拶でおなじみのアニメコラム。
今回は毎年必ずコラムとしてあげている「アニメ産業の売上」。
今後のアニメ市場を考えていきつつ、2020年のアニメを
振り返っていきたいと思います。

なお、データはコラム内の数字は
全てアニメ産業レポート2021によるものです。
合わせてご覧ください。
http://aja.gr.jp/jigyou/chousa/sangyo_toukei
(2021とありますが、2020年のアニメ市場のデータです)

2020年のアニメ市場


2020年は皆さんも御存知の通り「コロナ」の流行が始まった時期でもあります。
アニメ制作会社だけでなく、様々な会社がリモートワークへの移行や、
社内における感染対策や、感染者による休業などを強いられることも多く、
様々な業界が打撃を受けた年でもありました。

特にアニメ業家において1番痛かったのは「映画」が
上映できなかったことでしょう。
映画館自体も休業や感染対策に強いられることもあり、
映画自体が上映できない環境になってしまい、
更に、肝心の映画の制作自体にも遅れがでてしまっていました。

特に声優さんたちの収録はなかなか難しかったようで、
雑音が入らない環境、「密室」での多人数の収録ができなくなり、
リモート環境での収録など様々な対策や代替案を行っていたようですが、
限界はあり、スケジュールの遅れも生まれていました。

そういった事情を考えると前年比「96.5%」という数字は、
コロナ禍ということを考えると健闘した数字と言わざる得ません。
1番打撃を受けるはずだった「アニメ映画」の興行収入が
鬼滅の刃無限列車編の公開もあり、後押ししたおかげもあり、
なんとか3.5%減という数字に収まったような印象を受けます。

コロナ禍という様々な業種が仕事のやり方を模索する中で、
「アニメ」という産業においても利点はありました。
外食の禁止や飲み会などがなくなったことで、
多くの人が家で過ごす時間が増えたこともあり、
結果的に家で見れる「アニメ」というものに触れる人も増えた印象です。

コロナ禍という中で打撃を受けつつも、
そんな状況だからこその「娯楽」を求め、アニメの視聴者が増えた。
そんな2020年だったように思えます。

BD・DVD


年々下がり続けている円盤市場ですが、
2020年も当たり前のように下がっており、これで7年連続の減少です。
ピーク時は1400億円もの市場がありましたが、
2020年には466億円、2019年が563億円、2018年が587億円だったことを考えると
減少率もかなり増加しています。

特にコロナ禍では「イベント」が出来なかったことも大きかったようです。
BDやDVDには購入者特典としてイベント参加券や抽選券などの
リアルイベントに参加できる権利のために購入する人も多いものの、
そのイベントがコロナ禍で開催できないという痛手が
BDやDVDの売上に直接響いてしまっている印象です。

イベント参加券をつけて円盤の売上を伸ばすという
ここ10年~20年くらい使われていた手法が
使えなくなったというのはかなりアニメ産業自体にも響いた結果になりました。

アイドルもそうですが、イベントを出来ないというのは
アニメという産業にとっても手痛く、
アイドルアニメのライブができないというのも
アイドルアニメブームの中では厳しかったように思われます。

これらのイベントに参加する「声優」さんたちも厳しかったようで、
アニメの出演料などに比べると高額なイベント出演費が
稼げなかったことは、特に新人声優と呼ばれる若い声優さんたちには
厳しかった年かもしれません。

そんな中でもBD・DVDが1番売れた作品は
「プリンセスコネクト!Re:Dive」でした。
同名のソーシャルゲーム原作アニメのアニメ化作品ですが、
約3万8000枚売れています。

以前の円盤の売上と比べるとやや数字のインパクトはなくなってしまいましたが、
配信市場が拡大する中でも1万枚以上売れるアニメは
色々な意味で「覇権」アニメといえるのではないでしょうか。

続く第2位の売上はやはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完の
1万4000枚。
1位のプリコネと比較すると枚数的には半減していますが、
TVアニメの場合、2期、3期と放送していくと円盤の売上は
大体「右肩」していくものですが、そんな中で1万4000枚売れるのは
さすがとしかいいようがありません。

売上3位も、コレまた同じく3期の
「ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld」が
1万2000枚と大健闘。
しかも3期は4クール構成の作品であり、そんな中で
1巻の売り上げが1万枚超えているというのはかなり強い作品であることの証でもあります。

売上の4位は「Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-」
Fateのソーシャルゲームが原作のアニメですが、
こちらも人気のソーシャルゲームなだけに売上も素晴らしく、11000枚と大健闘。
ある程度、原作の人気がありアニメのクォリティが高ければ
ソシャゲアニメは特典もあいまって売上が伸びやすい印象です。

ただ、5位以下は1万枚の売上を切っており、
やはり円盤の市場は年々衰退していっているんだなと肌で感じてしまいます。

個人的には異色中の異色である「異種族レビュアーズ」が
5000枚以上の売上が上がっていることに驚きました(笑)
地上波では内容的にも絵面的にも修正が多かっただけに、
謎の光の向こう側をみたくなった紳士が大勢居たのかもしれませんね。

劇場アニメ


2020年のアニメ映画といえば誰しも
「鬼滅の刃 無限列車編」と答えるでしょう。
それほど鬼滅の刃のインパクトは凄まじく、
TVアニメからの地続きのストーリーでありながら日本における興行収入は400億円を突破しました。

なぜ鬼滅の刃がヒットしたのかというのは色々と要因があると思われますが、
コロナ禍で多くの映画作品が上映延期になり、自粛ムードが続き、
そういった事情や空気感を誰しもが感じる中、
コロナにおける自粛が一瞬無くなった時期に上映したことも大きな要因と考えられます。
みんな娯楽を求め、そんな少ない娯楽のなかで高品質な映画が上映されたことで
多くの人の心をつかみ、人が人を呼ぶ状態になったのかもしれません。

ただ、そんな鬼滅の刃の常識外の大ヒットがあっても、
アニメ映画全体としては617億円となりました。
2019年が692億円だったことを考えると、75億円も興行収入が下がりました。
もし鬼滅の刃の400億がなければ、もっと厳しかったことを考えると
いかにコロナの影響が大きかったのかを感じられます。

鬼滅の刃以外にも
「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」が21億円、
「劇場版 Fate/stay night Heaven’s Feel Ⅲ.spring song」が19.5億円と
健闘しており、毎年やっているドラえもんやクレヨンしんちゃんやポケモンは
安定した興行収入を出している一方で名探偵コナンは2020年は延期になってしまいました。

鬼滅の刃の大ヒットのせいで100億円を超えるかどうかが
ヒットしたアニメ映画かのラインに最近はなってしまっていますが、
以前は5億円超えればヒット、10億超えれば大ヒットだったことを考えると
ラインが爆上がりしています(苦笑)

2021年はシン・エヴァンゲリオンの公開やコロナの影響が
少なくなってきたこともあり、2021年のアニメ映画の興行収入が
どうなるのか気になる所です。

配信


アニメ業界もコロナの影響を強く受け、
円盤市場、映画市場にかなり響いていましたが、
そんな中で「配信市場」だけは伸びています。
2019年が685億円だったのに対し、2020年はなんと930億。
まもなく1000億円に届きそうな勢いです。

やはりこれは「ステイホーム」の影響が大きかったのではないでしょうか。
映画館、遊園地、水族館、動物園etc…
いわゆる「娯楽施設」が閉鎖されてしまい、多くの人が
家で楽しむ何かを求めた結果、「アニメ」を家で見る手段として
アニメ配信サービスと契約した方は多かったのではないでしょうか。

いわゆる巣ごもり需要でアニメ業界も少なからず恩恵を受ける部分があり、
「FireStick」やアンドロイドOS搭載のTVやネットに繋げるTVが
増えたこともあり、パソコンを持っていない人やスマホを見る習慣のない人が、
「テレビ」でもAmazonPrimeやDアニメなどを見る環境も整ってきたのも
大きいのではないかと感じます。

この手の配信サービスが伸びるのは嬉しい反面で、
同時にいわゆる「覇権アニメ」というのが推測しづらくなってきました。
円盤は売れなくとも配信サービスでの視聴数が好調で
2期が決まった作品や、Netflixオリジナル作品のように
そもそも地上波で放送しないような作品も増えてきました。

配信サービスは人気ランキングなどは公表しているものの、
具体的な視聴数は開示していないことが多く、
外部からどの程度の視聴者がその作品を見たのかというのが
可視化されておらず、どの程度人気なのかが分かりづらい印象があります。

今後、時間が経過すればするほど円盤と配信サービスの差は広がっていくことでしょう。
もしかしたら「覇権アニメ」という言葉自体も
死語になっていくのかもしれません。

海外市場


配信の売り上げと根深い繋がりのある「海外市場」ですが、
2020年にはついに日本のアニメ市場と海外のアニメ市場の売上が逆転しました。
2019年は1兆2009億円だった海外市場が2020年には1兆2934億円になり、
ついに日本市場を抜くことになりました。
(2020年の日本市場は1兆1867億円)

527億円の差ではありますが、ついに日本アニメは日本の市場より
海外の市場のほうが大きくなったことになります。
これは非常に喜ばしいことがある反面で色々と不安もあります。
特にNetflixオリジナル作品では明らかに
「海外」を意識した作品がちらほらあります。

そういう作品はたいてい、日本受けも海外受けもせずに
微妙な評価になっている作品が多いものの、
海外市場が大きくなったことで海外受けを意識して、
「日本のアニメ」らしさが失われていくのではないかという不安もあります。

最近ではNetflix自体の売上が下がっているというニュースも流れ、
海外市場の「伸び率」自体も鈍化してます。
もしかしたら日本市場と海外市場が再逆転することもあるかもしれません。
海外で配信する上で海外ではNGな表現があり問題になることもあり、
そのあたりも海外市場の難しさを感じる部分です。

アニメ制作会社


アニメの需要は伸び続けており、そんな需要に答えるように
本当に多くの制作会社が存在します。
最近は本当にアニメレビューを書く度に
「聞いたことがない制作会社だな…」と思うことが多く、
意味わからないくらいにアニメ制作会社が増えてます。

どこかの制作会社に所属していた方が
独立したりして新しいアニメ制作会社を作り、
スタッフを引き抜くパターンが多いようですが、
アニメ制作事業というのは「自転車操業」な部分もあります。

2020年の最大のヒット作である鬼滅の刃無限列車編を手掛けた
ユーフォーテーブルでさえ、現金を残しておくために「脱税」をしており、
2020年6月に告発までされてしまいました。

更にOVAアニメ全盛期を支えていた「AIC」も
現在は開店休業状態になっており、大手、老舗だったアニメ制作会社でさえ
休業だったり倒産だったりをしているような現状です。

コロナ禍中におけるスケジュールの遅延により
制作日数が増え、制作がずれ込み、結果的に「資金繰り」も
きつくなった制作会社も多かったことでしょう。

アニメの制作費は年々上がっており、
求められるクォリティも高くなっていっています。
特に「鬼滅の刃無限列車編」以降は明らかにどのアニメ映画のクォリティも
1段階か2段階あがってきており、TVアニメ自体も
かなりクォリティの高い作画で1クール描かれる作品も増えてきました。

ゲームでもハードの進化とともに制作費が上がってきた流れがありますが、
アニメ自体も視聴者が求める「最低限のクォリティ」が上がってきたこともあり、
より素晴らしい作画を、より素晴らしいクォリティをアニメに求め、
結果的にアニメ制作の予算も上がってきています。

それが良いことなのか、悪いことなのか。
今のところ私には判断しかねる部分があります。
もちろん作画が素晴らしいというのは1視聴者としては嬉しいことではあります、
その一方で高い制作費をかけなければアニメを
作ることが出来ない環境になってしまうと、地力のない制作会社が
どんどんと倒産してしまうのはでないかと感じてしまう部分もあります。

特に最近は作画のいいアニメと作画の悪いアニメの差がより
広がってきているように感じ、
作画の悪い作品はもう最初から明らかに予算をかけていないなと
感じてしまう作品も増えてきました。

コロナを乗り越え、そしてアニメに視聴者が求めるクォリティに
答えることの出来る制作会社だけが今後生き残っていくのかもしれません。

刺激的な2020年市場


2019年アニメ市場のコラムのときに私は2019年は
アニメ市場が「過渡期」を迎えたと評していました。
しかし、2020年はそんな過渡期なんて状況よりも最悪な
「コロナ」が世界を襲い、アニメ史上にも多くの影響を与えました。

ただ、その一方で配信事業の伸びというメリットも生み、
円盤売上至上主義だったアニメ業界が配信の人気至上主義に
徐々に切り替わっていっているのではないのか?と感じます。

アニメ映画業界は「鬼滅の刃無限列車編」という
とんでもない化け物が生まれ、2021年のアニメ映画の多くは
どれもこれも「鬼滅超え」を期待され、
100億行くかどうかが大ヒットしたかいなかのラインになってしまったりと、
色々な意味で「刺激的」な年だったのかもしれません。

2021年が一体どんな売上になっているのか。
来年も楽しみです。

最後に。

2020年のアニメを振り返ってみたところ、
2年前の作品なのになぜか懐かしさを感じる作品も多く、
恐らくはそれだけ1年間に放送&上映されるアニメの数が増えたせいで、
2年以上の月日を感じてしまっているのかもしれません。

TVアニメ史上は円盤の売上が低下し、配信事業が伸びたことで
「何万枚売れた!」的な盛り上がりがなくなってきたのは
少し寂しいところではありますが、コレも時代の変化なのでしょう。

その分、鬼滅の刃無限列車編のヒットのおかげもあり、
アニメ映画の興行収入は注目されています。
君の名はのヒットから生まれた青春SFアニメ映画ブームから
うまく別のジャンルのアニメ映画ブームにつながった感があり、
今後もアニメ映画は増え続けることでしょう。

色々とコロナ禍の影響を感じた2020年ではありますが、
このサイトでは少しでもそんなアニメ市場にレビューという形で
貢献できればと思い、頑張っていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました

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  1. 紅野ヒロミ より:

    ovaビデオアニメはいよいよ、webアニメへバトンタッチへと向かっている。
    時代の流れだから仕方がないです。