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「オルタンシア・サーガ」レビュー

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評価 ★★★☆☆(56点) 全12話

あらすじ イエペタス半島に700年の歴史を誇る大国――オルタンシア王国。引用- Wikipedia

ラスト5分まで見逃すな

原作は同名のソーシャルゲームな本作品。
監督は西片康人、制作はライデンフィルム

裏切り


画像引用元:オルタンシア・サーガ 1話より
©オルタンシア・サーガ製作委員会

1話から「ソーシャルゲーム」原作であることがひしひしと
伝わるほど、どんどんと大量のキャラクターが出てくる。
同盟していたはずの国に裏切られ国内で戦争状態になり、
王は殺され、混乱が広がる中で姫であるヒロインが大ピンチ。

そんな緊迫した状況で大量の騎士が続々と出てくるが、
髪色が違うだけの兄弟など似たようなキャラデザのキャラもいて、
見た目よりもソシャゲ特有の「豪華声優陣」による声で
覚えたほうが印象に残りやすいほどだ。
国も混乱しているが、見ている側も混乱する。

ただ、話自体はわかりやすい。裏切りにより国王が死に、
操り人形となっている幼い王子が国王に爵位する。
周辺国家との戦争、現れた伝説の魔物たち、
裏切りと策略が巡る中で逃げ延びた姫は性別も偽り、
主人公とヒロインは若い身でありながら強くなることを決意する。

メインヒロインが「堀江由衣」さんなこともあって、
逆にどこか懐かしさすら感じる。
いわゆる王道なファンタジーストーリーは
非常にわかりやすいものの、地味な感じは否めない。

アニメではないが、どこか「テイルズシリーズ」のような
雰囲気を感じさせる。
古き良きRPG的なストーリーは懐かしい雰囲気にあふれている。

ベタ


画像引用元:オルタンシア・サーガ 1話より
©オルタンシア・サーガ製作委員会

この作品のストーリーはわかりやすい。
一言で言えばベタと言ってもいいくらい見え見えな伏線をばらまいている。
王が死んだ後に爵位した王子は目のハイライトがなく、
そのそばには怪しげな人物いたり、
主人公の妹は過去に馬車の事故で崖に落ちているが死体は見つかっていない

見ていると「あ、この怪しい人物が黒幕だな」
「あー後で死んだはずの妹が絶対に出てくる」と
後の展開を簡単に想像できてしまうほどわかりやすい伏線しか無い。

過去回想を交えながらそういったわかりやすい伏線を
よりわかりやすく見せており、わかりやすいからこそ
妙な安心感すら感じさせてくれる。
ここもまでベタでわかりやすい作品は逆になかなかないと感じるほど
ベッタベタだ。

ただベタであるがゆえに話は淡々としており、
主人公たちも明確になにか目的があるわけでもない。
強くなりたい、立派な領主になりたいという思いはあれど、
今すぐに父親がなくなった黒幕をぶっ倒す!みたいな
ストーリーではないため、話がなかなか進まない印象だ。

国の中で起こっている陰謀、そんな陰謀があることは知りつつも
若い領主である主人公と身分を隠した姫には抗うすべはなく、
信頼できる仲間などを増やしながらも、ときには裏切られながら、
陰謀の渦に徐々に飲み込まれていく。

父親が殺されたときも、4年経って成長した今も力が及ばない。
領主としての立場も弱く、騎士としての力も強いとは言えない。
もっと力を、もっと自分の意志を貫ける力がほしいと
主人公は強く願い、歯がゆいながらも王道を突き進む。

1話でドバっとキャラクターは出てくるものの、
半分くらいは1話の時点で死んでおり、その他のキャラも
中盤あたりでひとりひとりの掘り下げが行われるため
王道で淡々とした地味なストーリーではあるものの、
その分、丁寧にキャラクターが描かれているため印章に残りやすい。

多くのキャラクターがそれぞれの野望や信念で行動をしており、
主人公がそんな姿を見つめつつ、徐々に陰謀が明らかになっていく。


画像引用元:オルタンシア・サーガ 3話より
©オルタンシア・サーガ製作委員会

4年前から一緒に居たはずの主人公が姫の正体に
気づけていないという点はやや違和感があるものの、
中盤になると姫の物語も気になってくる。

いつまで正体を隠し続ければいいのか、
幼い弟が操り人形の王子となってる状況で、
「姫」という自分の立場を明かすことも活かすことも出来ない状況が続く。

何度も言うようにこの作品は地味で淡々としている。
まるで盛り上がらない。だが、分かりやすい伏線のおかげで
いつ姫が正体を明かすのか、どんな場面で主人公に正体が明かされるのか。
物語の行く末が予想できるものの、どんなふうにそれを見せてもらえるのか
という期待感は見れば見るほど募っていく。

1話1話の物語をしっかりと描き、積み重ねることで
物語への没入感と期待感を高めている。
非常に丁寧だが堅実な作品だ。

主人公


画像引用元:オルタンシア・サーガ 7話より
©オルタンシア・サーガ製作委員会

主人公は若いながらも領主だ。
国の教会がなにか怪しいことをしていても安易に動くことは出来ない。
感情で動いてしまえば領民を巻き込んだ戦いになってしまう。
彼は若いながらに領主としての責任を感じている。

だが、それでも己の正義を貫くために決意する。
1度は踏みとどまった、だが、踏みとどまったままでは居られない。
己が領主としての責任を果たすために、
己の騎士としての責務を果たすために、彼は立ち上がる。

この決意までのストーリーの流れは積み重ねが生きており、
7話かけて「アルフレッド・オーベル」という青年が
物語の主人公になる物語が描かれている。

真実


画像引用元:オルタンシア・サーガ 8話より
©オルタンシア・サーガ製作委員会

姫もまた真実を知る。
父親である国王が求めたもののせいで国に魔物がはびこり、
多くのものが死に、今の自分や弟の立場がある。
守られるばかり、いくつもの命を犠牲に生きながらえてきた。

だが、そんな彼女を今も守ろうとする存在が多く居る。
主人公が、かつての臣下たちが、兵士たちが。
王女である彼女を守ろうとする。

そんな思いを受けたからこそ、彼女も立ち上がる。
一国の王女として。主人公の決意とともに、
彼女もまた決意をする。

偽りの名前の少年ではなく、一国の姫
「マリエル・レ・オルタンシア」として、
彼女は守られるものの責務を果たそうとする。

手堅く誠実に。きちんとしたストーリーの積み重ねが
終盤でどんどんと生きてくる。
地味だが「王道」の面白さがこの作品には多く含まれている。
7話と8話、この終盤の2話で物語の
主人公とヒロインの存在が際立ち確立される。

悲劇を味わった、だが、それを受け入れ一歩踏み出した。
だからこそ彼女は父と同じ過ちをおこなわず、
未来へと進もうとする。

反旗


画像引用元:オルタンシア・サーガ 12話より
©オルタンシア・サーガ製作委員会

王女が立ち上がったからこそ多くのものが彼女のもとに集う。
序盤から中盤までの話の中で出会った者たちが
ときには仲間になり、時には敵になる。
己の理念と正義を貫くために彼らは戦う。

黒幕である「教皇」も目的があって国王をほのめかし、
禁断の力を使わせている。この手の作品の場合、
「世界征服」などのアバウトな目的であることも多いが
黒幕である教皇にも教皇なりの「復讐心」からの行動だ。

キャラクター数は多く、陣営も多いものの、
1クールの中でそれぞれの立場と変化、彼らの行動理念を
丁寧に描いており、それが終盤でより光っている。

1話からの伏線や謎をきちんと終盤で回収しており、
王道で地道に突き進んだストーリーの積み重ねが
終盤で活かされているような印象だ。

ここまで見続けたからこそ、見続けて初めて
この作品の面白さが伝わる。
「1クール」でのストーリー構成の良さをひしひしと感じさせられる。

主人公が目指した父親の背中、そんな父親と再会し、
戦いの中で仲間と決別することで主人公の成長へとつながる。
もう誰かの守られる主人公や姫ではない、自ら剣を振るうものたちだ。

そんな2人だからこそ協力して強敵を倒すこともできる。
非常に王道なストーリーが心地よさすら感じさせるほど
突き進んでくれた。

ラスト5分


画像引用元:オルタンシア・サーガ 12話より
©オルタンシア・サーガ製作委員会

この作品は12話のラスト5分までは王道だ。
黒幕も倒し、全てが解決したかと思わせる展開だ。
しかし、解決していない。ラスト5分からが
「オルタンシア・サーガ」の始まりだ。

二人の仇である「人狼」が現れ
圧倒的な力を前になすすべがない主人公とヒロイン。
この作品が王道なら仇を倒して終わりだ。
だが、この作品は王道ではない。

騎士として彼は姫を守るために人生を使った。
彼女との約束を彼は守った。その代償として彼は致命傷を負ってしまう。
どうすることもできない。

はずだった。最後の最後で姫は禁忌を犯す。
自分の父親が進んだ誤った道と同じ道を彼女は進んでしまう。
手を出してはいけない力を使い、彼女は主人公を生き返らせてしまう。

この作品はラスト5分の展開で王道な道から突き落とし、
物語の幕が閉じられる。

総評:ストーリー構成の妙


画像引用元:オルタンシア・サーガ 1話より
©オルタンシア・サーガ製作委員会

思わずぞわっとするエンドだ。
1話から11話、いや12話のラスト5分まで
90年代のファンタジーラノベやRPGを彷彿とさせるような
王道かつ真っ直ぐなストーリーであり、いい意味でも悪い意味でも
予想ができる展開ばかりで不思議な安心感すら感じさせてくれる作品だった

しかし、そんな予想できる展開と安心感をラスト5分で裏切る。
自分の父親の過ちを知っていながら、愛するもののために
無自覚ではありながら父と同じように闇へと落ちてしまう。

12話のラスト5分までの王道と安心感があったからこその
ラストの展開とのギャップが凄まじく、
オセロで言えば終盤まで白一色だったのに最後の一手で
全部黒に染められたような感覚になる作品だ。

序盤でこの作品を切ってしまった人、みていない人には
わけがわからない展開だろう。本当にラストまでこの作品を見た人にしか、
この作品の真の意味での面白さを味わえない仕組みになっており、
1クールと言うストーリー構成を非常にうまく使っている。

おそらく2期はなく、続きはゲームでという感じだ。
決して投げっぱなしではない。ここから物語が新たに始まる。
王道から覇道へ物語が移り変わり、どうなるのか気になって仕方ない。

個人的な感想:90年代


画像引用元:オルタンシア・サーガ 12話より
©オルタンシア・サーガ製作委員会

この作品が本当に90年代に生まれていたら2クールないし
4クールかけてアニメになっていただろうなと思えるほど
懐かしい雰囲気と面白さのある作品だった。

悪く言えばベタでありきたりなストーリーではあるものの、
ここまでベタにされると逆に懐かしい面白さがにじみ出ており、
そんなベタな王道ストーリーがラスト5分で見事にひっくり返る展開は
思わず「やられたぁ」と叫びたくなってしまうほどだ。

ソシャゲ特有のキャラの多さはあるものの、
一人ひとりのキャラを上手くさばいており、ごちゃごちゃしていない。
ソシャゲ原作アニメの場合、とにかく詰め込んで投げっぱなしで
終わる作品も少なくないが、そんな作品とは真逆な
丁寧に作られた作品だった。

できればアニメでこの続きを見たいところだ。

「」は面白い?つまらない?

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  1. resin K. より:

    YouTubeに上げていらっしゃる動画で
    「2020年代においてのアニメの見方であれば大半の方がその真の意味に気づくことなく視聴を打ち切ってしまうし,続きも期待できないのだが,全話丁寧に見た視聴者だからこそその真の面白さがある.」(適当な要約ですみません… )
    といった感じで仰っていたので,ブログを楽しみにして拝見させて頂きましたが,評価点が「凡庸だけど面白い」ギャグ気味のショートアニメ程度で思わず笑ってしまいました.
    評価点に関する詳しい御話はできないことは存じているので,それを前提としてコメントさせて頂きますが,これも時代(原作と視聴スタイルの多様化)ですかね…