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「映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」レビュー

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評価 ★★★★☆(70点) 全65分

『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』特報(30秒)

あらすじ ある日すみっコたちは、お気に入りのおみせ「喫茶すみっコ」の地下室で、古くなった一冊のとびだす絵本をみつける。
絵本を眺めていると、突然しかけが動き出し、絵本に吸い込まれてしまうすみっコたち。引用- Wikipedia

何かが足りない貴方へ

本作品はリラックマなどでおなじみのサンエックスのキャラクターである
「すみっコぐらし」のい劇場アニメ作品。監督はまんきゅう。
なお、がっつりネタバレしてますので、
ネタバレアレルギーの方は劇場へ赴いてください。

初見でも大丈夫


引用元:(C) 2019 日本すみっコぐらし協会映画部

映画が始まってそうそうに「すみッコぐらし」のキャラクターが紹介される。
V6の井ノ原快彦氏のナレーションにより、独特な彼らのキャラクター設定が
明かされる。

この作品はタイトル通り「隅っこ」が好きなキャラクターばかりの作品だ。
人見知りのしろくまは北から逃げてきて、自分がぺんぎんかどうか
わからないぺんぎんは過去に「頭に皿」が乗っていたことがあり、
とんかつはとんかつでもとんかつの端の部分だったりと、
めちゃめちゃユニークなキャラクター設定のキャラたちはどくどくの空気感がある。

一言で言えば何とも言えないシュールさがある。
とかげといいつつ、とかげではなく実は恐竜だったり、
エビフライではなく、エビフライの尻尾の部分のキャラクターだったり、
飲み残された「タピオカ」がいたりと、
隅っこに居そうな何とも言えない哀愁すら感じるキャラクターだ。

その代表は「ほこり」だろう。そのままほこりである(笑)
彼らは部屋の隅の角にいるのが大好きで、
その場所を取り合ったり譲ったりしている。

そんなキャラクターの可愛らしさは初めて「すみっコぐらし」という
作品を見る人でも、冒頭のものの5分でこの愛らしさに惹かれるはずだ。
どこか少し「闇」を感じるようなキャラは妙な感情移入すら生む。

彼らには台詞はあるが、セリフはたまに文字で表示される程度だ。
動きや表情、そして、たまにあるセリフだけでキャラクターを描写している。
子供向けだからこそ「見て」感じ取れるようなキャラクターの表現だ。
大人が見ても、それはストレートに突き刺さる。

絵本


引用元:(C) 2019 日本すみっコぐらし協会映画部

そんな彼らがいつものように行きつけの喫茶店に訪れる所から物語は始まる。
喫茶店の地下で謎の光る絵本を見つける「おばけ」、
その光る絵本にすみっコ達が吸い込まれてしまい、
絵本の世界へとやってきてしまう。

すると、すみっコたちは絵本の中の登場人物に強制的にさせられてしまう。
桃太郎の世界では「おじいさん」になってたり「おばあさん」になってたり、
はては背景の木になってたり、桃太郎だったり、
わけのわからぬまま役を演じさせられる彼らの戸惑いっぷりと、
コスプレ姿は何とも可愛らしい。

赤ずきんだったり、アラビアンナイトだったり、人魚姫だったり、
いつもの彼らとは違う格好をしてる彼らの姿は、
ファンならばたまらないところだろう。

ひよこ


引用元:(C) 2019 日本すみっコぐらし協会映画部

そんな絵本の世界で「ひよこ」に出会う。
「ひよこ」は自分の名前も、どこから来たのかも、家もわからない。迷子だ。
自分探しをしている「ぺんぎん?」はひよこに共感し、
絵本の世界のどこかにあるはずの「ひよこ」の家を探すことになる。

「すみっコ」たちが入り込んだ絵本の世界は世界の童話集のようなもので、
様々な物語が収録されている。
桃太郎、あかずきん、アラビアンナイト、人魚姫、マッチ売りの少女。

そんな絵本の世界で「すみっコ」たちはメインキャラになり代わり、
ドタバタの末、本来の展開とは違う展開になってしまう。
桃太郎は鬼と仲良くなってしまうし、赤ずきんは赤ずきんを演じてるのが
「とんかつ」だったため、狼に食べて欲しいとグイグイと迫っていく(笑)

コミカルかつドタバタと繰り広げられる展開は見ていて楽しく、
子供も大人もクスクスと笑ってしまうシーンの数々は、
妙に癒やされる感じすらある。
劇場に響く子供の声が乾ききったアラサーのオタク心にいつもとは違う
潤いを与えてくれるような感覚だ。

なお、大人一人で見てるのは私一人だった。
閑話休題

アヒルの子?


引用元:(C) 2019 日本すみっコぐらし協会映画部

絵本のどの部分にも「ひよこ」が出てくるお話はない。
しかし、終盤でアヒルの群れを見たことで「ひよこ」は
自分が「みにくいアヒルの子」の「みにくいアヒル」では?と思い至る。

だが、違った。絵本の世界のみにくいアヒルはきちんと存在し、
「ヒヨコ」ではなかった。みにくいアヒルの子は白鳥であり、
鶏のひな鳥である「ヒヨコ」ではないから当たり前といえば当たり前なのだが、
見てる大人でも、この「ヒヨコ」が一体、どの絵本の世界から来た
「ヒヨコ」なのかまるで見当がつかない。

そんな中で「すみっコ」達は自分たちと一緒に来ないかと誘う。
一人だったヒヨコは「すみっコ」達と旅をする中で仲を深め、仲間になった。
友達だ。

これで元の世界に戻ってヒヨコと「すみっコ」達が仲良く暮らしましたで
終わっても、子供向けであることと60分の映画であることを考えれば
全く問題ない。むしろ、それが無難な話の展開だろう。
多くの大人がそう想像できるラストだ。

だが、この作品は違う。

白紙


引用元:(C) 2019 日本すみっコぐらし協会映画部

「すみっコ」達と「ヒヨコ」は白紙のページへとたどり着く。
そこが「ヒヨコ」に居た世界だ。
仲間も居ない、なにもない、何も存在しない世界で唯一人ヒヨコだけが存在した。
「ヒヨコ」は誰が書いたかもわからない「落書き」だ。

何とも悲しい存在だ。子供向けの作品とは思えないほどに、
「孤独感」が強調された「ヒヨコ」というキャラクターは深く、
ヒヨコは仲間を求めて絵本の世界に旅立ち、長い旅の中でそんな事も忘れていた。
どの世界にも居場所がなく、どこにも仲間が居ない、本当に寂しい存在だ。

だが、「すみっコ」達という仲間ができた。
元の世界に戻るための出口も見つけて、後は一緒に帰るだけだ。
今度こそ、大人も子供も「ハッピーエンド」を想像するラストだ。

だが、この作品は違う。

別れ


引用元:(C) 2019 日本すみっコぐらし協会映画部

「ヒヨコ」は絵本のページの中の存在だ、
違うページには行けても絵本の外に出ることはできない。
それが絵本の世界から出る寸前に「ヒヨコ」自身が最初に気づく。
出口が徐々に閉じる中で、「すみっコ」たちを元の世界に戻すために
頑張る姿とヒヨコの涙は何とも涙腺を刺激され、
思わずウルっと来てしまうシーンだろう。ある意味で「自己犠牲」に近い。

これで「ヒヨコ」が死んでしまったり消えてしまったりしたら、
SNSで言われている「奈須きのこ」なのかもしれないが、
この作品はあくまでも子供向けだ、形は想像していたものと違うが
ハッピーエンドだ。

何とも幸せなハッピーエンドと言えるかもしれない。
一緒の世界に行くことはできなかった、でも、「ヒヨコ」を幸せにするために、
「すみっコ」たちは白紙だったページに書き足す。
ヒヨコの家を、ヒヨコの仲間たちを、「ヒヨコ」の居場所と仲間を

彼らが描く姿は微笑ましく、
ヒヨコの最後の笑顔にもう1度涙腺を刺激されてしまう作品だ。

総評:幸せな作品


引用元:(C) 2019 日本すみっコぐらし協会映画部

全体的に見てよくできている作品だ。
「すみっコぐらし」という作品のキャラクターたちをきちんと紹介し、
それぞれのキャラクターの魅力をきちんと表現し、
物語の中盤くらいまで見てしまえば、すっかり「すみっコぐらし」の
キャラクターたちに愛着が持ち、可愛いと思ってしまうような魅力を描いている。

そんな中で「ヒヨコ」の存在をストーリーの中できちんと活かし、
ご都合主義かつわかりやすい形のハッピーエンドではなく、
きちんと「違う世界の住人」という少し厳しい現実を見せつつも、
形の違うハッピーエンドへと至っている。
見てる側を絶望させた後に希望を見せてくれる、そんな作品だ。

ただ、あくまで「子供向けの映画」として、「すみっコぐらし」の
映画としてよくできている作品であり、
SNSで言われてるような「逆詐欺映画」というのはちょっと的はずれだ。
これで「ヒヨコ」が死んだりしたらたしかに逆詐欺映画かもしれないが、
きちんと最後まで見ていれば、この作品はきちんと王道の面白さがある作品だ。

決して変化球ではない。ただし、子供だましでもない。
きちんと「大人も子供」も楽しめる作品であり、
ちょっと切ないけど幸せな気持ちで終わることのできる作品だ。

個人的な感想:SNSでの過度な盛り上がり


引用元:(C) 2019 日本すみっコぐらし協会映画部

過度な期待や的はずれな表現をしてしまうと逆にこの作品に対して失礼だ。
この作品はきちんと真っ直ぐに丁寧に作られている作品であり、
逆詐欺映画だったり、アンパンマンを見に行ったら攻殻機動隊だったとか
実質奈須きのことかいう表現ははっきり言って的外れだ。

この記事を書いてる間に「JOKERの方がマシ」という表現も
SNSで出てきており、ちょっとあまりにも的はずれすぎてもはや意味不明だ。
比べるべき作品ではないし、そんなに重い話でもない。

SNSで盛り上がって人気になる作品は確かにあるが、
今回のこの「すみっコぐらし」の映画に関しては変な感じの盛り上がり方だ。
せっかく、普通に良く出来てて面白い作品なのに
妙な表現による先入観や評価は害でしか無い。

もしお子さんに見せるかどうか悩んでる方がいたら、余計な心配です。
ちゃんと「すみっコぐらし」という作品の中で良いストーリーを描いてます。
一人で観に行こうとしている大人な方は過度な期待はせずに
見るのをおすすめします。

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  1. にんげん? より:

    「逆詐欺映画」ってそもそも何だ。
    いい意味で期待を裏切られたってことか?
    詐欺なんてワードが入っているとなんかマイナスなイメージを連想してしまうし、この作品の雰囲気には全く合わない。
    注目を集めるために大げさな表現を使うツイッタラーには憤りを覚える。
    普通に「感動した」って言えばいいじゃないか。

    騒ぎたいだけ、盛り上がりたいだけの変な連中が今後、すみっコぐらしを食い物にするような事態が起きなければいいが。

  2. 匿名 より:

    読解力不足で変なコメントがつけられていて残念ですが、記事内の意見と同じようなモヤモヤを自分も感じてました。
    本来のターゲットとは層が違うゾーンでバズってるから大丈夫だろうとは思いますが…
    Twitter大げさな発言、雑なバズ狙いではなく、後から見る人にはこういう盛ってない情報が届くといいな、と思いました。