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「takt op.Destiny」レビュー

2.0
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評価 ★★☆☆☆(27点) 全12話

TVアニメ『takt op.Destiny』ティザーPV

あらすじ 音楽が失われた西暦2047年の世界を舞台に、クラシック音楽を中心とする有名な楽曲や歌劇の力を宿した少女たち「ムジカート」と、それを導く「コンダクター」(指揮者)による、異形の怪物に対する戦いが描かれる引用- Wikipedia

脚本<<<作画

原作はリリース予定のソーシャルゲーム作品。
監督は伊藤祐毅、制作はMAPPA、MADHOUSE。
メディアミックスとして制作されている。

期待値

おそらくアニメを多く見てきた「オタク」ならば
制作会社の名前を見ただけで思わず「おっ」となるはずだ。
MAPPAとマッドハウス、両社とも実力のあるアニメ制作会社であり、
作画のクォリティに関してはお墨付きだ。

マッドハウスは1972年に設立された老舗のアニメ制作会社であり、
カードキャプターさくらから宇宙よりも遠い場所まで
今も昔も多くの名作を手掛けている。

MAPPAは設立自体は2011年だが、
ゾンビランドサガや呪術廻戦など昨今話題のアニメを
多く手掛けており、作画能力に関してはマッドハウスよりも
上だと私は感じている。

そんな両社が共同制作をして手掛ける作品。
オタクならば胸の高鳴りを抑えることが難しいほど
ワクワクが止まらない。一体、どんな作画を見せつけてくれるのか。

しかし、同時に一抹の不安がある。
メディアミックスでまだリリース前では有るものの、
原作は「ソーシャルゲーム」だ。

ソーシャルゲームとアニメという媒体の相性の悪さは
当サイトを普段ご覧いただいている方はご存知のはずだ。
「ガチャ」というシステム上さけられない
キャラクター数の多さが作品全体を振り回す傾向にある。

優秀な2つの制作会社により制作された
ソシャゲ原作アニメ、一体どうなるのか
良くも悪くも期待してしまう。

音楽ってなぁーに?

1話冒頭、小さな子供が「音楽」というものを母親に質問している。
母は音楽がなにか知っているが、子供は音楽というものが何か知らない。
そんな中で一人の青年が「ピアノ」を弾き出す。
ピアノの調べに誘われて、街に襲いかかる怪物、
そんな怪物に、青年が指揮をふるい、少女が戦う。

この作品の世界観は悪くない。
突如、地球に現れた怪物は「音楽」を嫌い、音楽を奏でる人間を襲う。
そのせいで、この世界では「音楽」という文化が失われている。
だが、同時にそんな怪物に立ち向かうものも居る。

それが「コンダクター」だ。
コンダクターは音楽の力を宿した存在である「ムジカート」を
指揮し、闘うことができる。

1話でそんな世界観をしっかりと見せ、
「音楽」が大好きな主人公と、そんな彼に付き従うどこか無機質なヒロインと、主人公の歳上の幼馴染のニューヨークを目指す旅が始まる。

彼らがなぜニューヨークを目指しているのか、
ムジカートの存在、そして音楽を嫌う「D2」という化け物はなんなのか。
1話の時点での印象は悪くない。

ツッコミどころ

ただ1話の時点から突っ込みどころがある。
「D2」という化け物は人間が音楽を奏でるとやってくる。
ただ、その「範囲」や「条件」がアバウトであり、
弾きだしたら1匹~3匹くらい集まってくる。

1話の段階で廃墟に使われていないピアノが放置してあり、
主人公がおもむろに弾き出すものの、
なぜそんなものが放置されていたのかもよくわからず、
主人公が「D2」が来ると分かっているはずのに、
主人公が弾いたせいで「D2」が街に現れ街が破壊されてしまう。

更に言えば物語が進むと「地下室」や「防音室」などの
音がもれないところで弾けば問題ないことが明らかになる。
色々とこのあたりの設定のガバガバ感や
ご都合主義感を感じてしまう。

2話ではD2の脅威が完全には立ち去っておらず、
一応は「休眠状態」に追い込んだという状況なのに
音楽禁止令を出した組織が「音楽祭」をやりだし、
D2がやってきてしまう。
見てる側としては「やってはいけないこと」を
作中のキャラが当然のようにやっている違和感が強い。

他にもニューヨークに向かう旅の中で主人公は「作曲」をするのだが、
その作曲中に「ピアニカ」を使って演奏しまくっており、
当たり前のようにD2が現れる。人が住む街中で
D2が現れると分かってるのにピアニカを使う主人公に理解できない。

そもそもの「休眠状態」というのも具体的にどんな方法で行っているのかも
描かれていないため、1話こそ世界観の説明をしているものの、
その後の設定や世界観の説明があまりなかったり、
中盤以降で徐々に明かされていることが多く、
見せ方が下手なせいでどうにも展開についていきづらく、
キャラクターへの感情移入も生まれない。

作画

序盤の段階ではさすがMAPPA・マッドハウスと言いたくなるような作画だ。
特にグリグリと動くアクションシーンとド派手なエフェクトで
彩られた戦闘シーンは見事であり、
主人公がピアノを引く際の「手」の描写は気持ち悪いほど動いている。

アニメーションのクォリティは非常に高い。
キャラクターデザインも特徴的で可愛らしい女性キャラクターも多く、
そういった意味では魅力的な作品だ。
しかし、その作画のクォリティにストーリーがついていっていない。

「ムジカート」も楽譜(スコア)から生まれる存在であることはわかるが、
実際は元の曲なんて関係ないような武器で闘うのみだ。
擬人化という要素は色々な作品でやっているが、
この作品も「音楽の擬人化」という側面はありつつも、
キャラクターの見た目や言動、服装から元になった音楽を感じることはできない。

「音楽の力」というものをテーマにしているのはわかるが、
その音楽の力を感じる要素はあまりなく、
そもそも「コンダクター」も戦闘中に指揮棒をふるっているが、
あまりそれに意味があるとも思えない。

指揮棒ではなく、「楽器」を戦闘中に演奏して
その音が「ムジカート」の力になるくらいならば
その設定も活かされるが、「コンダクター」はただ指揮棒を奮ってるだけであり、
音を力にしているという描写が戦闘中に殆ど見られないため、
設定をアニメーションとして活かしきれていない感じが出てしまっている。

主人公の敵の中には「自分をコンダクター」を思い込んでいるキャラもおり、
その設定が明らかになると今まで指揮棒を無意味に奮っていただけという
滑稽さまで際立ってしまう(笑)

バカなのだ?

主人公の父親は有名な指揮者だ。
彼は10年前にD2の襲撃でなくなっており、そんな事件の詳細が10話で明かされる。
完全な自業自得である。

主人公もD2が来ると分かってるのに街中でピアノを弾いたりする
意味不明な行動をしていたが、主人公の父親もわけがわからない。
10年前はD2は休眠状態とやらにもなっていない状態で
多くの犠牲者が出ている状態だ。

そんな中で「コンサート」をする。意味がわからない(苦笑)
主人公の父いわく「人類の希望の光」らしいのだが、
アッサリとD2が現れて多くの犠牲者を出している。

一応、黒幕は「音叉」を使ってD2を呼べるようで
主人公の父が死んだのもその音叉の音に誘われてやってきたD2が
原因のようだが、そもそも「音楽」に集まっているのか
「音叉」の音だけに集まっているのかも
はっきりとしないためモヤモヤしてしまう。

「コンダクター」と「ムジカート」は何らかの契約を
しているようなのだが、その契約もふわふわしており、
10話でとある「コンダクター」が死んだあとに
コンダクターのいない「ムジカート」になってしまうキャラがいるのだが、
11話ではそのムジカートは主人公の指揮でノリノリに戦闘をしている。

10話でアレだけ慕っていた「コンダクター」のことなど
忘れてしまったかのように主人公の指揮で戦う姿に違和感しか無い。
契約とはなんだったのか。本当によくわからない。
「コンダクター」と「ムジカート」、そして「D2」の設定をきちんと
練り込みきれていない感じが強い。

主人公たちのピンチにせっかく駆けつけてくれた「ムジカート」に
対しての扱いもひどく、主人公が明らかに体調が悪そうなのを
質問攻めしたところ「ちょっとうるさい」と気絶させられてしまい
その後二度と出てこない。

黒幕

黒幕の目的はD2殲滅だ、戦いの中で彼は狂ってしまっており
その中で「犠牲」を問わないようになっている。
そのためにニューヨークを犠牲にしてもD2を一気に集めて
殲滅しようとしたという流れなのはわかる。

しかし、彼は主人公の力が必要だと言っていたはずなのだが
そもそもなんのために必要だったのかもまるでわからずじまいであり、
休眠状態だったはずのD2を音叉で起こしてまで
犠牲を多く出してまでD2を殲滅しようとしたのか。
何がしたかったのかよくわからない感じだ。

終盤に成ればなるほど唐突な展開が続いてしまい、
最後は続きはゲームでね!というような
雑な風呂敷のたたみ方なストーリーで終わっており、
消化不良感も残る作品だった。

総評:喉に刺さった小骨が取れない

全体的に見て作画のクォリティは一級品だ。
グリグリ動く戦闘シーンの見どころは多く、ド派手なエフェクトで
戦い合うシーンは流石はMAPPA+マッドハウスだと感じられる。
キャラクターデザインも優秀で特徴的かつ可愛らしいキャラクターも多く、
そんなキャラクターの「変化」はこの作品のおもしろさもである。

しかし、その一方でストーリーがガバガバだ。
設定の詰め方と使い方が甘く、
音楽を鳴らせばD2という化け物が現れるという設定なのに
街中であろうと関係なくピアノを弾き出す主人公や
「コンダクター」と「ムジカート」という存在の設定も曖昧だ。

ところどころ泣かせるような展開はあり、
それまでのキャラクターの成長や変化を感じられるシーンもあり、
そういった部分は悪くないものの、設定のガバガバさという
ツッコミどころの多さのせいで素直にこの作品のストーリーも
キャラクターも味わいきれずに終わってしまった。

そもそも主人公の幼馴染がなぜ「ムジカート」になれたのかなど、
1話から最終話までずっと喉に刺さった小骨が取れず、
そのせいで食事をいまいち楽しめないような感じの作品であり、
ゲームとの兼ね合いもあったのかもしれないが、
もう少しシンプルに話も、キャラも、作画も見せてほしいと感じる作品だった

個人的な感想:期待はずれ

作画に関しては期待通りだったが、いつまでたっても
この作品のストーリーをしっくりと来ないまま終わってしまった。
アメリカンジョークじゃないが、どうにも浮ついた台詞回しも気になり、
作品全体の雰囲気は良かったものの、雰囲気だけでおわってしまった感じだ。

肝心のゲームの方もリリースが延期しており、今後の展開はどうなるかわからないが
この喉に刺さった小骨がゲームないし、ゲームが人気になったあとに
制作されるかもしれない2期で取れることを期待したい

「takt op.Destiny」は面白い?つまらない?

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