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ガンダム史上、もっとも地味で、もっとも渋い。「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」レビュー 

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      2016/05/19

評価/★★★★☆(65点)/全25話
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 9 (特装限定版) [Blu-ray]

あらすじ
地球圏全体を巻き込む大戦争「厄祭戦(やくさいせん)」が終結してから約300年後のP.D.(Post Disaster)323年。新たに4つの経済圏が誕生した地球圏は軍事を司る武力組織「ギャラルホルン」の監視の下で平和を保っていた。しかし、地球圏重視の政策は貧困という形で火星などの圏外圏に降りかかり、主人公の三日月・オーガスを始めとする非正規の少年兵や人身売買される孤児「ヒューマンデブリ」などの社会問題を生み出していた。

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ガンダム史上、もっとも地味で、もっとも渋い。

本作品はアニメオリジナル作品。
監督は長井龍雪、制作はサンライズ。

見だして感じるのは非常にわかりやすい世界観と設定だろう。
ガンダムシリーズはとっつきにくい作品も多い、
特に2年前に放映されたGのレコンギスタはいわゆる、富野節全開であり、
深夜帯に放送されたからこそ大人が見る分にはよかったのだが、
とてもじゃないが「子供」が見てわかりやすい作品とはいえなかった。

今作は日曜17時放送の作品だ。当然、子供も見る。
この時間帯に放映されたガンダムシリーズはガンダムSEEDやガンダム00が定番だが、
ガンダムSEEDはDNA操作による人間とされていない人間の対立、
ガンダム00はテロ行為による世界の変革と、
子供が見るとわかりにくい部分も多かった。

しかし、今作の場合、導入からして、ある意味ガンダムシリーズとしては異質だ。
丁寧で特徴的なキャラクター紹介から徐々に始める。
目付きが悪く背が低い主人公、髪型が特徴的、小太り、お調子者、無口、
ヒロインとキャラクターデザインと声優による演技のおかげで
一人一人のキャラが「説明されなくともどういう人物かを把握」ようになっており、
1話からキャラクターの印象がしっかりとつく。

更にわかりやすいストーリー。
主人公たちは火星で働く非正規の少年兵であり孤児だ。
対するヒロインは火星の独立運動を指揮するお嬢様、
そんなお嬢様を地球まで護衛する任務を受ける所からストーリーが始まる。
どうだろうか、このわかりやすさ(笑)
ボーイミーツガールの一言で現せるストーリーだ。

1話の時点で「この世界がどういう」状況で「どういう組織」が存在し、
「どういう技術」があるのか、どういったキャラクターがストーリーを
紡いでいくのかを描写する。
ガンダムシリーズ特有の「わかりにくさ」「難解さ」というものが薄い。

過去のガンダムシリーズを見た方にわかりやすく伝えるなら、
この作品は「ガンダムX」と少し近い。
もちろん雰囲気や内容自体は違うものの、
キャラクターのわかりやすさや、淡々と話を進める感じや
ボーイミーツガール要素などガンダムXに近いものがある。

しかし、ガンダムXと違うのはガンダムXでいう
「サテライトキャノン」が無いことだろう。
この作品のガンダムのデザインは驚くほど脆そうで腰が細いデザインだ。
火星に放置されていたかつての300年前の戦争の遺物であり、
あらゆる箇所が損傷している。

しかし、そんな脆そうなガンダムが
逆に「どのガンダムシリーズにもない強烈な印象」を与えてくれる。
ロボットアニメというのは「破壊の美学」でもある、
ロボットとロボットがぶつかり、どんな戦闘をし、どんな壊れ方をするのか。

そのための設定が素晴らしい。
「ニュータイプだから」「コーディネーターだから」「流派東方不敗」だから
主人公が強いわけではない。
主人公は「思春期の子供にしか定着しないナノマシン」を注入しており、
ガンダムと身体的に「接続」することで、空間認識能力が飛躍的に上昇し、
ガンダムという強いロボットを動かすことが出来る。

しかし、その代償に「フィードバック」がある。
力の代償に脳神経に与えるダメージが凄まじく、
「大量の鼻血」を垂らしながら主人公は戦う。
ボロボロの機体と代償のでかい操作システムで敵へと立ち向かう主人公は、
余裕の表情を浮かべているのに、機体も主人公もぼろぼろだ。

なんて燃えるシチュエーションなのだろうか。
少年心を熱くたぎらせるような設定を
「後からこういう設定がありました」という風に明かすのではなく、
最初から説明することで主人公への感情移入を強めることができ、
同時にリスクがあるからこその力の描写がより盛り上がる。

なにせ主人公のガンダムが放つ最初の一撃は
「ビームライフ」や「ビームサーベル」ではない。
メイスだ、槍のような鉄の塊で敵を殴る、
時にはそんな鉄の塊を投げ、時にはメイスである事を利用し突く。

敵の装甲が歪み、凹み、貫かれる描写は他のガンダムでは味わえない
重厚感の塊の様な戦闘シーンであり、
確かに派手さはないが、派手さはないからこその「ズン」と、
まさに殴られたような重みのある衝撃のある戦闘シーンが展開される。

そして、この世界のモビルスーツは「ナノラミネート装甲」だ。
簡単にいえば「遠距離攻撃が効かない」装甲であり、
それゆえにモビルスーツに対して有効的なダメージを与えるためには
近接武器での攻撃しか無い。
必然的に打撃や斧、槍などの物理近接戦闘が繰り広げられるように設定されている。

そのため敵も味方も破損が大きい。
ビーム兵器の「爆発」による戦闘シーンの派手さの演出がない代わりに、
鈍器での「破壊」による戦闘シーンの激しさを産んでおり、
今までのガンダムシリーズとは違う戦闘シーンばかりだ。
例えは極端だがモビルスーツなのに、
モビルファイター同士の戦いを見ているような感覚だ

がむしゃらに、不器用に、だが大胆に。
機体同士を叩きつけあいながらの戦闘シーンはまさに破壊の美学だ。
モビルスーツ同士の戦いだけではない。
「戦艦同士」の戦闘シーンも新鮮な面白さだ。
ゲリラ戦を仕掛けたり、突撃したり、2艦同時に操縦したりとめちゃくちゃだ。

そして、敵の兵器も奪って使う(笑)
主人公たちは別に軍隊ではない、だからこそ敵の兵器を鹵獲し、
売って資金にしたり、自分たちで使うことも出来る。
少し前に敵の大将が乗っていたような機体を頂戴し直して使ったり、
主人公機の修理にも敵パーツを利用する。

最初はぼろぼろだった機体が徐々に治ってくる感じも非常に面白い、
ちょっとしたゲーム感覚だ。
スパロボでいう「鹵獲」を主人公たちが行うさまは
この作品ならではの魅力だろう。

そして主人公。この作品の主人公は少年だ。
しかし、少年である彼は悩まない。
自らの行動や犯した罪、そういったことに一切の迷いがなく信念がある、
自分の力を自分の守るために使う。

そのためならば自分も犠牲にし、敵にも情けは一切かけない。
わざわざモビルスーツから降りて自らの手で敵にとどめを刺す、
しかも、確実に殺すため2発も躊躇なく撃つような主人公だ。

そんな主人公の戦う理由はシンプルだ、生活を守るために戦う。
世界平和や、世界の変革、冷凍刑にされている父親のためでもない。
生活のため、仕事のため、要はお金のためと仲間のためだ。
難しい理由もなければ、難しい理由を考えることもない。

兄貴分である「オルガ」が優秀な指揮官であり、
彼に対して絶対的な信頼をおいているからこそ、
彼は思う存分、仲間のためと仕事のために力を振るう。
そこに「迷い」は一切ない。

迷うキャラクターを兄貴分である「オルガ」に背負わせることで、
主人公はまっすぐと進み、まっすぐと進んでいるからこそ
他のキャラクターへの影響力も大きい。
迷わない主人公の魅力を序盤から確立しており、
ぶれない主人公像はこの作品の芯を築き上げている。

そしてサブキャラクター。
いや、サブキャラクターとはいえないほど一人一人の物語がしっかりとある。
彼らは今まで虐げられてきた立場だ、子供でもあり、大人でもある。
それぞれのキャラクターの「物語」が、群像劇として描かれることで
単なるサブキャラクターではなく、
一人のキャラクターとしての印象と物語の印象が深くなる。

主人公が悩まない代わりに他のキャラクターは悩む。
だが、悩んでいるキャラクターを無表情に、だが確実に
主人公が主人公なりに道を示すことによって、
シンプルに、まっすぐに彼らは進んでいく。

それは正しい道なのか間違った道なのか。
少年たちの「暴走」に近いまっすぐとした気持ちだからこその行く末は
常に無表情な主人公と裏腹に感情的だ。
人によってはそれは極端な行動や、理不尽に感じてしまうかもしれない。
だが、彼らは抑圧された中で育った子供なのだ。
だからこそ感情的で、だからこそ極端で、だからこそ不器用だ。

そして同時に派手さも薄い。
「破壊の美学」が伝わる大人ならば戦闘シーンも面白く感じるのだが、
やはり「ビーム兵器」がないというのは派手さに欠けてしまう部分も多い。
ガンダムSEEDでいう種割れも、ガンダム00でいうトランザムもない、
ましてやスーパーモードなんてものもない。
それゆえに地味に感じてしまう部分も確かにある。

淡々と進むストーリーは若干テンポが遅いと感じる部分も多く、
戦闘シーンがない回も面白いのだが、
その反面で淡々とした感じが強いのも事実だ、
特に中盤はややダレを感じてしまうストーリー展開も多い。
だが、淡々と進むからこそキャラクターの心情の変化や行動理由も分かりやすく、
特に終盤の「目的の変化」は面白いのと同時に悲しさまで伝わってくる。

彼らはただがむしゃらに生きようとしていただけだ。
だが、不器用であるがゆえに「犠牲者」は増え続ける。
ただの仕事だったはずなのに、ただ仲間のために動いていただけだったはずなのに、
一人一人に「復讐心」が宿ってくる。
特に最終話は味方どころか敵まで復讐心に取り憑かれたままの戦闘だ。

だが、ストーリー的には色々と中途半端に終ってしまっている。
掘り下げられていない部分も多く、2期への伏線や残している問題も多い。
1期の段階である程度区切りをつけているものの、
途中テンポが悪かっただけにもう少しストーリーを
勧めて欲しかったと感じる部分があるのも事実だ。

更に言えば最終話付近はちょっと詰め込んでいる感じも強く、
もう少しじっくり描いても良いのでは?という部分が
さらっと描かれてしまっている感じもあったのは少し残念な所だ。

全体的に見て非常に渋い作品だ。
ビーム兵器を一切使わない近距離物理武器のみの戦闘シーン、
淡々とした中でもじわじわとキャラクターが変化していくストーリー、
一人一人のキャラクターの立ち位置がしっかりしており、
だが、派手なキャラクターではない。

特に終盤の主人公の冷酷さは好みが分かれるところだろう。
30分待つと言っている敵の紳士ぶりに対し、
一切待たず、喋っている間に突っ込む主人公などある意味すごい(笑)

この作品は面白い。
ストレートな世界観とキャラクターとストーリーは分かりやすく、
本来はそのストレートな中でストレートな面白さが出ていれば、
不満に感じる部分は少なかったかもしれないが、
この作品はストレートというよりは、滲み渡るような面白さであり、
1つ1つの要素は面白いのにその要素の面白さが伝わってくるのが
欠点でもあり、この作品らしくもある。

2期でどうなるか。それがこの作品最大の問題だろう。
この1期までの内容がもっと圧縮されて15話くらいで描かれ、
あとの9話で2期の内容が描かれるようなストーリー構成ならば、
淡々とした感じが薄れたかもしれない。
やや冗長なストーリー構成はこの作品の面白さを伝わりにくくしてしまっている。

この1期の評価も2期次第では大きく変わるかもしれない。
設定的にはガンダムフレームは72体作られているそうなのだが、
果たしてそれは全て出て来るのだろうか?
行き着く先は破滅しかなさそうに見える主人公たちはどうなるのか?
敵の内部で色々目論んでいる「マクギリス」はどうなるのか?

そのストーリー次第で「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」という
作品が名作になるか、はたまた地味渋い作品で終わってしまうのか決まるだろう。
2期に色々と期待したい所だ。

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