かぐや姫の物語

評価/★★★☆☆(55点)

かぐや姫の物語 評価

137分
監督/高畑勲
声優/朝倉あき,高良健吾,地井武男,宮本信子,高畑淳子ほか

あらすじ
日本人ならば誰もが知っている昔話『竹取物語』。月からやってきたかぐや姫が竹取の翁と媼に育てられ、やがて月よりの使者に迎えられて月世界へと帰っていく。だが、かぐや姫はなぜ赤子の姿で地球へとやってきたのか?原典に記された「かぐや姫の“ 罪 ”」とは一体何なのか?古(いにしえ)より語られ続けた謎多き物語の真実とは。

スポンサーリンク

ジブリが作った質アニメ

本作品は火垂るの墓、おもひでぽろぽろなどで有名な高畑勲監督によるジブリ作品
2005年に制作が開始され8年の歳月と50億円のもの制作費を使い完成した
当初は風立ちぬと同時上映の予定だったが製作予定が伸び11月末に公開された
なお、「地井武男」さんの遺作でもある。
本レビューはネタバレを含みますのでご注意を

この作品の大本は「竹取物語」だ。みなさんも子供の頃、絵本で読んだことのある作品だろう。
おじいさんが山へ竹をとりにいくと光る竹があり、その竹を切ってみると中には子供が居た
おじいさんは家に持ち帰り、おばあさんとともにその子供を育てることに。
子供は大きく成長し、やがて美人な女性に育ち多くの殿方が求婚してくるが
「かぐや姫」は殿方の求婚に無理難題をつけことわり、最後には月へ帰ってしまう

おそらく多くの方がしっている「かぐや姫」のあらすじはこのようなものだろう。
もう少し詳しく書いてある者や古典的にいろいろな話のある作品でもあるが、
この映画における「かぐや姫」のストーリーの基本はコレだ。
この文章にすれば4行ほどで書ききってしまう作品を、なんと137分もの大作に仕上げている。

序盤は非常に見ていて楽しい作品だ。
おじいさんが山へ竹を取りに行く、
そんなシーンなのに流石はジブリと言いたくなるような独特な雰囲気の作画は目を奪われる
まるで水墨画のようにキャラの輪郭をふちどり、そこに水彩画のような優しい色合いをのせ
更に和紙にかいたような温かみのある独特な作画が動きまくる。
竹の中から現れた手のひらに収まるサイズの子供がおじいさんの手のひらではしゃぐ様子など
純粋に「かわいい」と感じてしまうほど微笑ましいシーンになっている

おじいさんがそんな「子供」をもちかえると、おばあさんと育てることになる。
序盤のストーリーはかぐや姫の子供時代にスポットを当て話をふくらませていく
普通の人間ではない「かぐや姫」はまさに破竹の勢いで成長していく

さっきまではハイハイがやっとだったのに、カエルのマネをして飛び跳ねて、
さっきまでは飛び跳ねるのがやっとだったのに、次の瞬間は歩いていたり、
おじいさんとおばあさんがふと、目を話すといきなり少し大きくなっている
このかぐや姫の急激な成長シーンはとてもコミカルに可愛らしく描かれており
彼女のたけのこのような成長ぶりh見ていて純粋に可愛く面白い

更にその成長と同時に時系列の変化をシーンとシーンの間に挟まれる季節の描写で描く
平安時代の田舎を舞台にし、竹やぶや梅、そこから紅葉やキノコなど
ジブリの作が能力があるからこそ「雰囲気のあるシーン」を
かぐや姫の成長シーンの間にはさむため見ていて楽しいアニメーションになっている
この序盤の段階でのこの作品への期待感は大きかった。
序盤だけで終わるなら★5つ間違いない作品だったかもしれない

そんな幼少時代が終わると、おじいさんが
「かぐや姫は天からの啓示、こんな田舎にいさせてはいけない。本当の姫にしないと」と
思い込んでしまい、かぐや姫と同じように竹から採れた金を元手に都に行くことになる

都に舞台が移り変わると作画の雰囲気も少し変わる。
田舎のときに感じた温かみはあまり感じなくなり、日本の建物の美しさや着物や屏風の柄など
田舎の時には感じなかった「和の美しさ」が作画の中でも感じられるようになり、
木の床を踏む音や琴の音など日本の音の美しさも感じられるのは素直に驚いた
雰囲気作りは中盤も序盤と同じように凄くいい。

しかしストーリーがここから徐々にダレだす。
田舎で育った姫は何事もそつなくこなす、高貴なるものとしての立ち振舞、琴など
そつなく完ぺきにこなす姫だが同時に「田舎暮らし」が忘れられない
都では田舎のような自由がなく、窮屈で退屈なだけ。
そんな中、姫の名付けの儀が行われ盛大な宴が行われる

はしゃぐおじいさんと多くの訪問者に因るどんちゃん騒ぎ。
しかし姫のお祝いなはずなのに姫の姿は隠される、
そんな平安時代の常識に姫は違和感を感じ飾り物のような扱いにどんどんと複雑な感情を募らせる
そして、その思いは爆発する。

高貴なる姫と祭り上げられ、姫の扱いをされていたはずなのに訪問者が酔った勢いで暴言を吐き
姫はとうとう、感情を爆発させる
鬼のような形相で家を飛び出し、着ている十二単衣を乱暴に脱ぎ去りながら、
誰も寄せ付けない速度で彼女は一心不乱に走りぬく。

ここまではよかったと私個人としては感じる、CMでも描かれていたシーンなので
記憶にあたらしい方も多いと思うこのシーンまでは良かった。
だが、このシーンの後が「?」となることが多い。

ネタバレになるが、このシーンは夢オチ的な感じに終わってしまう。
バカにされたことも走り去って故郷の山に帰ったこともフト気づくと夢で元の都に戻っている。
そんな夢から醒めると姫は急に今までしなくなった化粧をし、
宴のあとはどんどんと姫への求婚が増えていく。

そんな中、高貴な5人が彼女に興味を持ち求婚してくる。
彼らは姫をそれぞれの「宝」に例え姫への求愛の言葉をつげる、
そんな彼らの言葉を裏にかき、結婚したくない姫はその宝を持ってこいと無理難題をぶつける
そんな無理難題をかけられて5人は一端は帰る。

そしてここで急に3年の時が流れる、あまりにも急だったのでちょっと驚くが
その3年の間に5人はありとあらゆるほうほうで「宝」を姫の元へ持ってこようとする。
あるものはニセモノを作り、あるものは金をかけて、あるものは決意をかけて、
あるものは「命」をかけて。

そんな5人の行動に姫は罪悪感を感じる。
姫にとっては結婚をしたくない、自由で居たいがために思わずついた嘘だった
しかし、そんな嘘が3年という歳月を5人の男性につかわせ、
あるものは更に大金を、あるものは本当に命を落としてしまい
姫の罪の意識がどんどんと重くなっていく。

そうなってくると姫が・・・ちょっといい方は悪いが「情緒不安定」な女性になっていく
そんな情緒不安定な状態でおじいさんが更に帝(当時の日本の1番偉人)からの婚約話を持ってくると
姫はおじいさんにぶちぎれながら、結婚するぐらいなら死ぬとまで言い放つ(苦笑)
情緒不安定な状態だから仕方ないとも言えるのだが、いきなり死ぬと言い放つ姫の表情の変化も激しく
今で言う「メンヘラ」と言われる女性のように見えてしまう。

更に帝が訪れて姫に迫ると更に姫の心は不安定になっていく。
そして唐突に「月へ帰らないといけない」と言い出す、かなり唐突だ(苦笑)
これが誰しもが「かぐや姫が月の人間」ということを知っているから飲み込めるが、
もし、これがオリジナルストーリーならいきなり何言い出すんだ!?と思いたくなるほど、
「かぐや姫が月の人間」と知っていてもちょっと唐突に感じてしまう
月に帰る=死ぬの比喩表現なのでは?と一瞬感じてしまうくらいだ

この唐突さは心理描写が微妙な点にあるだろう。
セリフなどの言葉ではなく、姫の表情や態度、体の震えなどから
姫の現在の心理を「察する」ことが必要で、こちらが読み取らないといけない
ようやく姫の心情を理解しかけたところで更に唐突なセリフを履いたり心情が変化するため
こちら側が理解するまえに展開が変わってしまう。

きちんと裏の裏まで読むように画面を見ていないと
姫の行動や言動がわがままに見えてしまい、
更に極端な言動や行動があるため情緒不安定な女性にしか見えない。

そして月へ帰る日が近づく中、もう自由で居たくて仕方ない姫は住んでいた田舎に1人で帰る。
そうするとそこに見つけたのは幼少期に慕っていた男性「捨丸」がたまたま居た
この男性におそらく「恋心」のようなものを抱いていた姫は誘惑する
ちなみに捨丸が登場する前に明らかに妻子がいる様子が流れた後に
誘惑するようなシーンが流れる(苦笑)

そんな誘惑に捨丸は何の迷いもなく乗っかろうとする、
なんというかあまりにも唐突な展開で姫がわがまますぎて正直ついていけない。
しまいには捨丸と姫で謎の月パワーを使って田舎の空を二人で飛び回る(笑)
これがきちんとした恋愛描写があるならば感動的なシーンにも見えるのだろうが
情緒不安定な女性とそれにホイホイとのっかてしまう妻子持ちの男が
空を駆けまわる様子はシュールでしか無かった

全体的に見てこの作品はいわゆる質アニメだ
背景やキャラクターデザイン、音楽、そういったもののアニメーションにかかわる質は間違いなく高く
1シーン1シーン力強い表現のある作品で映像美溢れる作品だ
しかし、凝りに凝った映像は最初こそインパクトが有り中盤くらいまでは楽しめたのだが
137分という長さだとその質の高さは圧を生み、見る側に「疲れ」も産んでしまっている

映像による疲れだけではなく、登場人物の心理やストーリーを画面から読み取るために
更に集中して画面を見て表情を読み取らないといけない。
これが90分ほどなら、ほどよい疲れで終わったかもしれないが、
流石に2時間を超えてくるとかなりの疲労感がつきまとう作品だ。

だからこそ序盤から中盤までは楽しく見れるのだが中盤以降は正直疲れてくる
これがオリジナルストーリーならば「この先どうなるのだろう」という物語への期待感も生まれるのだが、
この作品はあくまで竹取物語であり、ストーリーに大きな改変はない
結局は月に帰るという結末を知っているだけに知っているストーリーを
引き伸ばされている感覚を話が進めば進むほど感じてしまう。

もちろんストーリーを膨らませた分、かぐや姫が月から降りてきた理由や
頑なに結婚を断った理由など理解できる部分も増えたのだが、
理解できる部分が増えた分、姫が情緒不安定な女性になってしまったように思える。

更に言えばこのストーリー内容は「ジブリの作画能力」があるからこそ許される内容だ
137分という長尺できれいな作画を魅せるようなシーンも有り、
そういった閑話休題なシーンがあるからこそストーリーの引き伸ばしを序盤はあまり感じず
その作画があるからこそストーリーやキャラの感情を見ている人が「察する」ことができる
だが、だからこそこの作画や雰囲気を抜きにしてストーリーだけ見ると微妙な感じが強く残ってしまう。
ジブリだからこそ許された内容といえるだろう。

1つ1つシーンからいろいろな解釈をしたり、考察をするのが好きな方、
またはいわゆる質アニメが好きな方は面白いと感じる作品だろうが、
かなり「マニア」向けな作品に仕上がっているとも言える。
好みの分かれそうなキャラクターデザインや作画、
更に画面から「察する」作業など普段アニメや映画を見ている人なら出来るだろうが
それが出来る人でも更に好みの分かれる作品だ
いろいろな解釈、見る人の好みや年齢、性別によってシーンの受け取り方も違うかもしれない。

マニア向けと考えても流石に「2時間超え」は厳しい所だ。
これが90分位で綺麗にまとまっていれば印象や疲れも違い
もっと好意的にこの作品を受け止められたかもしれない。
また映画というスクリーンの大きさや音の大きさが余計に疲れを増加させていたかもしれない
もしかしたら、DVDで普通にテレビの画面で見れば印象が変わる可能性もある。
ただもう1度見たいかと言われると正直、オチを知っている話を2度も見るのは厳しい

何年後かにふと見なおしたら、もしかしたら今と違った評価ができるかもしれない。
そういう可能性も感じる作品だが、あくまで可能性であり今の段階では
「疲れる作品」という印象が強く残ってしまった作品だった。

個人的には地井武男さんのハイテンションな演技がものすごく印象に残った
地井武男さんの遺作となってしまった作品ではあるが、
彼の素晴らしい演技を堪能できる作品だ。
そのせいか、主役であるはずのかぐや姫よりも
本来、脇役のおじいさんとおばあさんのほうがキャラクターが立っていた気がしたが・・・w

今から見に行くは体力の使う作品だということを覚悟した上で見ていただきたい。
予想以上に疲れます(苦笑)

スポンサーリンク