思い・・・出した!これがラノベ原作の学園ファンタジーの面白さだ!「落第騎士の英雄譚」レビュー

2015年12月31日

評価/★★★★☆(69点)/全12話

あらすじ
己の魂を武器に変えて戦う現代の魔法使い伐刀者(ブレイザー)が存在する世界で、その養成学校である破軍学園に通っている少年黒鉄一輝。しかし、彼は伐刀者としての能力値が低すぎて単位が取れずに留年してしまい、周囲の人間からは落第騎士(ワーストワン)と呼ばれていた。

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思い・・・出した!これがラノベ原作の学園ファンタジーの面白さだ!

原作はライトノベルな本作品。
監督は大沼心、製作はSILVER LINK. / Nexus

見だして感じるのはわかりやすさだろう。
誰が説明してくれと頼んだのか、主人公が1~10まで全て説明してくれる
非常に丁寧な説明は最近の作品では珍しく、
ストレートに物語が頭に入ってくる

というよりも頭に入ってくる前に「思い・・出した!」という感覚が強い
どこかでみたシュチエーション、どこかで見た設定
どこかで見たキャラクター、どこかで見たシーンetc…
Theテンプレート、ラノベ学園ファンタジーならばこの道を通らねば
行けない法律でもあるのかと思うほどの強い「既視感」を
1話が始まって3分ほどで感じることが出来るだろう。

だが、それが決して悪いことではない。
テンプレート的展開やキャラクターではあるものの、
テンプレートだからこその「お約束的面白さ」をきちんと描写しており、
確かに既視感は感じるが、だからといってつまらないというわけではない。

お決まりのヒロインの着替えに遭遇してしまうシーンにしても、
主人公が取る行動は「見てしまったのは仕方ない、よし自分も見せる」という
愛すべき主人公のいさぎよい行動と態度であり、
見たことあるシーンではあるものの思わず笑ってしまう。

この作品と同時期に全く同じシュチエーションと
炎を使う赤髪のヒロインということでかぶりまくった
「学戦都市アスタリスク」という作品があるが、
あの作品はいかにもなテンプレート止まりで
それ以上の面白さは序盤にはなかった。

だが、この作品はテンプレートであることをきっちりと受け止め、
その「ラノベファンタジーテンプレート」をどうみせれば面白くなるのか、
同じテンプレートラノベである「聖剣使いの禁呪詠唱」はネタに走ったが、
この作品の場合はネタには走っておらず、むしろ堅実だ。
丁寧に丁寧に1シーンを作り上げている。

例えばヒロインが魔法を使うシーン。
「学戦都市アスタリスク」はださいセンスで質の悪いCGを使ったことで
戦闘シーンの迫力があまりにもなさすぎたが、
本作の場合はきちんと「炎」を描き、火の粉を描き、
ヒロインの怒りをきちんと「炎」で表現している。

だからこそ、その直後の主人公のセリフで思わず照れ
怒りが静まった様子が「炎」に現れる面白さが生まれており、
きちんと「アニメーション」としての面白さが
短いシーンの間に丁寧に表現されることによって、
確かにテンプレート的ではあるがテンプレートだからこその
「安心できる面白さ」がある。

駄菓子のうまい棒を食べてうまい棒の味以上の味を求めないと一緒で
「そうそう、ラノベ学園ファンタジーならこんな感じの面白さがいいよね」という
一種の安心感が生まれる。

アニメにおいての安心感、フラストレーションを溜めないというのは案外難しい。
作画が極端に崩れたり、戦闘シーンの演出が悪かったり、
ストーリー展開が遅かったり、主人公やヒロインのキャラクター描写やセリフ、
アニメを構成している全ての要素のどれかが劣ると
多かれ少なかれフラストレーションを感じる場合が多い。

だが、この作品の場合は1つ1つの要素を丁寧に作り上げることで
視聴者がストレスを感じにくい作品に仕上げている。
セクシーシーンの1つにしてもあまり長く描写せず、
だが手を抜かずに「フェチズム」を意識したセクシーシーンに仕上げており、
ラノベ的エロスを求めてる人の欲求を満たしつつ、
あまりセクシーシーンが好きではない人のストレスにならない程度にしている。

原作がラノベということを知っていれば
純文学のような深い面白さを求めないのと一緒で、
ラノベだからこそ、言い方は悪いが「駄菓子的」面白さをこの作品は
きちんと追求している。

それだけではない、この作品は「駄菓子」ではあるが、
その中でもきちんと特徴を出そうとしている。
他の作品でよくある部分、共通している部分は丁寧に描きつつも
この作品の「特徴」とも言えるべき部分の描写の気合は凄い。

この作品の主人公は魔法学園な世界観の中で魔法の才能が0に近い。
そんな中で彼が魔法の才能がある生徒たちと競い合うために、
一本の刀と身体能力、そして剣術を極めている。

魔法の才能が認められる世界観の中で、魔法の才能がない主人公が
どう成長し、どう戦うのか。この作品の主軸はそこにある。
主人公が実は魔界の生まれだったとか、実は封印されている力があるとか
そういう設定はない。
いわゆる努力、熱血型の主人公であり才能や生まれが全てな主人公ではない。

だからこそ面白い。
魔法における才能とそれぞれの剣術を持つ生徒たちに対し、
魔法の才能は一切ないが剣術のみの才能がある主人公。
天才が最弱に勝つ方法をこの作品なりの解釈で表現することによって、
この作品だからこその戦闘シーンが純粋な面白さを生んでいる。

この作品には余計な設定はない。
最近のラノベアニメは設定と伏線だらけで1クールという尺の中で
溢れかえってしまっており結果としてすっきりとした面白さがない作品が多い
しかし、この作品の場合はむしろ心配になるほど余計な設定がないことで、
純粋に、まっすぐに、突き刺すような「ラノベファンタジーの面白さ」がある。

そしてヒロインが可愛い(笑)
これこそがラノベ原作の醍醐味とも言えるのだが、
最初はツンデレヒロインかと思ったのだが、ラノベ特有の「ちょろさ」がある。
同時に独特な魅力がある。

主人公の腹筋を触って「凄い!なんてエネルギー!」なんてセリフをいう
ヒロインは中々お目にかかれない(笑)
行動やセリフ、態度などがテンプレート的なヒロインであると同時に
どこかこの作品独特のヒロインの魅力が現れており、
純粋に可愛い。

ラノベアニメの欠点で「ヒロインが主人公に惚れる理由がわからない」があるが
この作品の場合はきちんと「惚れる理由」を作っており丁寧だ。
その他のヒロインもテンプレート・・・とは言いがたい(笑)
特に主人公の妹の主人公に対する行動の数々は
セクシーと同時に可愛さと同時にギャグにもなっている。

ヒロインが増えると他のヒロインの影が薄くなるパターンも
ラノベアニメは特有のパターンだが、
この作品の場合は他のヒロインが出ると、ヒロイン同士の張り合いが強まり
よりヒロインの魅力が深まる。

ヒロインの魅力が深まることにより、主人公の魅力も深まる。
魅力のあるヒロインにふさわしい主人公が描写されることによって、
テンプレートな面白さのある作品がが「王道」な面白さへと変化する。
最弱な主人公が圧倒的不利な状況、圧倒的に力の差がある相手との勝負で
ヒロインの「声」で目が冷め、冷静になり逆転する。

これぞ王道。だが、決してテンプレートではない。
見たことのあるシーンだ、だが、そんな既視感のあるシーンを
この作品はきちんと王道の「燃える戦闘シーン」へと昇華させることによって
王道の面白さのある作品に仕上げていた。

全体的に見て、これぞラノベアニメ!という作品だ
ラノベ原作アニメ自体が嫌いという食わず嫌いな人には無理だろうが、
逆にラノベ原作でも気にならない人ならば
ラノベ原作アニメだからこそのお手本のようなテンプレート的面白さがあり、
「これだよ、これ」という安心感をしみじみと感じることが出来る。

それだけではなく、この作品特有の面白さもきちんと描くことによって
他のラノベアニメでは味わえない、「落第騎士の英雄譚」だからこその
面白さがきちんとある。
特に戦闘シーンの圧倒的な迫力と演出はラノベアニメの枠に収めておくには
もったいないほど激しく描かれており、思わず「燃える戦闘シーン」の数々だ

ファンタジーアニメの場合、特にラノベが原作の場合だと
戦闘シーンにあまり力が入っていなかったり演出だよりになってる部分が大きい
だが、この作品はバトルシーンをきちんと描いている。
最終話のたった「一太刀」と「一太刀」だけの一瞬の勝負など
燃えない人は居ないだろう。

テンプレート的な面白さをきっちりと味わいつつも、
同時にすっきりとしたこの作品だからこその面白さがある。
例えばヒロインと主人公の関係はじれったいものではなく、
きちんとした「告白」と「キスシーン」が序盤にあることで
よりキャラクターの魅力が深まり、すっきりした面白さが極まる。

オリジナルの面白さを出そうとして設定を複雑にしたり、
言葉を難解にしたり、伏線を貼りまくったりする作品は最近多い。

しかし、この作品の場合は逆に余計な設定や伏線を極力無くし、
キャラクターの魅力とストーリーの積み重ねによる面白さの中で
オリジナルの面白さをどうすれば表現できるかをきちんと考え、
テンプレート的な中でも突き抜けた表現やセリフを使いつつも、
ギリギリ過激になり過ぎない、ギリギリギャグになり過ぎない
「ラノベアニメ」という枠を超えないギリギリのラインに立つことで
この作品ならではの面白さを表現している。

キャラクターデザインやあらすじ、タイトルなどから
「ああ、はいはい。ラノベ原作アニメね」と見ていない人もいるだろう。
だが、騙されたと思って3話くらいまで見て欲しい。
最近多すぎて飽々しているラノベアニメの中で、
この作品は、「ラノベアニメの面白さ」を思い出させてくれる作品だ。

ラノベ原作アニメという根本がこの作品の最大の欠点であると同時に
サイドの評価のポイントになっている。
想像の枠を超えないのラノベアニメであることを忘れずに
丁寧に作り上げたのがこの作品だ。

テンプレートいいじゃないか。ツンデレヒロインいいんじゃないか、
ラッキースケベいいじゃないか、主人公最弱設定いいじゃないか、
ラノベ原作面白いじゃないか。
ラノベ原作アニメを構成する食傷気味だったはずの1つ1つの要素の
本来の「面白さ」を思い出させてくれる作品だ。

個人的に「ヒロインを煽りまくる妹」が物凄い気に入ってしまった(笑)
売り上げ的に2期は厳しいかもしれないが、
このクォリティのラノベ原作アニメならばもっと見たい。
そう感じるほど、この作品はきちんと作られた作品だった。