評価 ★★★★☆(70点) 全17話
あらすじ 「小鳥遊事務所」に集められた、未来を担うアイドルの卵たち。引用- Wikipedia
誰もが彼らのファンになる
原作はソーシャルゲームな本作品。
監督は別所誠人 、制作はTROYCA
私
私はこの作品を長年観ることを避けていた。
原因はファンの熱量のヤバさにある(笑)
私はアニメレビューをしており、YouTubeでは現在12万人ほどの登録者が居る、
基本的にリクエストは受け付けていないのだが…
大量のDMとマシュマロが送られてきた時期がある。
「アイドリッシュセブン見てください!」
「なんでアイドリッシュセブンレビューしないんですか!?」
短文から長文、優しい口調から荒々しい口調まで様々だ。
その圧に引いてしまったというのが最大の原因だ。
それくらいファンに熱量がある作品であり、面白い作品なのだろう。
それは重々承知しつつも、圧の強さゆえに手が出ていなかった。
あれから4年くらいの月日はたっただろうか。
私はついに重い腰をあげアイドリッシュセブンに手を出してみることにした。
可愛い!
1話冒頭はアイドルアニメとしてはベタなライブの直前の始まりだ。
未来の時系列を描いて、今に時系列を戻す。
多くのアイドルアニメでやっている王道な始まりであり、
そんな始まりを見せたあとに「マネージャー」がでてくる。
このマネージャーはゲームで言えばプレイヤーの立ち位置だ。
ソーシャルゲーム原作アニメの難しさはここにあり、
「プレイヤー」の存在をどうするのかと言うのが難しくもある。
艦これなどは匂わせつつも姿を見せなかったり、
逆に作品によってはがっつり自我を持たせて主人公にする作品もある。
それが賛否両論を生み出す部分でもあるのだが、
この作品は後者だ、プロダクションに就職した主人公は
新人でありながらマネージャーとして担当することになる。
このマネージャーが非常に可愛らしい。
男性アイドルアニメ、女性アイドルアニメ、
どちらも「異性」の存在はときによってはノイズになることもある。
だが、アイドルマスターしかり、しっかりと異性を出すことで
物語に厚みが生まれる作品も多い。
この作品もそのタイプだ。可愛らしいマネージャーが
7人のアイドルの卵たちをマネージメントする。
キラキラな夢見がちなアイドルの卵、
「種村有菜」さんが手掛けるキャラクターデザインは
男女ともに素晴らしいものがある。
7人
1話で7人のアイドルとマネージャーが一気にでても
きちんと見た目の印象が残り、そこにキャラ描写が絡むことで
よりキャラクターの印象が定着する。
そんな7人のうち4人落とすことを社長から命じられる。この落差が凄まじい。
7人でデビューするという印象をつけておきながら、あっさりと4人落とす。
仲が良く、キズナも生まれつつある7人を会社の判断で4人落とす。
アイドル事務所も仕事だ、ビジネスだ。
だからこそ売れることは必要だ。
キラキラな1話冒頭から一気にドロドロだ。
キャラが抱えている「闇」も1話から見え隠れする。
どうしてもアイドルになりたいもの、復讐を目的とするもの、
1話では明らかにならないものの、彼らの過去を
匂わせることで先の展開を感じさせてくれる。
そんな展開からマネージャーの判断によって
3人ではなく7人でのアイドルグループが結成される、
それが「アイドリッシュセブンだ。
1話からしっかりとタイトルを回収している、
非常に丁寧な1話だ。
TRIGGER
彼らのライバルは3人組である男性アイドルグループ
「TRIGGER」だ。
デビュー1年でとてつもない人気を誇る彼らを超える、
それがアイドリッシュセブンの目標だ。
だが、彼らの事務所は弱小事務所だ。
ホームページだってマネージャーが作り、いきなりCDデビューとは行かない。
最初のライブはたった「9人」だ。
マネージャーもアイドルたちも新人だ、知名度も実力も伴っていない。
だからこそ、彼らは「TRIGGER」のライブを見に行くことになる。
「七瀬 陸」にとって因縁の相手だ。
彼の兄はTRIGGERにおり、家族を捨ててアイドルになっている。
プロとして、完璧なライブを、唯一無二のアイドルを魅せる。
そんな「兄」の姿を、TRIGGERを見て、
アイドリッシュセブンも変わる。
プロというものはどういうものなのか、プロになることを、
先輩の姿を見て学ぶ、本当に丁寧なストーリーラインだ。
「七瀬 陸」にとって 目指すべきもの、たどり着くものを
改めて感じさせてくれる、なぜ兄は自分を捨てたのか。
いつか上り詰めた先にそんな答えはある。
プロのアイドルになる、そんな思いが7人の中に芽生える。
事情
「七瀬 陸」 もそうだが、他の6人も多くの事情を抱えている。
そんな彼らの事情が話が進むほど紐解かれていく。
匂わせながら徐々に、徐々に、彼らの重い過去がのしかかってくる。
過去を、自分の問題を誰かに喋る。それは「信頼の証」でもある。
それを乗り越えていくことが成長であり、アイドルとしての人気のもつながる。
最初は9人だったライブが3000人になる。
そんなライブでの「トラブル」もものともしない。
彼らは本物だ、「プロ」のアイドルがステージにたっていることを
7話で見ている側にもしっかりと感じさせてくれるストーリーがあり、
話が進めば進むほどアイドリッシュセブンというアイドルの
ファンに自然となっていく。
だからこそ彼らの過去や事情が明らかになるストーリーの重さがのしかかる。
「四葉 環」は施設で育っており、妹と離れ離れになっている。
そんな妹と再会したい、それが彼の願いであり、
アイドルとして人気になることはその願いへの足がかりだ。
そこをTRIGGERの事務所がついてくる。
まだ7人の人気はない、二人だけがTVで注目されてる段階だ。
二人でならデビューできる、だが7人は難しい。
そんな困難を「7人」で乗り越えようとする。
王道
7人が7人とも事情を抱え、それを7人で乗り越えていく。
7人でやっていきたい、7人でここまで着たのだから。
だが、それでもトラブルは起きる。
常にアイドルで居続けること、常にプロで居続けること、
完璧でありつづけることの難しさを実感させてくれる。
ご都合主義な部分もある、だが、きちんと7人の事情を描き、
そんな7人が乗り越えるべき壁という名の「現実」を描き、
7人でそれを乗り越えていくストーリーは王道だ。
人間だからこそ失敗しないことは難しい、それでも失敗でへこたれず、
完璧なアイドルになろうと、完璧なアイドルであり続けようとする。
努力し、7人の友情をもとに、勝利を掴む。
この作品は男性アイドルアニメではあるものの、
根本にあるのはジャンプ的な王道ストーリーだ。
そんな王道の物語をテンポよく描いている。
少しずつアイドルとして成長しながら、各キャラの事情を紐解き、
それにまつわるトラブルも起き、それを乗り越えて、
アイドルとして更に成長する。
この物語のサイクルがテンポよく回っているからこそダレない。
全17話という構成はかなり特殊ではあるものの、
この短くはないが長くはないという尺を非常にうまく活かしている。
1クールならば7人を描くのには少し足りない、
全12話だったら、一人2話もかけることができない。
だが、全17話なら一人2話つかえる。
ファン
彼らの人気も大きなものになっていく。同時にファンも増えていく。
「やばいファン」も出てくる。
妹の行方を出しにして「キス」を迫るファンなど、
やばすぎて思わず笑ってしまったくらいだ。
だが、妹を探している「四葉 環 」にとっては
理解できない行為だ。妹に会えるかもしれない、妹に会いたい。
それが彼がアイドルを続けている意味であり、生きる意味でもある。
それを安易に利用するファンの感情を彼に理解することなどは不可能だ、。
自分のことを応援してくれる、そんなファンなのに
自分のことを無視して自らの欲望を押し出そうとする。
身勝手なファンというものはファンが増えれば一定数現れる。
「四葉 環 」の心情を思うと本当に心が痛い。
終盤でも再会できるかと思えば彼を捨てた「父親」がでてきたりと、
本当に見ていてるつらくなるシーンンもある。
だが、そんなファンもいるからこそ今の彼らがいる。
やばいファンだけじゃない、良いファンも多く居る。
そんなファンの物語も随所随所に描かれている。
女子高生なファンは古参ファンであり、
彼らが有名ではないときから応援し続けている。
TVで彼らが失態を犯せば自分ごとのように悲しみ、応援してくれる。
社会人のお姉さんなファンはファンらしいファンであり、
周囲を巻き込みながら推し活を楽しんでいる。
そういうファンの姿を何気なく差し込むことで、
見ている私達も自然とこの作品に組み込まれているような感覚になる。
アウェー
ファンはアイドルたちを見ている。応援しているアイドルが好きだからだ。
だが、TV番組に諸事情で出れなくなった「TRIGGERのファン」の前で
アイドリッシュセブンたちは歌うことになる。完全なアウェーだ。
あえてTRIGGERの歌を歌い、TRIGGERというコールが鳴り響く中でも
「アイドリッシュセブン」は「アイドリッシュセブン」であろうとする。
盗まれたアイドリッシュセブンの曲を、追い続けた完璧な兄の代わりに、
「ファン」のまえで披露する。
アイドルあってのファンであり、ファンあってのアイドルだ。
ライバルであり、並び立とうとしていたTRIGGERの隣に
アイドリッシュセブンはたち並ぼうとしている。
「随分たくましくなったね、陸」
陸の兄のそんな言葉は陸には届いていない。
だが、見ている側には届いている。
家族を見捨てたはず彼がTRIGGERの天が、家族を認めてくれる。
ちょっと涙腺を思わず刺激されてしまった。
過去
彼らが抱えている問題は重い、なかなか解決することもない。
だが、それを7人が話し合い、きちんと向き合っていく。
特に「環」の問題は重い、それを利用しようとする大人たちも居る。
「アイドリッシュセブン」として大きな存在になっていけば行くほど、
彼らが抱えている問題にもより直面していく。
本気で喧嘩をすることもある。手を出すこともある。
だが、きちんと心の内をさらけ出し互いを理解していく。
1話1話、丁寧にキャラクターを描いているからこそ、
それぞれのドラマが見ている側に突き刺さり、
そのドラマがアイドリッシュセブンというストーリーを生んでいる。
そんな彼らを支えているマネージャーも
小動物のようにコロコロしており、本当に可愛らしい。
男性アイドルは女性向けな部分は強い、
だが、男性アイドルものに出てくる女性キャラの魅力が
しっかりしている作品は男女問わず楽しめる作品だ。
マネージャーが本気でアイドルたちを向き合い、
彼らを売り出すために、彼らが、アイドリッシュセブンが
大好きだからこそ必死なのが伝わる行動や台詞の数々がたまらない。
TRIGGER
そしてTRIGGERの物語もいい。
アイドリッシュセブンのライバルとしての立ち位置の彼らは
終盤で所属する会社に、親への苛立ちを隠しきれなくなってくる。
悪いのは彼らではない、利用とする大人たちだけだ。
彼らもアイドリッシュセブンも大人に振り回されている。
そんな大人に彼らは立ち向かおうとしている。
子供から大人になり、アイドルの卵がアイドルになった彼らが
自らの力で自らの問題に立ち向かう姿が全17話で描かれている。
終盤、陸は兄と二人きりで話し合う。
陸は兄より少しだけ大人になるのが遅かった、
大人になったからこそ、兄と並び立つことができる。
兄がどうして自分のもとを離れたのか、その理由は明らかになることはない。
だが、大人になったからこそ、その理由には愛が含まれていることが彼には分かっている。
同じ大人だからこそ、兄は彼に告げてくれる。
「走れなかった弟がいたことは僕も忘れるよ」
もう守るだけの家族ではない、一緒に並び立つ存在だ。
小さかったはずの、病弱だったはずの弟が
自分と同じように大人になっている、
1期の終盤でTRIGGERがライバルとして彼らを認めてくれる、
彼らの成長をきちんと感じさせてくれる。
ライブ
そんな成長を感じさせるライブシーン。
全編にわたってライブシーンでは3dCGが使われているのだが、
これがかなり自然だ、アップで顔を映すときはは手書きで、
動きを見せるときはCGで、その変化がシームレスであり、
CG特有の違和感がかなり抑えられている。
最初に7人が選ばれたときは7人である意味を
そこまで強く感じなかった。
だが、全17話見終わった後だと、
この7人でなければならないと感じさせてくれる。
そんな絆を感じさせるライブシーンは思わず感動してしまう。
ここまで色々な問題があった、解決していない問題も多い。
それでも「アイドリッシュセブン」というアイドルグループが
多くのファンを生み出し、世間にも評価された。
そう感じさせるライブだ。
TRIGGERとアイドリッシュセブン、2組がぶつかり合うラストには
全17話分の重みがしっかりと乗っかっている。
「みなさん、俺達がアイドリッシュセブンです!」
ラストのこの言葉に思わず感動してしまう、
そんな素晴らしい作品だった。
総評:友情、努力、勝利、これはもはやジャンプだ!?
全体的に見て王道なアイドルアニメでありつつ、どこか
ジャンプ的なイズムすら感じる作品だった。
7人のアイドルの卵、そんな卵でしか無かった7人が
7人の絆を深めていきながら己の問題を向き合い、
ときにそんな問題を分かち合いながら物語が進んでいく。
この7人がいなければ乗り越えられなかったかもしれない。
そんな問題やトラブルばかりだ、ライバル事務所や、時には
厄介なファンが邪魔してきたり、考えの違いで衝突することもある。
それでも彼らはぶつかりあいながらも成長していく。
最初は9人しかお客さんがいなかった。
そんな序盤から最後のライブに至るまでの流れが素晴らしく、
決して奇をてらったことはしていない、王道だ。
努力し、友情を深めながら勝利と言う名のアイドル街道を突き進む。
リアリティラインも絶妙だ、キャラクターたちが抱えている問題は重く、
簡単には解決しない。ほとんどの問題が完全に解決したとは言えない。
そんなリアルな部分とややご都合主義を感じる部分をあわせることで
テンポ感が生まれており、全17話なのにダレない。
序盤こそ7人というキャラの多さを感じるものの、
話が進めば進むほどキャラの印象がしっかりつき、
一人ひとりの名前も、どんなキャラなのかもしっかりと伝わる。
そんな7人が抱えている問題の多くは大人に振り回された結果でもある。
少年たちは徐々に大人になりながら、そんな問題に立ち向かう。
その姿に思わず心を締め付けられるが、
それが同時に彼らを応援したくなる気持ちにもつながっている。
特に主人公とも言える「七瀬 陸」と双子の兄の物語は素晴らしく、
最後の和解ともいえるシーンには思わず涙腺を刺激されてしまった。
この終盤に至るまで7人がいたからこそだ、
3人でデビュー仕掛けたこともある、ばらばらになりそうだったこともある、
それでも彼らはたどり着き勝利を掴んだ。
「みなさん、俺達がアイドリッシュセブンです!」
堂々彼らがこう言えるラストに至るまでのドラマの積み重ねが
素晴らしいストーリーになっている、
その最終話に至るまでは綱渡りなストーリーだ。
彼が抱えている問題、そんな問題と向き合う中で失敗や苛立ちもつのり、
喧嘩しかけることもある。1歩間違えば解散してしまう、
1歩間違えばアイドルたちがやめてしまってもおかしくない。
そんな綱渡り的な感覚を常に感じさせながら全17話が描かれている。
それがいい味での緊張感にもなっており、物語の刺激にもなっていた
ただの男性アイドルのアニメ、キラキラでイケメンがキャキャうふふしてる、
見ていない人はそんなイメージを持つかも知れないが、
この作品はただの男性アイドルのアニメじゃない。
王道の少年漫画的なアイドルアニメだった。
老若男女楽しみやすいアイドルアニメかもしれない。
個人的な感想:アイドリッシュセブン
アイドリッシュセブンは冒頭でも書いた通り、
ファンの人の熱量にやられてしまって見ていなかった作品だったが、
その熱量が生まれるのも納得だ。
しかも、話によれば1期よりも2期のほうが面白いらしい。
ここで寝かせてしまうと、なかなか2期に手を出さなくなるので
一気に見ていきたいと思っている。
もしかしたら、私もアイナナの沼にすでにハマっているのかもしれない
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