評価 ★★★★☆(72点) 全21話
あらすじ 主人公は星間航行船D.Q.O.の乗員であり、船内には「グノーシア(グノーシア汚染者)」という人間を消してしまう存在が人間のふりをして紛れ込んでいた 引用- Wikipedia
至高の無限ループ
原作はゲームな本作品。
監督は市川量也、制作はdomerica
ゲーム原作
ゲーム原作アニメというのは鬼門だ。
最近は一時期に比べてソシャゲ原作アニメも減ってしまうほど、
ゲーム原作のアニメというのは失敗している作品が多い。
ゲームはアニメよりも長丁場なストーリーが描かれていることが多く、
それを2クールないし1クールでアニメ化しようとすると
色々と無理が出てくる。
そのせいでゲーム原作のアニメは一部の作品を除いて
あまり評価が高くない傾向にあるのが現状だ。
そんな中で久しぶりにこの作品はゲーム原作のアニメだ。
しかも、1クールが当たり前の時代に2クールで放送されている。
それだけ気合を入れた作品ということなのだろう。
プロローグ
1話から非常にわかりやすい導入だ、宇宙船の中にいる人類。
そこで目覚めた主人公には記憶はなく、謎の美女に現状を説明される。
この船はとある星に向かっているのだが、永遠に到着できない現状にある。
この船の中にいる一人が「グノーシア」と
呼ばれる人間を消してしまう存在が人間のふりをして紛れ込んでいる。
原作ゲームはいわゆる「人狼」をモチーフにした作品だ。
人狼は実際のゲームで、人間同士の中に紛れ込んでいるオオカミを
会話で探し、人間が食われる前に人狼を見つけ出す大人気ゲームだ。
しかし、その人狼というゲームはその特性上、
ある程度の人数で行う必要があるボッチとは無縁のゲームだ(笑)
このグノーシアはそんな人狼をアドベンチャーゲームという
形に落としており、大人気になったゲームだ。
そんな人狼モチーフだからこそ、この作品はアニメという媒体でも
ゲーム原作アニメである欠点を感じさせない。
疑
主人公は周囲に疑われている。
彼は「記憶喪失」ではあるものの、それが本当かはほかのキャラにはわからない。
グノースというものに接触しグノーシアになったものは
人類の敵となる、人を消滅させる存在へとなってしまう。
だが見た目でそれはわからない。
だからこそ人間たちは主人公は「記憶喪失」のフリをしているのかもしれないと
疑いをかけている、誰一人として信頼も信用もしてない。
互いが互いを疑いながら、グノーシアを見つけようとしている。
グノーシアを見つけなければ船のAIは自爆を選択する。
その前にグノーシアを見つけてコールドスリープをすればいい。
実際に「人狼」ゲームを紹介しながら
主人公にも、視聴者にもわかりやすくこのアニメの基本的な設定を描いており、
頻繁なカット割りで複数の登場人物を見せながら印象づけている。
どのキャラもクセが有り、個性的なキャラクターデザインをしており、
ベテランだらけの声優陣の会話劇を聞いているだけでも心地良い。
安済知佳、長谷川育美 、鬼頭明里 、七海ひろき 、
瀬戸麻沙美、関智一 、早見沙織、悠木碧 、佐倉綾音 、
中村悠一、津田健次郎 、花澤香菜 、大塚剛央 、江口拓也etc…
この実力のある演技力を持つ声優陣だからこそ
この会話劇に雰囲気が生まれ、会話劇に浸ることが出来る。
序盤からこの全員がでてくるわけではないのもうまいところだ。
1話では主人公を含めて5人しかいない。
そんな5人による会話劇でこの作品の基本設定を1話で丁寧に描いている。
ただの会話劇、キャラ同士の「疑念」が飛び交う会話劇だけなのに
とんでもない緊張感が生まれる。
BGMとアニメーション、演出がこの緊張感をより駆り立て、
「グノーシア」という作品の雰囲気の良さを1話から感じさせてくれる。
人狼と同じく一人を選び、その一人が人狼ではない場合、
「夜」が訪れて誰かが殺される。
たった5人で始まった人狼は1話の中であっというまに3人になる。
そんな中で主人公は選択を間違える。
ループ
この作品の面白いところは1プレイが1話の中で描かれることだ。
序盤は基本的に1話で1プレイ、それが終われば次のゲームが始まる。
1話の時点で主人公は選択を間違えるものの、
ループし状況がまたリセットされる。
グノーシアを見つけるまでそのゲームは続くのだが、
そのプレイのたびに「役割」が変わる。
主人公はループしているが時間軸が戻っているものではない。
「世界線」を移動しているだけだ。
人狼というゲームの特性、プレイするたびに役割が変わるという
要素をループという名の世界線移動で非常に上手く作用させている。
前回のループ、世界線ではグノーシアだったものが
グノーシアであるとは限らない。
前回のループで信用できたものが信用できるとは限らない、
常に「疑念」という疑いの連鎖が飛び交う会話劇が
毎話毎話の緊張感を生んでいる。
見ている側もシンプルに推理してしまう。だが、圧倒的に情報が足りない。
ループのたびに主人公は情報を手に入れていく。
キャラにどんな過去があり、どんな事情を抱えているのか。
だが、そんな事情、人となりを知り「感情」に流されれば
間違えることもある。グノーシアは騙すことが本能だ。
論理的思考を持ちながらグノーシアを探しつつ、
投票では自分の感情を抑えながら、
他人の感情を誘い、投票を導かなければならない。
ループのたびにグノーシアはかわり、ループのたびに状況は変わり、
3話ではいきなりそれまで船の中にいなかったキャラがでてくる。
難易度
3話ではそれまで5人だったキャラが7人になる。
しかも、グノーシアは二人もいる。
チュートリアルである1話と2話でゲームの世界観と設定を
アニメに落とし込み、そこから3話で一気にゲームの難易度が上がる。
グノーシアが二人になることで、例えグノーシアを一人、
コールドスリープしたとしても、
それが正解だったかは主人公たちにはわからない。
リアルタイムでグノーシアの数がわからないからこそ難易度が一気に上り、
結果として1話1ゲームだったものが、1話2ゲームへと変わる。
更に人狼ゲームらしく、人間側にも役割が生まれる。
この役職がたされることでよりゲームは複雑なものになり、
より会話劇に緊張感が生まれる。
話が進めば進むほどゲームの難易度は上がっていく。
チュートリアルが終わることで、会話のテンポ、
ストーリーのテンポも一気に上がり、主人公は正解を掴む。
だが、ループは終わらない。
グノーシアを見つけて氷漬けにしても、ループは続く。
なぜループは続くのか。
欲望
このループを巻き込しているのは1話で主人公が
「セツ」というキャラからもらった鍵だ。
その鍵のお陰でループをし、グノーシアを見つけ、状況を打開できている。
だが、そのループに頼ってしまったせいで「ループ」から
抜け出す条件も満たさなければならなくなる。
ループの中でループの要因である生命体の知識欲を満たせばいい。
各キャラとの関係性を構築し、各キャラがもつ知識を引き出す。
ループしリセットされる関係値の中で、グノーシアから逃れつつ、
多くの知識欲を満たしていく。
誰がグノーシアかは毎回わからない。
同じループ者である「セツ」も、主人公自身にも可能性がある。
「人狼」というゲームを使いながらストーリーを描くための設定が
非常に自然だ、それをアニメの中でも丁寧に解説しつつも、
説明口調にはなっていない。
ただ各キャラがもつ知識をしるために関係値をループの中で深めるというのは
ややゲームっぽさ、ギャルゲーっぽさが強い部分でもある。
人狼そのものをそのまま舞台や用語をかえて描いているのではなく、
ギャルゲー的な要素やループという要素で独自性を高めている印象だ。
役割
1プレイ1プレイ、1ループ1ループ、
高度な会話劇を演技力のある声優陣で見せながら、
徐々にキャラクターを掘り下げながら描いている。
同じことをしているように見えるが、全く同じではないからこそ、
マンネリは生まれない。
より複雑に、より難解に、話が進めば進むほど
ゲームにおける会話劇も高度なものになっていく。
それをハイスピードに描き、ときに原作とは違う展開や要素もあるため、
原作プレイヤーすらも答えがわからない状況を
「グノーシア」という作品の設定を使ってうまくアニメを作り上げている。
主人公は時にエンジニアに、ときに守護天使に。
ループのたびに役割がかわり、新たな役割が生まれ、
新たなゲームに新しい面白みが生まれ、
そうかと思えば新キャラが追加される。
人間
この作品の面白いところは、人間の中にいるグノーシアを見つけるということが
ゲームの勝利条件なのだが、その人間の定義が面白いところだ。
見た目が完全にエイリアンなやつもいれば、イルカ、ロボット、人形も居る。
「なにをもって」人間なのか、知性なのか、それとも魂なのか。
未来を舞台にしているからこそ「人間」の定義が曖昧になっている。
性別すらも曖昧で、見た目も曖昧だ。
グノーシアという人間でないものを見つけ出す中で、
なにをもって人間であるのかという疑問を見ている側にも感じさせる。
それの真価が現れるのが8話だ。
人間であることが確定している二人を残しコールドスリープする。
確実に人間側の勝利だ、だが、グノーシアを探す中で、
人間が人間を殺し始める。
例えグノーシアを全員凍結したとしても、人間が勝利するとは限らない。
人狼ゲームではそれはありえないのだが、
そのありえないことをするのがこのグノーシアだ。
グノーシア
中盤で主人公は「グノーシア」になる。
今までグノーシアを見つける人間側だった主人公が、
初めてグノーシアになることで味わう「快感」は凄まじいものがある。
今まで構築していた信頼を裏切る、今までとは別の立場で
「場を操る」行為は人狼ゲームの面白さだ。
グノーシアになってしまったがゆえの本能からの嘘、
そんな本能にあらがいつつも、
グノーシアになったからこそ知れる事実もある。
グノーシアになっても、その本能に理性で抵抗することも出来る。
だが、完全に逆らうことはできない。
グノーシアを見つけるゲーム以外でも全滅する展開もあり、
話が進めば進むほど展開が読めなくなってくる。
各キャラの掘り下げ、情報も深いところまで手に入れていく過程で、
主人公も見ている側も「グノーシア」という存在を
当てることが困難になっていく。
何度もループを重ねるうちに、多くの人たちを知るたびに
主人公は全員に感情移入してしまう。
どうしたら、全員を救うことが出来るのか。それは視聴者も同じだ。
いつか主人公の中にいるループする生命体の知識欲が満たされれば、
このループから抜け出し、グノーシアを見つけ出せれば
主人公は助かるかもしれない。
しかし、必ず誰かがグノーシアになり、必ず誰かが犠牲になる。
それは変わらない。
誰もが幸せになるハッピーエンドにたどり着くことは出来るのか。
伏線
終盤の伏線回収は素晴らしい。謎だった会話、謎だった設定、
その謎が終盤で収束していく。
接点がなかったはずのキャラ同士の意外な接点、
序盤でのさりげないセリフが回収されていくのはある種の快楽だ。
真実にたどり着くための「15人」によるグノーシア。
しかも嘘をつく「人間」まで紛れ込んでいる。
「ループ」で得た情報をもとに主人公は動くが、
それは他者にとっては怪しい行動にも見える。
論理と感情、その2つが交差しながらの15人によるグノーシアは
最高難易度のゲームだ。
それをクリアすれば最高のハッピーエンドが待っている。
ハッピーエンド?
最高難易度のゲームをクリアした主人公がループした先は
「グノーシア」が存在しない世界線だ。
それはループを繰り返した主人公が求めた答えでもある。
物語的にはハッピーエンドだ。
だが、それは世界の終焉を意味する。
誰も犠牲にならないループの結末、それは物語におけるご都合主義だ。
そんなご都合主義は「バグ」だ。
「グノーシア」がいないハッピーエンドの世界において
主人公の存在そのものがバグだ。
ハッピーエンドにたどり着けば宇宙は崩壊してしまう。
グノーシアでも人間でもない「バグ」である主人公は
いかに物語の結末へとたどり着くのか。
単純な人狼でも、単純なループものでもない。
人狼とループもの、そしてSF要素が混じり合うことで
終盤の展開はとんでもないことになっている。
バグ
主人公は存在してはいけない存在だ。
だからこそ、ありとあらゆる方法で自らの存在を消そうとするものの、
ループによって同じ世界線にたどり着く。
人間でもグノーシアでもない、生きる資格がないもの。
だが、この世界には様々な人間が存在する。
人形、コピー、イルカ、ロボットも居る。
何を持って人間と言えるのか、何を持って生きる資格があると言えるのか。
例え「バグ」であっても知性を持ち、誰かを好きになれる。
そんなバグである主人公が真実へとたどり着く。
なぜ主人公は怪我をしたのか、なぜもう一人のループ者である
「セツ」はループをしていたのか。
視聴者に、主人公に足りなかった「知識」という「情報」が満たされる。
たどり着いた答えとエンディングは爽快感があるものの、
喪失と未来、完璧ではないエンディングだ。
トゥルーエンド
だが、満たされたのは主人公だけだ。
「セツ」の中の知識と情報は満たされていない。
主人公がたどり着いた答え、世界線はあくまでも
「ノーマルエンド」の世界だ。
アドベンチャーゲームには複数のエンディングがつきものだ。
ノーマルエンドの先にはトゥルーエンドが待ち受けている。
この作品はそこまでしっかりと描いている。
全員が生き残り、ハッピーエンドになるための未来へ、世界線へ。
騙し騙されあった友、いくつものループを、いくつもの時を過ごしたからこそ、
「ラキオ」という存在とずっと戦いあったからこそ、
最高のエンディングへとたどり着く。
始まりは終わりにあり、終わりには始まりがある。
1話は最終話につながり、最終話は1話につながる。
ループというものを扱った作品だからこその、
ループした結末、5人のグノーシアで始まった物語が5人のグノーシアで終わる。
1話に隠された謎を最終話で明らかにする。
最高のエンディングと伏線回収が2クールという道のり、
ループの果てで待ち受けている。
そんな余韻を感じている中でのあのラストだ(笑)
視聴者へのデザートのごとく考察要素まで残してくれる
素晴らしい作品だった。
総評:最後の一瞬まで見逃すな
全体的に見て素晴らしい作品だ。
序盤こそ人狼をやっているだけに見えるのだが、
そんな序盤が何百、何千ものループのはて、
2クールの物語の終着地点につながっているという
ループ者におけるにくいストーリー構成が生まれている。
ゲーム原作アニメというのはストーリーの長さの都合上、
失敗しやすい傾向にあるが、この作品はそこに人狼ゲームがあることで
1話1話1プレイ1プレイの区切りが生まれており、
その区切りを積み重ねることでエンディングへとたどり着ける仕掛けが
アニメという媒体と合っていたようにも思える。
アニメーションとして派手なシーンこそ無いのだが、
会話劇を盛り上げつつ、飽きさせない絵作り、構図がしっかりと
計算されており、同じようなことをやっているのに飽きない。
全21話の2クールでマンネリも感じさせず、
そこからの終盤の盛り上がり方は最高潮だ。
久しぶりに2クールの作品を見終わった後に感じる「満足感」が
しっかりと残る作品になっており、
まだ見てないという人は1話だけでも試しに見てほしい。
その1話が最終話であるという意味がラストまで見るとわかるはずだ。
個人的な感想:一気に
ここ最近は年齢のせいもあって2クール作品は1度どころか
何回か休憩を挟まないと厳しいのだが、
この作品は一気に見てしまう面白さがあった。
毎週の引き、次はどんな展開になるんだ?という予測のできない
ストーリー構成が2クールの中でいきており、素晴らしい満足感だ。
それゆえの疲労感はある(笑)
だが、この作品には一気に見たくなる魅力があり、
最後まで突っ走ってしまう作品だった。




