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ラスト30分で大豹変「どこよりも遠い場所にいる君へ」レビュー

どこよりも遠い場所にいる君へ 映画
画像引用元:©阿部暁子/集英社・「どこよりも遠い場所にいる君へ」製作委員会
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オタク歴25年、アニメレビュー歴13年、YouTube登録者11万人。 個人的な視点で語るアニメ批評です。

評価 ★★★☆☆(47点) 全117分

映画『どこよりも遠い場所にいる君へ』【10月9日(金)公開】本予告60秒

あらすじ 豊かな自然にあふれた離島・采岐島。その島には、「神隠しの入り江」と呼ばれる場所があった。とある事情で都会を離れ、采岐島の高校に進学した少年・月ヶ瀬和希は、ある初夏の日、神隠しの入り江で倒れている少女を発見する 引用- Wikipedia

ラスト30分で大豹変

原作は小説作品。
監督は和田純一、制作はトムス・エンタテインメント/第6スタジオ。

タイムリープ

いわゆるタイムリープものというのはここ10年くらいで
作品数が一気に増加したジャンルだ。
「君の名は。」のヒット以降、青春SF恋愛アニメ映画が爆増し、
「君」の名を冠する作品も数多く存在する。

そんな「君系」アニメ映画の1つが本作品だ。
例に漏れず、この作品にもSF要素であるタイムリープが存在し、
ヒロインが唐突に50年前から現代にタイムリープしてやってくる。
とある事情により島の高校に入った主人公はそんな彼女を見つけ、
彼女と関わっていくことになる。

序盤はややピンとこない部分が凄まじい。
主人公が鬱々としていて、やけに馴れ馴れしいルームメイトや、
主人公につっかかってくる同級生など、好感が持てるキャラがおらず、
ヒロインも、一緒に彼女を見つけた高津という男が
自分の妹と偽って保護している。

引きこもり

この状況がやや飲み込み難く、序盤はストーリーがなかなか動かない。
なにせ序盤30分、ヒロインが引きこもっている(苦笑)
自分に何が起きたのかすら話さず、50年前からやってきたということは
明らかになっているが、ずーっと高津の家の部屋で引きこもっており、
そんな彼女のもとに放課後、毎日主人公が通い続ける。

ダラダラっとした展開はあまり締まりがあるとは言えず、
116分の作品ではあるものの、そのうち30分、
ヒロインが引きこもっているというのはやや飲み込みがたいものがある。

主人公がやめていたピアノを弾いたことがきっかけで、
ヒロインが興味を持ち、そこから主人公とヒロインの関係性が
構築されていくのだが、これもかなり丁寧だ。

50年前からやってきたヒロインが時代の違いに戸惑いながらも、
主人公や主人公の学校の人たちと絡みながら日常を過ごし、
この時代で生きていくことも悪くないと感じ始めるまでには
必要な工程だったとは思うが、いろいろな情報の開示が遅く、
それゆえにダラーっとした印象を受ける。

過去

中盤を過ぎるとようやく主人公の過去が明らかになる。
クラスメイトの一人が主人公の過去をクラスの掲示板に書き込んだせいで
彼の過去が明らかになるのだが、主人公の父はとある人物とのいざこざで
偶発的に人を殺してしまい、主人公は殺人犯の息子として誹謗中傷を受けた過去がある。

それをきっかけに父との思い出でもあるピアノからも離れ、
自分のことなど誰も知らないような離島の高校に入学し、
鬱屈とした日々を送り続けている。

この島には神隠しの伝説があり、過去にも何人もの行方不明者がいて、
同時に過去や未来からやってくる「マレビト」という存在もいたことが明らかになり、
しかも、その一人と高津は知り合いで、関わった経験がある。
だからこそヒロインのことを庇っているのは理解できるのだが、
もう少し早めに情報を開示してほしいと感じる部分がかなり多い。

伏線

この序盤から中盤までは伏線をばらまいている状態だ。
1つ1つ丁寧に、観ている側が違和感を覚えるような行動や表情を
浮かべるキャラクターを描写し、それが伏線になる。

それをやりたいのはわかるものの、
タイムリープという設定やヒロインが「50年前」から来た少女という部分、
さらに主人公の高校を変え、島の観光客を増やしたという
伝説の校長の存在など、観ていて「予想」してしまうような
露骨な部分もあり、丁寧すぎるせいでやや予想しやすい部分も多い。

だが、そんな「予想」してしまう部分もある中で、
予想外のことが起こるのがこの作品だ。

ラスト30分

正直、序盤から中盤、この作品の116分の尺のうち80分くらいまでは
微妙な印象が強い作品だ。
しかし、ラスト30分で予想外の展開が巻き起こる。

とあるキャラクターの大暴走だ(笑)
主人公の過去が暴露されるという大事件を起こした真犯人なのだが、
この真犯人はメインキャラと言えるような存在ではない。
あくまでサブキャラ的な立ち位置にいるキャラクターだ。

そんなキャラクターが実は主人公のことを好きで、
その好意も「サイコパス」的なものに近い。
そのキャラクターが崖の上で主人公を待ち構え、
怪しげな笑みを浮かべながら真相を告白し、自分の思いも告白するシーンは
観ている映画が急に変わったような印象を受けるほどだ。

このキャラクターについて深く掘り下げられるわけでもない。
島での暮らしゆえの息苦しさから抱えたものがあり、
それがそのキャラクターをそういう感じに変えてしまったのはわかるのだが、
この部分に関して伏線らしい伏線がないのに、
急にサイコパスキャラへと変わったのは笑うしかなかった。

なんなら主人公とヒロインを崖から突き落とすんじゃないかと思ったくらいだ。
このキャラクター自体は非常に印象に残るキャラなのだが、
魅力的なキャラなのに、そのあとの事後処理とも言うべき部分が雑なのは
かなりもったいないところだ。

ヒロイン

終盤でヒロインの衝撃的な過去も明かされる。
なぜ彼女は50年後の未来に来たのか、そのきっかけとなる事件もまた
かなり重く、叔父から性被害を受けている。
それまでの青春SF恋愛アニメ映画的な雰囲気とのギャップもかなり強い。

思い詰めた彼女が人を殺す決意をし、それが失敗し、
人生にまで失望した結果、彼女は未来に来ている。
そんな彼女が主人公と出会い、同じように絶望した主人公が
「逃げる」という後ろ向きだが前に向いて歩く選択をしたことを知り、
彼女も前を向き、自分の人生と向き合うことを決め、過去に戻る決意をする。

ただ、この過程自体もやや急な感じがあり、
この時代で生きていくと主人公に宣言したはずなのに、
急に心変わりをしたような印象を受ける。
しかも、主人公が崖から落ちて血を流しているのに、
自分は過去に戻ることを優先するのはやや戸惑う展開でしかない。

伏線

終盤の伏線の回収の仕方は見事だ。
友人の主人公に対する献身、約50年という時間差、ヒロインの今、
このあたりの回収は見事であり、思わず涙腺を刺激されるような展開だ。

ただ、確かに泣ける展開で終わってはいるものの、
いろいろと粗が目立つ作品でもあり、
サイコパスキャラや、主人公に因縁をつけてくる同級生の掘り下げの甘さ、
ルームメイトの二人など、もう少し掘り下げたり絡めたりできそうなところを
絡めきれずに終わっている。

最後が綺麗にまとまっており、涙を流してしまう展開だからこそ
鑑賞後の印象自体は悪くないのだが、
それと同時に映画館を出た後に物足りなさやツッコミどころが
どんどん湧き上がり、もう1度観たいという気持ちにはならない。

伏線がわかったうえで観たら面白いという感じの作品でもなく、
伏線がわかったうえで観てしまうと粗のほうが目立ってしまうという
不思議な作品だった。

総評:ラスト30分で大豹変

全体的に見て「惜しい」という気持ちが勝る作品だ。
映画を観終わった後に面白かったという感想自体は残るのだが、
作品全体を改めて考えると粗が多く、
116分という尺をたっぷり使いすぎて、序盤から中盤までの
テンポが悪くなりすぎている。

この作品は50年という時間の隔たりを描いた物語だが、
皮肉なことに映画そのものの時間の使い方がうまくない。
日常を描くことにはたっぷりと時間を使っているのに、
キャラクターの本質に関わるような重大な出来事や、
心情の変化を描く時間はあまりにも短い。

116分もある映画なのに、必要なところで時間が足りていない。
そんな不思議なアンバランスさが、作品全体の印象を悪くしている。

アニメーションもかなりこだわりを感じる描写が多く、
アクションシーンなどはジャンル的にほとんどないものの、
情景を見せ、丁寧な心理描写で見せているのだが、
決定的なシーンのインパクトは薄く、主人公とヒロインが虹を見るシーンや、
最後の演奏シーンをあえてカットするのも個人的には微妙なところだ。

アニメーションでの盛り上がりどころというのを作れていない。
映像的な表現の弱さを感じるところがかなり多く、
そのわりには映像で見せるシーンが多いのも気になるところだ。

テンポ自体も前半から中盤はダラダラしているのに、
終盤でフルスロットルになってしまい、やや戸惑いが生まれ、
キャラの印象もラスト30分くらいでガラリと変わる。
この急激な変化はやや飲み込みにくいものがあり、
あのラストで微妙な作品から、悪くはなかったと思える作品にはなっているが、
素直に面白かったとは言いづらい部分も多い。

キャラ描写に関してもヒロインは、
「性被害」を受けたキャラなのに「エロいの大丈夫です!」と
明るく言うシーンは、後々考えてみると違和感が残る。
性被害の末に殺人、そして自殺を考えたヒロインの言動として、
もう少し丁寧な描写が欲しかったところだ。

面白かった部分もあるが、ツッコミどころや違和感、
粗を感じる部分も多いという評価に困る作品であり、
人によって印象も大きく変わりそうだなと思った作品だった。

個人的な感想:君映画

興行収入的には相当苦戦しているようで、
初週5800万円ほどと、いわゆるアニメ映画6000人族のような映画になっている。
この手の映画はおそらく人気俳優やアイドルなどを使った実写のほうが
受けはよかったかもしれない。

アニメ映画としてわかりやすい派手な展開もサイコパス部分以外では
あまりなく、アニメ映画という媒体との相性の悪さを感じてしまった。
「君の名は。」以降、この手の映画は増産されたが、苦戦している作品も多いことを
考えると、タイトルに「きみ」とつく映画は苦戦する
ジンクスが生まれているのかもしれない……。

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