映画

「鬼滅の刃 上弦集結、そして刀鍛冶の里へ」レビュー

映画
スポンサーリンク

評価 ★★★☆☆(59点) 全110分

アニメ「鬼滅の刃」上弦の鬼解禁PV

あらすじ 大ヒットアニメ「鬼滅の刃」のテレビシリーズ第3期「刀鍛冶の里編」の放送開始(2023年4月)を前に、第2期「遊郭編」の第10、11話と「刀鍛冶の里編」の第1話を特別劇場上映。引用- Wikipedia

鬼滅流資金調達

本作品は鬼滅の刃の映画作品。
監督は外崎春雄、制作はUfotable
前作はTVアニメの続編だったが、今作は総集編的な作品になっている。

MAD動画

映画冒頭で「これまでのお話」をざっくりと振り返るシーンが有る。
この作品を「鬼滅の刃」を見たことも読んだこともない人が行くことは
かなり稀だと思うが、総集編映画という意味では
これまでのお話を振り返るのは悪くない。

ただ、その映像があくまで個人的な主観ではあるものの
「MAD動画」にしか見えないのが難点だ(苦笑)
1期の立志編の映像を一期のOPである紅蓮華を流しながら
名シーンをざっくりと振り返るような感じになっているのだが、
これがニコニコ動画やYouTubeにあるようなファンメイドなMAD動画のような
そんな印象を受けてしまう。

そんな1期の振り返りが終わると、続いて無限列車編の映像が
LISAの明け星とともに流れる。
これもまたMAD動画のような音楽と映像の合わせ方をしており、
それが2連続で流れてしまうためちょっと笑ってしまった。

鬼滅の刃のオープニング曲はほぼ紅白に出る楽曲にもなっており、
印象深いものも多く、そんな曲を劇場の音響で
過去の振り返り映像とともに楽しめるのはファンとしては
嬉しい部分かも知れないが、個人的にはMAD動画にしか見えなかった。

映画体験

この作品は鬼滅の刃の2期の終盤の10話と11話と
更に3期の1話をつなげたものになっている。
そのせいもあって2期自体の回想はかなりざっくりだ。

一応冒頭のMAD動画2連続が終わったあとに
2期の10話までの話をざっくりと振り返る部分はあるものの、
2期を見ていない人がその部分の映像をみて内容を把握できるレベルではない。
2期の総集編という要素はかなり薄めだ。
そういった意味でもあくまで、これまでの鬼滅の刃を見たことがある人
前提のファン向けの作品に仕上がっている。

もともと鬼滅の刃の映像、特に戦闘シーンは
TVアニメでありながら「劇場アニメ」なみのクォリティで作られている。
10話と11話の部分で新規映像などは私が記憶する限りは無く、
地上波で放送したものをそのまま劇場スクリーンで
上映してるに過ぎない。

しかし、それでも映画としての見ごたえが生まれているのが
この作品の凄さでもある。他のTVアニメではこうはならない。
10年ほど前は総集編映画ブームで数多の作品の総集編映画が上映され、
本作品と同じくTVで放送した映像を流用していたが、
映画としてのみごたえを感じる作品はあまりなかった。

しかし、この作品は違う。
戦闘シーンのおける立体的なカメラワークは
「劇場スクリーン」で見るからこそ、より立体的にかつ、
奥行きまで感じるような背景と戦闘シーンの数々は
TVアニメの映像を流用しているのに、映画としての見ごたえが生まれている。

特に「背景」に関しては映画のスクリーンで見るからこその利点も生まれている。
印象的な「炎」の描写は劇場スクリーンだからこそ映える部分があり、
鬼滅の刃のTVアニメとは思えない作画のクォリティの高さ、
Ufotableらしいカメラワークの数々が映画のスクリーンで
本領発揮していると言っても過言ではない。

「無限列車編」は映画、そして2期の序盤でも再編集されて
TVアニメとしても放送されたが、個人的に
「音の圧」が映画とTVで見るのに大きな違いを感じていた。
序盤の煉獄さんが弁当を食べて「うまい!」と連呼するシーンも、
TVアニメでは迫力不足だったが、劇場のスピーカーでは
とんでもない迫力を耳でも感じていた。

その「音の圧」をこの作品でも感じることができる。
ご家庭のよってはスピーカーなどのサラウンドシステムにこだわりをもってる
人も多いかもしれないが、多くの人がテレビで普通のスピーカーや、
ヘッドホンやイヤホンで聞いていることだろう。

だからこそ、映画という「巨大なスピーカー」で聞くからこその
圧がこの作品でも生まれている。
10話の序盤の「炭治郎の指」が折られるシーン、
TVアニメではそれほど印象は残っていなかったのだが、
この作品ではあえてレビューに書きたくなるほど印象に残ってしまう。

「指の骨がおられる音」
この音に思わずドキッとさせられてしまう。
たかが指の骨がおられる音だ、
戦闘シーンのあるアニメならば骨が折れるシーンが数多くある。
だが、この作品はそんな骨がおられる音に胸を鷲掴みにされてしまう。

鬼滅の刃はアニメーションや作画のクォリティの高さに
着目されることが多い。
しかし、無限列車編もそうだが、劇場のスピーカーで聞くと
「音」へのこだわりも強く感じさせてくれる。

刃と刃が交わる音、刃が突き刺さる音、肉を切り裂き、
骨が折れる音が劇場のスピーカーだからこそ、
ダイレクトに鼓膜に響かせ、より作品の臨場感と迫力を高めてくれている。

内容自体はテレビで放送されたものと変わらない。
しかし、「劇場」で味わうからこその映画体験のようなものを
この作品では味あわせてくれる。
決して家庭のTVでは味わえないものを、
映画館に見に行く「価値」が生まれている。

無限城

今作で多くのファンが見たかったものが
「上弦」が集う無限城だろう。
3期の1話の先行配信部分ではあるものの、これも
劇場というスクリーンで見るからこその「立体感」が生まれている。

無限城の中を「猗窩座」が巡るシーンは
ちょっと酔いそうになるほどぐるんぐるんと動いており、
建物の構造が目まぐるしく変化していくCGの描写は
さすがはUfotableと言わんばかりの描写だ。
そんな無限城の内部構造をたっぷりと見れてしまうシーンになっている。

個人的には「実写」を取り込んだのか…?と思うほどの、
無惨が使用しているフラスコやビーカーの描写に思わず目が行ってしまった。
ちょっとやりすぎなくらいの無限城やフラスコなどのCGの描写は
3期への期待感を自然と高めてくれる。

刀鍛冶の里

ただ、そんな無限城のシーンが終わるとやや盛り下がる。

3期の始まりであり導入のエピソードだからこそ仕方ない部分があるものの、
遊郭編終盤の戦闘シーンを迫力たっぷりに見せられ、
更に無限城での緊張感のあるシーンを見たあとに、
戦闘後の炭治郎たちの日常や刀鍛冶の里でのほっこりとした
日常描写になってしまうと緊張の糸が途切れてしまう部分がある。

3期の1話は1時間SPなので、CMを抜けば40分くらいであるものの、
それでも見る側の集中力がやや切れてしまっていた。

オープニング5回

ここまでいい点ばかりをレビューしてきたものの、
同時にこの作品は欠点も目立つ、
なにせオープニングを5回も聞かされる(苦笑)

冒頭のこれまでの話という名のMAD動画で1期と無限列車編の
OPの2曲が流れるのはいいのだが、問題は2期の部分だ。
2期ではAimerの残響散歌がOPに起用されており、
10話の部分が始まって、このOPが流れる。
そして11話の戦いが終わったあとにまたこのOPがフルサイズで流れる。

この時点で4回も曲が流れている。
そして、3期の1話部分が終わるとエンディングの代わりに、
3期のOPも流れる。合計5回もオープニングが流れてしまう。
どこぞのアイドルアニメの映画レベルの曲数は
やや物語のテンポ感が崩れる原因にもなっている。

せめて2期の部分は同じ曲が2回も流れるのだから、
1回にまとめても良かったのでは?と感じるのだが、
そのまま10話と11話をつなげてるだけで編集がされていないため
こうなってしまっている

スタッフロール

更にスタッフロールの問題もある。いわゆるエンドクレジットだ。
10話の部分が終わると10話の映像をそのまま使っているため、
地上波で流れた10話と同じくエンドクレジットが画面に流れる。
更に11話でもオープニング曲と一緒にエンドクレジットが流れる。

せめて10話の部分のエンドクレジットくらい
編集で消せなかったのか?と思うのだが、
ただ10話と11話をつなげてるだけなのがまるわかりだ。
更に3期の1話部分が終わるとまたエンドクレジットが流れる(苦笑)

おそらく1本の映画内で3回もスタッフロールが流れる作品は
この作品が初だろう。
最後の1階にまとめても良かったのでは?と思うのだが、
このあたりがやや「雑な編集」になってしまっていることを
強く感じさせてしまっていたのは残念な部分だった。

総評:至高の映画体験と雑な編集

全体的に見て「映画」という場所で見るからこその価値を感じる作品だ。
地上波放送の時点で映画なみのクォリティで描かれている作画と
アニメーションだからこそ、そのまま映像を流用しても、
かつての総集編映画ブームのときのような物足りなさを感じず、
むしろ大きなスクリーンで味わうからこそ、より迫力を感じられる。

特に音響部分に関しては映画で見るからこその価値が生まれており、
骨が折れる音や剣戟の音がよりダイレクトに感じられ、
遊郭編の戦闘シーンの魅力をTVで味わうよりも、
より面白く感じられる。

そういった利点はあるものの、編集のやり方はやや雑だ。
5回も流れるオープニング、3回も流れるエンドクレジット。
このあたりが作品全体のテンポ感を崩してしまっており、
もう少し上手く編集してあれば素直に楽しめたのにと思う部分はある。

ただ、鬼滅の刃が好きな方ならば見て損はない作品だ。
「映画」だからこそ味わえる体験、映像美と音響効果を映画館で楽しめる。
総集編映画は制作サイドとしては資金調達的な意味合いも強いが、
Ufotableのクォリティだからこそ、そんな資金調達でも
ファンとしては映画館で見る価値が生まれている。

1900円というお金を出す価値を感じさせてくれる。
そんな作品だった。

個人的な感想:2期

あくまで個人的にだが、3期の1話の先行公開や
1期の振り返り部分をカットして、尺がもう少し伸びてもいいので
「2期全体」の総集編映画を見たかたったなと感じてしまうところだった。

1期の一部は「「鬼滅の刃」兄弟の絆」として一挙放送などがあり、
これも劇場で公開されていたりしたが、
一期の一部だけではなく、他の部分も「映画」という
スクリーンで見てみたいと感じる部分が多い。

Ufotableの作画がもともと映画のクォリティで作られているからこそ、
映画館で見たいと思わせてくれる。
おそらく4期の前に3期のものをこういう形で映画にするかもしれないが、
そのときにはもう少し編集してほしいところだ(苦笑)

「」は面白い?つまらない?

この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください