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「Fairy gone フェアリーゴーン 」レビュー

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評価 ★☆☆☆☆(14点) 全12話

あらすじ イースタルド全土を巻き込んだ統一戦争が終結してから9年後の世界。引用- Wikipedia

致命的なストーリー構成

本作品はTVアニメオリジナル作品。
2クール予定の作品だが分割2クール構成であり、
当記事は1クール目のレビュー。
監督は鈴木健一、制作はP.A.WORKS

海外向け


引用元:(C) 2019 Five fairy scholars/フェアリーゴーン製作委員会

見出して感じるのはしっかりとしたキャラクターデザインだ。
萌えという感じのキャラデザではなく、
どちらかというと硬派なしっかりとしたキャラクターデザインであり、
「海外向け」を狙ってる感じがするデザインだ。

美麗な作画としっかりと書き込まれたファンタジー世界の背景は、
作品の世界観を感じさせる出来栄えになっており、
さすがはPAWORKSといいたくなるような作画だ。

萌えアニメや日常アニメ、イケメンがスポーツをするアニメなど
最近流行りのアニメの雰囲気とは違う、
どちらかといえば2000年代前半のやや陰鬱な深夜アニメっぽさを
ひしひしと感じさせる雰囲気が漂っており、
いわゆる「硬派なアニメ」が好きな方にはたまらない雰囲気だろう。

説明


引用元:(C) 2019 Five fairy scholars/フェアリーゴーン製作委員会

しかし、そんな作画面における世界観の描写と空気感とはうらはらに、
それを台無しにしているのがナレーションだ。
1話冒頭でこんなナレーションが入る。

「イースタルドはサイダル王に担ぎ上げられたゼスキア皇帝の下に
統一され戦争は終結した。様々な矛盾、対立、
軋轢を残しながらも後の世に大戦とも呼ばれた統一戦争は
とりあえずケリはついた」

もうこの時点で横文字が一杯すぎて投げ出したくなる。
王と皇帝という意味合いが近い子どばもあるせいで
なんとなくは把握することができるが、なんとなくしか把握できない。

今、その説明が必要なのか?と思うほどに説明が多く、
作画世界観の空気感とはうらはらに、拒絶したくなるような横文字だらけの
世界観を説明される。

しかも、そんな戦争が終わったという説明が終わった後に一気に時系列が飛ぶ。
せっかく把握しかけた状況を1度またリセットして始める。
世界観の説明はどうでもいいので、その時系列が進んだ後から
始めればいいのでは?と感じるほどストーリー構成がヘタだ。

妖精


引用元:(C) 2019 Five fairy scholars/フェアリーゴーン製作委員会

この世界には「妖精」が存在している、戦争時、
そんな妖精を使った妖精兵というものが存在して戦っていた。
簡単に言えばジョジョの奇妙な冒険のスタンドだ。
いや、それ以下だ。

殺伐とした世界観の中で「妖精兵」同士の戦いが描かれるのだが、
これに何の面白みもない。本来はここに面白みがなければないのに、
ここに全くと言っていいほど面白さを感じられない。

ジョジョの奇妙な冒険ならスタンドのそれぞれの能力を駆使しつつ、
互いの能力を探りつつバトルをするのが、駆け引きをうみ
見てる側にハラハラドキドキとした緊張感と面白さを感じさせてくれる。
しかし、この作品はスタンドと言う要素をパクっておきながらそれができてない

なにせ妖精兵同士のバトルになると基本的に物理攻撃ばかりだ。
剣などでちゃんばらごっこをしつつ、たまに妖精固有の技を使ったりするが
そこに「駆け引き」というものが見えてこない。
妖精の能力も単純なものが多く狼の咆哮で吹き飛ばしたり、
握ったら溶かすなどシンプルな能力でそれ以外の能力がない。

妖精同士で取っ組み合ってたり、人間同士がちゃんばらごっこしてる事も多く、
どっちかの戦闘シーンだけでいいのでは?と思うほど、
妖精と人間がバラバラに戦ってる感じが強い。

妖精には妖精でしか攻撃することができないとかいう設定ならわかるが、
普通に人間でも戦うことはできる。
だからこそ余計に妖精=スタンドバトルって必要なのか?と思うほど
必要性を感じない

作画はいい。妖精は「3DCG」で描かれておりぬるぬると動き、
人間同士の戦闘の作画も素晴らしい。
だが、全くといっていいほど戦闘シーンが盛り上がらない。

回想回想また回想


引用元:(C) 2019 Five fairy scholars/フェアリーゴーン製作委員会

序盤はもう馬鹿みたいに回想の連続だ、
過去の戦争のさいに起こった出来事や登場人物の過去などを描写するのだが、
その過去回想で出てきた人物が必ず、その後に出る。その繰り返しだ。

しかも、その過去回想が長い。
ぐだぐだとどうでもいい戦闘シーンを交えつつ、
メインキャラたちとその人物の関連性を描くのだが、
もっと簡潔に描けるのでは?と思う部分をしつこく描写する。

その過去回想が終わると、その回想に出てきた人物と再会して
ようやく話が進む。何話かに一回、
過去のお話の回があってこういうことがありましたという
ストーリーを描くならわかるが毎回のように回想だ。

大量にキャラクター名や地方も出てくるものの、
全部カタカナ横文字で、それが地名なのかキャラ名なのかも把握しきれない。
主人公とヒロインの名前がマーリャとフリーと覚えやすいのが唯一の救いだ。

話が進むごとにキャラクターが増えるが、
正直、主人公とヒロイン以外の名前が頭に入ってこず、
しばらくたってから再登場されてもどこの誰かがわからない。

うるさいBGM


引用元:(C) 2019 Five fairy scholars/フェアリーゴーン製作委員会

戦闘になると必ずBGMがかかる、どこの誰だか知らない人が
ノリノリで歌う曲を聞かされながらバトルが進行するのだが、
正直、音量が大きい上に歌声まで入ってるため
戦闘中のキャラのセリフがやや聞こえづらい。

作品の世界観と合ってるともいえず、
決してドラムがズコバコ鳴り響かせエレキをぎゅいんぎゅいん
言わせてるような状況ではないのにそんな曲が流れても、
ただでさえ面白くない戦闘シーンが余計につまらなく感じさせるだけだ。
せめて歌声さえなければ我慢できるかも知れないが、
個別にミュートはできない。

戦闘シーンが全く盛り上がってないのに曲だけ勝手に盛り上がってる感じだ。
こちらもノリノリに慣れる状況ならいいが蚊帳の外で、
ノリノリの曲をかけられても冷めた目で見つめることしかできない。
ペルソナみたいな感じでやりたかったのかも知れないが、的外れだ。
BGMならバックグラウンドにいなければいけないが、全面に出すぎている。

時系列


引用元:(C) 2019 Five fairy scholars/フェアリーゴーン製作委員会

回想の多さもそうだが、回想から回想につなげるため
もう今が作中での「何年なのか」があまりにも分かりづらい。
それだけではなく視点もコロコロ変わる。

制作側や脚本家の中では理解できるかも知れないが、
視聴者側には混乱しかない。
せめて回想をつなげるにしても時系列順にやればわかりやすいが、
時系列もいじってしまってるため余計に混乱してしまう

この回想の連続が定期的に訪れるため厄介だ。
ストーリーを見せるストーリー構成ができていない。
話自体はそこまで複雑ではないのに、時系列をいじった回想のせいで
複雑に感じやすくなってしまい、本来はそこにあるはずの
ストーリーの面白さを感じらくさせてしまっている。

繰り返し繰り返し


引用元:(C) 2019 Five fairy scholars/フェアリーゴーン製作委員会

序盤は同じような展開の繰り返しだ。敵がくる→倒せずに逃がす。
この繰り返しだ。主人公もヒロインも強いんだか弱いんだかよくわからず、
毎回毎回、重要な人物を逃してばかりで同じような展開を繰り返しながら
回想を何度も何度もいれつつ、キャラを出しながら物語を展開していく。

序盤に面白いシーン、盛り上がるシーンがない。
キャラ数が多いせいでキャラクターを出すことに必死で、
ストーリーにおいて描かなければならない過去が多すぎて回想に必死で、
キャラクターを掘り下げて魅力を出すことができておらず、
ストーリーを進めるのに必死で盛り上げ所というのを作れていない。

特に面白みもないシーンを繰り返すことがある。
例えばキャラクターの一人がお店で「真水」を注文する、
それを聞いたウェイターが1度聞き返した後にもう1度彼女が「真水」と
少し怒ったように告げる。こんな得に面白みもないシーンが2度も繰り返される

そのキャラクターが「味のあるものは飲めない」というキャラというのを
覚えさせたいのはわかるが、だからどうしたと言うような要素でしかなく、
そんなどうでもいいシーンに時間を割く必要性を全く感じない。
そんな方法でしかキャラ付けやキャラの掘り下げができないのか?と思うほどに
キャラクター描写が意味不明だ

視点


引用元:(C) 2019 Five fairy scholars/フェアリーゴーン製作委員会

そもそも「その視点を描く必要があるのか?」という視点がある。
ヒロインの幼馴染がヒロインとは敵対関係なのにヒロインを遠くから
見守っているというシーンが何度かある。
そしてヒロインがピンチになると颯爽と登場してくる。

颯爽と登場しても、そこに何の意外性もない。
視聴者からすればずっと見守っていたことは彼女の視点が描かれているため
明らかであり、描かなければ颯爽と登場したシーンに
意外性が生まれるのにそれをしない。

他にもとあるキャラクターが裏切っているような状態なのだが、
それが見てる側には明らかになる視点もあったりと、
物語のおける意外性を全く作れておらず、全て予定調和かつ、
予想通りの展開になってしまう。

描かなくてもいい視点まで描いているせいで物語を更につまらなくさせており、
視点が変わりまくるためいつまでたってもキャラクターに魅力を感じられない。
これで群像劇ならばこの視点の変わり方も納得できる部分があるが、
この作品は別に群像劇ではない

多すぎる要素


引用元:(C) 2019 Five fairy scholars/フェアリーゴーン製作委員会

分割2クールで2クールという尺ということもあったのかもしれないが、
物語の中の要素があまりにも多い。

かつての戦争で「妖精兵」になった主人公と
その主人公とかつて戦争中に戦った仲間との因縁や物語、
かつて自分たちの村が焼き払われ特別な手術なしに妖精兵になったヒロインと
一緒の村で育った幼馴染との関係や物語。

これが物語の主人公とも言える二人の話だ。
この物語にさらに「黒の妖精書」というものをめぐるバトルや、
政治や歴史などいろいろな要素が盛り込まれている。
特に混乱を招くのが政治と歴史だ。

戦争中や戦争後に誰々が死んだというのを聞かされても、
その人物は視聴者としては初めて見る人物であり、心底どうでもいい。
そんなどうでもいい歴史上の人物の死に様や立場などを
国の偉い人たちのモノローグで説明されるのだが、
名前も覚えきれなければ、その人物がどんな人物なのかもよくわからない。

この作品は要素は非常に多いのに、それをいちいち解説しようとして
物語を進める上で必要のないことまでセリフに盛り込まれてしまっており、
長々とセリフで解説した後に「戦争には犠牲がつきものだってことだな」と
キャラクターが言う、そのセリフだけでそれまでの回想や
説明など全く必要がない。

本来は設定資料集に書いてあるようなことまで作品の中に盛り込んでいる。
アニメにおける要素の「削ぎ落とし」ができておらず、
思ったアイデアや設定をそのまま盛り込んで全部解説しようとしている。
そのせいで話が進んだのか進んでないのかよくわからない

キャラクター数


引用元:(C) 2019 Five fairy scholars/フェアリーゴーン製作委員会

序盤から中盤までにもかなりのキャラクターが色々なことをしているが、
誰が誰でどんな目的で動いてるかというのは把握しきれない。
そんな状態なのに中盤になると更にキャラクターを追加する。

どうでもいい情報屋みたいなキャラクターにまで名前をつけて
わざわざテロップで出すため、その人物が後で重要なキャラなのか?と
一応頭の片隅においておくが、そのキャラは二度と出てこない。
ならなぜテロップでわざわざキャラ名を出したのか意味不明でしかない。
こんな事をされるため無駄でしかない

しかも中盤以降に追加されるキャラは白髪の爺さんばかりだ。
もう誰が誰でどんな立場なのかよくわからず、
ただ「偉いぽっと出おじさん」たちが3人で話し合う様子や政治の駆け引きを
見せられても、そこに何の面白さもない。

1クールの終盤に差し掛かってる8話でサブキャラを
掘り下げるようなエピソードがあったりもする。
ぽっと出のどうでもいいメガネキャラの掘り下げなど本当にどうでもよく、
これが序盤のエピソードならわかるが、
なぜ終盤になってサブキャラを掘り下げるようなエピソードをやるのか
意味不明だ

そもそも肝心のヒロインと主人公を掘り下げきれていないのに
サブキャラのエピソードをやる意味がわからない。
終盤になるほど本来物語の核であるはずの二人の存在感が薄れていく。

終盤


引用元:(C) 2019 Five fairy scholars/フェアリーゴーン製作委員会

1クールの終盤はもう目も当てられない。
2クール目があるからと言うことを考慮しても、キャラ数が多すぎる上に
要素が多すぎて「今、画面上に映ってるキャラは誰で何が目的なのか」という
根本的な部分がよくわからなくなってしまっている

しかも、いきなり「妖精武器」という要素が出てくる。
これは妖精に対して効果的な武器だが7つかない代物らしい、
なぜ7つしかないのかは全く不明であり、
違法な妖精などを取り締まる主人公たちがなぜもっと早い段階で
使わなかったのか謎でしかない。ちなみに主人公たちの組織が4つ所有している

そもそも、そんな代物があるならば主人公かヒロイン、
どちらかを最初から妖精武器持ちにしておけばいい。
どうせ妖精を使っても取っ組み合いの戦闘シーンしかできないのだから、
どちらか片方が武器持ち、どちらか片方が妖精持ちのほうが
主人公とヒロインの差もきっちりと出たはずだ。

妖精兵、妖精書、妖精武器といろいろな要素があるものの、
その要素をどれ1つまともに使えていない。
結局、敵の目的もよくわからない奴らが多く、色々な伏線や謎を残しまくりで
中途半端すぎるままに1クールが終わってしまった

総評:削ぎ落としができていない


引用元:(C) 2019 Five fairy scholars/フェアリーゴーン製作委員会

全体的に見て驚くほどに駄作だ。
2クール構成でまだ1クール目ではあるものの、
それでも1クール目を見終わった後に2クール目を見たいと思わせてくれない。
それ所か、2クール目が放送する頃にはこの1クール目の内容を
確実に忘れている自信があるほどにストーリーが頭に入ってこない。

序盤から中盤の回想の連続はあとで纏めてやれと思うほどに細切れでしかなく、
大した内容でもないのに毎回のように回想があるためストーリーが
盛り上がらなず、どんどんと増えていくキャラクターはどこの誰だか
覚えきらないままで一人ひとりの掘り下げもきちんとできていない。
特に主人公とヒロインに何の思い入れももてないほど魅力がない。

多すぎる要素をどれもきちんと使いこなせておらず、
中途半端なスタンドバトルな妖精兵同士の戦いは盛り上がらず、
そもそもよくわからない妖精書をめぐる話もよくわからず、いきなり
でてきた妖精武器はもっと早い段階で出しておけと言いたくなるほどだ。

雰囲気はいい、だがそれだけだ。
アニメにおけるストーリー構成がまるでできておらず、
要素の削ぎ落としをせずに盛り込むだけ盛り込んで、
1つ1つの要素、一人ひとりのキャラクターを掘り下げきれていない。

制作側の頭の中では理解しきれてるのかも知れないが、
それを1つの作品として視聴者に見せるレベルになっていない。
作画だけはいい、それだけの作品だ。

個人的な感想:難産


引用元:(C) 2019 Five fairy scholars/フェアリーゴーン製作委員会

1度、この作品を見終わった後にこの作品の面白さがまるでわからなかったため
もう1度見直すことにしてみた。
だが、それでもこの作品に対する評価は変わらなかった。

制作側の企画会議ではすごく盛り上がったのかなと感じる作品だ。
だが、その盛り上がりを作品の中に落とし込めきれていない。
造り手側だけが勝手に盛り上がって、見てる側はそれを冷めた目線で見ている
そんな作品だ。

2クール目で化ける可能性がなくもないが、
そうなると1クール目がほんとんど面白くないのを我慢して初めて
2クール目が楽しめる作品になるハメになる。
この1クール目を「我慢」する価値のある2クール目になることを
期待したい所だ。

「」は面白い?つまらない?

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  1. 生粋のスタ…妖精兵 より:

    フェアリーゴーンの2クール目を見る予定はありますか?いつでもいいので待ってます!