「放課後さいころ倶楽部」レビュー

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青春
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評価 ★★★★☆(60点) 全12話

あらすじ いつもひとりでいること―。人付き合いが苦手で引っ込み思案な武笠美姫にとっては、それが当たり前の日常引用- Wikipedia

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はんなりとしっとりな青春アニメ

原作はゲッサンで連載中の漫画作品。
監督は今泉賢一、製作はライデンフィルム

京都弁


引用元:©中道裕大・小学館/放課後さいころ倶楽部製作委員会

1話冒頭、主人公のモノローグから始まる。
遊ぶということが下手くそで楽しいということが何なのか、
そういう事がわからない彼女のモノローグ。
そんなモノローグが「はんなり」した京都弁で綴られる。

この作品の舞台は「京都」の高校だからこそ
主人公を演じる声優さんも奈良県生まれの声優さんだ。
関西のイントネーションで演じる彼女の「モノローグ」は聞き心地がよい。

人が大勢いることは苦手で、みんなが好きなことが好きになれない。
だけどどこか「寂しさ」を感じさせる主人公の心理描写を
きっちりと描き、彼女がここからどう「変化」していくのかというのを
見ている側に予感させることで物語への期待感を高めてくれる。

日常アニメだからこそのしっとりと、ゆっくりとした始まりでありながらも
主人公の京都弁とモノローグと心理描写が、
主人公への感情移入を強めてくれる。

そんな彼女が土手から自転車で落ちてきたクラスメイトとの出会いと
会話をキッカケに彼女の世界が広がっていく。
元気で明るく前向きな「高屋敷 綾」は引っ込み思案な主人公にあえて
「迷子」になろうと語りかける。

キャラクター同士の台詞の掛け合い、台詞のセンスが素晴らしく、
単純な台詞の掛け合いなのにそこにきちんと1つ1つ意味がある。
意味があるからこそ主人公の世界を広げるキッカケにもなる。

「高屋敷 綾」にとってはなんてことのない言葉が、
主人公である「武笠 美姫」が少しだけ前向きになれるきっかけになる。
自分の周りには楽しいことなんて無い、そう思ってた彼女が
「楽しさ」を見つける。
1話の10分たらずでしっかりとした導入と主人公の変化を描いており、
この作品の世界観にしっかりとのめり込んでしまう。

そんな二人が夜の京都で真面目で堅物な「委員長」を見つけ、後をつけ
「さいころ倶楽部」へと足を踏み入れる。
Aパートで広がった主人公の少し広がった世界が
Bパートで更に広がっていく。新しい扉を開いた瞬間だ。

遊ぶということが下手くそな女の子が
「アナログゲーム」の世界へ足を踏み入れる。

アナログゲーム


引用元:©中道裕大・小学館/放課後さいころ倶楽部製作委員会

この作品で出てくるアナログゲームはメジャーと言えるものは少ない。
マラケシュ、ごきぶりポーカー、インカの黄金etc…と
アナログゲームというものを知らない人にとっては聞いたことも
見たこともないようなアナログゲームの数々だ。

そんな「知らない」アナログゲームを「なにも知らない」主人公とともに
ルールを覚えて見てる側も楽しめるようになっている。
1話の最初では見せなかった楽しそうで嬉しそうな表情を
「アナログゲーム」を通して友達を遊ぶうちに見せていく。

もっと色々なアナログゲームを知りたい、もっと友だちと遊びたい。
純粋に人と遊ぶことの楽しさ、友達とのかかわり合いの良さを感じさせてくれる。

「この日、私は楽しいを一緒に見つけてくれる誰かに出会えた」

主人公の1話のそんな台詞がはんなりと染み渡る。

距離感


引用元:©中道裕大・小学館/放課後さいころ倶楽部製作委員会

この作品の登場人物たちの「距離感」の変化はわかりやすく見ていて楽しい。
1話では名字で呼んでいた彼女たちが、2話では名前で呼ぶようになる。
名前で呼ぶことの不慣れさを感じさせつつも、
そんな不慣れさも自然に消えていく。

「相手の呼び方」という分かりやすい距離感の描写と、
それに慣れていく主人公の変化が見ていてわかりやすく、
それが本当に微笑ましい。

それは主人公だけではない。
同じクラスの「恋する男性生徒」もアナログゲームを通して
好きな女の子との距離感を近づけていく。

「下心」しかない彼の彼女に対する距離感の変化も面白く、
男性キャラを一切登場させない作品もある中で
この作品はきっちりと同級生も登場させることで、
恋愛というある意味もっとも距離感が大事な部分もきちんと描写している。

この作品はアナログゲームという共通の遊びを通して、
「距離感」の変化とそれぞれの成長と変化を描いている作品だ。
一緒にゲームをする相手のことが好きだからこそわざと負けることもある。

その距離感と心理の駆け引きがそれぞれのキャラのアナログゲームの
遊び方にそっくりと現れているのも面白いところだ。
ゲームのプレイイングがキャラの性格を如実に表している。
だからこそ一人ひとりのキャラをしっかりと把握し、
そのキャラらしいプレイイングに愛らしさすら感じる。

キャラクターに得意なゲームと不得意なゲームが分かりやすい。

放課後さいころ


引用元:©中道裕大・小学館/放課後さいころ倶楽部製作委員会

彼らの遊ぶさまは地味ではある。
派手な演出や大袈裟なリアクションをするわけではない。
実在するアナログゲームをただただ楽しそうにやっているだけだ。
アニメとしての派手さという部分はこの作品にはない。

毎回毎回、違ったアナログゲームを丁寧に解説し、
それをメインキャラクターたちが楽しむ。勝ち負けは重要じゃない。
彼女たちは別にアナログゲームの大会に出ようとしているわけではない、
あくまでも友達と「アナログゲーム」を一緒に楽しむためにやっている。

キャラクターたちが楽しむことに真剣だ。
だからこそ見てる側もそんな彼らが楽しむさまが楽しい。
ゲームを通じて相手を蹴落としてやろうというような気持ちは彼女たちにはない。
一緒に楽しむ、負けても楽しい。
和気あいあいとした雰囲気が微笑ましさすら感じさせてくれる。

最初はアナログゲームに否定的だったキャラも、
遊んでるうちにアナログゲームの魅力にハマっている。
キャラクターたちが楽しんでいるからこそ、その楽しさに飲まれていく。

同級生だけでなく、同級生の姉やその友人といった年上との関わり合いも生まれる。
1話1話で描かれる話の内容に扱われるゲームの内容も合っており、
ゲームの流れを描きつつ、
その中でキャラクター同士の関わり合いと変化が自然に描かれる。

見た目は地味だ。だが、描かれている内容はしっかりしているからこそ面白い。
1話1話しっかりとストーリーが有り、変化と成長がある。
ゲームを通じてキャラクターたちは自分たちの感情や気持ちをぶつけあう。
夢や好きなこと、自分のやりたいこと、今の自分の気持ち、過去の自分、
それぞれのキャラの抱えてる「思い」がきちんと描写されている

中盤


引用元:©中道裕大・小学館/放課後さいころ倶楽部製作委員会

ただ中盤辺りから序盤とは雰囲気の地学なる展開が多い。
例えば「大野 翠」、彼女はアナログゲームが好きであり、
将来的にはゲーム作家を目指している少女だ。
プレイするゲームの解説者でもあり、真面目な委員長タイプな女の子だ。

中盤で彼女は自分自身の作ったアナログゲームに自身が持てずにいる。
まだ未完成だからとプレイさせてほしい友人にやや感情的に怒鳴ったり、
すでにゲーム作家として成功している人に図星をつかれると感情的に怒る。
彼女の未熟さ故のややヒステリックにも見える感情の爆発は、
人によっては序盤との雰囲気や空気感の違いから拒否感が生まれやすい。

「シリアス」とまではいかないが、空気感が悪くなる。
「大野 翠」というキャラクターのアナログゲームへの愛ゆえに、
夢に突き進みたいという気持ちが故に感情的なセリフが出る。
創作者としての難しさを描きつつ、自分の作ったゲームを通じて
「友達」の意見を聞くことで自分の欠点を見直す。

この作品の流れにきちんと沿ったストーリー展開ではあるものの、
やや過剰とも言える感情表現は好みが分かれるところだ。
だが、決してこの作品はそういうこの作品なりのシリアスを引き伸ばさず、
1話できちんと完結させる。

ただキャラクター設定もいじめられていた過去やDVなどやや重い設定もあり、
この作品のはんなりとしっとりした雰囲気にはやや
おもすぎる設定があるのはやや気になるところだ。

どんな時もゲームで


引用元:©中道裕大・小学館/放課後さいころ倶楽部製作委員会

この作品はいついかなるときもゲームでいろいろな物事を解決する。
普通に面と向かって話せない、だけど「ゲーム」という共通の作業を挟むことで
話しやすくなる。

家族で喧嘩しても、この作品はゲームだ。
全ての出来事を「デュエル」で片付ける遊戯王のごとく、
この作品は「アナログゲーム」をどんなときでもプレイして、
1話1話の出来事をしっかりと解決している。

それは恋愛の描写も同じだ。片思いな男子たちの思いが反映する
アナログゲームは本当に面白く、メインの女性キャラクターたちが
しっかりと魅力的だからこそ、彼女たちに惚れる男子キャラにも感情移入できる。
応援したくなる恋愛模様は微笑ましく、それが面白さにつながっている。

この作品に出てくるキャラクターに愛らしさを感じられる。
ゲームを通じてキャラの素と心理描写をきちんと描き、
彼女たちの青春模様もしっかりと描くからこその愛着だ。

最終話


引用元:©中道裕大・小学館/放課後さいころ倶楽部製作委員会

にくい演出だ。1話の始まりと最終話の始まりは全く同じだ。
主人公の「モノローグ」から始まり、今までを振り返る。
友達に出会い、アナログゲームを知り、楽しい日々を送っている自分。
以前の自分にはなかった友達と楽しさが最終話の彼女にはしっかりとあり、
それを主人公自身も自覚している。

『楽しかったなーと思って。この1年間。今までの中で…一番』

噛みしめるように彼女は言う。ずっとこの楽しさが続けばいい。
だけど彼女たちは高校生だ。高校2年制を目の前に控えた彼女たちは
「進路」を決めなければならなくなってくる。
彼女たちの中には「ゲーム作家」という進路に向けて動き出してるものも居る。
獣医か写真家かどちらかになりたいと思ってるものも居る。

そんな中で主人公だけはなにもない。
この1年間、出会い楽しさを知って世界が広がった。
彼女にとってはこの楽しさが続くことが夢でもある。
しかし、主人公以外は今でなく未来を見ている。

だから不安になる。今のままでいいと思ってる自分と夢を見ている友人たち。
だけど不安に思っても彼女は一人ではない。

「大丈夫。もう昔の私じゃない。これからはきっと、前に進める」

友達とともにそう思えるようになった彼女の変化と成長に、
ほんのりと涙腺を刺激され、1クールがきれいに終わる。

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総評:1つの作品としてまとまってる


引用元:©中道裕大・小学館/放課後さいころ倶楽部製作委員会

全体的に見て非常に綺麗にまとまっている作品だ。
一人で孤独だった少女が同級生とのちょっとしたきっかけと出会いから
「アナログゲーム」を知り楽しさを見つけていく。
アナログゲームを通じて彼女たちは仲良くなり、互いの気持ちをぶつけ合い、
1話1話色々なゲームをしながら成長と変化を描いている。

「ゲーム」という素が出やすく、プレイイングに人が出やすいものを
キャラクターたちが楽しそうにやるからこそ、
一人ひとりのキャラクターの魅力も出やすく、
男子生徒もそこに少しだけ絡めることで恋愛模様も描きつつ、
キャラクターの可愛さをより深めてくれている。

1話から最終話、きちんと主人公が成長している。
そう感じさせるストーリー構成と演出が秀逸であり、
1クールできちんと「1つの作品」としてまとまっている。
2期を見たい、続きを見たいという気持ちもあるものの、
1期だけで綺麗にまとめ上げているからこそ見終わった後にしっかりと余韻が残る。

はっきり行って地味さは否めない。
アナログゲームをやってるときも派手なリアクションや演出がなく
あまり絵代わりしないことが多い。
だが、その地味な絵面の中できちんとキャラクターを描くからこそ面白く、
彼女たちがやっているアナログゲームを思わず自分もやりたくなってくる。

中盤のややシリアスな要素やキャラの少し重い設定など気になる部分はあるものの、
まっすぐな青春ストーリーをはんなりと味わえる作品だ。

個人的な感想:やりたいけど


引用元:©中道裕大・小学館/放課後さいころ倶楽部製作委員会

作品に出てくるゲームのいくつかに興味を持ったもののできない(苦笑)
作中でも日本でアナログゲームが流行らない理由に対しての言及が合ったが、
日本人の国民性を考えるとたしかにはやりにくい部分はあるのかもしれない。

ただ実際やったら面白そうだなーと思えるゲームも多く、
いつかどこかでプレイしてみたいと思わせてくれる作品だった。

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