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「のび太の結婚前夜」レビュー

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評価 74点 全26分

大人になったからこそ染みる「のび太の結婚前夜」アニメレビュー(再編集)

あらすじ しずかと出木杉が空き地で仲良く「白雪姫」の劇の練習をしているところを見て、のび太は本当に将来、自分としずかが結婚できるのかどうか不安になる。
引用- Wikipedia

これぞドラえもん最終話

本作品は1999年に『ドラえもん のび太の宇宙漂流記』と
同時上映された短編映画作品。
監督は渡辺歩、制作はシンエイ動画

これがドラえもんの最終回だ


画像引用元:のび太の結婚前夜 予告編より
©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 1999

日本人なら誰でも知っている「ドラえもん」。
彼は皆さんご存知の通り、
22世紀の未来からやってきたネコ型ロボットであり、
悲惨な未来を変えるために「のび太」の元へやってきた

ドラえもんは基本的にギャグ漫画だ。
だが、ドラえもんの目的はのび太の運命を変えて
「しずかちゃん」と結婚させることであり、
そういった意味では未来ののび太としずかちゃんの「結婚前夜」が
描かれる本作品は最終回といってもいいエピソードの1つだ。

予告編からこの作品は涙腺をくすぐられる。
大人になった「のび太」がもうそばには居ないドラえもんに向けて
こんなことを言い放つ。

「いつの間にか僕は夜中に1人でトイレに行けるようになった、
1人で電車に乗って会社に通うようになった。
でも本当に僕は変わったのかな? ねぇドラえもん、僕は明日結婚するよ…」

ドラえもんに対する大人ののび太からのメッセージは
予告の段階で涙腺の弱い人は泣いてしまうほどの感情の高ぶりを
感じさせてくれる。

優しさ


画像引用元:のび太の結婚前夜 本編より
©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 1999

冒頭からこの作品は「のび太」の優しさを強調している。
重そうな荷物を抱えるおばあさんを手伝い、
のび太という主人公が「人を思いやれる存在」である事を強調している。

だが、帰り道にしずかちゃんと出来杉君が
「白雪姫」の舞台の練習をしているのを目にし、
自分は本当に「しずかちゃん」と結婚できるのだろうかと悩む。

未来は決まっているのに不安だからこそ、のび太とドラえもんは
自分の結婚式の日に赴くものの日にちを間違え「結婚前日」だった
というところから物語は始まる。
未来ののび太は身長も伸び、少し声も低くなっている。
だけど変わってない所のほうが多い。

彼は彼のまま、相変わらずドジであわてんぼうだ。
かっこいいとはいえないし、しずかちゃんのお世話になってばかりだ。
ドジであわてんぼうなところは変わらない、だが、
「優しい」所も変わらない。

迷子のネコを自分の命も顧みず助け、結婚式前日にもかかわらず
彼は迷子のネコを元の飼い主のところへと届けようとする。
懐かしい友達とともに、相変わらずのやり取りを見せてくれる。
子供の頃には感じなかった「子供時代の友達との変わらぬ友情」は
かけがえのないものだ。

独身最後の夜


画像引用元:のび太の結婚前夜 本編より
©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 1999

そんな友達とともに独身最後の夜を楽しむ。
ジュースではなくビールを飲み交わし、
ジャイアンの歌も披露される(笑)

大人になったからこそ、
のび太も堂々とジャイアンに「やめろ」と言える。
ジャイアンも殴りかかってきたりはしない。
子供の頃とは違う対等な関係性になったジャイアントの描写は
この作品の見所の1つだ。

酔っ払ったジャイアンはのび太にこんな事を言う

「なんでしずかちゃんがのび太に惚れたのか何となくわかったぜ」

無二の親友から言われる一言。
彼らの変わらぬ友情と大人になったからこその関係性の変化が
子供の頃ではなく大人になったからこそ見てる側にささってしまう。

先生


画像引用元:のび太の結婚前夜 本編より
©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 1999

原作ではたった1話たらずの話をこの作品は30分にしている。
それだけに原作にはないシーンも多い。
そんな中でも「先生」のシーンは秀逸だ。
のび太がジャイアンたちと飲み会をした帰り道に先生と出会う。

少し年老いた先生と成長したのび太。
寒そうな先生にのび太はそっと上着を貸し、そんなのび太に先生が
一言声をかける。

「のび、明日は遅刻するんじゃないぞ」

小学生時代の恩師との関係性、いつも遅刻していた彼にとって
大事な日だからこその先生の一言。
原作にはないシーンを自然に入れることで物語を膨らましている。

しずかちゃんのパパ


画像引用元:のび太の結婚前夜 本編より
©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 1999

一方、しずかちゃんはマリッジブルーだ。
一人娘である彼女は独身最後の夜を家族と過ごし、
どこか寂しさを感じている。一人娘だからこそ両親の元から離れることで
両親の寂しいを思いをさせるんじゃないかと、結婚すら迷ってしまう。

両親にもっと何かできたのではないか、
自分はなにもしてあげてないのではないか。
そんな、しずかちゃんの不安にしずかちゃんのパパは
彼女が生まれてきたときからの思い出を語る。

生まれてきた時間、生まれてきたときの感動、それからの毎日。
親は子供から毎日「幸せ」をもらってるんだと語る
しずかちゃんのパパは涙を少し流しながらも幸せそうだ。

不安がるしずかちゃんに掛ける言葉は有名だ。

「のび太くんを選んだ君の判断は正しかったと思うよ。
あの青年は人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことができる人だ。
それが人間にとって一番大事なことなんだからね。
彼なら、間違いなく君を幸せにしてくれるとぼくは信じているよ。」

なぜ、しずかちゃんがのび太を選んだのか。
この映画ではそれがしっかりと描かれており、
見ているうちに、見ている側が自然と二人の幸せを
願ってしまうような見事なストーリーだ。

総評:大人になったからこそ刺さる


画像引用元:のび太の結婚前夜 本編より
©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 1999

全体的に見ておとなになった今だからこそ、子供のときに見たときとは
違う視線でこの作品の凄さをひしひしと感じてしまう。
のび太としずかちゃんの結婚前夜、「ドラえもん」という
物語における終着点のようなエピソードは
大人になった今だからこそ染みる

子供の時とは違う、大人だからこその付き合い方。
それでも続いている彼らの関係性は大人になったからこそ
貴重で大切でかけがえのないものだ。
そんなかけがえのないものを見せつつ、のび太の優しさを描写し、
「物語のおけるヒロイン」と結婚するのにふさわしい主人公像を描いてる

登場人物たちの台詞の1つ1つが涙腺を刺激する。
ジャイアンの一言、先生の一言、のび太の一言、
しずかちゃんのパパの言葉。
1つ1つの台詞にどっしりとした重みがあり、30分とは思えないほど
涙を流してしまう作品だ。

声優陣も今とは違い、作画のふるさは感じるものの、
それでも「色褪せない」魅力がこの作品にはあることを
見直して改めて感じることのできる作品だ。

個人的な感想:違い


画像引用元:のび太の結婚前夜 本編より
©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 1999

結婚前夜は原作を含めて現在、4パターン存在してます。
原作、大山のぶ代版、STAND BY MEドラえもん、水田わさび版と
時代と媒体によってそれぞれ描かれてる内容が微妙に違い、
結婚前夜のエピソードの部分だけを見るとこの「大山のぶ代版」が
1番原作にはないエピソードが多い。

しかし、4パターン全て見るとこの「大山のぶ代版」が
話をうまく膨らませかつ、このエピソードで見せたい部分と
このエピソードの魅力を120%引き出しており、
何年経っても、何回見ても泣けてしまう作品になっている。

2020年11月段階で配信サイトでの配信はなく、
BDかDVDの購入orレンタルでしか見れないのが残念ではあるものの
子供の頃に見たけどおとなになってからは見ていないという人には
ぜひ、見直してみてほしい作品だ。

「」は面白い?つまらない?

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  1. おしえない より:

    つい感動してしまいました。