「名探偵コナン 紺青の拳」レビュー

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映画
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評価 ★☆☆☆☆(18点) 全109分

あらすじ シンガポールのマリーナベイ・サンズにあるラウンジバーで、実業家で犯罪行動心理学者のレオン・ローが弁護士のシェリリン・タンとある取引について話し合った直後、シェリリンが1階で何者かに刺殺され彼女の車も爆破される引用- Wikipedia

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ゼロの執行人のプレッシャーに負けた作品

本作品は名探偵コナンの映画作品。
名探偵コナンとしては23作目にあたる。
監督は永岡智佳、なお無名の方だが元々演出家の方で本作が初監督作品。
個人的な話になるが元々演出家をやってた方が監督をやると
駄作になりやすいジンクスが私の中にはある。
脚本家はから紅の恋歌でも勤めた大倉崇裕。

なお、ネタバレを大いに含みますのでご注意ください。

舞台は海外

名探偵コナンという作品は皆さんご人事の通り、
「工藤新一」が「黒の組織」に薬を飲まされて子供の姿になっており、
世間にそれがばれないように「江戸川コナン」という偽の名前を
名乗って生活をしている。

そんなコナンは基本的に海外に出ることが出来ない。
パスポートの問題があり、一部の例外を除いて海外に出ることはない。
映画では「ルパン三世」とのコラボ作品で海外に行くことはあったが、
その例外を除いてははじめての舞台、シンガポールだ。

今作では「怪盗キッド」に誘拐されるような形でコナンは
シンガポールにたどり着いている。ただ手段が強引だ。
特殊なアタッシュケースに眠らせたコナンを詰め込んで輸入だ(笑)
かなり荒唐無稽な手段で強引に海外に行かせた感じはあるものの、
この荒唐無稽感はコナン映画においてある意味重要だ。

アーサー・ヒライ

コナンは本来は日本に居ることになっている。
今作のある意味主役でもある「京極真」さんの空手の大会を見るために、
園子、蘭、毛利小五郎はシンガポールを訪れている。
そこには「工藤新一」に変装した怪盗キッドがコナンを
アタッシュケースに詰めて同行している。

そんな中でコナンと蘭たちが出会ってしまう。
コナンはとっさに現地の子供である「アーサー・ヒライ」と名乗る。
これは1話のセルフオマージュになっており、
下手したら二度とは使えない手をもう1度使う面白さが生まれている。

ただ蘭たちは本当に純粋だ。
コナンそっくりの姿で、怪盗キッドに何故か肌を浅黒く塗られ
2Pカラーみたいな姿になってはいるものの、
コナンとは疑いもせず「アーサー・ヒライ」である彼が
いつものように一緒についてきても気にもしない。

かなり強引な展開を序盤からゴリゴリに推し進めている。
突っ込んだら負けだ。

かさばるスケボーはお留守番

怪盗キッドがシンガポールにコナンを連れてきたのは理由がある。
シンガポールのホテルでとある殺人事件が起こり、
その現場に「怪盗キッド」のカードが血まみれで残されており、
彼は容疑者になっている。濡れ衣を果たしてほしいがためにコナンを輸入した。

しかし、特殊なアタッシュケースという限られたスペースには
コナン以外は入らず、コナンのいつもの「博士の発明品」はほとんど日本だ。
怪盗キッドが持ってきたのは誘拐の際に身に着けていた
「腕時計」と「キック力増強シューズ」だけだ。
この時点で多くのコナン映画ファンは落胆したに違いない。

コナン映画とは8割型「アクション映画」だ。
とてつもない火薬量で爆破され、建築物は倒壊し、時には水没し、
そんな状況で人知を超えたアクションを見せつけてくれる。
そこにはいつも「スケボー」もあった。

コナン映画におけるスケボーアクションはとんでもない。
壁走りは当たり前、ハッキングされた車の車体をくぐり抜け、
時には「雪崩」すら起こすのがコナンにおけるスケボーアクションだ。
コナン映画を構成する重要な要素と言っていい。

しかし、今作ではそのスケボーがない。
「スターウォーズ」でいえば「ライトセイバー」がないようなものだ。
私個人としてはもうがっかりでしかない。

期待感

序盤から強引な展開は多いものの、期待感は強い。
冒頭で「爆破してください」と言わんばかりの建物が映し出される。
シンガポールで有名な屋上に「船」が乗ってるホテルだ。
今作は「シンガポール政府観光局」が協力してることもあって、
実在の建物が多く出てくる。

多くのコナンファンは期待しただろう。
「あの有名なホテルを爆破するのか?」と、コナン映画は爆発の歴史でもある。
コナンにおける高い建物、でかい建造物は破壊される運命にある。
そんなコナン映画で実在の建物が「爆破される」ために出てくる。
これは期待感大だ。

更にミステリー部分。今作では2回殺人が起こる。
最初はエレベーター内で刺殺、次は「金庫」の中での殺人だ。
両方共明らかに犯人っぽい人物がいるものの、
最初の事件ではアリバイがあり、当然、金庫は密室だ。

この2つの事件の犯人は誰なのか?
なぜ犯人は現場に怪盗キッドのカードを残したのか?
物語としては気になるところだ。

怪盗キッド

今回巻き込まれた怪盗キッドだがあまりいいところがない。
いつもの手で工藤新一に変装してるところもそうだが、
難攻不落の金庫に侵入しても待ち伏せされて盗めず、
もう一回盗みに入った別の金庫でも死体が予めそこにあったことで
動揺し、死体が倒れたせいでセンサーが発動して盗めない。

「月下の奇術師」という代名詞が台無しなほど良いところがない。
水攻めで窒息死させらそうになったり、テーザー銃で撃たれたり、
京極さんには殴られ、実弾でも撃たれて怪我もしている。ボロボロだ。
ラストで活躍シーンはあったものの今作の彼は彼らしくない。

そもそも「コナン」をシンガポールに連れてきた理由も弱い。
怪盗キッドとコナンは決して味方ではない。ライバルだ。
過去の映画でも何度も対決している。
そんな彼をわざわざシンガポールに連れてきて
自分の濡れ衣をはらさせようとする。

本来の彼ならそんなことをするだろうか?
自分の濡れ衣は自分で晴らすのが彼らしくはないだろうか?
あえてライバルを連れてきた理由がよくわからない。

そもそも今回の事件ははっきりいってしまえば簡単に解ける事件だ。
アリバイのある人物と殺された人物の関係性や、
関わってる人間を調べていけば自ずと答えにたどり着く。
事実、怪盗キッドが犯人と事件に関わりのある人物が出会ってるところの
撮影に成功してるくらいだ。

自分で捜査し、自分で自分の濡れ衣を晴らす。
それが月下の奇術師、怪盗キッドではないだろうか?
今作の彼は彼らしくない。ちょっとがっかりしてしまうくらいだ。

京極真

今作ではある意味主役みたいな京極真。
彼は400戦無敗の空手の達人であり、本気を出せば彼にかなう相手はいない。
そんな彼が出たことで必然的に戦闘シーンが多い。
コナンで戦闘シーンってなんだよと思うかともいるかも知れないが、
戦闘シーンなのだから仕方ない。

街中で園子が絡まれれば問答無用でチンピラをぶん投げ、
物語中盤では空手の大会に出させたくない犯人が園子をチンピラに襲わせる。
カンフー映画もびっくりな戦闘シーンは思わず笑ってしまうほどだ。
なにせ敵の武器がずるい。ナイフなどは分かる。

しかし、おもむろに敵が取り出したのは「ヌンチャク」だ(笑)
あえてヌンチャクをチョイスしたチンピラになぜ、
ヌンチャクをチョイスしたのか聞いてほしいほど笑えてしまう。
更に蛇拳である(笑)

これが中国を舞台にした作品なら分かるが、シンガポールで
蛇拳使いがいる。しかもただのチンピラだ。
なぜ蛇拳なのか、もう色々と疑問だらけだ。

そんな京極真が園子を守りきれなかったことで後悔してる中で
敵につけ込まれる。
「君の力は何のためにある?そんな力では守るべきものも傷つける」と
少し催眠効果のある声みたいなもので耳元で囁かれる。
更に敵に「ミサンガ」をつけられる。
これが外れるまでは拳を使ってはいけないと敵に言われ従ってしまう。謎だ。

これで園子を間違って拳で傷つけてしまい、その反省で自らに課したり、
園子自身が彼を心配して「ミサンガ」で拳を封じるなら分かる。
しかし、ミサンガをつけたのも言葉巧みに彼を操ったのも敵だ。
京極真が脳筋だから催眠効果が効いてしまったのかもしれないが、
かなり引っかかるシーンだ。

しかも、ミサンガが切れるのも怪盗キッドがトランプ銃で打ったからだ。
彼自身は自分の力の使い方や意味を考え決意してミサンガが切れたり、
園子の絶体絶命のピンチで自らミサンガを引きちぎるなら分かる。
だが、結局はキッドのトランプ銃で切れて力も開放される。

正直意味がわからない。
制作側が京極真というキャラクターを使いこなせなかった感じが強く、
ラストシーンの彼の右ストレートは過剰すぎる演出のせいで
かっこよさよりも笑いが勝ってしまうくらいだ。
制作側のセンスが明らかにずれている。

犯人

今作の犯人は序盤の段階では曲者だ。
工藤新一に変装してる怪盗キッドを見て「奇術師の手だ」と見破ったり、
怪盗キッドの盗みを阻止したり、彼の行動を利用したりと、
京極真に催眠術のようなものを掛けて力を封じたり、
強敵感がある。

しかし、終盤になると小物感全開だ。
序盤の切れ者さかげんはどこへいった?と思うほどのヘタレ具合で、
彼の動機自体も正直良くわからない。
コナン映画といえば犯人の動機がぶっ飛んでることでお馴染みだ。
今作の犯人は

「僕の計画した都市計画を否定された上に笑われたから
 シンガポールを破壊して新しい都市を作る!」

というとんでもない発想の持ち主だ(笑)
この点だけは本当に高く評価したい。
かつてのコナン映画の犯人である森谷帝二が自分の若い頃の作品が
気に入らないからと爆破して回っていたが、それに近いニュアンスだ。
迷惑極まりない。

その計画のために「海賊」まで雇ってるのは意味がわからないが、
序盤の優秀ぶりと終盤の小物感のギャップは
脚本の詰めの甘さを感じる。

残念ミステリー

今回のミステリー部分は外れとしか言いようがない。
明らかに序盤から犯人です!というやつが犯人で、黒幕っぽい人物が黒幕だ。
そこには何の意外性もない。
コナンが堂々と推理を披露しても「でしょうね」という感じで、
犯人が誰かわからないというような要素はまるでない。

犯人の動機がぶっ飛んでるのは良かったのだが、黒幕が謎だ。
彼は犯人に恨みがあった。そこで彼の悪事を全てわかった上で
彼の都市計画を邪魔できるように
「怪盗キッド」のカードを犯行現場に置いている。
この時点で怪盗キッドをわざわざ呼び込む意味もよくわからない。

しかも、彼の目的もブレまくる。
最初は犯人に恨みがあり、彼の野望を打ちこわし、
最終的には殺すつもりだったのかと思ったのだが、
なぜか最後にはスズキ財閥の令嬢である園子を海賊と共謀し誘拐して
大金をせしめようとしている。

恨みよりも金の誘惑に逆らえなかったのかもしれないが、
正直意味がわからない。
黒幕の動機は分かるものの、その動機に見合う行動になってない。
脚本がガバガバだ。

期待はずれ

冒頭でわざわざ「爆発するかもよ!」と見せておいた建物だが、
結局、爆破倒壊しない。
なぜかコナンがホテルの屋上に乗っかってる船のつなぎ目を爆破させ、
その船に乗ってホテルから脱出するという超強引な手段を取るだけだ。

コナン映画の風上にもけないチンケな爆発は残念でしかなく、
あれだけ期待感を煽っておきながら本当に期待はずれの展開ばかりだ。
船で脱出する展開もいささか強引であり、
制作側がやりたいシーンに脚本がまったくもってついていっていない。

爆破するように見えて爆破しない。
これほど期待はずれなコナン映画は初めてだ。

この作品は時系列的に原作やアニメの「修学旅行後」になっている。
工藤新一と毛利蘭はこの修学旅行をへて正式に付き合っている。
そのせいか映画ではラブラブである(笑)
新一の手を自ら取ったり、水着姿で接近したり、ぐいぐいだ。

そのグイグイな驚くほどに可愛い。
この20年の間に毛利蘭というヒロインはヒロイン感が
どんどん薄れていったが、今作における蘭はめちゃめちゃかわいい。
私は初めて毛利蘭というヒロインを今作で可愛いと思ったくらいだ(笑)

しかし、そんなグイグイな行動をシておいて実は毛利蘭は
シンガポールでの工藤新一が怪盗キッドの変装であることを見破っている。
謎だ。

彼女いわく「最初からわかってた」と言ってるのだが、
最初から分かってたのに自分から手をつないだり水着で迫ったりと、
自分の彼氏でもない男に対して行う行為ではないだろう。
とんだ痴女である。

蘭が怪盗キッドの変装を見破っていた!という展開は良いものの、
結局思い返せば「見破ってたなら行動がおかしい」と感じてしまう部分が多い。
色々と腑に落ちない作品だった。

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総評:ジンクスは覆せない

全体的に見て残念な作品だ。序盤の期待感は素晴らしかった。
海外という斬新な舞台、爆破してくださいといわんばかりの実在の建物、
切れ者の犯人、ミステリーと面白くなりそうな期待感はあった。
しかし怪盗キッドのキャラ描写の違和感や京極真を使い余してる感、
結局小物な犯人と行動がよくわからない黒幕とガバガバな作品だ。

随所随所のシーンだけ見れば面白い作品だ。
蘭が怪盗キッドを見破ってたシーンだったり、京極真の力の封印だったり、
しかし、そのシーンをやりたいだけで、
そこに脚本がまるでついていっていない。
あまりにもツッコミ所が多すぎる作品だ。ガバガバすぎる。

演出面でもコナンとキッドが推理の際に謎空間で推理したり、
京極真の戦闘シーンがアクション映画というよりは
バトル漫画のようになっていたりと、
正直「ギャグ」でやってるのか「真剣」にやってるのかわからないような
ズレたような演出があまりにも多かった。

爆破に関しても期待はずれだ。
「シンガポール政府観光局」が協力したせいで実在の建物を使っており、
そのせいで爆破倒壊できなかったのかもしれない。本当に余計な協力だ。
爆破倒壊しない建物などコナン映画には不必要だ。

去年の「ゼロの執行人」が完成度の高い作品だっただけに、
この作品の酷さが余計に際立ってしまっていた。
要素はいいのにそれを扱いきれていない、残念な作品だ。

個人的な感想:スケボーがない

スケボーが出てこない時点で制作側がコナン映画のことを分かってない。
爆発にしても「タンカーでホテルに突っ込む」というようなシーンが有るのだが、突っ込む前に止められてしまう。
あそこで突っ込むのがコナン映画の醍醐味なのに、なぜ突っ込まないのか。
正直、監督や脚本家がコナンという作品をまるで理解してない。

怪盗キッドのキャラ描写は特にそうだ。
今までのコナン映画ではコナンと同等で時にはコナンの裏をかき、
コナンを利用して目的を達成するのが彼だった。
しかし、今回はコナンを頼り、盗みにはことごとく失敗。
彼の魅力をまるで感じなかった。本当に残念でしかない。

演出家を長年やってた方が監督をやると駄作になりやすいが、
そのジンクス通りになってしまった作品だ。
ゼロの執行人が面白かっただけに期待感が
大きくプレッシャーだったのかもしれないが、
コナンブランドに甘えた駄作でしかない作品だった。

来年は赤井さんが出る映画のようだが、
今年の失敗を乗り越えてゼロの執行人のような面白い作品になることを
期待したいところだ。

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