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「スパイダーマン: スパイダーバース」レビュー

5.0
映画
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評価 (83点) 全117分

あらすじ ブルックリンに住む高校生のマイルス・モラレスは、叔父のアーロンと高架下でグラフィティをしている時、突然変異したクモに噛まれ、特殊な能力を得る。引用- Wikipedia

これがスパイダーマンだ!

本作品はスパイダーマンのアニメ映画作品。
監督は ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、
ロドニー・ロスマン。

皆さんご存知スパイダーマン


画像引用元:「スパイダーマン:スパイダーバース」予告編 3 より
(C) 2018 Sony Pictures Animation Inc. All Rights Reserved.
MARVEL and all related character names: (C) & ? 2019 MARVEL.

冒頭からアメリカンジョークばりばりなスパイダーマンの
自己紹介が始まる。彼がこれまでどういった経緯でスパイダーマンになり
活躍してきたのか。たった一人のスパイダーマン、
ニューヨークを救うたった一人のヒーロー、それがスパイダーマンだ。

スパイダーマンは過去にも何度か実写化されており、
そのシーンを再現するようなシーンも何度か挟まれている。
もしかして私達が見たあの実写映画の「スパイダーマン」であり
「ピーター・パーカー」なのか?と感じさせるようなシーンは
ファンサービスと同時にスパイダーマンという作品を知らない人への紹介にもなっている。

軽口とジョーク交じりの口調が「彼」らしく、
スパイダーマンというヒーローがどういうヒーローなのかが
この冒頭の紹介で見てる側にしっかりと印象がつく

主人公

だが、この作品の主人公は「ピーター・パーカー」ではない。
「マイルス」だ。
警察官を父に持つ、思春期の少年であり、
エリートな学校に通っているものの、彼は普通の学校に行きたいと思っている。
真面目なクラスメイトたちとは馴染めない。

思春期だからこその悩みや反抗心を抱え、
真面目な両親ではなくアウトローな雰囲気漂う
おじさんの方になついてるくらいだ。

そんな彼がある日、特殊な蜘蛛に噛まれることで「力」を手に入れる。
スパイダーマンとしては王道の流れであり、王道の流れだからこそ
「もうひとりのスパイダーマン」とどんな絡みをするのか、
どんな展開が生まれるのかが気になる。

コミック


画像引用元:「スパイダーマン:スパイダーバース」予告編 3 より
(C) 2018 Sony Pictures Animation Inc. All Rights Reserved.
MARVEL and all related character names: (C) & ? 2019 MARVEL.

この作品の作画、そして演出は面白い。
フルCGで描かれているものの、日本で言う「セルルックCG」のようなアニメ調、
いや、アメコミ調といえばわかりやすいかもしれない。
まるでコミックの「コマ」を切り取ったようなシーンの演出や、
台詞の文字演出があり、まるでアメコミを読んでるような感覚になる。

ページを1枚1枚めくり、めくるたびに先が気になる。
コミカルな演出の数々、日本の漫画にはない
アメコミのようなビビットな色合いが刺激的かつ斬新に感じさせながら、
面白い漫画を読んでるような感覚をアニメという媒体で
味あわせてくれる。

特に面白いのは頭の中のモノローグの演出だ。
蜘蛛に噛まれたことによって「マイルス」は自身の感覚が強化されており、
自分自身で考えている声が脳内で響き渡っている。

その脳内の声を文字で表し、効果音をエフェクトで表す。
アニメでありながら漫画を読んでいるような感覚にさせるような
演出の数々がたまらない。

理解者


画像引用元:「スパイダーマン:スパイダーバース」予告編 3 より
(C) 2018 Sony Pictures Animation Inc. All Rights Reserved.
MARVEL and all related character names: (C) & ? 2019 MARVEL.

主人公であるマイルスにとって、突然目覚めた力は脅威でしかない。
ヒーローになりたいわけじゃない、特別になりたいわけじゃない、
普通でいたい。そんな彼だからこそ目覚めた力をいらないとすら思っている。
目覚めた力を「思春期のせいだ」と言い訳するくらいだ。

自身の力に悩む中で彼は本物のスパイダーマンに出会う。
彼にとっての唯一の理解者であり、師になる存在だったはずだったものだ。
スパイダーマン自身も同じスパイダーマンとして彼の能力の目覚めを察し、
戸惑いを察し、導こうと決意している。

しかし、彼の前の前でスパイダーマンは殺されてしまう。
この世界にスパイダーマンは一人しか居ない。
むしろ「マイルス」というスパイダーマンが現れたからこそ、
世界がスパイダーマンを一人にするための調整をしたかのように思える展開だ。

ヒーローから全てを託された少年、大いなる力には大いなる責任が伴う。
スパイダーマンが様々なシリーズを通して掲げてきたこの言葉は、
この作品でも変わらない。

欲しがって手に入れた力ではない、だが、ヒーローの意思を継ぐ。
自分が手に入れた力の責任を彼なりに果たそうとするものの、
彼はスパイダーマンでおなじみの蜘蛛の糸を使った「スィング」すらできない。
悩むなかで現れるのが別次元の「ピーター・B・パーカー」だ。

ピーター・B・パーカー


画像引用元:「スパイダーマン:スパイダーバース」予告編 3 より
(C) 2018 Sony Pictures Animation Inc. All Rights Reserved.
MARVEL and all related character names: (C) & ? 2019 MARVEL.

彼は落ちぶれたヒーローだ。愛する人とも別れ、愛する人を失い、
自堕落な生活を続けていた。青ひげにまみれ腹は出て、
マイルスの次元のピーター・パーカーとは違い、
彼にスパイダーマンとしての心や技を教えるわけでもない。
ヒーローとして終わってしまっているはずだった。

だが、彼は腐ってもスパイダーマンだ。
自分の次元に帰るためという目的はあるものの、
同じスパイダーマンであり、自分の味方だといってくれる
マイルスに彼は命がけの指導をしてくれる。

たった一人だと思っていたスパイダーマン。だが、一人ではない。
「次元の壁」はあれど、同じスパイダーマンとして孤独に戦っていた仲間がいた。
スパイダーマンにとって、ヒーローにとって救いだ。
ヒーローは基本的に誰かから給料をもらっているわけではない、
自分自身が正しいと思ったことを、誰かを守るために孤独に戦ってきた。

そんな戦いが長い間続けば心は削れていく。
ピーター・B・パーカーはあり得たかもしれない少し未来のスパイダーマンだ。
そんな彼が別次元のスパイダーマンと出会うことで
ヒーローとしての心を取り戻していく

最初はマイルスにスパイダーマンとしての技術を教えることを拒否していた彼が、
徐々に彼の「師」としての流れを確立していく。
決してシリアスな展開ではない、スパイダーマンらしく軽口を叩きながら、
ときに敵のアジトに侵入しながらコミカルにマイルスとの師弟関係を確立していく。

二人で協力して二人でスゥイングする、二人の師弟関係が微笑ましい。

マルチバース


画像引用元:「スパイダーマン:スパイダーバース」予告編 3 より
(C) 2018 Sony Pictures Animation Inc. All Rights Reserved.
MARVEL and all related character names: (C) & ? 2019 MARVEL.

ヒーローは孤独だ。

「大いなる力には大いなる責任が伴う」

スパイダーマンという作品を表す有名な言葉だ。
同時に大いなる力には孤独が伴う。
大切な人を守るために、大切な人を作らず、
多くの人を守るために自分の大切なものを失うこともある。
全ては救えないことを「スパイダーマン」たちはわかっている。

次元の壁が崩れた世界で、孤独なスパイダーマン達がマイルスの次元に集うことで、
孤独だった彼らが同じ「スパイダーマン」だからこそ話せることも
理解してもらえることもある。
ヒーローの悲哀と苦悩をマルチバースの中で
キャラクター描写として描きそれがキャラクターの魅力と印象に繋がる。

ありとあらゆる世界のスパイダーマンが集う。
ニヒルなスパイダーマン、可愛いスパイダーマン、
中年なスパイダーマン、子豚のスパイダーマンまで居る(笑)

このスパイダーマン達は元ネタがある。
アニメ化や実写化はされていないもののコミックで登場したりした彼ら、
スパイダーマンという作品はマーベル系作品の中でもっとも
色々なスパイダーマンがいるといってもいい。

権利関係のややこしさもある。
最近のスパイダーマンの実写やこの作品などは基本的にソニーが手掛けているが、
アヴェンジャーのスパイダーマンはマーベルだ。
日本でも過去に特撮スパイダーマンが東映によって作られたりしたりと、
権利関係も複雑になり、色々な媒体の色々なスパイダーマンがいる。

それこそ実写にしても、なんどもリブートしている。
ある意味でこの「マルチバース」なスパイダーマンの世界はメタ的ですらある。
私達の世界ではコミックやアニメや映画の世界に様々なスパイダーマンがいる、
そんなスパイダーマンがマイルスの世界に集う。

本来ならありえないはずの夢のような展開だ。
元ネタが分かる人は出てくるたびに「ニヤッ」とさせられ、
わからないひとも基本的な説明やビジュアルの可愛らしさに惹かれる。
彼ら個人個人の物語もサクっと描かれるからこそ、
一人ひとりのスパイダーマンの魅力をきちんと感じることができる。

だが、色々な次元のスパイダーマンは別次元には長く留まれず死んでしまう。
彼らは帰らなければならない。
自分の次元を、自分の世界に戻って守らなければならない。

スパイダーマン


画像引用元:「スパイダーマン:スパイダーバース」予告編 3 より
(C) 2018 Sony Pictures Animation Inc. All Rights Reserved.
MARVEL and all related character names: (C) & ? 2019 MARVEL.

マイルスはスパイダーマンの意思をつぎ、スパイダーマンたちを元の世界に戻そうとする。
だが、彼はまだ新米だ。
しなければならないことをできるだけの心も体も出来上がっていない。
「敵の正体」も知ってしまったことで彼はより悩む。

彼もスパイダーマンであり、ヒーローだ。
ヒーローには喪失と悲しみがつきまとう。
そんな彼も「ヒーローの悲哀」を背負ってしまう。

スパイダーマンにとっては通過点とも言えるものだ。
大事な人を失うことで自身の力を見つめ直し、
ヒーローとしての「覚悟」を背負う。
それがスパイダーマンだ。

だが、スパイダーマンとして彼が違うことがある。
彼はひとりじゃない。
同じように悲しい宿命を背負ったスパイダーマン達が彼に寄り添ってくれる

ヒーローは全員は助けられない。全部うまくはいかない。
スパイダーマンであり、ヒーローである前に彼らは人間だ。
自分を犠牲にしてでも勇気を持って踏み出さなければならない時もある。
先輩であるスパイダーマンたちは彼に寄り添い、
ヒーローとして彼を守り、導こうとしている。

だが、マイルス・モラレスもスパイダーマンだ。
勇気を持って一歩踏み出すことで彼もまたスパイダーマンになる。
一人のヒーローが、一人のスパイダーマンが生まれる瞬間を
この作品は描いている。

王道ではある、だが、ヒーローが生まれる瞬間はいつ見ても面白い。
マーベル・コミックの多くのヒーローが人気なのは
この「生まれる瞬間」の面白さにもあると私は思っている。

ひとりじゃない


画像引用元:「スパイダーマン:スパイダーバース」予告編 3 より
(C) 2018 Sony Pictures Animation Inc. All Rights Reserved.
MARVEL and all related character names: (C) & ? 2019 MARVEL.

終盤のスパイダーマン同士の協力プレイは見ごたえたっぷりだ。
一人では適わない的にスパイダーマン同士が協力して挑む、
孤独な戦いの多い彼らが協力して敵を倒すことで、
「ひとりじゃない」ことをそれぞれに感じさせる。

ヒーローは孤独だ。だが、一人ではない。
孤独であることと一人であることは違う。
確かにスパイダーマンは同じ次元に一人しか居られない、
だが違う次元には同じ志を持ったスパイダーマンが居る。
だからこそマイルスは、この世界のスパイダーマンは一人で強敵に挑む事ができる。

終盤の彼の行動には思わず涙腺を刺激される。
最初はスィングもできなかった彼が、自身能力を使いこなせなかった彼が、
「スパイダーマン」を守れなかった彼が、家族を、街を、
そして「スパイダーマン」を守るためにたった一人で戦う。

この作品は普通の少年が親愛なる隣人、
新しいスパイダーマンになるまでの物語だ。
彼はこの先も孤独だ、この次元の中で彼がスパイダーマンであることを誰も知らない。
だが、彼は愛する者の死を背負い、これからもスパイダーマンとして生きていく。

そんな決意のおもさをジョーク交じりに締め上げるラストは
一本の作品をみた満足感をたっぷりと感じてしまう作品だ。

総評:これは一人のヒーローが生まれる物語


画像引用元:「スパイダーマン:スパイダーバース」予告編 3 より
(C) 2018 Sony Pictures Animation Inc. All Rights Reserved.
MARVEL and all related character names: (C) & ? 2019 MARVEL.

全体的に見て非常に良く出来ている作品だ。
アメコミ調なフルCGはまるで本当にアメコミを読んでいるかのような演出があり、
大胆なカメラアングルで激しいアクションと
スパイダーマンらしい浮遊感のあるアクションシーンの数々は心地よく
見ごたえのあるアニメーションに仕上がっている。

マルチバース、色々なスパイダーマンが出てくるというのが
この作品のウリではある。多種多様なスパイダーマンが
出てくるのは楽しく、本来は孤独であるスパイダーマンたちが
「同じスパイダーマン」同士だからこそ、その孤独を分かち合い、
孤独なヒーローではないと思うストーリーはスパイダーマンが
好きであればあるほど響くストーリー展開だ。

そして、今作の主人公であるマイルス・モラレス。
自分は特別ではない、普通ではありたいと願っていた少年が
ちょっとしたきっかけで力を手に入れてしまう。
そんな彼が「スパイダーマン」になるための物語もきっちり描かれており
マルチバースではあるものの、きちんとスパイダーマンとしての
物語がこの作品にはある。

若干ではあるもののスパイダーマンの知識は必要な部分はあるが、
知らなくても楽しめるが、知っているとより楽しめるというふうにしあげており、
ファン向けでありながらスパイダーマンを知らな人でも楽しめる作品になっている。

個人的な感想:スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム


画像引用元:「スパイダーマン:スパイダーバース」予告編 3 より
(C) 2018 Sony Pictures Animation Inc. All Rights Reserved.
MARVEL and all related character names: (C) & ? 2019 MARVEL.

実写のスパイダーマン:ファー・フロム・ホームを見た流れで
スパイダーマンが見たくなり見た作品だったが、
予想以上に面白く、予想以上になてしまった作品だった(笑)

次回作も決まってるようなので期待したいところだ。

「スパイダーマン: スパイダーバース」は面白い?つまらない?

この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください

  1. 柊 壺 より:

    スパイダーバースのアメコミは読んだことをあるのでしょうか
    アメコミ調という表現を使ってるので他のアメコミを読んでいるとは思いますが