シュガー・ラッシュ

評価/★★★★★(83点)

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悪役だってヒーローになりたい、でも悪役だっていいじゃないか

本作品はウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ長編作品としては52作目となる
3DCGアニメ作品。
アーケードゲームの世界が舞台であり、アーケードゲームの中のキャラクターには意思があり、
ゲームセンターの営業時間終了後に自由にゲーム間を移動し合い
パーティーをしたり楽しんだりしているいう世界観だ。

見出して感じるのは「なんたるファンサービス」だろう(笑)
いや、この言葉が的確かどうかは定かではないが、私の中でこの言葉が思い上がった
懐かしのアーケードゲーム、100円玉を握りしめて遊んだストリートファイター、
スーパーマリオブラザーズ、ソニック、パックマンetc…
20年前のゲームセンターに居た自分をふと思い出してしまうほど
冒頭から懐かしい「アーケードゲーム」のキャラクターたちが出てくる。

ベガやザンギエフが出てきたかと思えばクッパが出てきたり
ソニックシリーズでお馴染みの「ドクター・エッグマン」が出てきたり、
あの頃の「懐かしいグラフィック」ではない、リアルな3DCGで描写された
悪役キャラクターの数々が冒頭から主人公のラルフと
「悪役おなじみ相談会」を繰り広げる。
パロディではない、きちんとした本物のアーケードゲームの悪役キャラクターたちが
画面いっぱいに描写されるのは少し感動すら覚えるシーンだ

大人にとっては懐かしすぎる悪役キャラクターの数々が出れば出るほど懐かしさを感じさせる
悪役キャラクターを知らない子供にとっても昔のアーケードゲームのキャラクターデザインの
優秀さともいえるのだろうが、シンプルに外見で悪役とわかりやすい(笑)
そんな悪役たちが「悪役」としての悩みを打ち明け合う。
彼らの悪役だからこその悩みの数々は何とも大人じみた哀愁さを感じさせ、
何度も何度も倒した彼らの無念がヒシヒシと伝わるようだ(笑)

そしてゲームの世界の中で生きるキャラクター達の中で
主人公のラルフは「悪役」に疲れ果ててている。
悪役というだけで同じゲームの仲間たちにも嫌われ、
悪役という立場である以上、ゲームの主人公のように「ご褒美」が貰えるわけではない。
だからこそ、彼は悩んでいる。

そんなストーリーが展開される中で面白いのはゲーム的演出とゲーム画面そのものの取込みだ。
所々でゲームあるある的な演出を取り入れることでリアルな3DCGの世界観が
「ゲームの中」であることを強く実感させ、
そしてシーンとシーンの間にドット絵で描かれたゲーム画面を取り入れることで
ゲームの中の世界であることを忘れさせずに強く実感させていく。
リアルな3D描写をしているからこそ、ゲーム要素の取込みをすることによって
きっちりとした世界観を作り上げ、この作品特有の空気を作り上げていく。

そして、そんな世界観の中でラルフは「メダル」を手に入れるために奮闘する。
普段はビルの窓ガラスを破壊するだけの彼が自分のゲームを抜けだしたかと思えば
リアルなシューティングゲームの世界に挑戦する。
序盤から中盤までのストーリー展開が非常にめまぐるしく、どうなるかが一切予想できない。
ディズニー映画というと「王道」なストーリーを想像しがちだが、
この作品の場合、そんな王道が通じない。はっきりいって無茶苦茶だ。

色々な世界観がある「ゲーム」同士がつながっているという設定のため、
画面の背景にも統一感がなく、キャラクターデザインにも統一がない
リアルなSFチックなキャラが居るかと思えば、のど飴がモチーフのキャラクターも居る、
リアルに動き、銃を撃つキャラクターが居るかと思えば、
突拍子もない動きをするキャラクターもいる。
色々なゲームの世界観の色々なゲームのキャラクターが
「1つの作品」に集まることによるハチャメチャ感じが大人でもストーリーの先を想像できない
まるで初めてプレイするゲームのような感覚だ。

そして中盤から舞台は「お菓子の世界」に移る。
実際のゲームのキャラクターも多く出たが、この作品は「実際のお菓子」まで出る。
作中のオリジナルゲーム「シュガー・ラッシュ」はお菓子の世界でのレースゲームだ
その世界では「オレオ」などの見たことのあるお菓子の数々や
ビアードパパなども出てきたり、メントスで噴火するコーラのマグマがあったりして
お菓子の世界を作り上げている。

ゲームの中の世界観であることはわかるのだが、
きっちりと作りこめらたお菓子の世界観が
それまで感じさせた「ゲームの世界」の雰囲気を少しだけ崩し、
ファンシーなお菓子の世界感が中盤からの「ストーリー」の雰囲気をしっかりと作り上げる
そんなお菓子の世界で出会うのが「ヴァネロペ」だ

彼女はゲームのバグだ。
正式にお菓子の世界のレースゲームに参加することが出来ない。
だが、ラルフが他のゲームから持ち込んだ「メダル」でレースに参加できるようになる。
本当に流れるようなストーリー展開だ、脚本の力というものを中盤辺りから
ぐいぐいっと見ている側に感じさせるような予想できないストーリー展開がワクワクさせる

なにせ本当に予想できない(苦笑)
ラルフがハチャメチャにゲームを荒らしまくってシュガー・ラッシュの世界に入り込んだかと思えば
それを追ってラルフのゲームの世界の主人公と、自分の世界の敵がシュガー・ラッシュの
世界に逃げ込んだためSFシューティングゲームのヒロインが追いかけてくる、
そんなラルフのゲームの世界の主人公とSFシューティングゲームのヒロインが
ラブコメのような展開を繰り広げたりもする(笑)

はっきりいってめちゃくちゃだ。
ストーリーを文章にすればするほど読んでいる人にはわからないだろう。
だが、その一見めちゃくちゃに見えてしまう要素の数々を
ハチャメチャに展開しているように見せかけて
「1つのストーリー」をきっちりと作り上げている。

1つ要素の使い方を間違えれば意味の内容になってしまいバラバラな印象しか残らないだろう
だが1つ1つの要素を「1つのストーリー」をつくり上げるための要素として
きちんと使っているからこそ、無駄な要素が1つもない。
序盤では一見無駄に見えていた要素も終盤で見事に「意味のある要素」になる。
無駄な要素が1つもない、見事な伏線の数々だ

序盤から中盤までのハチャメチャな展開の全てが終盤で「伏線」であることに気付かされる。
ラルフがヒーローになりたくてゲームの世界を抜け出し別のゲームの世界に入り込みメダルを手に入れて
お菓子の世界に迷い込み一人の少女と出会う。
壊すことしか出来なかった悪役ラルフとバグデータでしかなかったヴァネロペ、
出会うはずのなかった別々のゲームの世界の2人が出会ったことで物語が大きく動き出し
登場人物たちの心が変わっていく。
そしてラルフは悪役から「一人の少女」にとってのヒーローとなる

全体的に見てストーリーを文章にすれば単純だ、
だが、その単純な物語をしっかりと「芯」に据えて
その周りをお菓子の数々で飾り付けをし芯を見えなくてしまう。
物語が進むとその芯が徐々に見えていく仕掛けになっており、
単純なストーリーがまるでゲームをプレイしているかのようなワクワク感に包まれる
最初はまったく王道に見えなかったストーリーが最後には「王道」に収まってくれることで
見終わった後に美味しいお菓子を食べたな満足感と「面白かった」というゲームを
純粋にプレイしていた頃の気持ちを思い出させる内容だ。

きちんと1つ1つの要素を積み重ねているからこそ
キャラクターにも強い感情移入をしてしまう。特に主人公の「ラルフ」だ。
彼は悪役という自分の立場が嫌でゲームを抜けだしたはずだ、
だが、彼はヴァネロペに出会ったことで「悪役でもいい」という考えに至る
自分のゲームの世界と同じように復活できないのにヴァネロペのために
自分の身を投げ出そうとする彼の行動はまさしく「ヒーロー」だ

そしてヒーローがヒロインを救った後の別れ。
物語は王道なハッピーエンドだ、だが、ハッピーエンドに伴う別れは寂しさを強く感じさせる
だが、その寂しさとハッピーエンドがあるからこそ
「ラルフ」の成長を強く感じさせる内容だ。
更にドット絵で描かれた「エンドロール」が見終わった後に素晴らしい心地よさを残してくれる

作画の面でもCGの描写は本当に素晴らしい。
バラバラな世界観の背景やキャラクター描写はCGだからこそできる1つの作品の世界観づくりだ。
これが普通のアニメーションだとバラバラになりすぎてしまうだろう
3DCGだからこそバラバラな世界観の描写に統一感を持たせることができていた

意思のない物が実は意思を持っている。
トイ・ストーリーと似ているのだが、トイ・ストーリーとは又違った面白さのある作品だった
トイ・ストーリーが好きな方はこの作品も同じように好きに慣れるだろう。
子供も大人も楽しめる「ディズニー」という制作会社の期待感を裏切らない作品だ