わすれなぐも

2014年12月2日

評価/★★★★★(87点)

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至高のバッドエンドを貴方も味わいませんか?

本作品はアニメミライ2012という企画の中の一本
製作はProductionI.G、監督は海谷敏久

見出して感じるのは最近のアニメっぽさだろう。
これまでのアニメミライは子供向けテイストの作品や
教育アニメっぽい雰囲気の作品が多く、いわゆる「オタク向け」な作品は少なかった
しかしながらこの作品はキャラクターデザインが最近のアニメっぽい雰囲気になっており、
同時にオタクではなくとも受け入れやすいキャラデザだ
今までがNHKの子供向けアニメだとしたら、この作品は夕方のテレ東アニメのような雰囲気だ

特にヒロインの描写。
古書店を営んでる男に対し祖父の代わりに家賃の取り立てに来る少女、
この「辺見瑞紀」という少女のリアクションの描写が
とてもコミカルに描かれており、シーンごとに表情豊かに変化する彼女は
愛着の湧きやすいヒロインだ。
そんなヒロインの前に「人形くらいの少女」が現れる

着物を着た黒髪の人形のような少女は本の封印が解けいつの間にかそこに居た。
着物から伸びる手足は「蜘蛛」のような触手であり、
陰陽師が育ててていた「娘蜘蛛」であることがわかる。
だが、彼女の食べ物は・・・というところからストーリーが始まる

このヒロインの描写と「娘蜘蛛」の描写の対比が面白い。
日常描写は日常ギャグアニメのようにコミカルでスピーディーに
ギャグをくわえつつテンション高く展開しており、
非常に「明るい」雰囲気で描写される。
「人を食べる」という言い伝え通りヒロインに噛み付くような描写が有るのだが
基本的にそれはギャグとして描かれており終始明るい。

だが、所々「恐怖」を秘めている。
彼女が本性を表した時に見せる「蜘蛛の目」や過去に「人を食べたシーン」、
いつの間にか彼女に魅せられてしまう古書店の店主など
明るい日常ギャグを描いてるのにふとした拍子に「恐怖」を感じさせる
ぞくぞく・・・ぞくぞく・・・まるでじわりじわりと鳥肌を立てていくように
見ている側の「恐怖心」を煽り立てる

その「恐怖心」を煽るように話が進めば進むほどBGMも煽り立て
雰囲気もどんどんと「物悲しい」雰囲気になっていく
冒頭から中盤にかけて明るい雰囲気をきっちりと「明るく」描写することで
中盤からのストーリー展開と同時にそこから感じる「恐怖」が
画面から目を離せなくなる。

この先どうなるのだろう。
「ストーリー」を楽しむ上でかかせない感情を強烈に刺激され
その感情と同時に「恐怖心」をかきたて
先が見たいが少し怖い、少し怖いが先を見たい・・・という
「ホラー作品」におけるもっとも重要な部分を30分という尺の中で
きっちりと感じさせてくれる。

キャラクターデザイン、作画、BGM、ストーリー展開。
30分という尺の中でそれらを全てをうまくいかしており、
序盤から中盤にかけて徐々に雰囲気を変えていき、
終盤ですっかりと「ホラー」作品という印象を植え付ける。
最初はあんなに明るかったのに、最初はあんなにギャグシーンを入れていたのに
なんでこんなに怖いんだ・・・ああ、どうなるんだ
と、思わず鳥肌が止まらなくなるほどのストーリー展開だ

その恐怖は一瞬開放される。
蜘蛛の恐怖心と蜘蛛に取り込まれそうな「店主」が一瞬我に返ることで
おそらく多くの視聴者は
「ああ、ここからハッピーエンドになるんだな」と予測をする。
99%、ハッピーエンドを予想するはずだ。
だが、その1%の結末にこの作品は辿り着く。

全体的に見てここまかで完成度の高い「短編アニメ」はなかなか無い。
30分という尺の中で起承転結というストーリーにおける重用な部分を強調し、
序盤の明るい雰囲気と日常コメディで描き、
中盤で徐々にそこからホラーアニメへと変貌していき、
最後に視聴者を「どん底」へと叩きつける。

見た後に「えぇぇ!?!?!?」となることは必須だ。
あえて「ハッピーエンド」を避けた監督に私は賞賛したい。
この作品が素直にハッピーエンドになってしまったら
ここまで高い評価が出来なかっただろう。
あえて「バッドエンド」だからこそ強烈に印象に残り、強烈に「面白さ」を感じる
1話完結の30分アニメだからこそ、1話完結の短編アニメだからこその
バッドエンドはこの作品を強烈な面白い作品に仕上げている。

私は基本的に「物語はハッピーエンドで終わるべき」と思ってる人間だ
アニメーションという創作物は娯楽であり、
娯楽だからこそ最後はハッピーエンドで終わって欲しいと思っている。
だが、この作品において私のその考えは大きく否定された

こんなバッドエンドがあってもいい。
こんなバッドエンドだからこそ面白い。
ハッピーエンドを予想させてからのバッドエンドという
ある意味最悪な展開ではあるのだが、この最悪な展開が
癖になるほどの面白さを感じさせてくれた。

これはヒロインの目線だからこその「バッドエンド」だ。
娘蜘蛛や店主からすればバッドエンドではない。
恐らくハッピーエンドだろう。
だが視聴者は「ヒロイン」という主人公に感情移入しているため
視聴者が味わうのは必然的に「バッドエンド」だ。

どんな結末を迎えるのか。
「バッドエンド」と知っていてもこの作品は楽しめる、
むしろ「バッドエンドだよ」と知っていても、最後の展開と結末に
ゾクゾクっとした背徳的な「面白さ」を感じてしまうはずだ

この作品は是非身て欲しい。
ホラー作品が嫌いな方には若干おすすめしにくいが、
それでもこの「バッドエンド」は味わう価値のある作品だ
個人的に癖になったのか3回も見てしまった(笑)