なんじゃとて!これぞ富野監督作品「ガンダム Gのレコンギスタ」レビュー

2016年8月5日

評価/★★★☆☆(57点)

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なんじゃとて!これぞ富野監督作品

本作品は富野由悠季が『∀ガンダム』以来15年ぶり、
短編CG作品を含めると『リング・オブ・ガンダム』以来5年ぶりに
『ガンダムシリーズ』の制作に携わった、テレビシリーズアニメ作品。
製作はもちろんサンライズ。

見だして感じるのは「脚本の構成」の面白さだ
1話が始まって早々にガンダムが出る
おそらく今まで放送されたガンダム作品でここまで主人公機が早く登場したことはない
何の脈絡もなく1話の1シーン目から主人公機が追いかけられている場面から始まる
唐突に感じるシーンによる脚本の構成は少し唐突すぎるようにも感じるのだが、
ある意味で「ガンダム」という作品だからこそ許される、
「富野監督」だからこそ許される唐突さだ

それが1話の冒頭のシーンだけではない。
この作品における「ストーリー」の唐突さは異常とも言える
何の脈絡もなくムチで主人公を打とうとする教官、
女性キャラのお尻をパチンコで打つ女性キャラetc…

これぞ「富野監督作品」と言わんばかりの唐突さの連続と
本来はあるはずのシーンとシーンの「間」やセリフとセリフの「間」がない
更にそんな独特な間の後に聞こえるセリフの独特さのせいで
頭をかき回されながらシーンを練りこまされるような独特の感覚を覚える
最近のアニメ作品ではありえないこの「間」とセリフのセンスこそが
「富野監督作品」であり、はっきりいって1話から好き嫌いがはっきりと別れるだろう

だが、そんな好き嫌いを凌駕する要素がある「戦闘シーン」だ
最近のロボットアニメにありがちな「速い動き」ではない
じっくり、たっぷりとまるで「舐めまわす」ようなカメラワークを用いて
「MS」というロボットの動きを1つ1つ丁寧に描くことで
視聴者にまるで「酢昆布」を味合わせる如くじっくりとたっぷりと魅せる。
早く動かすだけが戦闘シーンの面白さではない事をこの作品はきちんと見せてくれる。
アニメーションにおける「1コマ」の大切さを実感できるようなシーンだ

宇宙空間だから無重力だから早く動けるわけではない。
むしろ無重力ではない地上のほうが早く動ける
「人」が操作しているからこその重力という力を意識した動きにきちんとなっており
1話で舐め回すような動きを見せつけたかと思ったら、
2話では「Gガンダム」もびっくりな百烈拳を見せつける
きちんと「機体の重さ」と「重力の有無」を意識できる戦闘シーンは流石だ

だが、そんな魅力的な戦闘シーンとは裏腹にストーリーは非常にわかりづらい
いわゆる「用語」の説明や解説が一切無い上に唐突なストーリー展開と
独特の台詞回しのお陰で余計にわかりづらさが増しており、
1話辺りに詰め込まれている情報量も非常に多い。
その情報量を見ている側がいかに、どういうふうに処理するかで
この作品の楽しみ方は180度変わる。

特に序盤は主人公の立ち位置が変わりまくるためややこしい。
味方だと思ってた側から敵だと思っていた側にあっさり移って
少し前まで一緒に戦ってたはずの人物と普通に戦っている
きちんと状況を理解すれば分かる状況の変化ではあるのだが、
独特の間とセリフ回しと情報量の多さが状況の変化への理解を難しくしている
ストーリーを視聴者に「理解させる」ように作っておらず、
「理解してもらう」ように作られている。

しかし、その難解さを飲み込めるようになってくると
この作品は素直に面白くなってくる
特に戦闘シーンにおける「セリフ」のセンスは逸脱だ
逆に逸脱すぎてギャグになっている部分もあるのだが、
これぞ「富野節」と言わんばかりのセリフの応酬は
「富野監督」作品が好きならばたまらないシーンの数々だ

この作品は「ガンダム」であるため、もちろん戦争を扱っている
もちろん人も死にシリアスな雰囲気も醸し出している。
だが、この作品はシリアスな雰囲気の中でもどこか「明るさ」があり、
富野節のセリフの数々と戦闘中のキャラクターたちのハイテンションさ、
爽快感あふれる戦闘シーンのお陰で本来はシリアスなはずなのに
重苦しくならず、見やすい。

今までの富野監督のガンダム作品にはない「明るさ」をこの作品は内包している。
本来、この作品は今の子供達にみて欲しかったという
富野監督の気持ちが作品中にあふれており、
今までの富野監督のガンダム作品から継承された要素を多く含みつつ、
戦争で人の死もつきまとう「ガンダム」という作品の重苦しさを
子供が見やすいように明るく仕上げることで見やすさと笑いを生んでいる

そして戦闘技術の向上。
主人公が機体に慣れたことと戦闘を重ねたことによる成長を
きっちりと感じることが出来る。
序盤はもっさりした動きの戦闘が多いが、中盤以降は戦闘シーンも高速になってくる
序盤の戦闘は「機転」を働かせて戦闘を乗り切り、
中盤は才能と経験で戦闘を行っているような感覚だ

また主人公機である「Gセルフ」もバックパックを変えることで
多種多様な武器や戦い方をすることが出来る万能機であるため、
戦闘シーンがワンパターンにならず毎回素直に面白い

ただ話が進むと面白さが伝わってくるのだが同時に話のわかりづらさも極まってくる。
簡単にいえば3つの勢力が序盤戦っているのだが、中盤から4つ目の勢力も出て来る
さっきまで戦ってたかと思えばあっさりと話し合いが行われたりと
状況の変化が非常に激しくわかりづらい。
キャラクターたちがどういう感情でどういう行動をしていて
どういう目的なのかというストーリーの流れが見えづらい

そもそも「なんで戦ってるんだっけ?」とふと思い返してしまい、
戦った後に話し合いが普通に行われている状況を見ると
「あれ?別に戦わなくてもいいんじゃないの?」と思ってしまう場合も多い。
根本的な戦争行為を行う理由が弱く見えてしまう
本来、この作品は2クールという尺では描ききれない部分が多かったのだろう
そのせいで詰め込みまくった内容と展開の早さ、切り替えの早さが極まってしまい
「キャラクター」の心理描写や行動理念があまり描写されないため把握しづらく、
ややこしい世界観のせいでストーリーの分かりづらさも強まってしまった

特に終盤はもう1つ勢力が増えるため、ややこしさが増す。
いきなり裏切ったり、いきなり怒りだしたりと
さすがに「え?どういうこと?」と言いたくなるような行動や言動が増えだしてしまう
せっかく中盤辺りで「勢力関係」やキャラの思惑を把握できてきたのに
その把握した内容をまたひっくり返されてリセットされたような気分になる
正直、終盤のストーリーはついていけない部分があまりにも増えすぎた

増えまくるキャラクター、増えまくるMS。
それが意味があるものならいいのだが、キャラクターに関してはもう少し削れただろう
MSに関しても主人公機である「Gセルフ」が強すぎて
せっかく強そうな敵機体がでても割りとあっさりとやられてしまうため
戦闘シーンが面白くても、戦闘シーンの歯ごたえがない

特に「フォトントルピード」に関してはやりすぎだ。
見てない人に言えば「出力調整できる月光蝶」という反則並な兵器であり、
月光蝶は∀ガンダムに標準搭載された兵器だったが、
この作品では「追加武器」だ。
あまりにもチートすぎる性能を持つ機体であり、それに対する敵が弱すぎる
主人公と敵の戦いよりも敵同士の戦いのほうがよっぽど盛り上がってしまっており、
戦闘シーンにおける「緊張感」が終盤の主人公の戦闘ではなくなってしまっていた。

キャラクターたちの盛り上がりから終盤のストーリーが
どんどん盛り上がってきていることは察することが出来るのだが、
そこに見ている側が「感情移入」することが難しく、
物凄いテンポでストーリーが進むため置いてけぼりになってしまう
最終話を見終わった後も「ポカン」とする感じが強く残ってしまった

全体的に見て「富野由悠季」という監督の良い部分と悪い部分が強く出ている作品だ
オーガニック的な会話と言わんばかりの富野節炸裂のセリフの応酬は
激しい戦闘シーンと切り替わりの早い展開の中で際立ち、
際立ちすぎて逆にギャグになっているほどのハイテンションさは
癖になるような面白さを醸しだしており、
戦闘シーンの演出もきちんと「機体の重さ」と「重力」を意識させ、
単純に撃ちあいではない人型の兵器ならではの機転を活かした戦闘は
素直に面白いといえるポイントだろう。

だが同時に2クールと言う尺では詰め込み過ぎた内容と早過ぎるテンポのせいで
ストーリーのわかりづらくなってしまっており、
登場人物が増えれば増えるほど登場人物の行動理念や心理状態を理解しきれず、
「ふわっ」とした察したままでしかストーリーを楽しむことができず、
最終話を見終わった後に「結局どうなったんだ?」と思うことがあまりにも多い

極端に言えば100点の部分と0点の部分を同時に見せられているような感覚だ
だからこそ見る人によって評価がしっかり別れる。
「富野由悠季監督」作品が好きならば楽しむことが出来る部分が多く、
「富野由悠季監督」作品に思い入れがないならば楽しみにくい。

個人的に嫌いではなかったのだが
ストーリーが進むに連れて作品を見ることに対して「疲れ」が出てしまった
本来2クール作品であれば一気に見るのは何の問題もないのだが、
この作品に関しては全100話くらいの疲労感がつきまとう感じだ

色々と問題点と面白い点が入り乱れている作品ではあるが、
良くも悪くも「富野」監督らしい作品だ
今から見る人は2クール作品と甘く見ず、
10クールくらいの作品を見るつもりで挑んでもらいたい。

余談ではあるが意外と最後までキャラクターが死ななくて驚いた(笑)