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「エガオノダイカ」レビュー

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評価 ★☆☆☆☆(18点) 全12話

あらすじ 地球を旅立った人類は新たな惑星に植民を行い、幾つかの国を建国する。その内の1つ、ソレイユ王国で生まれたユウキ・ソレイユは12歳になった。引用- Wikipedia

お花畑を突き進む

本作品はテレビアニメオリジナル作品。
制作はタツノコプロ、監督は鈴木利正。
タツノコプロ創立55周年作品でもある。
なお監督の鈴木利正氏はあの「輪廻のラグランジェ」の監督でもある。

なぜペンライト


引用元:©タツノコプロ/エガオノダイカ製作委員会

1話そうそうに主人公でもある「王女」による演説が行われる。
彼女の誕生日の祝いでもあるのだが、まるでライブ会場のような場所で
王女に向かって「ペンライト」を降りつつ、
アイドルのライブが始まる前のような態度を国民がとっている。
非常に謎だ。

国民の反応が明るく元気なのはいいが
「ペンライト」を降る必要性があまりなく、謎でしかない。
この1話の冒頭の時点でこの作品に妙な引っかかりを覚える。
ついでに言えば作画が悪い。

1話、しかも「タツノコプロ創立55周年作品」にもかからず、
1話の時点からキャラクターの作画が不安定であり、
制作側の気合いを感じない。
この作品「大丈夫か?」という不安を感じさせる1話だ

箱入りのお姫様


引用元:©タツノコプロ/エガオノダイカ製作委員会

この作品は地球から様々な惑星に植民を行った世界だ。
植民の際に形として「王政」が取り入れられているが、
植民からすでに長い年月が経っており、いわゆる「お飾りなお姫様」だ。
そんな中で隣国である帝国と「戦争中」なのだが、
その事実を姫は知らされていない。

そして、姫の幼馴染は自ら戦地に赴き、あっさりと死ぬ。
死体となって帰ってきた幼馴染を見て姫は初めて「現実」を知る。
この序盤のストーリーは悪くない。
平和ボケかつお花畑な思考のお姫様が戦争が起こってる事実と、
幼馴染の死という自らの「笑顔の代価」を知ることでどうなるか。

復讐に燃える戦姫となるか、
はたまた戦争を憂い戦争を無くそうとする聖母となるのか。
1クールというストーリー構成のせいでやや展開が早いのは気になるものの、
制作側のやりたいことは早い段階で見えるだけに、
「この先どうなるのか」という純粋な期待感が生まれる。

もうひとりの主人公


引用元:©タツノコプロ/エガオノダイカ製作委員会

この作品はいわゆる「W主人公」の作品だ。姫様と帝国側の一等兵曹。
国も違えば立場も違う二人の女性の視点で描かれる。
帝国側には広大な領地はあるものの「資源」がない。
お姫様の国は「クラルス」という新エネルギーを
使って豊かな生活を送っている。

戦争の理由がきちんとあり、どちらかが一方的な悪ではない。
互いが互いの立場で「戦う理由」と「正義」がある。
自分の指示1つで戦場で命が失われる立場と、
自らの目の前で命が失われる立場。

この2つの立場の主人公が物語の中で「どう交わるのか」が気になってくる。
しかし、同時に「1クール」という尺でそれがきちんとできるのか?
という不安も感じる。

お花畑継続中


引用元:©タツノコプロ/エガオノダイカ製作委員会

序盤で笑顔の代価として姫の幼馴染が死ぬ。
そこからどう変わるかがこの作品の魅力でもあるのだが、
驚くほどに変わらない。というよりもお花畑がひどくなる。

「誰も死んでほしくない」という彼女の気持ちはわかるものの、
ヒステリックに感情任せに命令をするため、
彼女の命令のせいで余計な被害者が出まくる。
「王政国家」ゆえに彼女の命令は絶対であるがゆえに余計にタチが悪い。

「ねぇ!どうして!このままじゃ!お願い!」
とヒステリックに部下に叫びまくる姿は痛々しく、
彼女に対してアドバイスや彼女の命令に逆らうものが少なく、
彼女の感情任せの命令で被害が増えて、彼女の精神を蝕んでいく。

そもそも1話の時点では「姫」に戦争状態であることを隠して、
勝手に戦闘行為を行っていたりしたのに、
それがバレたら「命令」に絶対な彼らがよくわからない。
そうかと思えばあっさりと命令に従わないときもある。

彼らの命令に「従う」「従わない」の判断がよくわからない。
姫の笑顔を守るために戦争であることを隠し、
姫のお気持ちを優先して命令に従い兵士を犠牲にし、
姫を守るために姫の自己犠牲を否定し姫を逃し街ごと差し出す。

「姫」を周りのキャラクターがどうしたいのかがまるでわからない。
彼女を一国の主として成長させようとするキャラクターがいないため、
いつまでたっても姫様がお花畑だが、当然だ。
姫様がお花畑でもいいが、それを咎めるキャラがいなければ成立しない。

戦闘シーン


引用元:©タツノコプロ/エガオノダイカ製作委員会

もうひとりの主人公である帝国側の兵士の視点になると、
必然的に戦闘シーンが描かれることが多くなる。
ただ、この作品、一言で言えば「キレイ」すぎる戦闘シーンだ。

ロボット同士が打ち合ってるシーンが非常に長く、
やられて爆発もほとんどしない。
例えば至近距離でロボットの腹の部分に何発も打ち込んでるシーンがあるが、
打ち込まれたロボットは傷1つつかず爆発もせず、機能が停止する。

戦闘後なのに機体があまりにも綺麗な場合が多く
「戦闘」をしてる感じが薄い。
ロボットは3DCGを使って描かれているのだが、モデリングそのまま
使ってて、そこに戦闘の演出が加わってないため違和感しかなく、
ゲーム画面のような戦闘シーンを毎回見せられる。

交わらない


引用元:©タツノコプロ/エガオノダイカ製作委員会

戦争はどんどんと激しくなっていくが、二人の主人公がまるで交わらない。
全12話で8話になっても、9話になっても、交わらない。
驚くほどに二人の主人公に関わり合いがない。

その間に二人の主人公の周りのキャラは死んでいく。
あっさりとしたキャラクターの死はある程度予測ができるだけに
キャラクターが死んでもなんの感慨もわかない。
「あ、このキャラ死ぬんだろうな」と感じてるキャラが死んでも、
キャラの死の衝撃を感じることが出来ない。

終盤になるともはや取り返しがつかない所まで来ている。
互いの大切な人、身近な人が互いの陣営のせいで死んでいく。
互いが出会っても「憎しみ合う」事以外は不可能では?と思うほど
取り返しがつかないところまで進んでいく。

戦争は泥沼化し両軍の死傷者は「30万人」を超えている。
そんな中、10話になっても姫と兵士の二人の主人公は一切交流がない。
この時点で「この作品はどう終わるのか?」ということが気になって仕方ない。
もう、バッドエンドしか思いつかないレベルのストーリー展開だ。

クラルス


引用元:©タツノコプロ/エガオノダイカ製作委員会

この作品のある意味「核」ともなっている物質だ。
このクラルスの真実が終盤で明らかになる。
簡単に言えばクラルスはエネルギーを無限に生み出すものと思われていたが、
実際は植民の際に惑星に散布された「ナノマシン」を消費して生み出している。

しかし、帝国はこの「クラルス」で発展したようなものだ。
戦争に使っているロボットもクラルスで動いている。
だが、使い続ければナノマシンが枯渇しやがて星が住めなくなってしまう。
終盤になって「クラルス」をどうするのか?というのが主軸になってくる。

クラルスがナノマシンを減らせば土地がやせほそり、
やがて住めなくなる。
今の生活をすべて手放して石器時代のような暮らしに戻るしかない。
だが「クラルス」がなくなったところで戦争が終わるわけではない。
ロボットを使わずに剣や素手で続くだけだ。

その意見をきちんと作中の「キャラクター」にも言わせている。
クラルスを止める問題点をきちんと姫に定義した上で、
どうなるのか。この作品をどう締めるのか、
最終話が気になって仕方なくなってくる。

お花畑END


引用元:©タツノコプロ/エガオノダイカ製作委員会

最終話にしてようやく二人の主人公が交わる。
一方はクラルスを止めたくて仕方ない、
一方はクラルスを止めても戦争はなくならないと訴えかける。

そんなやりとりのあと、あっさりと
「クラルス」を二人で止めてハッピーエンドだ。
正直驚くほどにぶん投げたラストだ。

30万人という犠牲、二人の主人公と親しいキャラクターたちの死、
大量の「死」の上にたどり着いたラストのはずなのに、
なぜか戦争はあっさり停戦、食糧問題も半年であっさり解決し、
クラルス以外のエネルギーで機械は動いている。
何なのだろうかこの茶番は(苦笑)

作中のキャラが「クラルス」を止めたところで戦争が終わるわけではないと
言っていたはずなのに、それがあっさりと終わってる。
冬という季節で世界中に電気をすべて止めるようなことをしておいて、
その止めた弊害がまるで描かれていない。
多くの犠牲の果てにたどり着いた結末にまるで見えない。

1クール見続けた最終話としては物語の落とし所が
あまりにもお花畑でしかなく、これが笑顔の代価と言いたいのかもしれないが、
支払った代価が大きい割には笑顔になる展開が強引すぎる作品だった。

総評:犠牲になった30万人の代価


引用元:©タツノコプロ/エガオノダイカ製作委員会

全体的に見て何だったんだ?と言う作品だ。
序盤の段階では期待感は強かった。
何も知らないお姫様が幼馴染の死を経て戦争を知り、
もうひとりの主人公である逆の立場である兵士とどう関わり、
この戦争を終わらせるのか。

しかし、1クールかけた割にはあまりにも強引なラストでしかなく、
多くの人の死を無視したハッピーエンドは到底納得の行くものではない。
二人の主人公を据えてしまったせいで話がろくに進まず、
盛り込んだ設定を1クールでさばききれず、
最終話は強引にハッピーエンドに仕上げている。

もっと早い段階でクラルスの真実が明かされて、
もっと早い段階で二人の主人公が「第三勢力」として
クラルスを止めようとするというストーリーでも良かったはずだ。
最終話で二人の主人公が出会って5分もたたずに、
戦争も終わりハッピーエンドは流石に無理がある。

ストーリー自体は色々な意味で面白い。
11話くらいまでの「この作品はどうなってしまうんだ?」という感じは
凄まじく、正直バッドエンドのほうが
色々な意味で伝説になった作品かもしれない(苦笑)

結局、1クールでまとめられない設定を盛り込んで
作品が崩壊したような作品だった。
ただ予測できないストーリーはある意味で面白いだけに、
怖いもの見たさで見てみるのも悪くない作品かもしれない。

個人的な感想:色々な意味ですごい作品だ。


引用元:©タツノコプロ/エガオノダイカ製作委員会

少なくともロボットアニメとしてはつまらなかった。
破壊描写が薄く綺麗なままのロボットは「ロボット」で
ある必要があったのか?と思うほどに必要性を感じない。

ストーリーも強引の極みだった。
予想できない展開というより「それはありえないだろう」という
展開に強引に突き進むさまは制作側が放り投げた感じが強く、
全ての兵器を止めたら戦争がなくなくなりましたというのは
びっくりするほどお花畑な内容だ。

6話くらいで姫様が敵に投降するような展開になりそうだったが、
あの段階で姫が帝国側に行き、クラルスの真実を知って
帝国側の人と仲良くなってしまったがゆえに戦争をこれ以上続けさせないと、
決意し多くの犠牲は出るかもしれないが、戦争による被害が
進むよりはマシだというような考えに至ればよかったのではないだろうか。

なぜ終盤の終盤で物語を強引にまとめ上げる手法になったのかが
理解できない。
終盤に向けて主人公の答えを導き出していくのではなく、
終盤になって突然主人公の答えが出てしまうというのは
ストーリー構成が下手としかいいようがなかった。

決して名作ではないが、迷作ではある。
ある意味でこの作品はすごい。
あれだけ悲しんでいた幼馴染の死を忘れてしまったような
姫様の最後の笑顔はゾッとするものすら感じるほどだった(笑)

不思議と見ていて不快ではなく「なんでそうなるんだよ」と
突っ込んでしまうような作品だった。

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