日本の中心で、彼女はシモネタを叫ぶ。「下ネタという概念が存在しない退屈な世界」レビュー

2016年1月29日

評価/★★★☆☆(46点)/全12話
下ネタという概念が存在しない退屈な世界 6 (初回生産限定版) [Blu-ray]

あらすじ
16年前の「公序良俗健全育成法」成立により、日本から性的な言葉=下ネタが喪われた時代。憧れの女性であるアンナ・錦ノ宮が生徒会長を務める国内有数の風紀優良校に向かっていた奥間狸吉は、痴漢冤罪になりかけていた轟力雷樹を庇い立てた際、《雪原の青》と名乗るテロリストによる下ネタテロに遭遇する。入学後、狸吉はアンナの勧誘で生徒会の一員になり、生徒会副会長を務める華城綾女とも親交を持つようになる。しかし、綾女は《雪原の青》と同一人物であることを明かすと同時に狸吉の弱みを握り、狸吉を強制的に下ネタテロ組織「SOX」のメンバーとして迎え入れ、全校集会での下ネタテロを実行させる。以降、狸吉は「SOX」のメンバーとして「下ネタという概念が存在しない退屈な世界」に戦いを挑むようになる。

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日本の中心で、彼女はシモネタを叫ぶ。

原作はライトノベルな本作品。
監督は鈴木洋平、製作はJ.C.STAFF
なお、松来未祐さんの遺作となってしまった作品だ

見だして感じるのは「う、うーん」という感覚だろう。
この作品はタイトル通り「シモネタという概念が存在しない」世界だ。
公序良俗健全育成法により汚らわしい物、
いわゆる全てのエロ的要素が16年前から徹底排除され、
16歳以下の子供には「裸の写真」が
なぜエロいのかがわからないほどの徹底ぶりだ

PMという装置が日本人全員に装着が気味付けられており、
「シモネタ」を言えばすぐさま反応し、何らかの処罰まで与えられてしまう。
SFでいえば、いわゆる「ディストピア」といえばわかりやすいだろう。
徹底したエロ排除の「ディストピア」の日本という世界観だ。
そんな世界観の中でヒロインである女の子の第一声がこれである。

「お●んぽー」

どうだろうか(苦笑)
変態仮面ばりに下着をかぶり、露出狂もびっくりな格好のまま、
駅のホームで叫び、エロい写真をばらまくテロリストだ。

本来ならば銃を持ち、防弾チョキを着て
管理体制の社会を嫌うものがテロを行うのがディストピアでよくある展開だが、
この作品は「下ネタ」に対してだけ徹底した管理体制を強いているため、
テロリストもまた下ネタの解放を望んでいる。

面白いか面白く無いかではなく、どストレートな下ネタを
どストレートにぶつけてくる作品だ。
そもそも「下ネタという概念」自体が無いことに不満があるヒロインのため、
その不満を解消スべく日常会話で息をするかのように
下ネタをぶちこんでくる。

キャラクターが喋ればしゃべるほど、まるで日常の挨拶のごとく
下ネタをしゃべりまくる。
絵的にも「何が卑猥か」を理解できないキャラクターたちばかりなので、
平然と男性キャラの下半身に顔を突っ込んでいたり、下半身を見つめたり、
舐めてきたり、抱きついてきたりと奔放だ。
シモネタを理解できないからこそ「恥じらい」も薄い。

また、こんなにシモネタやセクシーネタが多いにもかからわず
この作品の「規制」は極端に少ない。
もっと光規制がばしばしあるようなシーンがあってもいい作品なのにも関わらず、
絵的なセクシーさではなく、言葉によるセクシーさで「エロ」を追求しており、
逆に絵的なセクシーさに逃げるような展開が少ないのはかなり好感が持てる。

はっきりいってシモネタセリフだけ見れば中1男子のような会話だ(苦笑)
だが、そういった低レベルな下ネタによる笑いにこだわったからこそ、
絵的なセクシーによる面白さを排除し、
逆に直接的な表現は言葉でしている分、絵的には濁したギャグ演出が多い。

だからこその徹底としたシモネタだ。
このどストレートすぎる下ネタの数々は人によっては強い拒否感を生む、
逆に人によっては強い笑いを生む作品だ。

そして、この作品は意外とまじめに「性の規制」をしまくった
世界で育った子供をキチンと描いている。
いくら規制して子供の目に触れないようにしても、
いくらエロのすべてをなくそうとしても
「人間の本能」がエロを求めていることは否定出来ない事をこの作品は
きちんと芯に捉えて描いており、それをうまくコメディに仕立てている。

規制すればするほど、抑圧すればするほど、
欲望はより濃ゆく増大していく。
時には主人公の女装姿を見てしまったがゆえに、
時にはキスをシてしまったがゆえに目覚めてしまう。

それを体現しているのは「アンナ」というキャラクターだ。
彼女は規制側の人間であり、下ネタも認識できないほどだ。
まじめで才色兼備、主人公が憬れるヒロインだ。
しかし、そんな彼女が「とあるきっかけ」で肉への欲求に目覚める。
知らないからこそ、触れたことがないからこそ、
きっかけ1つでその性欲が爆発的に増大し、暴走していく。

暴走状態の彼女は、はっきりいって「ドン引き」するような行動だ(笑)
目覚めてしまったあまり、抑圧されしすぎてしまったあまり、
そのきっかけとなった主人公に対する執着はもはや狂気だ。
「クッキーにとある蜜を混ぜこむ」「愛の水を飲ませようとする」など
濁した表現ではあるが、想像して欲しい(苦笑)

ただ序盤から中盤まではこの世界観とキャラの濃さで面白いのだが、
終盤は敵対組織や新キャラが出るために、
既存のキャラの描写が薄くなってしまったり、
ストーリーがゴチャ付いてしまったりと、前半の勢いが衰えてしまった感じだ

全体的に見て強烈に好き嫌いが別れる作品ではあるものの、
下ネタに抵抗がなければ楽しめる作品だ。
ディストピアとしては設定の甘さなどはあるものの、
「シモネタという概念がない:」という設定のもとにきちんとストーリーを作っており、
終盤こそ若干ダレたものの、風刺のきいた作品になっている。

ただ、シモネタがどストレートすぎるのでやはり好みが分かれる。
中盤ではヒロインの暴走により変態的行動も増えてくるため、
こういった下ネタ系作品が嫌いな方には
受け入れがたいだろう。
ツボにハマれば面白いが、ハマるかどうかは見る人の嗜好次第だ。

更に言えばストーリー的にはまだまだこれからと感じる部分はあるものの
終盤はダレてしまう展開が多かった。
いわゆる「出落ち」的な世界観やネタなだけに、
あまり引き伸ばさずに1クールでまとめて欲しいと感じてしまう部分もある。

最終話も「俺達のシモネタはこれからだ」的に終わってしまい、
少しは下ネタという概念が広まって終わってはいるものの、
日本全土という広さを考えれば微々たるものだ。
個人的な感想を言えばアニメオリジナルを入れつつ
1クールでまとめて欲しかったと感じる作品だ。

本作が遺作になってしまった松来未祐さん。
本当に最後まで素晴らしい演技だった。

序盤の真面目な生徒会長の演技から4話以降の狂気の演技、
この強烈なギャップを演技でより強烈にし、
セクシーな演技なのにあの声のおかげで「エロすぎ無い」「下品」にならない
ギャグとしての下ネタになっており、
たぬきからステッキまで幅広いキャラを演じてきた松来未祐さんの
素晴らしい演技を最後まで楽しむことができた。

私は、このアニメの放送終了時期が忙しく後回しにしていたのだが、
そんな折、松来未祐さんが亡くなられてしまった。
好きな声優さんなだけに本当にショックで、
ショックだからこそ最後の作品と考えてしまうと少し身構えてしまい、
なかなか見る決心がつかなかったのだが、
いざ見てみると最後まで本当に「松来未祐」さんは「松来未祐」さんらしい演技で、
しかも、体調不良を感じさせない、むしろ絶好調な演技は
最後まで噛みしめるように聞き惚れてしまった。

売り上げ的に厳しい部分もあるが、
松来未祐さん以外が演じるアンナを私は見たくない。
そういった意味で2期はやってほしくないと感じてしまう作品だ。