ありったけの夢を集めたくない、モブになりたい主人公「田中くんはいつもけだるげ」レビュー

2016年7月5日

評価★★★★☆(72点)全12話
ワガママハイスペック

あらすじ ため息、片ひじ、ねむそうな目、基本がんばらないけど憎めない田中くん。
無気力な田中と、無口だが何かと田中の世話を焼く太田の学園生活を描いたインセンシティブ青春コメディ引用 – Wikipedia

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ありったけの夢を集めたくない、モブになりたい主人公

原作がガンガンONLINEで連載中の漫画作品。
監督は川面真也、制作はSILVER LINK.

見だして感じるのは「びっくりするほどのゆるさ」だろう。
木漏れ日の中で小鳥のさえずりが聞こえる中で、制服を着た男子が寝ている。
いざ喋り出したかと思えばゆるーく、ゆーっくり、
そして眠ってしまう(笑)
この超絶な「ゆるさ」と空気感は特にギャグをいっているわけでもないのに、
空気感のせいで脇腹をくすぐられたような笑いがくすくすと生まれる

この作品の主人公の田中くんは「究極のめんどくさがり」だ。
とにかく動きたくないという怠け者でありながら、
だらけるために全力を注いでいるという妙な矛盾がある。
その矛盾のおかげで主人公に不思議な愛着を持つことができる。

爆笑できるわけではない、だが、この「田中くん」の矛盾を抱えた
キャラクターのギャップと不思議な魅力、
そして彼のキャラ性から生まれる「空気感」がくすくすと
思わず笑ってしまう雰囲気を生んでおり、
見ている間に口元が徐々に緩んでいってしまう。

ジャージのチャックを下げるのがめんどくさくて、
そのまま脱ごうとして頭がハマる。
めんどくさがりゆえのハプニングで、あるある的ハプニングではあるのだが、
空気感のせいで笑ってしまう。

彼の友人もとても良いキャラクターをしている。
外見的にはまるでヤンキーのような感じなのだが、
その外見とはうらやらに「田中くん」のめんどうを見ている。
まるで子犬をかわいがるヤンキーのギャップのごとく、
特に嫌がらず、むしろ微笑ましく田中くんに接する様子は、
なんとも言えない愛らしさを生んでおり、二人のシーンは思わずニヤニヤしてしまう

ただ、これに関しては若干「BL」っちくな空気感もある。
あからさまにそういった描写や要素こそないものの、
そういう展開になる可能性が見えなくもないくらいの微妙なBL的要素であり、
そういった要素が好きな方は想像が無限大に広がり、
逆にそうった要素が嫌いな方は若干、ひっかかってしまうかもしれない。

しかし、この二人のその「BL一歩手前のゆるい関係性」が
この作品の「くすぐられたような空気感」を生んでいる要素でもあり、
笑いにもつながっている。

そういった関係性を匂わす台詞もあるのだが、あくまでも「冗談」でのセリフであり、
友人同士のおふざけ的BL発言をあえてキャラに言わせることで、
この作品はBLではなく、その一歩手前ですよと主張しており、
BL要素によっぽど嫌悪感を抱いていないかぎり、
その要素はギャグとして受け止め、楽しむことができるだろう

1話1話は非常に長く感じる、はっきり言ってテンポという意味では非常に遅い。
だが、この作品においてはそれは欠点ではなく、
その遅いテンポだからこその「空気感」が笑いになっており、
これで普通のギャグアニメのごとくハイテンポでやってしまったら台無しだ。
テンポが遅いが、決して「ダレている」わけではない。

話が進むとキャラクターも増えてくる。
田中くんのけだるさに憧れるアホかわいい少女や、
ヤンキー感あふれる少女、田中くんを好きな少女、
立ち位置がしっかりした「ヒロイン」の一人ひとりが魅力的だ

田中くんの平和な日常をおびやかすキャラクターたちが、
田中くんのけだるい空気感と裏腹にうるさいくらいのヒロインたちが
物語が進めば進むほど面白さを加速させていく。

いきなり大量の人物を出すのではなく、
きっちりと1話ごとにひとりずつ丁寧にキャラクターを追加し、
きちんと掘り下げてくれる。
本来ならこれは当たり前のことなのだが、
最近のアニメは1話から大量の登場人物を出すことが多く、
この丁寧すぎるとも言えるキャラ描写とゆったりしたテンポは癒やしを生んでいる。

前述したBL要素もヒロインたちが追加されることでいい具合に薄まっていく。
ヒロインたちの掘り下げが終わるとヒロイン同士の絡みも生まれ、
その中でキャラクターの新しい魅力を掘り下げつつ、
田中くんのけだるげな日常がどんどんと脅かされていく(笑)

この作品のキャラクターは自己完結型のキャラが多い。
一人で考え一人で心のなかでセリフを言い放ち、一人で自己完結する。
いわゆる「ツッコミ役」というのが存在せず、
視聴者に突っ込ませるタイプの作品だ。

突っ込んだとしても本当にゆるいツッコミだ。
そもそもツッコミというより冷静な「指摘」に近いツッコミであり、
その指摘がくすくすとした笑いを生む。

天然キャラクターが非常に多いのだが、
その天然さが「身勝手」には感じず、うざいと感じたり嫌悪感をキャラがいない。
日常作品というジャンルの中でキャラクター描写にストレスを感じないというのは
当たり前のことなのかもしれないが、それがこの作品の面白さを
より自然に受け入れやすいものにしており「素直」に楽しめる

更にアニメーション描写も基本会話劇の中で、
細かい表情の描写や背の小さいヒロインのチョコマカとした動きや描写など、
「ふわっ」っとしたキャラクターデザインのキャラクターを
しっかりと動かしており、空気感を壊さない堅実な描写だ、
作画の予算は少なさそうなのだが、この作品にとっては丁度よかったのかもしれない

全体的に見て素晴らしい空気感と愛らしいキャラクターによる日常アニメだ。
若干のBL要素という欠点はあるものの、
その欠点を包み隠さずにきちんとギャグにし、
嫌悪感を感じさせないしっかりとしたキャラクター描写の中で
「田中くんはいつもけだるげ」というタイトル通りの素晴らしい作品に仕上げている。

たまにくすくすと笑う中で爆笑させられることがある、
不意打ち的な「予想出来なセリフ」がキャラから飛び出してきた時は、
心底笑ってしまう。
1話を見て気に入ったなら間違いなく最後まで見れる、
話が進めば進むほど笑える要素も強まっていき、
話が進めば進むほどキャラクターに愛着が湧いていく。

非常に丁寧かつまじめに作られている。
製作者たちの「原作に対するリスペクト」を強く感じる作り方であり、
少しでもテンポが早ければ、少しでも声優さんたちの過剰な演技があれば
この作品の素晴らしい空気感は台無しになってしまうだろう。

キャラクターたちがしゃべらない「無言の空気感」と、
その無言になるストーリー展開、無言になったあとのセリフと、
この作品ならではの徐々に湧き上がるような笑いの要素が
本当にたまらなかった(笑)

個人的に高森奈津美さんの
「テンションの高い元気少女」演技が本当に素晴らしかった、
アイキャッチの際の弾丸になった際の彼女の「ばきゅーん」の演技は
ぜひ聞いていただきたい。

ヒロインが本当に全員可愛かった・・・。
私は4人ヒロインがいれば気にいるのは一人か二人くらいだが、
この作品は私の好みをえぐるようなヒロイン描写と、
原作を思わず全巻注文してしまうほどの好みな内容だった。