「宝石の国」レビュー

2018年2月24日

評価 ★★★★☆(67点) 全12話

あらすじ 「古代」といわれるほどの過去に「にんげん」が存在したと伝えられる遠い未来の世界引用- Wikipedia

この儚くも美しい世界

原作は月刊アフタヌーンで連載中の漫画作品。
監督は京極尚彦、制作はオレンジ。
フル3DCGアニメとして制作されている。

見出して感じるのはCGのクォリティの高さだ。
CG特有の「ぬるぬる」と動く感じは素晴らしく、3DCG特有の「違和感」を感じにくい。
3DCGを使っているからこそのカメラワークの自由さも際立っており、
流れるように角度を変えてキャラの周りを映す様は「立体感」を感じられる。

そしてキャラクターデザイン。
この作品のキャラクターはタイトル通り「宝石」で出来ている。
それぞれの宝石ごとの色合いの髪は美しく透けており、
3DCGだからこそ彼女たちが「宝石」で体が構成されていることを感じさせる。
この透明感は3DCG以外では難しいだろう。


引用元:© 2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会 引用

そんな彼女たちは日々戦っている。
「月人」と呼ばれる敵は宝石の彼女たちを自らの装飾品にしようと襲い掛かってくる。
無慈悲に彼女たちは肉体を破壊され、奪われる。
月人のデザインは宝石なメインキャラクターのデザインとは違い、
異色かつ独特であり、その独特さと無機質さが敵の怖さを感じさせる。

1話の10分足らずでこの作品の「世界観」と空気をたっぷりと味あわされる。
かなり独特かつ異色な世界観であり、設定もやや難しい。
だが、構図としてはシンプルであり
「宝石で出来たたキャラクター」と「襲い掛かってくる未知の敵」の戦いという
芯になっている部分は分かりやすく伝わる。


引用元:© 2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会 引用

あっさりと壊される肉体は面白い。
壊されただけでは彼女たちは死なない。砕けても、集めて、つながれば元に戻る。
どんなに細かく砕けても「ある程度」体を構成している物質を集めれば生き返る。
だが失ったり削られた身体は元には戻らない。
失えば記憶も失い、失いすぎれば自分を無くす、だが、彼女たちは狙われる。

この世界の設定や世界観、空気といったものが1話でたっぷりと伝わる。
言葉自体は難解で「分かりづらい」雰囲気は出ているが、雰囲気だけで話はわかる。
遠回しな表現なのにきちんと伝わる台詞回しと見せ方は素直に素晴らしい。


引用元:© 2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会 引用

そして戦闘シーンの美しさ。
キャラクターを構成する「宝石」そのものの特徴が武器になっており、、
宝石を武器にするからこそ、戦闘シーンが美しく、
相対する敵の「神秘性を帯びた外見」がその美しさを余計に際立たせ、
宝石ごとの「音」まできっちりとこだわっているからこそ、
目でも耳でも「宝石」が戦っていることを実感させる

3DCGであることを最大限に利用している。
特にカメラワークの激しさは最たる特徴であり、
3DCG以外では枚数的に不可能な動かし方とアングルで
舐め回すように高速戦闘を描いている。
宝石の美しさと相まって「美麗」な戦闘シーンだ

原作を読んでいないので、どう表現しているのかはわからないが、
原作の「マンガ」という媒体では不可能な色合いとカメラアングル、
アニメーションという媒体だからこその動きと3DCGによる色の表現の面白さを、
この作品は最大限に味あわせてくれる。


引用元:© 2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会 引用

そんな中で主人公は「フォスフォフィライト」という宝石だ。
硬さもなく、もろく、弱い。ちょっとしたことで身体が壊れる。
しかし、彼女の宝石の色は敵の好みであり、常に襲われる。
彼女はほぼ毎話のように身体が壊れ、失っていく。
失われるたびに記憶を失うが「別の宝石」の肉体を手に入れることで変化していく。

物語において主人公が成長するというのは基本的には精神的なものだったり、
何らかの修行や特別な力を手に入れる過程があっての「成長」だ。
しかし、この作品は失った宝石の代わりに違う宝石をくっつけることで成長する。
そのせいで肉体的な成長が必ずしも精神的な成長にもつながってるとはいえず、
肉体と精神のバランスが取れる過程がこの作品においては成長になっている。

力を手に入れても、その力を使う勇気が出ず恐怖しミスをする。
失った身体の代わりに手に入れた身体の力であるがゆえに
「バランス」が悪く使いこなすことも出来ない。
何も力を持たなかった主人公が力を手に入れても、その力を使えず、
その力を使おうとするために更に体を失っていく。


引用元:© 2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会 引用

単純に体を失うといっても彼女たちにとって
「身体」こそ自我を保つためのものであり、記憶そのものだ。
生命としてはある程度の量があれば生き返ることはできるが、
だが、ある程度以上なくしてしまえば生き返ることも目覚めることもできなくなる。

そんな体を序盤では両足、中盤では両手と失い、
自分の体だけでなく仲間も多く失う。その代わりに力を得る。
しかし、力を得ても元の体は力を使うたびに削れていき、
「フォスフォフィライト」という宝石が失われていく。
それは同時に記憶の喪失にもつながり自我の変化と喪失にもつながっていく

1話と最終話の彼女では別人といえるまで変化している。
その変化を純粋なキャラの成長と呼ぶのかは難しく、
その難しさがこの作品の面白さでもある。

ただ、惜しむべきは1クールしか尺がなかったと言う所だ。
物語的にまだ「序章」の段階でしか無く、多くの謎を残している。
宝石たちの中で唯一、外見的に「人間」にしかみえない金剛先生の存在や、
世界観の謎や明かされていない伏線なども多い。
いわゆる「俺たちの戦いはこれからだ」という展開ではあるものの、
あまりにもストーリーが中途半端な所で終わってしまっていた。


引用元:© 2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会 引用

総評

全体的に見て美しく儚いアニメだ。
「宝石」の擬人化という要素を3DCGの利点を最大限に活かしており、
「髪」の透明感や宝石の硬さとモロさ、そして美しさを感じさせる描写と、
3DCGだからこそできる大胆なカメラアングルは戦闘シーンの迫力と
面白さと美しさを生んでいる。
3DCGでなければこの作品の世界観の魅力は最大限に描写しきれなかっただろう。

美しさだけでなく儚さもストーリーできっちりと描かれている。
体を構成している物質そのものが記憶であり自我であり命である彼女たちは、
常に未知の敵に狙われ、身体を奪われ失う可能性を秘めており、
あっさりと壊され奪われる身体、そして記憶がストーリーの面白さを深めており、
物語の展開が見れば見るほど気になっていく。

だがせっかく主人公も強くなり、
物語もどんどんおもしろくなってきたのに1クールで終わってしまう。
正直いって1クールで終わらせるのがあまりにももったいなく、
せっかく盛り上がってるのに強制的に終わらされた感が強く、
「尺」がこの作品の1番の欠点になってしまっていた。

はっきりいって、この作品をこの時点で評価するのは早い。
物語の最後までアニメ化されて描かれて初めて、
作品全体の評価をしたいと思うほどストーリーの面白さを感じるだけあって、
1クールで終わるのが本当にもったいない作品だった。


引用元:© 2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会 引用

個人的な感想

個人的には3DCGアニメもここまで来たかと感じさせる作品だった。
透明感や質感、カメラアングルと3DCGの良さを最大限に活かしており、
手書き作画ではできない「動き」と「奥行き」を感じさせる描写は、
3DCGの技術の進歩を感じることのできる作品だった。

最近は手書き風の「セルルック」な3DCGも増えたが、
この作品はセルルックとは違う3DCG自体の魅力を活かしていた。
「宝石」という要素が3DCGという技術とうまいことハマっていたといえば
分かりやすいかもしれない。

売上的には8000枚前後とこの手のアニメにしてはかなり売れている。
十分に2期が作れる売上だ。
原作ストック的にも現在4巻くらいまでアニメ化されてたようで既刊は8巻。
ストック的にも十分だ。
早めの2期が見れるかもしれないだけに期待したい所だ。

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