アクション

「出会って5秒でバトル」レビュー

1.0
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評価 ★☆☆☆☆(19点) 全12話

TVアニメ『出会って5秒でバトル』公式ティザーPV

あらすじ 成績優秀でゲームが趣味の16歳の高校生・白柳啓は普通の日常に退屈していた。引用- Wikipedia

5秒で出落ち

原作は裏サンデーで連載中の漫画作品。
監督は内藤明吾、制作はSynergySP、VEGA ENTERTAINMENT。
原作は2015年から連載しており、タイトルを知っている人は多いかも知れない。

拉致

1話早々、主人公の自分語りから始まる。
どこか斜に構えクールな主人公、そんな彼が登校中に
全身包帯で包まれた謎の男に出会い、5秒で襲われる。
1話冒頭でいきなりタイトル通りのバトルが始まる。

この怒涛の展開は悪くないものの
主人公が自分の行動をすべてモノローグで解説してしまっており、
このモノローグの多さは原作が「漫画」であることをひしひしと感じてしまう。
本来ならアニメという媒体では見てわかるため、別に説明しなくていい部分まで
モノローグで全部説明してしまっている感じだ。

主人公は退屈な日常を憂いており、そんな中でいきなり訪れた
唐突な出来事をどこか「ゲーム」として捉え楽しんでいる部分があり、
腹に穴をあけられ片腕が吹き飛んでもどこか冷静だ。
状況の飲みこみも早いため、見ているこちら側が状況を飲み込む前に
どんどんとシーンが展開してしまうような感覚だ。

調べたところ1話で原作における1巻部分の大半を描いてしまっており、
本来は描かれている細かい部分をかなり端折って
物語を進めてしまったせいでこの怒涛のテンポが生まれている。
良く捉えるならばテンポが良いとも言えるが、
悪く言えばテンポがあまりにも早すぎるような感覚だ。

この作品はいわゆるデスゲームものだ。
いきなり襲われ、拉致され、世間では死んだことにされ、
能力の実験モニターに強制的に参加させられ、
参加した者は一人1つ、それぞれ能力を与えられるという感じだ。

原作が2015年からやっているため仕方ない部分はあるものの、
この手のデスゲーム作品はアニメでも腐るほど放送されている。
最近ではNetflixで「イカゲーム」が大流行しているが、
多くのデスゲームものと、どう「差別化」するのかというのが
重要な部分でもある。

この作品の場合は主人公の「能力」が差別化の1つだ。

お前がそう思うんならそうなんだろう お前ん中ではな

主人公の能力は使い勝手がかなり悪い能力だ。

「俺の能力は危険すぎるから、使うのをためらってたんだ」

主人公は口八丁で詭弁をまくしたてる。

「俺の能力は手を大砲にする能力だ!」

そう彼が言った瞬間に彼の右腕は大砲とかす。
しかし、彼の能力は手を大砲にする能力ではない。
「相手」が思い込んだ能力が彼の能力になる。
簡単に言えば相手の「思い込み」を具現化させる力と言ってもいい。

故に彼は戦闘中でも喋りまくる。
相手の心理をつき、思い込ませることでどんな能力にでもなりえる能力。
それはどんな状況でも打開できる能力がある一方で、
自分の能力の正体がばれてしまったり、彼の言葉を信じなければ
まるで使えない能力だ。

その能力をどう活かし、生き抜くのか。
このデスゲームを主催したもののの目的はなんなのか。
1話では先が気になる展開にきちんと仕上げている。

回想

ただ2話以降、キャラクターの掘りさげのために「過去回想」を多用してしまう。
例えば2話では主人公とまだろくに絡んでもいないヒロインの過去に
なにがあったかをいきなり回想シーンでえがき、
そんなヒロインと闘う対戦相手の過去回想まで描かれてしまう。

物語の中で自然に過去が語られるのではなく、
過去回想を多用することで多くのキャラクターを印象付けようとしてしまっており、
いまいち一人ひとりのキャラに愛着も持てず、
そもそも「このキャラクターの回想はいるのか?」と思うキャラクターの
過去回想まであるためストーリーの進行が遅い。

一人ひとりのエピソードは決して悪くないものの、
「過去回想」が頻繁に挟まってしまうため、
キャラクターの掘りさげやキャラ描写というよりは、
このキャラはこういうキャラですという
「説明」になってしまっている部分がある。

出落ち感

出会って5秒でバトルも1話以外は
能力者同士が相対すると「5秒」のカウントダウンののちに
能力が使えるように手錠が開放されるというだけで
わざわざ5秒にする意味もカウントダウンの意味もあまりない。
それどころかバトルまでに5秒以上かかってるシーンのほうがほとんどだ。

中盤以降はそもそも、その5秒のカウントダウンすらなく
不意打ちもありな乱戦になってしまうため、
完全に出落ちの要素になってしまっている。

デスゲームとはいったものの、能力者同士の戦いに負けても
その試合の中で「死亡」しない限りは理不尽な死や
なにか大きなペナルティがあるわけでもない。
デスゲーム特有の「緊張感」のようなものが生まれておらず、
このデスゲームの中で能力の実験モニターをして
運営側が何がしたいのかも1クールでは明かされない。

作品自体が「能力バトル」をするための環境づくりのための設定なのはわかるが、
そこを掘り下げるようなストーリーがなく、
話が進んでるのか進んでいないのかいまいちわからない。
せめて全何試合ありますくらい明らかになれば
物語が進んでいる感もうまれるがそういうのもない。

戦闘シーンも試合によっては一瞬で決着がつくようなものが多く、
たとえヒロインの因縁の相手だろうとあっさりした試合が多い。
主人公が自分自身の能力の詳細を確かめつつ、
詭弁を繰り広げながらのバトルは面白いものの、
作画の微妙さもあってどうにも盛り上がりに欠けてしまう。

ハンター試験?

序盤から感じていたことだが話が進んでくると
強烈な「既視感」が生まれてくる。
2回目のチームバトルの流れや3回目の「ポイントの奪い合い」は
まるでHUNTER×HUNTERのハンター試験だ。

ハンター試験の場合はハンター資格を得られるというゴールがあるものの、
この作品にはゴールが見えない。
あと何回戦えばいいのか。能力者は何人居るのか。
どうすれば終わるのか。

何らかの伏線やヒント、匂わせるような何かがあれば
先が気になる感じが生まれるかも知れないが、
そういう要素がなく単純に運営側の言われるがままにバトルをしている。

中盤からドバっとキャラクターが多いせいもあってか、
同じ能力や似たような能力を持つキャラが出てきたり、
HUNTER×HUNTERや他の能力バトル作品でみたことのあるような
能力も多く出てくる。

HUNTER×HUNTERやジョジョの奇妙な冒険などの
色々な能力バトル作品、更に色々なデスゲーム作品など
色々な作品のタイトルがまるでサブリミナルのように思い浮かんできてしまう。
それ自体が別に悪いことではないものの、
この作品の面白さよりも、色々な作品のタイトルのほうが前に来ているような印象だ。

作画

キャラクターデザインのバタ臭さは序盤から感じる部分だ。
2021年のアニメというよりは2000年頃に夕方にやっていたアニメのような印象だが、
これ自体は好みの問題であり、余り気にならない。
戦闘シーンもアップを序盤から多用しているのは気になるものの、
戦闘シーンが短いからこそ余り気にならない。

しかし、中盤から様子がおかしくなる。
1話で主人公はミイラのような怪物に襲われるが、
その怪物が物語の中盤で大量に出てくる。
その怪物がなぜか中盤からは「CG」で描かれている。

普通の作画の中にCGが紛れ込んでいる違和感はかなり強く、
1話ではCGではなかった怪物が中盤ではCGになってしまうのも謎であり、
怪物だけならまだいいが、話が進むと人間も一瞬だけCGになるシーンも有り、
強烈な違和感が生まれてしまっている。
戦闘シーンの多い作品なのに戦闘シーンのクォリティが低い。

予算の問題なのかもしれないが、魅せるべき部分で魅せきれておらず、
それが盛り上がりに欠ける原因にもなってしまっている。

なんでもあり

主人公に与えられている能力も
「念能力」でいえば制約と誓約が最初は効いているのだが、
中盤からはその制約の意味も薄くなってしまう。

「相手が思い込んだ能力」しか使えない。
だからこそ主人公が知能を巡らせ詭弁で相手に思い込ませるのが重要だ。
それがこの作品の面白さでもあり特徴でもあった。

しかし、中盤からは仲間に自分の能力の詳細を明かし、
仲間に自分の能力を思い込んでもらうことで自由に色々な能力が使えてしまう。
制約はあるものの、ある程度何でもアリになってしまい、
「詭弁で相手に思い込ませる」必要がなくなってしまう。

生肉

話が進むほど作画もひどくなっていくが話もひどくなっていく。
特に終盤のバトル、主人公は敵の能力のせいで身動きがとれなくなってしまい、
敵にナイフで腹を刺されてしまい、出血する。

しかし、実は主人公は敵がナイフを使うことは予め知っていたため
「腹に生肉」と本を仕込むことでそれをふせぎ、
生肉から吹き出る血で刺されたように偽装する。

意味がわからない。
もはやギャグでやっているのか?と思うほど舐めまくった展開でしか無い。
ナイフに対する対策をするのはまだいいが、腹に肉を仕込むのは謎であり、
綺麗に切り分けられた肉で血が吹き出るのも意味がわからず、
肉で覆われてる範囲も狭い、スーパーで売ってるとんかつ用の
豚肉2枚位の範囲だ。

そもそも腹以外を刺されたらおしまいである、
敵がクビを切り裂いたり、心臓を突き刺したら終わりだ。
そんな「一か八か」の賭けをしていたようにもみえず、
敵がかならず「腹を刺す」習性やクセがあるわけでもない。
それまで真面目にこの作品を見ていた自分がバカだったと思うほど
呆れた突っ込みどころのある展開は思わずため息すら出てしまった。

総評:原作者も逃げ、監督も逃亡した

全体的に見て序盤こそ主人公の能力の設定のおかげでおもしろさを感じたものの、
話が進めば進むほど、その能力の設定の面白さも薄れてゆき、
話の面白さもどんどんと薄れていく代わりに、色々な能力バトルアニメや
デスゲーム作品の影が見えてしまっている。

それだけならまだしも作画のクォリティもどんどんと落ちてしまい、
最後は目も当てられないほどだ。
戦闘シーンの多い作品で作画枚数をごまかすためにCGをつかいだしたことで
画面に違和感も生まれ、戦闘シーンの面白さも掛けてしまう。

序盤にはあった頭脳戦の面白さまるで無い。
敵のナイフをまるで「未来予知」したがごとく生肉でふせいだ展開は笑うしかなく、
どんどんといろいろな部分がガバガバになっていく作品だった。

原作はもともと「はらわたさいぞう」氏がウェブで連載していたものだったようだが、
それを「みやこかしわ」氏の作画に変えて裏サンデーで連載開始している。
わかりやすく言えば「ワンパンマン」方式だ。

それだけならまだよくあることだが、
原作の3巻25話以降は原作者が「原案者」という表記に変わっており、
アニメではなぜか9話からは「監督」の名前が消えており、
1話からいた総監督の名前しかクレジットされていない。

中盤から「CG」が使われだしたことを考えると
色々と納得できる部分はあるものの、
原作もアニメも色々とゴタゴタがあったこと想像できるが、
ちょっとよくわからない事態になってしまっている作品だった

個人的な感想:1話はよかった

1話は楽しめたものの、話しが進めば進むほど
右肩下がりになっていくような感覚を覚える作品だった。
11話の生肉ガードは思わず笑ってしまったが、
もう少し早い段階でギャグ的な要素が見えてくれば
B級作品として楽しめたかも知れない

3期があるかどうかわからないが、せめてもう少し予算をあげてほしいところだ…

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出演声優 村瀬歩, 愛美, 新谷真弓

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