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消化試合感「劇場版 オーバーロード 聖王国編」レビュー

劇場版 「オーバーロード」 聖王国編 映画
画像引用元:©丸山くがね・KADOKAWA刊/劇場版「オーバーロード」聖王国編製作委員会
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評価 ★★☆☆☆(34点) 全132分

『劇場版「オーバーロード」聖王国編』本予告|9月20日(金)全国ロードショー

あらすじ 聖王女カルカを元首とするローブル聖王国は、その国土を長大な城壁に守られ平和な時代を謳歌してきた。しかし、突如現れた魔皇ヤルダバオトと亜人連合軍の侵攻によって、安寧はいともたやすく崩れ去ってしまう。引用- Wikipedia

消化試合感

本作品はオーバーロードの劇場アニメ作品。
4期の7話と8話で描かれるはずだった
「聖王国編」を映画化したものになっている。
制作はマッドハウス 、監督は伊藤尚往とTVアニメからの変更はない。

ヤルダバオト

見出して感じるのは作画の向上だ。
TVアニメ版のオーバーロードは3期あたりでの作画が指摘されることも多く、
特にCGのクオリティに関しては微妙な部分があったことも確かだ。
しかし、今作は冒頭からきちんと魅せてくれる。

「聖王国」という城壁に囲まれた国、そんな国に
「ヤルダバオト」が攻めてくる。
圧倒的なヤルダバオトの「魔法」の演出は映画らしくド派手なエフェクトで、
容赦のない「血液」の描写で圧倒される。

オーバーロードにおけるメインキャラは
この世界の支配者たちにとっての敵、「悪」の立場にいる者たちだ。
そんな「悪」なキャラクターらしい容赦ない圧倒的な残虐行為の数々を
きちんと冒頭から魅せることで
「オーバーロード」という作品の世界観に入りこませてくれる。

聖王国には「聖王」と名乗る美女とそれを守る騎士がいる。
天使を召喚し、白銀の鎧を身にまとう姿はまるで「ヴァルキリー」だ。
だが、そんな騎士ですらヤルダバオトに攻撃が通ることはない。
ヤルダバオトに立ち向かうために聖王国は「アインズ・ウール・ゴウン」に
頼ることになるというところから物語が始まる。

4期の7話と8話の間の物語ではあるものの、
新キャラが非常に多く、その新キャラを序盤から丁寧に見せている印象だ。

レメディオス

聖王国のレメディオスは「正義」にとらわれている。
誰も犠牲を出さず、悲しませず、傷つかせない。
それが聖王国の騎士であり、団長たる彼女の哲学でも有る。
聖王国がヤルダバオトに支配され、聖王もさらわれてしまった中で彼女は必死だ。
少しの犠牲も本来は出したくない。だが、それは理想であり、現実ではない。

そんな彼女の前で「アインズ」は現実を見せつける。
犠牲は出す、だが、少ない犠牲で、自らの「利」となる行為をする。
圧倒的な強さを持つからこそ、それをなし得る。
なぜ自らが強さを、圧倒的な立場を求めているのかを
「ネイア」という少女に見せつけている。

自らの正義に囚われるレメディオスだが、そんな正義を貫けず、
「アインズ」がどんどんと英雄になっていき、
「ネイア」はそんなアインズの信念にあこがれていく。
正義とはなんなのか。
この作品の中ではそれをメインキャラクターたちは己に、アインズに追求する。

そんなストーリー自体は丁寧に描かれているのはわかるのだが、
ときおり「あれ?カットされた?」と感じるほど場面が飛ぶことが有る。
アインズの戦闘シーンだったりも、敢えて描かずにカットしている部分もあり、
そのあたりの違和感が話が進めば進むほど、どんどんとでてくる印象だ。

オーバーロードが好きな人は「アインズ」含めたメインキャラの
戦闘シーンこそ見たいはずだ、だが、そこはなかなか見せずに、
見せてくれても数秒だけだったり、カットされたりして、
新キャラと亜人との戦闘ばかりが描かれてしまう。

淡々

中盤を過ぎても盛り上がりどころが薄い。
今作の実質的な主人公は「ネイア」 であり、
彼女がアインズに心酔し、歪んだ正義感を抱くための物語だ。
そのためにヤルダバオトとアインズによる「戯曲」を繰り広げている。

やっていることは2期の終盤とあまり変わらず、
この作品を見ていると4期でこのエピソードがカットしていたことも
納得できてしまう、長い割には盛り上がりどころが少ない。
ラストのアインズとヤルダバオト戦も本当にあっさり終わってしまい、
1番盛り上がったのは映画の冒頭くらいでどんどんと盛り下がってしまう作品だ。

ネイアとシズの関係性、終盤のネイアの変化などは面白いのだが、
それ以外の見どころが本当に少なく、
ファン向けの映画というより、ファン向けのOVA止まりになってしまった作品だった。

総評:ファン向けと考えても物足りない

全体的に見て非常に物足りない作品だ。
映画序盤の時点では「映画」だからこその面白さを見せてくれるのでは?
という期待感が募ったのだが、序盤以降は単調さが目立ち、
見せてほしい部分をしっかり見せてくれず、原作を読んでおらずとも
明らかにカットされている部分を多く感じ、本来はもっと
濃厚なストーリーのはずなのにあっさりになってしまっている。

聖王国側のキャラの掘り下げも甘く、
ネイアに関しての掘り下げはしっかりとしているからこそ
ストーリーは理解できるものの、聖王女などもほぼ出ただけで終わっており、
鑑賞後に調べるともう少し色々と思惑があったようだ。
そういった部分を尺の都合上しっかりと描けず淡白な作品になってしまっている。

戦闘シーンも序盤こそ良かったのだが中盤以降はあっさりとした
戦闘が多く、ストーリー的にも2期の終盤とカブる部分があり、
まさに4期でカットしていた部分をアニメ化することに
注力している「消化試合」になってしまっている。

ラストのアインズの戦いでさえ本当にあっさり終わってしまい拍子抜けしてしまう。
これが10年くらい前のアニメ映画ならばともかく、
今のアニメ映画市場においては微妙さばかりが際立ってしまい、
ファン向けと考えても物足りなさが残ってしまう作品だった。

個人的な感想:残念

個人的にはオーバーロードは好きなシリーズなだけに期待していており、
映画館に行く時間がなく、配信開始を心待ちにしていたのだが、
いざ配信で見てみると映画館で見なくても良かったと思ってしまう作品だった。

作画のクオリティも別に悪くはない、だが、物足りない。
戦闘シーンの少なさも、キャラの見せ方も、いまいち盛り上がりに欠ける部分があり、
せっかくの総集編以外の初の映画化なのにオーバーロードという
作品の人気の割に合わない感じの作品になってしまっている。

いまのところ5期の情報もない。
長い作品なだけにアニメ化も色々と難しい部分が有るのはわかるが、
もう少し頑張ってほしいと思ってしまうのが
オーバーロードのアニメシリーズの印象だ。

この印象が5期以降で変わることを期待したい。

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