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荒唐無稽!これでいい… のか?「ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス」レビュー

3.0
ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス 映画
画像引用元:(C)劇場版ゾンビランドサガ製作委員会
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評価 ★★★☆☆(50点) 全120分

【クライマックスPV】劇場版『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』10.24(Fri.)映画館で公開

あらすじ 佐賀万博のアンバサダーに起用された彼女たちは、プロデューサーの巽幸太郎のもと、メインイベントであるSAGAアリーナライブへ向けて準備を進めていた。 引用- Wikipedia

荒唐無稽!これでいい… のか?

本作品はゾンビランドサガの劇場アニメ作品。
監督は宇田鋼之介、制作はMAPPA。
2期から4年の時を経ての映画化であり、
監督も変更されている。

フランシュシュ

映画冒頭、懐かしさを感じる雰囲気にあふれてる。
4年前に見たあの子たち、ゾンビなアイドルであるフランシュシュが
あのころと変わらずに暴れまわっており、
会話のノリやギャグのテイストなど
「あー、こんな感じだったな」と懐かしさを感じさせてくれる。

そんなフランシュシュもなんだかんだあって
「佐賀万博」でライブをするほどの出世しており、
アイドルとしての人気もすさまじいものになっている。

1期や2期を見ずに、この作品だけを見るというのは厳しい。
映画冒頭で5分ほどで一気にこれまでの話を振り返るシーンがあるため、
見たけど内容を少し忘れてしまったという人は問題ないものの、
完全新規が楽しめる映画ではない。

そんな佐賀に「UFO」が襲来し、
佐賀が壊滅状態になるところから物語が始まる。
とんでもない展開だ(苦笑)

インディペンデンスデイ

序盤の展開はちょっと予想外すぎる感じだ。
2期の終盤でUFOが襲来しており、伏線があったといえばあったが、
本当にガチでUFOが襲来する、これでギャグならばまだわかる。
SFだとしてもマクロスのように歌で交流したり、
戦うならまだわかる。

しかし、そうではない(苦笑)
この作品における宇宙人、エイリアンたちはガチだ。
ガチで地球を侵略しようとしており、交渉という概念もない。
襲来してすぐに佐賀に対してビームを放ち、
万博会場は崩壊し、佐賀も大きな被害を受けている。

映画でいえばインディペンデンスデイのような状況だ。

ゾンビVSエイリアン

ここまで解説すればお判りいただけるとおもうが、
この作品はアメリカのB級映画などではおなじみの
「VS」ものやろうとしている。

フランシュシュというゾンビとエイリアンが戦う。
ゾンビランドサガというタイトルはついているものの、
やっていることは「ゾンビVSエイリアン」だ。

迫りくる宇宙人から逃げまどいながらも、ゾンビであるからこそ、
体温がなく、彼らに感知されないことを活かして戦ったり、
終盤にはフランシュシュたちもビームソード、レーザー光線、
巨大ロボットに乗って戦う(笑)

もうなんでもありなB級映画をやろうとしているのはわかる。
そのはちゃめさは素晴らしく、終盤のアクションシーンには
思わず笑ってしまうものも多く、そんななんでもあり感が極まって
終盤の盛り上がりは素晴らしいのだが、問題はそこに至るまでの展開だ。

伝説の山田たえ

本作の主人公といえるのが「山田たえ」だ。
フランシュシュの中でも異様な存在である彼女、
TVアニメのときには「あー」というゾンビらしい声しか出しておらず、
多少のコミュニケーションは取れるものの、自我のようなものは薄かった。

しかし、今作では宇宙船の「動力源」を彼女が食べてしまう。
その結果、彼女は自我に目覚める。
ゾンビだった時の記憶はない、あの時代を生きた伝説の山田たえが
再び佐賀を守るために立ち上がる物語だ。

「山田たえ」まわりのストーリーは悪くない。
アイドルをやっていたことを覚えていない彼女は、
この現状でもアイドルをすることに疑問を感じている。
そんな彼女に対して「フランシュシュ」がフランシュシュらしく
状況を打開しようとし、彼女の心が徐々に開かれていく展開自体は悪くない。

TVアニメでは描かれていなかった「山田たえ」の過去も
がっつりとではないが、断片的に示唆されており、
「純子」との意外な関係性など謎が多いゾンビランドサガの物語を
ひも解くヒントがいくつか明かされているのが本作品だ。

エイリアン

そのあたりは悪くないのだが、
そういったエピソードがだらーっと描かれており、
状況のカオス感もあいまっていまいち素直に楽しみ切れない。

山田たえとフランシュシュが宇宙人から逃げ回りながら、
状況を打開しようと考える。この展開がシンプルに長い。
序盤から中盤までだらーっと間延びしているようなシーンも多く、
迫りくる宇宙人とガチで戦い、ガチで逃げまどい、
フランシュシュも一緒にいる人間たちも困惑と恐怖を抱えている。

そういったサスペンス的な要素、緊張感のある状況がかなり長く続く。
ゾンビランドサガはあくまでアイドルものだ。
そこにゾンビという要素を足した斬新な作品だった。
そんな作品にさらに「宇宙人」という要素をたしてしまったことで、
カオス感がましてしまい、本来の持ち味が序盤から中盤までかなり薄まってる。

エイリアンに襲われ、戸惑いながら状況の打開を模索する。
この展開だけで1時間半くらい尺を使ってる印象で、
もう少し話の起伏があれば違ったかもしれないが、
「巻き戻し」の演出などに多様な演出も多く回りくどい上に
そのせいで物語のテンポも崩れてしまっている印象だ。

続編?外伝?

このあたりは見る人のスタンス、受け取り方による部分もあると思うが、
この作品をどういう立ち位置で見るのかでも印象が変わる。
2期から4年の月日が経っての映画だからこそ、
2期の続き、完結したといえないゾンビランドサガの物語、
解き明かされていない謎が映画でわかる、続編という立ち位置で見ると微妙だ。

明らかになった部分は少なく、もし3期があったとしても、
映画を見ていなくても2期と3期で話はつながるだろう。
そう考えると、この作品は「外伝」的な立ち位置で見るのが正解なのだろう。

最近のアニメ映画は鬼滅の刃を筆頭にTVアニメの地続きである場合が多い、
ただ鬼滅の刃がヒットする前は映画は映画で単発の物語だった。
ドラえもんやクレヨンしんちゃん、ドラゴンボールなんかもわかりやすい。
映画だからこその冒険やシチュエーション、オリジナルキャラが出てきて、
TVアニメ本編ではやれない展開をTVアニメ本編に影響がない形でやる。

この作品はまさにそれだ。
ドラえもんやクレヨンしんちゃんの映画で
「宇宙人がやってきた!」というのはありがちな展開だ。
それをゾンビランドサガに置き換えているだけに過ぎない。

この作品と同じ状況で、フランシュシュではなくドらえもんたちや
かすかべ防衛隊でも解決はできただろう。そういう感じの物語だ。
あくまで映画は映画、外伝的な立ち位置で見れば悪くはない。
映画だからこその山田たえの自我の復活などもファンサービスとして悪くない。

ただ、それが2期から4年たってしまっていることも問題だ。
これで2期から1年後くらいなら、お祭り感覚で素直に楽しみやすかったかもしれない。
4年という月日がお祭り感をやや薄めてしまい、
続編としてみればいいのか、外伝としてみればいいのか
判断に困るものになっている。

ライブ

なんやかんやあって宇宙人を倒し、無事、佐賀万博での
ライブを終盤行うことになる。
宇宙人の攻撃によって壊滅的な被害を佐賀全土で受けてたはずなのに
復興早すぎないか?という部分は気になるものの、
この最後のライブは圧巻だった。

1期、2期から進化した映像表現。
特にセルルックCGによるライブシーンのクオリティはすさまじく、
一人一人の細かい動きや表情の変化、
CGだからこそ360度、嘗め回すようなカメラアングルで
描かれるライブは圧巻だ。

しかも、きちんとフルで曲をやっており、
体感的に10分くらいのライブが描かれている。
そのライブの中で再び起こる「山田たえ」の自我の消失には
思わず涙腺を刺激される部分もある。

泣かされたという部分で映画を見終わった直後は
悪くなかったなという感想が生まれるのだが、
よくよく考えると引っかかる部分も多く判断に困ってしまう作品だった。

総評:ゾンビVSエイリアン!勝つのはどっちだ?!

全体的に見て非常に難しい作品だ。
ゾンビVSエイリアンというハリウッドB級映画もびっくりな内容は
正直かったるい部分も多く、終盤の戦闘シーンは
ゾンビランドサガらしい部分とエイリアンという要素が合わさって
悪くはないのだが、あくまで悪くないどまりになってしまっている。

同じような演出や間延びしたシーン、かったるいテンポなど
120分という尺をうまく使いこなせておらず、
これが90分くらいでまとめられたら、もう少しお祭り感もでて
ハイテンションで最後まで楽しめる作品になったかもしれない。
120分という尺の割には内容が薄い。

続編というよりもドラえもんやクレヨンしんちゃんなどの
毎年やってる映画のような感覚の作品であり、
そういうスタンスで見ればファンならば楽しめる。
ただ、そう考えると4年というブランクを経て続編ではなかったというのは
厳しい部分もある。

ファンならば楽しめる部分もある、特に終盤のライブは
本当に素晴らしく、自我の戻った山田たえの二度と見れないかもしれない
ライブシーンが映画だからこそのものだ。
ある程度割り切ってファン向けのお祭り映画として
見れば悪くない作品だが、あくまで悪くないどまりの作品になってしまっていた。

個人的な感想:頭が外れる

正直、序盤から中盤の展開は
「これでいいのか?これに4年もまたされたのか?」という
感覚が強く、素直に楽しみ切れなかった。
ところどころ笑ってしまう部分もあったのだが、それにしても
引っかかる部分があまりにも多い。

終盤の戦闘シーン、そしてライブでようやく
ゾンビランドサガを味わえたような感覚になったものの、
それでも物足りない。
これで3期決定のお知らせでもあれば違ったかもしれないが、
今、忙しすぎるMAPPAにオリジナルアニメの3期をやる余裕はないのかもしれない。

ゾンビランドサガのアニメはこれで終わりなのか、
それとも忘れたころに3期が作られるのか…
1期と2期を楽しんだものだけに、今後の展開を期待したいところだ。

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