「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」レビュー

4.0
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映画
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評価 68点 全101分

あらすじ 世界を壊滅状態へと導いた「セカンド・インパクト」から15年後。 引用- Wikipedia

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焼き直しではない、まさしくリビルド!

本作品は新世紀エヴァンゲリオンを元にリビルド(再構築)した劇場版。
エヴァンゲリオンではなくヱヴァンゲリヲンという表記に変わっており、
全4部作として公開される予定。監督は庵野秀明、制作はカラー

デジタル


画像引用元:【公式】ダイジェスト これまでの『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』より
©カラー

2007年に公開された作品なだけあって作画はかなり綺麗だ。
旧作の新世紀エヴァンゲリオンは1994年のアニメであり、
まだアナログなセル画で描かれていた。
「デジタル作画」で描かれるエヴァンゲリオンの世界観は
旧作を見ていた人でも「迫力」の違いに驚くだろう。

繊細に描き込まれている背景、爆発などのエフェクトの派手さ、
最初からテレビではなくスクリーンで見せることを意識した
画面の端から端まで使うような「画作り」がきちんとなされており、
それゆえにスケール感と迫力が違う。

セル画にはセル画の味があるが、やはり今見ると古さを感じる。
それゆえに「デジタル」だからこそ「映画」だからこそのものを
見せようとする制作側の気合を感じる描写だ。
特に「第3新東京市」が地下からせり上がってくるシーンは
デジタルだからこその良さを感じさせる。

ヱヴァ


画像引用元:【公式】ダイジェスト これまでの『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』より
©カラー

主人公である碇シンジは3年ぶりに父親と再会する。
彼は父親に捨てられたと想っていた。当たり前だ。
3年も思春期の子供を放置すればそう思われて仕方ない。
それ故に彼は自分に自信がない。
自分が必要とされない人間だと想っているからこそ自己評価が低い。

いきなり父に呼び出され、何もわからずまま
「エヴァンゲリオンに乗って戦え」と言われても否定するのは当たり前だ。
周囲の大人は無責任に彼に責任を押し付けようとする。
それでも否定する彼の前に傷だらけの「綾波レイ」が現れる。

もし自分が乗らないなら、
自分と同じ年齢の彼女が傷だらけの体で戦うことになる。

「逃げちゃダメだ」

出会ったばかりの少女を思う彼は根本的には優しい人間だ。
だからこそ何度も同じセリフを繰り返し自身を奮い立たせ、
エヴァンゲリオンに乗る。思春期の少年が思春期なりに悩んで答えを出す。
ウジウジ系ともいわれた主人公像の1つが確立された瞬間であり、
それはリビルドされた本作品でも変わらない。

使徒という謎の存在を倒す使命を負わされた主人公の物語が始まる。

初戦


画像引用元:【公式】ダイジェスト これまでの『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』より
©カラー

彼の最初の戦闘はボロボロだ。
ろくに操作方法もわからないロボットに乗ったのだから当然だ。
歩くのすらまともにできず、転び、敵にボロボロにされる。
エヴァンゲリオンという機体を動かすための機体とのシンクロが
ダメージも「フィードバック」する。明らかに負ける。

そんな状態から「暴走」し逆転する姿は本能の獣だ。
知性なんてものを一切感じない攻撃の数々、咆哮、
敵の血を大量に浴びる姿にゾクゾクとした魅力を感じさせてくれる。
あの当時の視聴者が受けた衝撃をまた味あわせてくれる。

ほとんど記憶にない戦闘、目覚めるとそこは見知らぬ白い天井。
だが、綾波レイの姿を見て彼は自分自身がやり遂げたことを実感する。
何もなし得なかった彼が何かを成し遂げた。
その自己肯定を後押しするのが「葛城ミサト」だ。

一人で住もうとする彼を引き取り、彼に自分が救った街を見せる。
14歳の少年に追わせてしまった役目に対する後ろめたさもあったのだろう。
だが、母親の居ない彼にとって姉のような彼女の存在、
自分を気遣ってくれる存在は貴重だ。

転校


画像引用元:【公式】ダイジェスト これまでの『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』より
©カラー

だが、そんな彼を否定するものも現れる。
ようやく自分がなし得たことを、何かを成し遂げられたはずなのに、
決して自分の責任ではないはずなのに住民の怪我の責任を責められる。
エヴァに乗ってるだけなのに殴られる。

せっかく自己を肯定仕掛けたのにまた否定される。この世界は彼に優しくない。
何かを強く否定することも、何かを強く受け入れることもできず、
言われたことをやる。それが彼の処世術であり、そう生きてきた。
「自分」というものを確立しきれていないからこその行動だ。

だが、彼は逃げる。命をかけた2度の戦いの中で迷う。
自分がここまでやる必要はあるのか、自分は果たして必要なのか。
自分の居場所はここなのか。行く宛もなく歩き回り、考えたとしても答えがない。
自己否定の果に彼は元の場所に戻るしか無い。

14歳の少年が置かれた状況で必死でなんとかしようとする様、
自分と同じ年齢なのに決死の思いで戦う姿を見たからこそ
彼のクラスメイトも彼を認める。殴るという行為で他者に触れたからこそ、
彼もまた自分自身を自覚する。

エヴァという作品は一人の少年の自己確立の物語でもある。

綾波レイ


画像引用元:【公式】ダイジェスト これまでの『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』より
©カラー

碇シンジとは違い、綾波レイは彼の父の「寵愛」を受けている存在だ。
面と向かって話事もできず、視線を合わせることができない。
自分は父とまともに接することができないのに彼女も父も
二人は楽しそうに会話をする。だからこそ彼は彼女に興味を持つ。

思春期だからこその異性の興味、自分と同じ立場の少女だからこその興味、
人との関わり合いを拒んできた彼が他者に興味を持ち関わろうとする。
彼なりに変わろうとすることを感じられる。

再起


画像引用元:【公式】ダイジェスト これまでの『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』より
©カラー

精神世界で彼は自己問答をする。

「自分はなんで生きているんだろうか」

エヴァに乗ることへの恐怖、だが、
エヴァに乗らなければ自身の価値はないと思っている。
そんな悩みを自分の思いを「綾波レイ」や「葛城ミサト」に吐き捨てる。

「僕だけなんで怖い目にあって、ミサトさんたちはずるいですよ」

旧作にこんなセリフはなかった。
彼になぜ「第3新東京市」を守っているのかを明確に序盤から提示する。
使徒が狙っているものの正体、
使徒がネルフ本部の地下に到着してしまえばどうなるか。

彼だけが命をかけているわけではない。ここにいる全員が命をかけている。
手を握りながら彼にそう伝えることで彼が再起するきっかけにもなる。
自分が守るべき存在、街の人達、クラスメイトの言葉を聞くことで
彼は戦う理由を見出す。

ヤシマ作戦


画像引用元:【公式】ダイジェスト これまでの『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』より
©カラー

3DCGで描かれる使徒ラミエルの動きは秀逸だ。
多角的に目まぐるしく変化する形状はデジタルかつ3DCGだからこその描写であり
そんな使徒に立ち向かう姿はシンプルに燃える。1度失敗しても立ち上がる。
101分という尺の中で「キャラクターの成長」をしっかりと
感じられる描写に仕上げており、自信に託されたものを自覚する。

14歳の少年にはあまりにも重い人類の命。だが、彼はもう逃げない。
そんな彼を守るのは「綾波レイ」だ。
関わり合い、一歩踏み出したからこその変化、守りたいと思う素直な心の形成。
自分の意志で戦い、自分の意志で決着をつける。

だからこそ彼は彼女に素直に思いをぶつける。序盤の彼ではなし得なかった事だ。
彼女の素直な笑顔、人と通じ合うということを感じ、映画は終わる。

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総評:まさしくリビルド


画像引用元:【公式】ダイジェスト これまでの『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』より
©カラー

全体的に見て素晴らしい再構築だ。
TV版の6話までの内容を101分にまとめることで
主人公である「碇シンジ」の自己確立の物語と感情の変化、心理描写が
見ている側に伝わりやすくなっており、細かい変更点や追加のシーンで
見やすい作品に仕上がっている。

旧作と違ってデジタル作画になりCGになったことで絵がシンプルにきれいになり、
使徒ラミエルの描写や演出や背景に迫力と派手さが生まれており、
「焼き直し」ではあるものの、エンターテイメントとして
「新世紀エヴァンゲリオン」という作品を作り直そうとしている制作側の
意向が見えるのが本作品だ。

「新世紀エヴァンゲリオン」という作品は社会現象を起こした作品だ。
だが陰鬱とした雰囲気、わかりにくい用語やストーリーは人を選んだ。
しかし、「ヱヴァンゲリヲン」としてリビルドすることで
そんなわかりづらさや陰鬱さを少しだけ取っ払い見やすくすることで、
この作品をオタク向けからエンターテイメントとしてにしようとしている。

一言で言えば前向きだ。決して後ろ向きではない。
「新世紀エヴァンゲリオン」という作品をより良いものにしようとしている。
そんな意図を感じる作品だった。

個人的な感想:変更点


画像引用元:【公式】ダイジェスト これまでの『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』より
©カラー

焼き直しという事は聞いていたが、
個人的に見ていてかなり変更点のほうが目立つ作品だった。
基本的なストーリーの流れは変わらないもののセリフの追加や変更をすることで
少しだけ「碇シンジ」という少年に優しくなってると言っても良い。
TV版6話までの内容が110分にまとめられたことでテンポもよく見やすい。

エヴァンゲリオンという作品はとっつきにくさはあるものの、
そこを超えるとドハマリしてしまう深い沼のような作品だ。
沿う感じさせる面白さをしっかりと味あわせてくれる作品だった。

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