「ゲキドル」レビュー

2.0
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SF
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評価 ★★☆☆☆(38点) 全12話

あらすじ 謎に起きた災害、世界同時都市消失から5年が経った2019年。世界は未だに混乱中であり、少しでも復興を遂げようとしている。引用- Wikipedia

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闇鍋

本作品はオッドエンタテインメントによるメディアミックス作品。
企画自体は2016年頃からあったようで、漫画版が2017年から連載している
監督は上田繁、制作はフッズエンタテインメント

世界観


画像引用元:ゲキドル1話より
©ゲキドル製作委員会

この作品の世界観はかなり独特だ。
というよりも「ごちゃまぜ」感が半端ない。
謎の災害が発生し、世界の色々な都市が同時に消失するという事件が起こる。
そんな謎の事件から5年、主人公は「ホログラム」を利用した
演劇に魅入られ、舞台を目指すという内容だ。

前半の説明と後半の説明のちぐはぐ感、おわかりいただけただろうか(苦笑)
世の中には歌で戦う作品もあるが、演劇と世界の消失事件との
関連性が序盤の段階ではまるでわからず、
ピンとこないというのがストレートな感想だ。

ホログラムを利用した演劇に憧れる主人公と、
そんな憧れから演劇を目指す主人公という物語自体は
ありがちとも王道とも言える「導入」だが、そこに「謎のSF要素」が
入り込むことで口の中にチョコレートとステーキをぶち込まれたような
違和感を感じる。

興味をそそられる世界観ではあるものの、
主人公が憧れたホログラムを
利用した演劇「シアトリカルマテリアルシステム」が
演出の悪さも合って凄さや良さがまるで伝わらない。インパクトがない。

ただ、妙にドロっとくらい何かが常に漂ってる感があり、
そんな雰囲気とBGMのセンスの悪さと作画の微妙さも相まって
妙な空気感が生まれている。
「不穏」といえば分かりやすいかもしれない。

一歩間違えばキャラクター同士の殺し合いでも
起こりそうな、そんな違和感と不穏さがこの作品を引っ張っている。

不穏


画像引用元:ゲキドル2話より
©ゲキドル製作委員会

2話以降も不穏だ。主人公の妹である「アリス」
彼女は都市消滅災害に巻き込まれており、
それが主人公のある種のトラウマにもなっている。

主人公は学生ながら一人暮らしをしており、
「ぬいぐるみ」を家族に見立てて一人で会話をしている。
正直に行って怖い(笑)ホラーアニメかな?と思うほどの怖さがあり、
それを明るく主人公が視聴者に見せつけてくるため、余計に怖い。
サイコパスじみた何かを感じさせる。

他にもダークな要素は多い。
登場人物の一人は「演劇ロボット」だ。比喩表現ではなく、
本当にロボット、アンドロイドだ。
他にも登場人物の過去が妙に重く、元ジュニアアイドルで
「いかがわしい」仕事をしていたキャラクターや、同性愛者も多い。

主人公は頑なに、どれだけ人と仲良くなっても絶対に
「下の名前」で呼ぶことはない。居なくなった「ありす」以外の
人間の下の名前を彼女は呼ばない。

あえて作中の雰囲気を「不穏」にする設定と要素が多く、
それがこの作品を引っ張ってると言ってもいい。
何かが起こりそう、何かをやらかしそう、そんな綱渡り的なハラハラ感を
常に見せられる。

さっきまで仲良く喋っていたのに「地雷」を踏めばあっさりと
ギスギスした雰囲気になる。
ギスギスした雰囲気と不穏を妙に後押ししており、
一言で言えば「危うい」作品だ。

「性的」な要素を匂わせることも多い。
主人公たちの劇団は貧乏だ。家賃も滞納している。
大家さんは優しい人だが家賃の代わりに「サービス」してもらっている。
そのサービスが何なのかというのは明かさず、
ラブホテルなどの性的な臭をする要素をあえて映している。

アイドル


画像引用元:ゲキドル3話より
©ゲキドル製作委員会

もはや色々な要素でお腹がいっぱいなのに更に詰め込まれる。
「アイドル」だ。
劇団の知名度を上げるために対バンとして他のアイドルへの
殴り込みをかけるためにアイドルをやるという展開ではあるものの、
演劇すらまともに描かれていない中でアイドル要素が出てきても消化できない

そんなアイドルとしてのライブシーンの中で停電が起る。
客が困惑する中で主人公がいきなり演劇を始めるものの、
正直意味がわからない。「場をつなぐ」ための演劇なのは分るが、
アイドルのライブを見に来たのに、ストーリーもキャラもわからない
演劇の一部を急に見せられた観客はどういう反応をすればいいのだろうか。

演劇の中の歌をアカペラで歌うなどのシーンならば分るが、
「いきなり演劇自体を始める」のは本当に意味不明でしか無い。

元ジュニアアイドルのキャラクターの過去もとんでもなく重く、
「日本」だからこそ放送できるが、児童ポルノなどにうるさい
アメリカなどでは3話の内容は放送できないのでは?と感じるほど
「生々しすぎる」ジュニアアイドルとしての過去も描かれる。

演劇がろくに描かれない中、アイドルとしての活動ばかり描かれる。
アイドル活動の中に演劇があるような感じだ。

レズビアン


画像引用元:ゲキドル4話より
©ゲキドル製作委員会

4話になると「百合」要素も出てくる。
いや、この場合、百合なんていう生易しい表現ではなく
「レズビアン」と表現したほうがいいかもしれない(笑)
序盤から主人公のことを好きだが素直になれないツンデレクラスメイトが
でてきたりするものの、そんな彼女を差し置いて
4話では他の女の子と主人公は「濃厚なキス」を交わす。

もはや何を見せられているんだろうという感覚にまでなる。
そんな雰囲気なんて全然なかった二人がデートをし、いきなりキスである。
この作品の方向性がまるで見えてこない。

ただでさえキスシーンで衝撃を受けてるのに、
主人公は妹のことをいきなり思い出したかとおもえば
走り出し「演劇ロボット」に泣きつくと「演劇ロボット」は
なぜか主人公の妹を演じ、「都市消滅災害」の兆候が現れる。
見ている側が大混乱である(苦笑)

そんな大混乱な中でロボットと主人公が仲良くしているのを見て、
主人公にキスをした少女が嫉妬の炎に包まれる。
4話になってもこの作品が一体何をしたいのかがわからず、
ひたすらに盛り込まれる要素を消化しきれない、どんどんと
口にたべものを入れられるような感覚だ。

このわけのわからなさは先の展開が読めないからこその面白さになっており
一体全体この話がどこへ向かい、どう収束するのかが気になってくる。

人格の目覚め


画像引用元:ゲキドル4話より
©ゲキドル製作委員会

演劇用のアンドロイドでしか無かった「ドール」は
主人公との関わりの中で自我に目覚め、
自分の名前を主人公の妹の名前と同じものを自称し、
そんなロボットを、ロボットではなく、
「役者」として扱ってほしいと主人公は懇願する。

自分にキスをしてきた少女にまるで「あてつける」ように、
彼女の心を惑わしていく。思いが通じたと思った彼女が、
ロボットに主人公を寝取られる(笑)
まさにそんな感覚になるようなドラマが展開される。
ちょっとした昼ドラのようなストーリー展開だ。

トラブルが起きる中で「主役」が不在になる。
そんな主役に主人公は「ドール」を推す。
ロボットでしかない彼女に「心酔」し「感情移入」する主人公と、
そんな主人公にやきもちを焼くキスをした少女。
自我が目覚めつつある「ドール」

私はレビューの序盤に「殺し合い」が起きそうな雰囲気だと書いているが、
中盤で殺し合いまではいかないものの、
「幻覚を見せて階段から突き落とす」という展開まででてくる。
もはや殺し合いが本当にいつ起こってもおかしくない(笑)

私が貴方で、貴方が私


画像引用元:ゲキドル6話より
©ゲキドル製作委員会

中盤になると真実が徐々に明かされていく。
主人公がメンタルをやられ、誕生日がトラウマになるほどの出来事。
自分のせいで、子供同士の些細ないたずらが、
結果的に「ありす」という一人の少女を
妹を、自分自身を殺してしまっている。

彼女が直接の原因ではない。災害に巻き込まれただけだ。
だが、あの時、あんなことをしなければ、被害にあったのは自分だった。
子供の些細ないたずらが自分を生かし、自分を殺すことになってしまった。
そんな出来事が彼女の精神を病んでおり、情緒が不安定になっている。
そんな心につけこんだのが「ドール」だ。

ときには「アリス」の姿をホログラムで投影し、アリスの性格を模倣し、
主人公の心に入り込んでいく。自分に依存するように、
ときには邪魔者を自らの手で排除しようとしている。
「ドール」の存在が、まるでホラー映画における怪物のように
彼女たちの日常に入り込み、迫ってくる。

キスをした少女は主人公に言う。
「モノマネではなく、本当の自分に向き合え」と。
彼女の演技は誰かの模倣だ、主人公自身の演技とは言えない。
だが、模倣ならば彼女はずっとやってきた。

幼い頃からのお遊びだ。
彼女たちは互いを「模倣」することで親を騙していた。
双子だからこそのちょっとした遊び。
災害が起きたあの日もそんな遊びをしていた。

だが、結果的にそんな遊びが「妹」も「自分自身」も殺してしまった

「アリスを殺さないで!」

それは自分の心を守るための行動だ。
心の奥底に封印していた「記憶」が演劇を通じて徐々に蘇る。
誰かを演ずることで、誰かを模倣することで、
彼女は自分自身を見つけようとしている。

逃げていた自分と向き合う、忘れていた過去と向き合う。
そこにはドールではなく「友達」がいる、キスをした友達だが(笑)
言葉にすればシンプルだが、そんなシンプルさをこの作品は
大胆に「ホラーテイスト」で見せている。

「ドール」という存在がトラウマをえぐり、過去をえぐる。
このドールは一体何なのか。相対する相手の心にいる存在になりきり、
相手の心につけ込む。まるでホラー映画のごとく、
ドールの秘密に、世界の秘密に迫っていく。

難解


画像引用元:ゲキドル10話より
©ゲキドル製作委員会

ただ9話あたりから話が難解になってくる。
それまでなんとか話についていっている感じがあったが、
9話から話に徐々に追いつけなくなる感覚だ。
SF的な設定の説明をするために横文字が非常に多く、
その横文字が分かりづらいうえに説明もされない。

次元の話をするなら次元で統一してほしいのに、
余剰次元だのトワイライトディメンションだのと
同じ次元の話でも感じだったり横文字だったりで頭に入ってこない。

9話からは視点も時系列もコロコロ変わりながらそんなSF設定の謎を
明かしていく展開のため余計に分かりづらい。
10話にはいきなり「イノベイター」な新キャラまで出てくる。
ちなみイノベイターは時空犯罪者であり、そんな時空犯罪者な
キャラを追う「クロノゲイザー」というのもでてくる。

もうわけわかめである。
ある程度、視聴者側が「こういうことだろうな」と考察とまでは
いかないものの察することを求められている。
キャラクターも平気で偽名を使うため余計にわかりにくい。
いわゆる「考察アニメ」ともいえる。

黒幕の目的も、簡単に言えば人類補完計画みたいなものだ。
彼は「世界」を憎んでいる。
主人公と同じように自分が犠牲になればよかったと思っている存在だ。
愛するものを失い、そんな経験が彼を暴走させた。

「人間は勝手に考え判断を下すから過ちが起きるんだ。
 だからもう考えなくていい、
 疑似世界の中で欲望を満たしてさえいればいい」

全世界で同時公演を行いシステムとドールを使い、
全員を擬似世界に閉じ込めようとしている。
そんな目的と未来人が「運命」を替えたからこそ
巻き起こった出来事の数々。

いろいろな謎が明らかになる中で主人公たちは彼女たちの「日記」を
舞台に彼女たちの物語を演じようとしている。

「クロノゲイザー」が残した日記を舞台にしているからこそ
主人公たちがメインストーリーとなんとかつながっているものの、
はっきり言って蚊帳の外が凄い。
主人公たちは何も知らぬ間に裏でメインストーリーが進んでいく。

人類補完計画


画像引用元:ゲキドル12話より
©ゲキドル製作委員会

簡単に言えば未来人が行き詰まった未来を改変しようとしたら
パラレルワールドが発生してしまっている。
主人公たちが生きてる世界は本流の世界ではなく、パラレルワールドだ。
最終話、未来人の機械である「GMS」が5年前と同じように動き出す。

地球全体が劇場になる。観客は疑似世界に取り込まれることで
自我を失い「1つにつながろう」としている。
もう人類補完計画そのものだ(苦笑)
だが、そんな中で「彼女」たちの舞台は続く。
彼女たちにそんな自覚はない。

1つになりつつある人類の意思は主人公たちの舞台を見続ける。
彼女たちの舞台は「過去」に起こった出来事だ。
だが、題材になった日記には途中までしか描かれていなかった。
後は彼女たちの「アドリブ」次第で物語が決まる。

たった一人の少女の、主人公のアドリブ。

「私たちはきっとわかり合える。
それでも、立場が対立を生むっていうなら、
ゲイザーも、イノヴェイターも、この世界にいらない!
私たちの未来は、私たちが取り戻してみせる!」

そんなセリフ、地球が舞台となり全人類が1つになりながら
彼女たちの舞台を見つめ、現実と虚構が混ざりあった結果、
主人公の舞台の結末が現実になる。
主人公が自分自身を見つめ直し、誰かを演じて自分を表現する
演技の本質を得たからこそのアドリブだ。

5年前の出来事がなかったことになる。
物語は1から、本来あるべき姿に戻る。だが0ではない。

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総評:観客がついてこない


画像引用元:ゲキドル1話より
©ゲキドル製作委員会

全体的に見て最後まで見ても理解しきれない部分が多い作品だ。
序盤の不穏さ、その不穏さを引きにしつつ中盤で主人公が
自分自身を見つめ直し過去を乗り越え成長する。
誰かを演じる「演劇」だからこそ誰かの模倣ではなく、
逃げていた自分自身と向き合うことで本当に意味で演劇をする事ができる。

この中盤までのストーリーは決して悪くない。
まるで昼ドラのようなドロドロ感、ホラーテイストなドールの存在、
百合な関係性と主人公の過去。ただある程度、
主人公の物語が6話で終わってしまう。
自分自身のトラウマに向き合い6話で乗り越えてしまう。

終盤になると物語の舞台のSFなストーリーを描くことに必死だ。
「そういうストーリーである」ということはなんとなく理解できるものの、
見ている側が理解し、察し、考察しなければついていきづらく、
視聴者に求めるハードルが高い。

ラストで演劇とSFをうまくつなげたと感じる部分はあるものの、
物語を描く「必死感」がすごくでてしまっており、
造り手側も見る側もストーリーに必死になってしまう感じだ。

やりたいことや描きたいことは分るものの、
結局はエヴァの焼き直しのような展開や、
ちょっと色々な要素を盛り込みすぎてしまった感の否めない作品だ。
試み自体は面白いが、強烈に人を選ぶ。
損な作品といえばわかりやすいかもしれない。

個人的な感想:5年前


画像引用元:ゲキドル12話より
©ゲキドル製作委員会

出演声優さんのTwitterによるとアフレコ自体は5年前に行われたようだ。
なぜか4,5年、この作品は封印されていたことになる。
色々と事情があったのかもしれないが、
そこまで封印されていたのも謎でしか無い。

意欲作ではあったものの、意欲作止まりで終わってしまった。
そんな印象を受ける作品だった。

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