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「平穏世代の韋駄天達」レビュー

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評価 ★★★☆☆(57点) 全11話

TVアニメ「平穏世代の韋駄天達」第1弾アニメーションPV

あらすじ 「韋駄天」と呼ばれる、圧倒的な速さおよび強さを持つ戦いの神々が、世界を破滅へと導いていく魔族を封じ込め、800年が経った引用- Wikipedia

神も救いもない

原作は異種族レビュアーズでおなじみの天原氏。
作画はクール教信者が担当している。
監督は城所聖明、制作はMAPPA

かつて戦いがあったとさ

1話冒頭からこの世界の歴史が語られる。
かつてこの世界には「魔族」が存在し人類は滅亡の危機に陥っていた。
そんな人類の祈りが届き「韋駄天」という神々が現れ、
韋駄天たちは魔族たちを倒し、封印するために一人の韋駄天を残し封印の中に消えた。

つまり戦いは終わっている。
この世にいる韋駄天は1人のを除き「戦い」を知らない。
「平穏世代」というタイトルどおり、彼らは戦いをしたことがない。
それなのに唯一、戦いを経験した韋駄天に修行をつけられる日々だ。
地球を一周し、ボコボコにされ、血反吐を吐きながら鍛えられる。
戦いから800年、すっかりと若い韋駄天たちは「ゆとり」になっている。

序盤から血液の描写がかなり過剰だ。
主人公が悪態をつけば師匠にボコボコに殴られ、血まみれになる。
その血まみれ具合が過剰であり、この作品はそういった過激な
描写のある作品ですよと伝えるような作品だ。

序盤、特に1話はそういう説明描写やキャラ紹介を占める部分が大きく
なかなか物語が動き出さない。
しかし、その反面で印象に残るのが「声優」さんたちだ。

主人公を演ずるのは朴璐美、彼と同世代の韋駄天の二人を演ずるのは
緒方恵美と堀江由衣だ(笑)
この作品は2021年の作品だが30年ほど時代が違うようなメインキャラを
演ずる声優陣のベテラン感に脅かされてしまう。

演出

この作品の演出はかなり癖がある。
キャラクターデザインもそうだが、そんなキャラクターたちの作画が
かなり独特な色彩で彩られている。
アニメというよりはカラーの漫画のような配色センスで描かれており、
それが妙に印章に残る。

制作はMAPPAではあるものの、かつてのGAINAXやカラー、
「今石洋之」監督胃作品のような色使いだ。
カラフルというよりは「ケミカル」といったほうが正しいと感じるほど
独特な色使いでアニメーションが綴られている。

800年ぶりに復活した魔族、そんな魔族に「平穏世代の韋駄天」が挑む。
まるでドラゴンボールのようにキャラクターたちが殴られ、ぶっ飛びまくり、
血みどろになる(笑)
あっけなくで腹を貫かれ、あっけなく首の骨をおられる。
しかし、それでも死なない。彼らは韋駄天、神だ。
心臓を打ち抜かれても、首の骨が折れても「神」であるがゆえに致命傷にはならない。

「君も心臓を潰してみればわかるよ」

緒方恵美さんの声だからこそクールな「映える」台詞回しがたまらず、
熱血タイプの主人公を演ずる朴璐美さんや、
ヒロイン感満載のヒロインを演ずる「堀江由衣」さんがたまらない。
生半可な声優では醸し出せない声優の実力をひしひしと感じる。

GAINAX、カラー、そしてどこか「シャフト」的な演出すらも見せる。
アニメにおいて癖があり、人を選ぶ演出や色合いを
この作品ではあえて取り込んでいるかのような印章だ。

この作品は人を選ぶ、血液の表現もそうだが、なにより
「性的な描写」も多い。
1話のラストでは女性を男性兵士が性的に暴行するシーンも描かれるくらいだ。
内容的に人を選ぶ作品だからこそ演出も
人を選ぶような癖全開で彩られているといってもいい。

説明

ただ序盤は説明描写が多い。
韋駄天はどうやって生まれるのか、そもそも韋駄天とはなんなのか。
そんな設定の説明をしつつ、彼らの修行が描かれる。

同時に魔族サイドの動きも描かれる、800年の時をかけて
じわりじわりと人の中に潜み、立場をもち、国を持った彼らは
かつての魔族とは違い明確な「意思」をもち、魔王の指示で動いている。
彼らの目的はなんなのか、魔王とはいったいなんなのか。
設定を説明しながらじわりじわりとストーリーを進めていく。

人々の救いを求める心で生まれる韋駄天達。
しかし、必ずしも韋駄天が人を救うとは限らない。
彼らにとって「人」はあくまで人であるものの、
彼らの役目は「人類」を絶滅させないことだ。

人間同士の争いには関与しない。
国同士の争いがあろうとも勝ったほうは繁栄する。
人間とは「倫理観」が神ゆえに違う。
戦争とは人類に「余裕」があるからこそ起きるものであり、彼らは不寛容だ。
平穏世代に生まれた「韋駄天」には存在価値はない。

人々が救いの声を神に届けようとしても、神はそれを聞き入れない。
「神」はいる、だが、人々が望むようには行動してくれない。
そんな神の倫理をえがきつつ、魔族の行動も描いている。

リン

彼女は800年前の戦いの唯一の経験者だ。
800年という長い年月、鍛え抜いたその神の強さは凄まじく、
「魔族」で1番か2番目に強い存在が現れても圧倒してしまう。
彼女には誰も勝つことができない、圧倒的な強キャラを出すことで
主人公たちや魔族のキャラの強さを図るベクトルにもなっている。

だが、強すぎて逆に魔族に同情してしまうほどだ(笑)
魔族側が彼女にどうやって勝つのか、
どんどんと主人公を含めた平穏世代の韋駄天も強くなっていき、
ますます魔族側に勝ち目がない。

強すぎるゆえに魔族に同情すら感じてしまう。
人間同士の争いには無関心で、魔族を殺すためならば人間の犠牲すらいとわず、
魔族の脳をいじくり洗脳までする。
「神」とは何なのかと思うほどの韋駄天たちの倫理観が
不思議と魔族への同情をうんでいる。

韋駄天という絶対的な存在、そんな存在がいるからこそ
「種族としての本能」が刺激される。
生き残るために、種族全体を活かすために、子供を活かすために。
意思をもった魔族達がそれぞれの種族本能に従い行動し、
「韋駄天」に挑む姿、もはやどちらが主人公かわからない(笑)

説明説明…

しかしながら中盤になっても説明が多い。
平穏世代の魔族達がどうやって生まれているのか、魔王の正体など、
わりと重要な部分の説明すら「高速説明」というい早口な説明シーンで
一気に説明しているものの、あまりにも高速すぎて聞き取れず、
逆に意味がないものになっている。

この説明シーンの多さは制作側もわかっているからこそ、
「高速説明」で説明シーンを省略したかったのはわかるが、
そのため細かい設定の把握ができないようになってしまっている。
本末転倒だ。

テンポよくどんどんと話をすすめるために説明描写を圧縮したい気持ちはわかるが、
これならば説明シーンをカットしたほうが良かったのでは?と感じてしまう。
倍速再生で見る人が居る時代ゆえに、倍速再生にしたら余計に意味わからないだろう(笑)

逆に説明をきちんと聞きたい方は低速再生にしてご覧くださいということなのかもしれない。
検証した結果、高速説明の場合、0.5倍速にしたら聞き取れる。
1クール全11話という尺ではえがききれない、尺が足りないからこそ、
尺を稼ぐために制作側が説明シーンを倍速にし尺を圧縮するというのは
斬新な方法といえば斬新な方法だ。

魔族の反撃

中盤で魔族の9割は韋駄天によって滅ばされる。
だが、1つの種族が追い詰められるほど生存本能が刺激される。
1つの種族が滅びる危険、それは魔族であっても変わらず、
彼らは生き残ったがゆえに己の本能を刺激し、己の才を極限まで発現し、
韋駄天に挑む。

韋駄天と魔族の戦いはこれからだ。
そんなところで1クールが終わってしまう。
あまりにも中途半端で歯切れの悪すぎるラストはモヤモヤした感じがすごく残ってしまう。
1クールという尺の都合は仕方のない部分はあるものの、
話の区切り方が良いとは言えない、モヤモヤとした最終話になっている。

総評:神も救いもない

全体的に見て色々と惜しい作品だ。
1話から血液表現や性的暴行など過激な要素を見せつつ、
人とは倫理観の違う「韋駄天」とそんな韋駄天と戦う「魔族」の
キャラクター描写は悪くなく、彼らの戦いとその行方、
終盤での「逆転」ともいえる展開は思わず唸るほどのストーリー展開だ。

しかしながら、全11話という尺ではあまりにも中途半端だ。
原作ストックをほぼ使い尽くしたらしく、
アニメで原作ストックを使い尽くすところまでやるために
説明描写を「高速」でやったりと工夫しながら原作ストックを使い尽くす
ストーリー構成は評価したいものの、区切りのあるラストとはいい難い。

強烈に人を選ぶ作品だ。
倫理観に欠けたキャラクターたちの行動は人によっては目を背けたくなるだろう。
可愛らしいキャラクターデザインでありながらエログロ満載だ。
そんな人を選ぶ作品だからこそ演出面でもかなり遊んでおり、
ケミカルな彩色、シャフトやGAINAX、数々のくせのある監督の演出を
取り込んだような演出の数々は見ていて面白い。

「高速説明」も聞き取れないという問題点はあるものの、
倍速再生ならぬ低速再生をすれば聞き取れる(笑)
放送上の尺の問題を強引に解決する手法として正しいか否かはわからないが、
斬新すぎる演出とも言える。

好みが分かれる作品ではあるものの、見る人の好みに合っても
非常にもやもやしたラストで終わってしまう。
続きが見たいと思わせてくれるのはこの作品が面白かった証拠ではあるが、
もう少し区切りがいい所で終わらせられなかったのかと思ってしまう作品だった。

個人的な感想:ノイタミナらしくない

この作品は驚くことにノイタミナで放送されている。
ノイタミナはもともと普段アニメを見ない人をターゲットにした
ややドラマ的な作品が多い。
必ずしもそうとは言えないが、この作品はノイタミナの中でも異色すぎる。

色々な意味で挑戦的な作品であり、その挑戦心のようなものは
評価したいところではあるものの、ラストで困惑してしまった。
もしアニメで続きを見れるとしても数年後なことを考えると、
なぜ今このタイミングでこの作品がアニメ化されたのかも疑問だ。

2021年はクール教信者さんが原作や原画を手掛けてる作品が
多くアニメ化されていたが、その流れかなにかなのだろうか?
色々と疑問は尽きないが、いつか2期という形で
アニメでこの続きが見たいところだ。

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