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「シキザクラ」レビュー

4.0
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評価 ★★★★☆(61点) 全12話

オリジナルアニメーション『シキザクラ』第2弾PV

あらすじ 高校生の三輪翔は、世界を救うことのできる巫女の明神逢花と出会い、異世界から現れたヒトを食らうオニとの戦いに巻き込まれる。引用- Wikipedia

二人のヒーロー 此処に在り

本作品はTVアニメオリジナル作品。
た中京テレビが中心となって企画した
『ナゴヤアニメプロジェクト!』の一環として制作されている。
監督は須貝真也、制作はサブリメイション

名古屋特撮

この作品は名古屋の企画であり、名古屋を盛り上げるためのプロジェクトの
一環として制作されており、アニメを作る上で「名古屋縛り」をしている。
制作も名古屋に作られた制作会社であり、
出ている声優さんたちも愛知県出身の方ばかりだ。

そのせいか新人声優さんが多い。
棒演技とまでは言わないものの「新人感」のある演技は
やや不安定さを感じると同時に、逆にこの作品が「特撮アニメ」だからこそ
この新人感が逆に悪くないと感じてしまう部分もある。

特撮、日曜朝の仮面ライダーや戦隊モノに出てくる俳優さんは
基本的に新人俳優が多い。
そのせいで序盤は演技があれだったり、滑舌の悪さのせいで逆に有名に
なってしまった作品もあるくらいだ。

そういった「特撮モノ」特有の演者の新人感みたいなものが
この作品にも漂っている。いわゆるお約束だ。
声優の演技もさることながら、キャラクターの動きにも違和感がある

この作品はフルCGアニメとして制作されており、
セルルックスタイルなCGの描写はCG感をあまり感じさせないものの、
CG特有の「ぬるー」っとした動きはある。
それだけなら特に気にならなかったかもしれないが、
この作品は「エクスアーム方式」を採用している。

メインキャラクターは基本的にCGで描かれている、
だが逆に1話しか出ない、背景で描かれるようなモブは手書きの作画で
描かれている。
CGと手書き作画のキャラが同居しているシーンには違和感がある
(もちろんエクスアームほどではない)

王道

ストーリーは本当に王道だ。
この世界には異世界からオニと呼ばれるものが侵入し人を食らっている。
オニの存在は一般人には公開されておらず、
人知れずオニを退治する「ヒーロー」がいる。
オニは人の心につけ込む、人の弱い心をオニは狙い、人を食べる。
主人公は過去にオニ絡みの事故に巻き込まれ、ヒーローに助けられた過去がある。

あのときは何もできなかった、誰かを助けることもできなかった。
そんな「後悔」が主人公の中にはあった。
だからこそ、彼は今度こそ誰かを助ける「ヒーロー」になろうとする。

設定的にも仮面ライダーあたりにありそうなストーリーではある。
力がなかった主人公、何者にもなれなかった主人公。
そんな彼の前に「封印されたオニ」が現れる。
彼の誘いにのり、オニの力を手に入れた主人公は戦いへと赴く。

非常に王道なストーリーだ。
仮面ライダー電王あたりを彷彿とさせるような設定、
オニでありながらヒーローとなった主人公など
特撮好きの「ツボ」を抑えた王道なストーリーを序盤から魅せてくれる。

オニの力に頼ればいつかは時分が殺されるかもしれない。
だが、彼は過去の後悔から、もう逃げたくない。

「オレはオレを手放さない!ヒーローになるんだ!変身!」

特撮ものだからこその「変身シーン」は思わずニヤニヤさせてくれる。
他のキャラクターはパワードスーツという真っ白な鎧を着ているが、
主人公は「黒」い鎧だ。だが、単純な黒ではない。
主人公の意思が介入してるからこそ黒と白の入り混じったスーツに身を包み、
彼は自らの正義をなすために戦いに挑む。

中盤

序盤の2話で主人公をえがき、3話からは彼の仲間のキャラの掘り下げが描かれる。
これが実写の特撮ヒーローものならばもっと時間を
かけて描いているところだが、この作品は1クールしか無い。
本来なら描かれるはずのエピソードも過去回想やダイジェストですまし、
サクサクとストーリーが展開していく。

ただ、このあたりのストーリーはやや当たり外れが強い。
特に4話などはパロディまみれだ(笑)
とにかくパロディを詰め込み、何作品のパロディができるのか
挑戦しているのかと思うほどのパロ要素の数々は人によっては
序盤から盛り上がり残しをおられるような感じだ。

名古屋のアニメプロジェクトだからこそ、名古屋ネタや
ご当地ネタは多いものの、名古屋に詳しくないと
「なにそれ?」と思うようなものも多い。
このあたりは同じ名古屋アニメの「八十亀ちゃんかんさつにっき」あたりを
一緒に見ればわかるネタもある。

ややこの中盤は中だるみを感じる部分でもある。

信じる

ギャグは多いものの設定はシリアスだ。
鬼に食われた人間は人間に戻ることはなく人を食い続ける。
人を守りたい、人を犠牲にはしたくない。だが、鬼に食われた人を助けることはできない。
鬼の力を借りているとは言え一人の力では救える命に限りがある。
鬼を倒すために、人を救うために「犠牲」になる人もいる。

そんな現実を目の前にしても主人公はぶれない。
自らが信じる正義を信じ、自らが望むヒーローになろうとする。
自分の中にいる「イバラ」すら彼は信じている。
ぶれない主人公像、まっすぐな主人公は特撮ヒーローにふさわしく、
そんな彼の熱血ぶりは戦闘シーンにも現れている。

ただただ「殴る」。
自ら拳で痛みを感じながらも正義をなそうとする彼の姿は「ヒーロー」そのものだ。
彼以外のキャラはヒーローになろうとはしていない。
オニに一度取り憑かれ、オニに恨みがあるからこそ戦っているキャラも多い。
だが、そんな彼らが主人公に影響され主人公を信じるからこそ
彼らも変わっていく。

終盤では特撮らしい「シリアス」な展開もある。
誰しもに心の弱みがあり、そんな心の闇にオニはつけ込む。
それはヒーローでも変わらない、話が進めば進むほど話が盛り上がっていく。
一人ひとりが自分の心の闇に立ち向かい、乗り越えていく。

「もうコレ以上、こんな思いを誰かにさせたくない」

そんな気持ちがヒーローとしての自覚につながる。
王道なストーリーがたまらない。

犠牲

中だるみしてる中盤から終盤で一気に話が進む。
鬼を封印するための「巫女」としての宿命、
巫女であるヒロインはその宿命を受け入れてはいるものの、
主人公はそれを否定する。多くの誰かを守るために誰かを犠牲にしたくはない。

守れるものに限界はある、だが、目の前の命を、自分だけ生き残った過去があるからこそ
彼は自分の信念を一切曲げない。
大勢を、みんなを、全てを守るために彼は彼自身の力で戦う。
己の中に眠るオニの力ではない、自らの力をふるう。

誰かを救いたい、誰も犠牲にしたくない。
そんな主人公の思いが他のキャラクターを突き動かす。
やや唐突にラスボス的な存在が出てきてることは否めないものの、
終盤できっちりとストーリーが盛り上がる。

最後の変身

最終話の盛り上がりは本当に素晴らしい。
戦う彼らを見る名古屋の人々、自らの過去を乗り越えたヒーローたちの姿、
多くの犠牲を見てきた彼らが「もう犠牲は出したくない」と
己の正義を、ヒーローとして戦う姿はシンプルに燃える。

「のぞみをいえ、叶えてやろう」

そんなラスボスのテンプレのような台詞まで飛び出す。
この作品は二人のヒーローの物語だ。
三輪翔、そして「イバラ」という鬼。
互いが互いのヒーローになる。最後のシーンは思わず涙腺を刺激されてしまった。

総評:これがヒーローだ!

全体的に見て最初から最後まで気持ちの良いほどの特撮ヒーローを描いている。
テンプレ的であり、どこかで見たことのある要素は多いものの、
それを「王道」として1クールのストーリーでまとめ上げており、
一人ひとりのキャラの掘り下げをしながら、やや中だるみはあるものの、
終盤で綺麗にストーリーをまとめ上げている。

そんなツボを抑えたストーリーを戦闘シーンで盛り上げる。
ヌルヌルと動くCGによるアクションと煽るようなカメラアングルで
戦闘シーンをスピーディーかつ迫力満点に描いており、
名古屋のできたばかりの制作会社とはおもえないほど
きちんとしたアクションシーンが描かれている。

ただ欠点がないと言えば嘘になる。
テンプレ的な要素や、名古屋ネタの数々、パロディ要素の多さ、
中盤の中だるみや、終盤に唐突に出てくるラスボスなど
やや「B級感」がないと言えば嘘になる。

それでも、そんな欠点をまっすぐに熱く貫くように1クール描いており、
見終わった後にすっきりと「面白かった」といえる作品だった

個人的な感想:ダークホース

あまり期待せずに見始めたら以外にダークホースな作品だった
エクスアーム方式な2Dと3Dの使い分けや
声優さんの演技の拙い部分は気になるところだが、
まっすぐで王道なストーリーやキャラクター描写、
戦闘シーンの見せ場が物語全体を盛り上げていた。

変に引き伸ばしをせず、1クールで完結しているところもまたよく、
お手軽に見れる特撮ヒーローものとしておすすめしたい作品だ。

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