「星合の空」レビュー

スポンサーリンク
青春
スポンサーリンク

評価 ★★★☆☆(50点) 全12話

あらすじ 中学2年生の桂木眞己は母親と引っ越しして、志城南中(しじょうみなみちゅう)に転校、幼馴染だった新城柊真と再会する。引用- Wikipedia

スポンサーリンク

あまりにも惨い打ち切り

本作品はTVアニメオリジナル作品。
監督は赤根和樹、制作はエイトビット。
なお本作品のEDでの「ダンス」がパクリと話題になったが。
踊る必要性はない作品で踊らせて、しかもパクリとは…(苦笑)

やる気0のソフトテニス部


引用元:©赤根和樹・エイトビット/星合の空製作委員会

この作品は「ソフトテニス」を題材にした作品だ。
ただ1話早々に描かれるのはやる気を一切感じない
最弱の男子ソフトテニス部と全国に出たことのある女子のソフトテニス部の試合だ。
彼らは女子の練習にもならないと言われるほどの最弱かつやる気の無さだ。
負けてもくやしがらず、のほほんとしている部員のほうが多い。

部活内の空気も悪く、部員同士の仲もいいとは言えないくらい険悪だ。
会話の中で部員相手に「殺す」とイキるキャラもいたり、
ソフトテニス部だとモテないとわめくキャラが居たり、
ゴミ箱蹴って苛立ちをぶつけるキャラが居たりと、独特のムードを醸し出している。

1話にして「男子ソフトテニス部」が形をなしていない。
そんな彼らの男子ソフトテニス部に廃部の危機が訪れる、当たり前だ(笑)
夏の大会で1勝でもすれば廃部はま逃れることはできるものの、
彼らは自分が努力するのではなく「新入部員」を募集する。

主人公はそんな弱小男子ソフトテニス部のある学校に転校生としてやってくる。
物語としてはこの手のスポーツ系ではありがちな流れではあるものの、
どこか生々しいキャラ描写のおかげで先が気になってくる。

主人公


引用元:©赤根和樹・エイトビット/星合の空製作委員会

主人公は星が好きで片親の家庭で運動神経抜群の青年だ。
飄々とした態度や行動が多い。そんなどこか「闇」を抱える主人公の父親が問題だ。
彼の父親は引っ越しても引っ越しても家をつきとめ、金をせびりに来る。
ときには暴力も働き、主人公は追い詰められている。

だからこそ主人公は「金」をせびる。
彼は趣味で部活なんかやらない、月1万円、三ヶ月で3万、大会で勝てば1万円。
「計4万円」の対価で彼は部活をやるハメになってしまう。
新鮮だ(笑)

口を滑らせたとは言え主人公は金のために部活動をやる。
決してソフトテニスの経験があるわけでも、ソフトテニスが好きなわけでもない。
彼はお金で部活をやる、そんな主人公の青春部活物語が気になる一方で、
闇の深いそれぞれのキャラの「家庭」も気になってくる。

1話から非常に重い。
主人公は突然尋ねられてきた父親に殴られ、蹴られ、金を取られる。
しょっちゅう家にこんな父親が訪ねてくるなら現金を家に置かなければいいのにと
思う一方で「重苦しい」主人公の家庭事情の行方も気になる。

思春期


引用元:©赤根和樹・エイトビット/星合の空製作委員会

2話になっても男子ソフトテニス部の部員はまるでやる気がない。
主人公が金のためとは言え、せっかく入ってくれたのに歓迎ムードはまるでない。
チビだの生意気だのぶん殴るなど、まともなセリフを彼らは吐かない(笑)
やる気が無いのは構わないが初対面の主人公に対して、
よくこんな態度が取れるなと思うほどにクソみたいな部員だ。

この作品にはまともなキャラクターのほうが少ない。
どこか「闇」を抱えているメインキャラクターも多く、
モブキャラでさえ性格悪くメインキャラクターをいじってくる。
ただ彼らは中学生であり、思春期だ。

同じ思春期の中学生も同じような「悩み」を抱えている人もいるだろう。
あるものは自身のジェンダーに悩み、あるものは自身の家庭に悩んでいる。
どこか「アニメ的」ではない生々しさすら感じるキャラクター描写は、
アニメでは有りつつも実写ドラマを見てるかのようなキャラクター描写だ。

そんな彼らに対し、主人公はきっちり煽る。

「努力もしないで結果も出るわけがない、試合に勝てない。
 馬鹿でもわかる、言い訳ばかりで負け犬のクズで卑怯者だ」

クソみたいな部員にきっちりと主人公は正論をぶつける。
まっすぐに彼らにぶつかることで主人公は彼らを焚き付けていく。

丁寧


引用元:©赤根和樹・エイトビット/星合の空製作委員会

この作品のソフトテニスの描写は非常に丁寧だ。
主人公が完璧に初心者であるがゆえに序盤は彼にソフトテニスを教えるという形で
視聴者にもソフトテニスの基本を伝えていく。
ラケットの持ち方、ボールの打ち方、打つ際の姿勢、
ソフトテニスのルールもしっかりと描写される。

だから部員同士の練習試合もしっかり面白い。
主人公が同じ部員に対し、きっちりと「観察」して試合をしているのが分かる。
相手の目線や動きをしっかり見ることで動きを予測し、
相手の思惑を感じ取り、持ち前の運動神経できっちりと反応する。

試合中に「キャラクター」が何を考えてどう動くか。
それを主人公の目線でもしっかりと感じることができる。
クソみたいな部員のクソみたいな作戦は主人公でなくても透けて見る部分があり、
それにきちんと対応する主人公を描くことで主人公の魅力を
しっかりと作り上げていく

丁寧なキャラクターの描写がきちんと「試合」として面白さにつながっていく。
クソみたいな部員に対し、主人公もきちんと正論をぶつける

「あんた達弱すぎる、今まで何やってたの?」

煽りにも聞こえるセリフではあるが、彼の言うことは正論だ。
クソみたいな部員は本当に弱い。
主人公の「正論」が部活の変化につながっていく。

家庭環境


引用元:©赤根和樹・エイトビット/星合の空製作委員会

この作品のキャラクターの多くは家庭環境に問題を抱えている。
主人公は最悪な父親に悩まされ、他の部員も子供の頃に虐待を受けたり、
母親との関係性に悩んでいたり、非常に重い設定を抱えている。

部員たちは確かにクソみたいな性格や行動や言動が多い。
だが、その裏にはきちんと「そうなってしまう」のもおかしくない家庭環境がある。
「子供」の性格や行動や言動の多くは家庭環境に大きく影響される。
最初は最悪な印象の彼らではあるものの、徐々に主人公を通して彼らを知ることで
徐々に彼らの印象が良くなっていき、愛着が湧いていく。

彼らに愛着を湧いていく中で、ソフトテニス部としてのまとまりも生まれてくる。
展開としては王道だが、その王道が心地よくストーリーとして描かれており、
自然にキャラクターの印象が付きながら、
ストーリーにもきちんと引き込まれていく。

しかし、そんな王道な青春スポーツストーリーがうまく描かれている時に限って、
主人公の父親がふらっと現れて彼の心を砕いてゆく。
いくら彼が頑張っても、いくら努力しても、彼の影には常に父親がいる。
爽やかに見える青春ストーリーの裏で、それぞれの家庭環境を
匂わせることによって、毎話のようにストーリーに「引き」が生まれている
誰にも言えなかった悩みを同じ部員に話し、彼らの絆も深まっていく。

面白いのはサブキャラである「生徒会長」の家庭環境まで描かれることだ(笑)
そんなサブキャラの家庭事情まできちんと描く必要はあるのか?
と思う部分はあるものの、序盤のこの一人ひとりのキャラクター設定が
明らかになっていく中で、この作品が描きたいことも明確になっていく。

精一杯の青春を過ごしてる彼らが自身や自身の親との関係性を悩みつつ、
同じような悩みを持つ彼らとともにソフトテニスを通じて変化し成長しつつ、
自身の抱える「問題」にどう向き合っていくのか。

ソフトテニス


引用元:©赤根和樹・エイトビット/星合の空製作委員会

どちらかといえばソフトテニスは「舞台装置」でしかない。
ソフトテニスの上達は彼らが自分自身に向き合った証だ。
やさぐれ、ソフトテニスですらやる気がなかった彼らが
主人公をきっかけに自分自身に向き合い、ソフトテニスが上達していく。

この作品の描きたい部分においてソフトテニスは
舞台装置でしかない部分はあるものの、非常に描写がうまい。
とくに主人公が建てた作戦は見ていて納得ができる。
決して才能や運動神経や努力といったものだけで勝利するわけではない、
「作戦」で勝利する。

これは主人公が序盤から見せてきた部分だ。
同じ部員の彼らを一人ひとり観察し、だからこそ経験がなくても勝つことができ、
「ダブルス」におけるチームの組み合わせも観察した結果から生まれる。
主人公の「観察眼」を視聴者にもきっちり見せることで、
納得のできる試合が運びが生まれる。

試合の内容に「納得」できるのはスポーツものとしては素晴らしいものだ。
決してご都合主義ではない、考えられた試合運びが素直に面白い。
そんな面白い試合運びに見てる側も登場人物たちもハマっていく。

「ソフトテニスが楽しい」
序盤の彼らには感じなかった「楽しみ」を見てる側も
きっちりと感じることができる。だからより、ソフトテニスに彼らは熱中する。
だが、熱中していると家庭環境が邪魔をする(苦笑)

毒親たち


引用元:©赤根和樹・エイトビット/星合の空製作委員会

この作品のキャラの親はいわゆる「毒親」だ。
子供である彼らを支配し、自分の思い通りに操ろうとし、
親なんだからと子供を抑圧する。
それぞれの親はいろいろな方法で子供にストレスを与えている。
あるものは暴力を、あるものは差別を、あるものは束縛を、あるものは否定を。

この世代の子供たちが抱えていそうな「親」の問題を生々しく描いている。
彼らに「抗う術」はない。中学生である彼らにはどうしようもない。
自分の悩みを同じ部員に打ち明けることで心の負荷は少し軽くなり、
彼らは仲間になってくれる。それくらいしか彼らには救いがない。
中学生である彼らには「友達」だけが唯一の拠り所だ。

だからこそ彼らにとって「ソフトテニス部」というものがより、
大切なものになっていく。

御杖 夏南子


引用元:©赤根和樹・エイトビット/星合の空製作委員会

この作品においてやや「浮いてる」と言ってもいいのが彼女だ。
彼女は主人公のマンションの部屋の下の部屋に住んでおり、
なんとなく主人公のことが気になっている。
最初は彼女も「ソフトテニス部」には否定的な見方をシており、
毒舌を吐いている。

だが、なんやかんやと彼女はいつもソフトテニス部を見ている。
いつのまにか彼女もソフトテニス部の一員のように
試合について言ったり、一緒にBBQを楽しんでいたりする。
でも、彼女は別にマネージャーでも男子テニス部でもない。

そんな彼女の存在がなぜか不思議と気になる。
彼女は「絵」を描いており、SNSでは熱心なファンも居る。
だが、親にもバカにされ「絵を書くことはまともな人間のやることじゃない」
とも言われている。

ソフトテニス部を見ている内に、彼女も影響をされている。
真剣に頑張る彼らの「バカ」とも思える行動に影響され、
自分もバカでいい、夢を見ていいのかもしれないと思い出す。
毒舌を吐きつつも彼女が愛おしく愛くるしい。

追い詰められる


引用元:©赤根和樹・エイトビット/星合の空製作委員会

どんどんと彼らは追い詰められていく。
ソフトテニス部での活動がうまくいけばいくほど、強くなればなるほど、
彼らの絆が深まれば深まるほどに、それを拠り所にする彼らに
親たちは苛立ちを強くさせていく。

親に殴られ、腕を骨折するものも出てくる。原因は決して彼ら自身にはない。
理不尽な「親」に彼らは抗うすべがない。
言葉で歯向かったりすることはできても、それが解決に至ることはない。
どうもしようがない。

しかし、彼らはソフトテニスが上達していき、試合で点数を取れるようになるにつれて
一人ひとりの「自信」にもつながっていく。
かつての自分とは違う、自分が成長することが出来ているという実感が
徐々に「親」という理不尽な存在へ抗う気持ちづくりにもつながっていく。

「俺はもう違うんだ、変わるんだ」
とあるキャラクターのこんなセリフがまさにその象徴だ。
親に言われるがまま歯向かうことも出来なかったキャラが、
立ち向かおうとする。

序盤はクソみたいで嫌味ったらしかった彼らが変わる。
見てる側も彼らにすっかりと愛着が湧いている。
丁寧なストーリーとキャラクター描写が話が積み重なることで光っていく。
1クールで描かれるのは親離れのきっかけとも言えるかもしれない。

最後の試合


引用元:©赤根和樹・エイトビット/星合の空製作委員会

最後の試合は強敵だ、ここまでは運動神経と作戦で勝ってきた主人公だが、
初めて「三ヶ月」しかたってない主人公にとっては圧倒的に経験が足りない。
だが、それでも自分たちが出来る方法で抗う。
今までやってきた手法で、今まで仲間がやってた戦法でなんとか抗う。

彼らが「楽しそうに」試合をするさまは青春そのものだ。
家庭に問題は多く抱えている、だが、まっすぐにソフトテニスを
楽しむ彼らが微笑ましく、試合に負けてもすっきりとしたものが残る。
負けたのに嬉しそうな彼らの姿は青春だ。

打ち切り


引用元:©赤根和樹・エイトビット/星合の空製作委員会

ただ、この作品は1クールで打ち切られている。
もともと2クールのストーリー構成で作られていたものだったが、
途中で尺が1クールに減らさせてしまったらしく、
監督はそのままストーリー構成を変えずに1クール描いている。
つまりは「打ち切り」だ。

2クールの12話、つまりは物語の半分しか終わっていない。
何もかも中途半端と言ってもいい。家庭の問題や個人の問題は何も解決していない。
これから彼らは「抗おう」という気持ちになっただけだ。
本当ならここからどう彼らがあがき、親という理不尽なものに立ち向かうかが
この作品のポイントでもある。

だが、それが描かれない。それだけならまだいい。
だが、この作品はあまりにも、あまりにもとてつもない所で終わっている。
主人公は自らの父親の家に包丁を持って尋ねるという場面で終わる。

「終わりにするんだ」
彼の最後の言葉とともに幕が引かれる。

スポンサーリンク

総評:これはどう評価すればいいのか


引用元:©赤根和樹・エイトビット/星合の空製作委員会

全体的に見て評価に困る作品だ。
ソフトテニス部という舞台の上で「親」というどうしようもない存在に悩む
中学生たちの葛藤と青春を描きつつ、ソフトテニスを通じて少しずつ
彼らが変わっていき、徐々に親というものに立ち向かう心意気が生まれてくる。

そして、彼らがここからどう「理不尽」ともいえる親に立ち向かうか。
この作品が本当に描きたいのは13話から描かれるはずだった。
あくまで1クールは彼らの気持ちを整理し、成長させ、
「親」というものに立ち向かう心を作り上げていく1クールだ。

2クール目からどうなるかが重要だ。この作品のキャラが抱えてる問題は根深い。
到底、中学生の彼らにはどうしようもない問題が非常に多く、
そんなどうしようもない問題にどう抗うのか、そこが描かれて
初めてこの作品の「意味」が生まれてくる。

しかし、打ち切りだ。なんともモヤモヤしたものしか残らず、
せっかく愛着の湧いたキャラクターの行方が宙ぶらりんだ。
ならば、キャラクター数を減らして1クールで描く事はできなかったのだろうか?

「ジェンダー」の問題で悩むキャラや「生徒会長」の家庭など、
カットしようと思えばできるキャラクターも多い。
やや似たような家庭環境のキャラも居る。削ろうと思えば削ることも出来たはずだ。
だが監督は敢えて2クール構成のまま1クールをそのまま出した。

はっきりいえばもったいない。
この作品で描きたいことやキャラクター描写は決して悪くない。
ツッコミどころや気になるところはあるものの、
ストーリーもキャラクターも魅力的な部分が多い。

だからこそそれを「1クール」で収められなかったことが残念だ。
監督のTwitterによれば2019年春ごろに1クールへと変更になったらしいが、
どうにかできなかったのか?と思う部分が非常に大きい。

評価が本当に難しい。これで2クール目が何らかの形で実現するなら
この1クール目の評価もきちんとできるが、
現状としてあまりにもいろいろな部分が中途半端に終わってしまっており、
見終わった後に残念な気持ちになってしまう作品だ。

個人的な感想:決して悪くない


引用元:©赤根和樹・エイトビット/星合の空製作委員会

クソみたいな家庭環境をもつクソみたいな部員たちが
クソみたいな家庭環境をもつ主人公をきっかけに変わっていく。
このストーリーの本筋の部分は悪くなかった。

ただ、これが別にソフトテニスでやる必用はあったのか?という部分はやや疑問だ。
あくまでもソフトテニスは舞台装置でしか無く、
ソフトテニスの試合描写自体は細かいものの
これが卓球でもテニスでも成立したと感じる部分もある。

青春スポーツのさわやかな部分と、それぞれの家庭環境という部分の
落差も非常に大きく、この落差こそがこの作品の面白さもであるが、
ソフトテニスはその落差を生むためのものでしかない。

この作品は本来はどう「キャラクターの問題を解決するのか」
というのがポイントになってくる作品だ。しかし、そのポイントが描かれない。
凄く評価が難しい作品だ。

監督が「作家性」を大事にした結果こうなってしまった1クールだ。
だが「仕事」と割り切れば違った1クールになったかもしれない。
アニメという商業媒体において「どちらが正しいのか」というのは本当に難しい。

願わくば何らかの形で監督の作家性が報われて、
この続きが描かれることを期待したい。

コメント

  1. すがり より:

    youtubeで見て来ました。
    笠さんの素晴らしい所は、埋もれてしまいそうなアニメの分析をしている所だと思います。多分満場一致での名作も見ているのでしょうけど、そこは恐らくこのレビューサイトの本懐ではないですよね。
    勿論ここで酷評されてしまった作品は、完全に意識を刈り取られてしまうのですが笑
    星合とリステージのレビューは震えました&思わず高評価押してました。
    これからも埋もれそうな名作に光を当てて欲しい。応援しています。

    • ナリユキ より:

      2クール中、1クールしか放映してないから50点ということなのでしょうか。テストで例えたら前半の問題が全問正解みたいな採点はちょっと胡散臭いですね(笑)