「いわかける」レビュー

青春

評価 ★★☆☆☆(27点) 全12話

あらすじ 中学時代に引きこもりがちだった笠原好は、高校進学を機会として自分を変えるために部活に入ろうと校内を散策中引用- Wikipedia

絶対才能主義スポーツアニメ

原作は漫画な本作品。
監督はアミノテツロ、制作はBLADE。

アングル


画像引用元:いわかける 1話より
©石坂リューダイ・サイコミ/花宮女子クライミング部応援団

この作品は「クライミング」というスポーツを描こうとしている。
2020年秋アニメは全体的に妙にスポーツアニメが多く、
おそらくは東京オリンピックを想定したものもあるのかもしれない。

クライミングは今回のオリンピックから追加された競技であり、
普通の人には馴染みがない。
TV番組などで芸能人がやってるのを見たことがるという人が多いだろう。

この作品はそんな馴染みのない「クライミング」という競技だからこそ、
主人公は初心者でなんの知識もない。
高校生の彼女は入る部活を悩んでいた所、
たまたまみかけたクライミングの設備に興味を持つ所から物語が始まる。

馴染みのないスポーツだからこそ、主人公を初心者にすることで
視聴者も理解しやすくなる。うまい導入ではあるものの、
「主人公の初めてのクライミング」が止め絵でサクサクと描かれてしまい、
どちらかというと1枚絵での上からのアングルで
キャラクターの胸を見せたり、下から尻を見せる事に重きをおいている。

健全なる体には健全な魂は宿るとは限らない

初心者な主人公に対して当たりが強いキャラもおり

「楽しいか?いるんだよ。面白がって登りたがる奴。
壁を公園の遊具と勘違いして…スポーツクライミングは遊びじゃないんだ』

と性格の悪さを際立たせる。
とてもじゃないが好感の持てるキャラじゃない。
主人公がクライミングに興味を持ち、ゲームのように楽しいと
純粋な気持ちで思っているのに
「遊びじゃないんだ!」と初心者な主人公に勝負を仕掛けてくる。

主人公は勝負に勝てなければ入部ができなくなる、
その時点で「そこまでして入部したいのか?」と思う扱いであり、
なおかつ嫌味なキャラは「私が負ければ私が部活をやめる」と
勝ちにくいことを言ってくる、面倒くささの極みのようなキャラだ。

何事も最初は面白そう、楽しそうという遊びから始まるものだ。
作品としてクライミングという競技に興味を持ってほしいのか、
にわかを拒否したいのかよくわからない。

そんな二人の勝負も「動き」で見せることが出来ていない。
止め絵の連続で迫力にかけるアニメーションは
クライミングの迫力や面白さを感じることが出来ず、
使い回しの絵も多く、それを演出でごまかしている。

いきなり大会


画像引用元:いわかける 2話より
©石坂リューダイ・サイコミ/花宮女子クライミング部応援団

ストーリーもかなり強引なストーリー運びだ。
主人公がいざ入部すると大会は明日という展開になる、
いくら主人公が才能があるキャラクターとはいえ、
流石に急すぎる展開だ。

クライミング経験も三日目で技術も身についておらず、
ルールも完璧には理解していない。そんな主人公は当然緊張してしまい、
ミスをしてしまう。そんな主人公に対してこんな言葉を投げかける。

「おい。どうしたんだ」

どうしたもくそもない。経験の浅い子がミスをするのは当然だ。

他校の生徒も基本的には癖があり、性格に難ありなキャラも多い。
新人な主人公を新人と分かった上で間違ったアドバイスを送り、
ミスを誘おうとする。そんな新人潰して有名な他校のキャラを、
1話で主人公に対して新人いびりをしていたキャラが嗜める。
なんの冗談かと思うほどだ。お前が言うなと思わず突っ込んでしまう。

主人公も主人公で教わったばかりのテクニックを本番で
成功させてしまうほどの才能の持ち主だ。
彼女よりも何年も努力していたキャラが無理だった壁を
彼女が乗り越えてしまう。

新人潰しをしていたキャラも、幼い頃に同年代の子に
負けてしまった経験から新人潰しをしている。
努力よりも才能、クライミングというスポーツは努力よりも才能だと
作品から伝わってくるような内容だ。

本来は描かなければならない積み重ね、過程をすっ飛ばして
ストーリーを進めている感じが強く、
そのせいでキャラクターに感情移入など出来ない。

スポーツクライミングを魅せたいのか、
それとも女性キャラの肉体美を描きたいのか、
どちらも描こうとして中途半端になってるのかいまいち判断がつかない

ライバルキャラ


画像引用元:いわかける 5話より
©石坂リューダイ・サイコミ/花宮女子クライミング部応援団

5話くらいから大会が本格的になってくる。
主人公たち以外の出場者、いわゆるライバルキャラも多く出てくる。
彼女たちは「わかりやすい」キャラクターづけになっており、
癖の強いキャラクターを出すことで大会を盛り上げようとしている。

しかし、序盤から根本的に「クライミング」がつまらない。
作画枚数の少なさから感じる予算の少なさ、
そのせいで「アニメーション」としての動きの面白さがなく、
キャラクターたちの過剰に多いモノローグで説明し、
あとは1枚絵でアングルを変えているだけだ。

止め絵ばかりのクライミングシーンになんの面白みもなく、
癖の強いライバルキャラたちの「特徴」もほぼ感じられない。
わかるのは筋肉系キャラが力で強引にクリアしたことと、
キャラクターの体格差により、クライミングの得手不得手が強く出るのは
伝わるものの、結局は「才能」だ。

その他の部分でキャラの特徴や凄みが見て伝わってこない。
ヤンキーだったり「やんす」な語尾のキャラだったり、
色々といるものの、「クライミング」という競技の中での
キャラ付けでない。

そもそも主人公と同じチームのキャラでさえ、
「背が小さい」キャラ以外の特徴が薄い。
キャラクターが変わっても、やってることが変わらず見せ方も変わらず
登って落ちるという似たようなシーンの繰り返しだ。

凡人が故の焦り


画像引用元:いわかける 6話より
©石坂リューダイ・サイコミ/花宮女子クライミング部応援団

序盤も中盤もクライミングというスポーツは結局は才能ですと
言いたいのが作品からひしひしと伝わってくる。
初めて三ヶ月にも満たない初心者が1年も2年も、
選手によっては数年も経験があるのに主人公よりいい成績を残せない。
才能だ。

そんな凡人たちの「あせり」がこの作品の面白さだ。

「あの子に登れて…わたくしにできないはずがない」

経験が違う、努力してきた時間が違う。できないはずがない。
しかし、彼女より高く登れない。体格が、センスが、才能が。
いくら時間をかけても、努力をしても埋まらないものがある。
自分が何度も失敗して落ちているのに、
そんな自分の横で主人公はたった1度のトライで登ってしまう。

この作品の主人公に魅力はない、ただ「天才」というだけだ。
しかしながら、そんな「天才」を見てあせるライバルキャラたちの
人間味あふれる「焦り」がこの作品の面白さだ。

もしかしたら誰しもに経験があるかもしれない。
小説、絵、スポーツ、音楽、学生時代に最も打ち込んでいたこと。
そんな中で「自分の才能」を自覚する瞬間、
本物の天才を目の前にして挫折する瞬間。
それがこの作品には描かれている、ある意味で生々しい。

幼い頃から彼女に勝てないライバルは「絶望」する。
認めたくはない、彼女と自分の覆せないほどの才能、
自分を「眼中」にすら入れてくれない、
ライバルとしてすら認識してくれない。

主人公が自らの才能を覚醒させればさせるほど、
強くなればなるほど、この作品は面白くなる。
それは決して主人公の強さの描写が面白いわけではない、
アニメーションとして面白いわけではない。

生々しいまでの凡人たちの「自らの才能」を認める姿が面白い。
彼女たちはいつからか自覚する、自分はあの子には勝てない、
あの子よりも才能がない。ならば凡人なりに今できることをするんだと。

主人公をただただ「天才」というキャラ付けにしてしまったがゆえに、
才能の差という描写の面白みが生まれてくる。
才能のないものには至れない高み、そんな高みを目指して地に落ちるものと
高みへと到れるものの違いが決定的に描かれる。

半年


画像引用元:いわかける 10話より
©石坂リューダイ・サイコミ/花宮女子クライミング部応援団

終盤で半年の時間が経過する。
天才が半年努力するのと、凡人が半年努力をするのとでは意味が違う。
それを見せつけられる。

主人公の欠点でもあった「体力」、ある程度トレーニングすれば
天才も凡人も等しくつく。
そして「大会慣れ」、ある程度、大会に出続ければ
天才も凡人も等しくつく。

天才が努力をすればするほど凡人はかなわなくなる。
終盤は「天才」と「天才」の戦いだ。凡人が入る余地など無い。

主人公が不得意だったスピードクライミング。
最初は他の選手よりも劣っていた。
凡人な選手たちの動きをよく見てコツをつかもうとするもうまく行かない。
しょせんは凡人が練り上げた技に過ぎないからだ。

しかし、彼女と同じ「天才」が彼女にちょっとしたコツを教えるだけで
彼女はあっさりと凡人たちが努力してきた結果に追いついてしまう。
凡人が培ったコツや技術よりも天才が天才の領域でしかわからない
ニュアンスのほうが天才には伝わる。凡人はお呼びでない。

結果だけ


画像引用元:いわかける 12話より
©石坂リューダイ・サイコミ/花宮女子クライミング部応援団

終盤、あれだけ語尾などでキャラ付けしてた意味はどこへやら、
ほとんど凡人たちの試合は描かれない。
描かれるのは天才と天才の戦いだけだ。

しかし、本来はじっくり描いて盛り上げるべきところを描かず、
最終話はほとんど結果だけ描いている。
無駄にキャラを増やした結果、面白みもなく必要性も感じない
どうでもいいキャラの結果だけのシーンに尺を取られまくっている。

場面展開ばかりが続く最終話は盛り上がりそうで盛り上がらず、
熱くなれそうで熱くならない。
ストーリー構成と尺の使い方の悪さを最終話でひしひしと感じてしまう。
カットしまくりで結果だけを映すような最終話は、
最終話としてあまりにもあっさりとしすぎてしまっている。

癖の強いキャラは多いのに、そんなキャラを使いこなせず
そんなキャラの多さに引っ張られてしまっていた最終話だった。

総評:クライミング愛を感じない


画像引用元:いわかける 12話より
©石坂リューダイ・サイコミ/花宮女子クライミング部応援団

全体的に見て制作側のクライミング愛を感じない作品だ。
本来はきちんと描くべき「クライミング」というスポーツの良さを
この作品からはまるで感じない。1枚絵の連続でセクシーなアングルと
演出でごまかしまくり、アニメーションという媒体で
スポーツアニメというジャンルなのに動きの面白さがまるで感じられない。

「クライミング」というスポーツの魅力を知ってもらおう、
良さをこの作品で伝えよう。そんな意気込みはまるで感じない。
この作品で伝わるのは「クライミング」は才能が全てということだけだ。

「天才」という設定だけの主人公に特に魅力はないものの、
彼女がどんどんと強くなり、才能を覚醒していけば行くほど
ライバルキャラやチームメイトでさえ彼女と自分の才能の差に悩み、
自らが「凡人である」と自覚したり、絶望する。

それでもなんとか足掻こうとしている姿は
主人公よりも物語の面白さを引っ張っており、
序盤にはなかった面白さが中盤からにじみ出てくる作品だ。

しかし、ストーリー構成や尺の使い方は雑であり、
特に最終話は、せっかく盛り上がってきているのに
場面展開の連続と止め絵の連続、試合のカットの連続で
結果しか映さないことが多く萎えてしまった。

予算の問題もあったかもしれないが、制作側のこの作品を面白くしよう
という意気込みを感じられない作品だった。

個人的な感想:くるくるすー


画像引用元:いわかける 12話より
©石坂リューダイ・サイコミ/花宮女子クライミング部応援団

田村ゆかりさん演じるキャラクターの語尾が癖になる作品だった(笑)
性格の悪さもピカイチのライバルキャラであるがゆえに、
もう少し最終話での彼女の活躍を見たかった。

ただ全体的にキャラ数が多い割にはしっかりとした掘り下げをされた
キャラクターが少なく、1クールで詰め込みすぎた結果、
作品として色々と無理が生まれてしまい、
その結果「天才と凡人の対比」が妙に際立ってしまった作品かもしれない。

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