ファンタジー

「空挺ドラゴンズ」レビュー

2.5
ファンタジー
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評価 30点 全12話

あらすじ 国が龍と呼ばれる生物から生産できる食料や資材を欲して空を目指してから半世紀後の時代。世界には、飛行船に乗って捕獲した龍を加工して売りさばく龍捕りと呼ばれる職業が誕生した引用- Wikipedia

飛べない竜はただのステーキだ

原作はgood!アフタヌーンで連載中の漫画作品。
監督は吉平”Tady”直弘、制作はポリゴン・ピクチュアズ
フル3DCGで作られた作品。

捕鯨じゃないよ捕龍だよ


画像引用元:空挺ドラゴンズ 1話より
©桑原太矩・講談社/空挺ドラゴンズ製作委員会

1話冒頭、飛行船にのったキャラクターたちが「龍」を捕まえるシーンから始まる。
逃げ回る龍を追いかけながらアンカーを打ち込み、とどめを刺す。
彼らの目的は「捕龍」だ。

この世界には少なくなってはいるものの龍が存在し、
彼らはそんな龍を捕まえ売ることを生業としている。
捕まえた龍を解体し、部位ごとに分け、肉や皮や油を売る。
「龍」にはなっているものの、この作品の大本は「捕鯨」だろう。

龍ではあるものの解体や肉の活用方法、油のとり方まで
「鯨」を感じさせるような描写も多い。
龍自体は売れるが、彼らは歓迎されていない。
街に入ることも拒否され、堅気の仕事ではないと彼らも自嘲する。

しかし、龍の肉はうまい(笑)
主人公が龍の油を鉄板にしき、龍のステーキを焼き、パンに挟む。
食べたことがない「龍の肉」なのに見ている側も思わず
「美味しそう」と感じさせる料理の描写は思わずよだれが出てくる。

捕鯨をファンタジーの世界に置き換え、鯨ではなく龍として描く。
どこかジブリを感じさせるようなファンタジー世界の描写、
3DCGで描かれるキャラクターのヌルヌル感はやや違和感はあるものの、
「どんな作品になるんだろう」という期待感を強く感じさせる。

巨大な龍にたいして武器はレトロだ。銃や槍や電気や剣だ。
「龍」という存在は出てくるものの「魔法」や「超能力」は出てこない。
泥臭いまでの龍との戦闘シーンは妙な生々しさすら感じさせてくれる。
一歩間違えば空の海へと落ち、一歩間違えば死にかねない。

そんな中でも仕留め方次第では肉質が落ちてしまうからこそあえて
銃や剣で挑む姿は泥臭い戦闘シーンを生み出しており、
この作品への期待感も強まる。

ん?


画像引用元:空挺ドラゴンズ 2話より
©桑原太矩・講談社/空挺ドラゴンズ製作委員会

しかし2話以降明らかにパワーダウンする。
1話のワクワク感、これからどんなストーリーと世界が広がっていくんだろうと
思いきや、2話はこじんまりとした話になってしまう。
拍子抜け感が凄く、提示された世界観の割には話がこじんまりとしている。

3話などやってることはほとんどラピュタであり、
淡々と「捕竜船の日常」を描いてしまっている感じが否めず、
起伏のないストーリーはつまらないというわけではないが、
面白いとも言えないなんとも微妙な雰囲気が漂ってしまう。

毎話出てくる料理は確かにおいしそうだ。
しかしフル3DCGで描かれてしまってるせいで「作られた料理」と
「それを食べるキャラクター」の描写は手描きには敵わず、
確かに美味しそうだが毎話のようにそれをやられると
「竜」縛りということもあって飽きが来るのも早い。

生活感のある「捕竜船の日常」の描写は面白いものの、
どこかジブリで見たようなシーンも多く既視感が凄い。

ファンタジー日常


画像引用元:空挺ドラゴンズ 4話より
©桑原太矩・講談社/空挺ドラゴンズ製作委員会

1話1話のストーリーはどこかあっさりとしており深くはない。
この作品はストーリーを魅せるタイプの作品ではなく、
「捕竜船」にのるキャラクターを魅せるタイプの作品だ。

団員のキャラを掘り下げながら
彼らがなぜ捕竜をしているのかというのに着目していく。
彼らは竜を狩る。生きるために。金のために。
だからこそ彼らは竜をなるべく早く仕留め、美味しく食べる。
「生き物をいただく」ということの本質を描きつつ、
「捕竜」をする彼らの日常と人生を描いている作品だ。

1話の時点では冒険譚が始まりそうだったが、
この作品は「ファンタジー日常系」だ。
竜が生きる世界で竜を狩る彼らの人生が描かれている。

ジブリがいっぱい


画像引用元:空挺ドラゴンズ 3話より
©桑原太矩・講談社/空挺ドラゴンズ製作委員会

この作品はとにかくジブリがいっぱいだ。天空の城ラピュタ、ナウシカ、紅の豚。
90年代のジブリ映画を見てきた世代がジブリをやりたくて作っている。
そんな印象を強く受ける要素があまりにも多い。

彼らの服装はナウシカで見たことがあるような格好だ。
竜も王蟲のような見た目をしてるものもおり、
出てくる飛行船や飛行機は紅の豚や天空の城ラピュタでみたことがある。
ジブリをやりたいのは分かる。だが、それを一切隠そうとしておらず、
ネタ元が丸見えになってしまっていて萎えてしまう。

リスペクトやオマージュといえば聞こえが良いが、
はっきりいって「そのまんま」になってしまっている部分が非常に多く、
そこに甘えてしまっていて世界観の練り込みや設定の掘り下げが足りない。

「あーこのシーンはジブリのあの作品のあのシーンをやりかったんだろうな」
と感じてしまうシーンが非常に多く、下手くそなリメイクを見ているような
そんな感覚になってしまう部分もある。

緊迫感


画像引用元:空挺ドラゴンズ 7話より
©桑原太矩・講談社/空挺ドラゴンズ製作委員会

何回かピンチに鳴ることはある。空賊に襲われたり
死んだと思ってた龍が動き出して大惨事になったり、
ただ、どれもこれも「緊張感」がない。

1話のような龍と対峙したときのような緊張感がなく、
どこかゆるーくふわーっとやってしまっており、
予想以上のストーリー展開にはならず、むしろ予想以下の展開だ。
メインキャラもサブキャラもモブキャラでさえ死なない。

本来は盛り上がりどころのはずがいまいち盛り上がらない。
原因はCGの綺麗さにもある。暴れるまちなかで戦ってるのに
メインキャラの服装は一切汚れない。
綺麗すぎるCGのせいでせっかくの泥臭い戦闘シーンに迫力が生まれていない。
ぬるぬる動くのは素晴らしいが、そこにリアリティがない。

2話もかけるような話でもないのに2話もかけてやったりするため、
話としてのテンポも悪く、1つ1つのシーンが間延びし、
緊張感も迫力も生まれない。
CGのクォリティは高いが演出の弱さをひしひしと感じてしまう。

戦闘してるときよりも日常シーンのほうがそういった演出の弱さを感じず、
話としても面白いため、戦闘シーンが続けば続くほどつまらない。
どんな敵も結局、突撃して刺したり撃ったりするだけでワンパターンだ。
演出が良ければワンパターンに感じないかもしれないが、
演出が悪いせいで余計にワンパターンに感じやすい。

食育


画像引用元:空挺ドラゴンズ 12話より
©桑原太矩・講談社/空挺ドラゴンズ製作委員会

キャラクターの物語や掘り下げは面白いのだが、
はっきり言ってストーリー自体は微妙だ。
ヒロインが龍との戦いの中で空から龍とともに落ちてしまう。
そもそも「柵」や「命綱」などのたぐいが一切ない船はどうなんだ?と
気になる部分ではあるものの、そこよりもストーリーの微妙さが気になる。

彼女は落ちた先で小さな龍に出会う。
自分が殺した龍の子供であり、そんな子供であってしまったがために
龍を食べられなくなる。

出会ってそんなに時間もたってない中で子供の龍に感情移入するのもよくわからず、
食べられなくなるのも一瞬でしか無く、食べた後に泣く。
いわゆる「命の尊さ」や「食育」的なものをやりたいのならば
「子供の龍」と一緒にしばらく行動した後に、その龍を食べる展開にすれば
納得できるが、出会ってすぐの龍の親だからと躊躇するのは謎だ。

今まで散々、龍を殺し龍の肉を食べておいて終盤でいきなり
龍の子供に感情移入する展開は飲み込み難い。
もう少し序盤でこのエピソードが描かれるなら分かるが、
1クール散々竜を殺し食べた後にこのエピソードを描かれるのは違和感が強い

「子供の龍」も地上では生きられず龍の群れに返そうという展開になるのだが、
これまでのこの作品の雰囲気や流れならば、
地上で生きられずこのまま死んでしまうなら食べるという展開じゃないのだろうか。

群から離れた子供の龍がまだ新人で船から落ちた彼女と重なる部分があり、
空へ返すことは自分も返すことという意味合いなのは分かる。
ストーリー的にやりたいこと見せたいことは分かるが、
そこがふわふわしており、きちんと見せられていないような印象だ。

総評:ジェネリックジブリ


画像引用元:空挺ドラゴンズ 1話より
©桑原太矩・講談社/空挺ドラゴンズ製作委員会

全体的に見て雰囲気はいいものの、
その雰囲気にごまかしきれてない部分が多い作品だった。
結局、この作品でやりたいことは「ジブリ」であり、
それを隠そうともせず堂々とやりすぎている部分が多く、
オマージュやリスペクトの領域を超えてしまっている。

捕鯨を龍におきかえてファンタジーの世界で描くという試みは面白く、
龍を狩る彼らの物語は面白く、ひとりひとりの魅力はしっかりとあるものの
1クールではもう一歩掘り下げ不足なキャラクターが多く、
1クールを通して「タキタ」という新人の成長を描いているのは分かるが、
テンポが悪く盛り上がりきらない話も多い。

龍を使った料理など美味しそうではあるものの、
3DCGで描いてしまったがゆえにその美味しさが軽くなってしまい、
食べたときのキャラクターの表情の描写や料理自体の描写が
3DCGでは物足りなく感じてしまう。
戦闘シーンにおける服の汚れなど細かい部分が綺麗すぎるのも気になる所だ。

世界観や雰囲気はいい。
しかし、ジブリがいっぱいすぎるシーンやふわっとしたストーリーは
もう一歩練り込み不足を感じてしまう。
一応「ミカ」が主人公ではあるものの彼は「食欲」ばかりが優先してるキャラであり
それ以上の深みが一切ない。

彼の過去や成長や変化はここから描かれるのかもしれないが、
ミカが「主人公」というのはちょっと違和感を感じるポイントだ。
成長物語としてはミカよりもよっぽどタキタのほうが主人公をしており、
どうにも主人公としての魅力が薄い主人公だった。

1クールではなく2クールくらいでしっかり描かれるか、
もしくは2時間位の映画で描かれたら印象は違ったかもしれない。
1クールで描くにはややだらーっと描いてしまって、
締まりのない作品になってしまった印象だ。

個人的な感想:こじんまり


画像引用元:空挺ドラゴンズ 1話より
©桑原太矩・講談社/空挺ドラゴンズ製作委員会

1話の時点では面白そうな期待感が強かったが、
2話以降はそんな期待感に答えてくれるような話がなく、
ジブリがやりたいのはわかるもののそれが前面に出すぎていて
どうにも受け入れきれず、最後までいまいち腑に落ちない作品だった。

作品自体の雰囲気、料理の描写は悪くないものの、
もう一歩物足りない。そんな作品だった。
3DCGでなければもう少しアニメーションとして
見ごたえのある作品に成り得た可能性もあり、
この作風で3DCGだったのは失敗だったかもしれない。

久しぶりに「3DCG」でなければ…と感じてしまう作品だった。

「」は面白い?つまらない?

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