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これは人間讃歌の物語「葬送のフリーレン~旅立ちの章~」レビュー

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葬送のフリーレン~旅立ちの章~ 未分類
葬送のフリーレン~旅立ちの章~
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評価 ★★★☆☆(57点) 全4話

TVアニメ『葬送のフリーレン』PV第2弾/9月29日金曜ロードショーにて初回2時間スペシャル放送/以後10月6日より毎週金曜よる11時放送

あらすじ 魔王を倒して王都に凱旋した勇者ヒンメル、僧侶ハイター、戦士アイゼン、魔法使いフリーレンら勇者パーティー4人は、10年間もの旅路を終えて感慨にふけっていたが、1000年は軽く生きる長命種のエルフであるフリーレンにとって、その旅はきわめて短いものであった。引用- Wikipedia

これは人間讃歌の物語

原作は週刊少年サンデーで連載中の作品。
アニメ自体は2クールの放送が決定しているが、
本作品は1話から4話を金曜ロードショーで放送したものになる。
監督は斎藤圭一郎、制作はマッドハウス

旅の終わり

物語はベタなファンタジー世界だ。
この世界には魔王が存在し、勇者パーティーがそんな魔王を倒す。
昨今ではなろう系が大ブームで多くの作品がアニメ化されている、
そんななろう系のような世界観では有るものの、
なろう系と違うのは、この作品が「魔王を倒したあと」の世界だということだ。

彼らは10年の旅を経てようやく魔王を倒した。
だが、彼らの人生はここからだ。
若い彼らにとって、この10年よりもこの後の人生のほうが長い。
それぞれがそれぞ手の道に進む中で
「エルフ」であるフリーレンも一人で魔法を探すために旅に出る。

勇者パーティーのうちの2人は人間であり、あとの2人は
ドワーフとエルフだ。
この「種族の差」による「寿命」の違いが、
それぞれの時間の感覚の違いにも繋がっている。

ファンタジーの世界でも、人間は生きて100年だ。
人生のうちの10年の月日を魔王を討伐するために費やした。
だが、エルフは違う。彼女にとっては「たかが」10年だ。
彼女が今何歳で、エルフの寿命が具体的に
どれくらいなのかは作品では明示されない。

しかし、長寿なエルフにとって10年という月日は
感覚的には人間の感覚でいえば十ヶ月からそこらだ。
へたしたら10日位の感覚かもしれない。

彼女はあまり他者への興味がない。
それゆえに人間とエルフの時間の感覚の違いも理解はしていない。
人間とエルフで寿命が違うことは知識としてはわかってる、
だが、それを実感していない。

だからこそ50年に1度の流星群を目にしても特に感動せず、
50年後にもっときれいに見える場所で見ようと気軽にいってくる。

勇者

あっというまに50年の月日が流れる。
この作品は時間の経過が異様に早い、一ヶ月なんてあっという間に、
半年や1年、10年、そして50年の月日があっさりとすぐ去ってしまう。
エルフであるフリーレンの時間感覚がそのまま
ストーリー構成にも反映されている。

彼女は旅の中でふと仲間にあずけていたもののことを、
そして50年に1度の流星群が再び訪れることに気づき、
かつての仲間のもとに訪れている。
そこにはすっかりと年老いた勇者がいる。

彼女にとっては衝撃だ。
たった50年ですっかりとハゲてしまい、身長も縮んで、
よぼよぼのおじいさんになっていることに衝撃を受けてしまう。
人間にとっての50年と、エルフにとっての50年、
それを彼女は「死」という形で痛覚する。

もっと彼に会いに来ればよかった、もっと喋っていればよかった。
彼のことを何も知らずに、彼がしんでしまった。
彼女は痛いほどそれを自覚し、反省する。

もう二度と会話できないからこそ、
勇者との思い出を噛みしめるように、彼女は再び旅立つ。
勇者の痕跡を、勇者との旅路をふりかえりながら。

この作品はある種の「死生観」のようなものを描いている。
人間が死ぬ前に何を考え、何を思うのか。
彼らは偉業を成し遂げた、だが、死の間際にはその偉業を
成し遂げた姿とはまるで違う姿だ。

そんな死の前だからこそ、色々なことを思う。
そんな思いをフリーレンは旅の中で受け止めていく。

僧侶

フリーレンのかつての仲間である僧侶は快楽主義者の人間だ。
僧侶でありながら酒を煽り、明るく、人生を楽しんでいた。
だが、年を取って考えが変わっている。

それは「勇者の死」もあったのだろう。
勇者は誰に対しても優しく、多くの人々を救ってきた。
そんな勇者の死を彼も受け止めたからこそ、
そんな死から学んだことを活かそうとしている。

かつての彼ならば戦争孤児を引き取ることなどしなかったかもしれない。
だが、多くのものを救ってきた勇者ならば
同じ状況でどうするのか、それをふと「勇者が死んだ」からこそ
考え、彼は戦争孤児を引き取っている。

だが、彼も年老いた身だ。いつ死ぬかわからない。
そんな中で久しぶりにフリーレンが現れる。
「人間はすぐに死ぬ」からこそフリーレンは弟子を取らない。
せっかく物事を、魔法を教えても100年ほどで消えてしまう。
エルフだからこその考えだ。

そんな彼女に彼は5年かかる魔法書の解読を頼む。
その傍らで戦争孤児である「フェルン」に魔法を教えてくれることも頼む。
死の間際の最後の願いだ。
死は終わりではなく、紡ぐものである。
この作品はそういう考えのもとでストーリーがねられている。

勇者が死に、勇者の意思が多くものに受け継がれ、
快楽主義者だった僧侶は戦争孤児をひきとり、
フリーレンも魔法書と引き換えでは有るものの訪れた街の人々の
困っていることを解決している。

勇者ならばこうしたから。
勇者はたしかに死んでしまった、だが、その意思は確実に紡がれていく。
人はいつか死んでしまう、当たり前のことだ。
だが、死は決して無になることでも終わりでもない。
生きている人間に何かを残し、その何かがまた違うなにかにつながる。

人間讃歌、生命賛歌のようなものが
丁寧に優しい世界観の中で描かれていく。

弟子

そんな僧侶も亡くなってしまう。
だが、人間は死ぬものときちんとわかったからこそ、
フリーレンは彼が死んでも泣くことはない。
彼の死ぬ間際の言葉をきちんと受け止め、意志を継ぎ、
彼ときちんと言葉を交えたからこそ死を受け止める準備ができていた。

そんな彼からは弟子をたくされている。19歳の女の子だ。
魔法使いとしての才能があり、そんな彼女を
僧侶の意志を継ぎ弟子としてフリーレンは迎えている。

フリーレンは10年という月日、勇者パーティーとして旅をしていた。
だが、その10年という月日をエルフの感覚で受け止めてしまっている。
しかし、今回は違う、人間とエルフの時間の感覚、
寿命が違うとわかってるからこそ、今回の旅の「重み」が違う。

きちんと彼女と会話をし、きちんと彼女を理解しようとする。
時折、フリーレンは彼女の頭を撫でる。
これは「僧侶」が「フリーレン」にかつてやっていたことだ。
さりげない行動、さりげないシーンで、
仲間の死から彼女が多くのことを学び、受け継いでいくのを感じてしまう。

この作品はあまり派手な展開はない。
悪く聞こえてしまうかもしれないが物語は「淡々」と描かれている。
ゆるやかに描かれているストーリーではあるものの、
時間だけは刹那的に、ときに残酷に流れていく。

その対比がこの作品の面白さもである。
ストーリー構成はあくまでフリーレンの時間の感覚で進むものの、
人間はあっさりと年を取っていく。
人間たちの変化や死をフリーレンがどう受けとめ、どう紡いでいくのか。
淡々としてはいるものの、染み渡る面白さを感じることができる。

再会

そんな中でフリーレンには後悔がある。
もっと勇者を理解していればよかった、もっと勇者を話していればよかった。
だが、後悔しても、もう勇者はこの世には居ない。
だからこそ、彼女はなるべくかつての旅路をなぞりながら、
弟子とともに魔法集めというふわっとした目的のまま旅をしている。

そんな中でかつての仲間であるドワーフと再会する。
人間ほど寿命は短くないが、エルフほどは長くない。
だが、すっかり年老いた彼はもう斧を握ることはできない。
そんな彼にも託される。

それはフリーレンの後悔をはらうことだ。
この世界には「魂」と再会できる場所があり、
そんな魂との再会、死者と会話できる場所である
かつての「魔王」が存在した場所へ赴いてほしいと頼まれる。

かつての仲間にとってもフリーレンが勇者の死を
後悔していることはわかっていた。
だからこそ、そんな後悔を祓うすべはないかと
僧侶とドワーフは考え、その手段の1つを見つけてくれた。

彼女は再び10年前の旅と同じ道程で同じ場所を目指すことになる。
自らの後悔を祓うために、人間というものを理解するために。
2時間ほどの尺で、フリーレンの旅の目的を定め、
その度の始まりまでの物語をどっしりと描いている作品だった。

総評:死は終わりではない

全体的にみて久しぶりにどっしりと腰を据えて楽しみたくなる作品だ。
戦闘シーンもちょこっとだけあるものの、そこまでがっつりとではない。
作画に関してもしっかりと描かれてはいるものの、
物凄く美麗に描かれているわけではない。

「死」というものを描いてはいるものの、
いわゆる「泣き」自体は強制している感じがなく、
作品全体がいい意味で地味だ。
だが、だからこそ染み渡る面白さが有る。

ヴァイオレット・エヴァーガーデンや鬼滅の刃、
そういったわかりやすく派手な作品が受けるのが「今」だが、
そんな「今」の流行りとは少し違う。

だからこそ、作画もやや抑えめだ。
きらびやかな演出が有るわけでもない、
ぬるぬると動くアクションシーンが有るわけでもない。
ときおり、ボソっとギャグが挟まれるからこそ、
そのギャグが際立っている部分もある。

まるで小説を読むかのように静かに、1つ1つのセリフを味わうように、
作品全体が優しく、なめらかに、しっかりと描かれている作品だ。
このいい意味での地味さを楽しめるかどうかは
個人の価値観によるところが大きい。

金曜ロードショーで2時間でやるという大胆な試みだったが、
確かに1話の段階ではこの地味さが面白さに
変わりきらなかったかもしれないだけに、
フリーレンの旅の目的がしっかりと定まった4話まで
一気に金曜ロードショーで放送したのは正解だったのかもしれない。

このあとのフリーレンの旅路がどうなるか、
本当に魂と再会し、死者と会話できる場所は存在するのか。
気になるところだ。

個人的な感想:体感4時間

最初はテンポが悪いなーと感じてしまう作品だった。
だが、金曜ロードショーでCMのときにふと時計を見ると、
1時間位たっている感覚だったのに20分しかたっていなかった(笑)

ストーリー全体が地味かつ淡々と描かれている感じは有るのに、
時間の変化だけが異様に早いために、
みている側の時間感覚までエルフ感覚になってしまうような作品だ。
決してテンポが悪いわけではなく、むしろ早いのに、
テンポが悪く感じてしまう。脳内がバグる感覚だ。

これをもし2クール一気に見たらどうなってしまうのだろうか。
軽いタイムスリップしたような感覚になる作品に
なってしまうかもしれない。

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